毒舌教師、悩みを聞く気ゼロ。だけど的確すぎて誰も逆らえない

彩乃

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火のないところに、わざと放火する教師

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 昼下がりの相談室。
 烏丸は退屈そうに、薄いコーヒーをすする。

 そこへ、偶然にも同じタイミングで――
 久賀と灰谷、ふたりが来室する。

「……は?」

「……偶然です」

「嘘くせぇな。どうせ“こいつの顔見たら何か言いたくなる病”だろ、お前ら」

 

 灰谷は無言。
 久賀は渋い顔で口を開く。

「相談内容、変えるわ。帰る」

「ダメ。面白くなりそうだから、むしろ今、話してけ」

 

 烏丸は書類を適当に投げて、椅子に足を投げ出した。

「つーかお前ら、“似てるくせに許せない”って関係、嫌いじゃねぇけどな。
 互いに“鏡像のノイズ”みたいな存在ってやつ?」

「……例えが意味不明です」

「意味がわかったら末期だよ。で――久賀、お前最近“感情に嫉妬してんじゃね?”」

「は?」

「灰谷がちょっと人間らしくなっただけで、ずーっと目の端でチラ見してんぞ、お前。
 言い換えれば“置いていかれる恐怖”ってやつだな」

 

 久賀の表情が一瞬、凍る。

「……何を勝手に分析してんだ」

「職業柄。分析と煽りは仕事の一部なんでな」

 

 烏丸は視線を灰谷に移す。

「で、お前はお前で“人の心を理解した気になってる”から始末に負えねぇ。
 “共感って言葉、噛まずに飲んで窒息しかけてる”みたいな顔してんぞ」

 

 灰谷も無言で目を伏せる。
 烏丸はニヤリと笑う。

「いいねぇ。この微妙な不協和音。
 じゃあさ、一回“同じ生徒”の問題に、二人同時に対応してみろよ」

 

「……あ?」

「面倒ごとを“二人の主観”でどう料理するか見てみたいんだわ。
 どうせ意見合わねぇだろうけど、そこが見どころだろ」

 

 久賀と灰谷、同時に睨む。

「……わざとか?」

「わざとだよ。俺が“人間関係の死体解剖ショー”始めるわけないだろ。
 “生きてるからこそ揉める”ってとこを、もっと見せてもらわないと」

 

 そして、烏丸が用意した“課題”は――
 **「自傷癖を持つ女子生徒のメンタルケア」**だった。

 

 久賀の第一声:「利用できる感情の枠にハメ直す」
 灰谷の第一声:「感情の“根”を共有しようと試みる」

 完全に、真逆。
 交わらない価値観が、そこでさらに激突する。

 

 だが――それは同時に、
 互いのやり方の“意味”を探り合う機会にもなっていく。

 その火種を撒いた張本人・烏丸は、
 廊下の窓から空を見上げてぼやいた。

 

「……人間なんて、結局“誰かの軌道にぶつかって”しか進めねぇんだよ。
 だからこそ――火は焚べてやらねぇとな」
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