毒舌教師、悩みを聞く気ゼロ。だけど的確すぎて誰も逆らえない

彩乃

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おまえの正しさが、クソムカつく

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放課後の旧校舎。
使われていない生徒指導室で、百目木静馬と灰谷が“静かに話していた”。

だが――そこへ、
ドアを蹴破る勢いで入ってきたのが久賀翔太だった。

 

「静馬ァァァァ!! てめぇ……何やってやがるッ!!」

 

灰谷が驚き、静馬は椅子に座ったまま笑っている。

「おや……お久しぶりですね、久賀くん」

「黙れ。テメェが灰谷をどう見てるかは知ってんだよ。
 “感情を揺らす素材”としてしか扱ってねぇってな」

 

静馬はあくまで冷静に返す。

「……そう思うなら、あなたはどうするつもりです?
 暴力で、私を止めるんですか?」

 

その瞬間、久賀の拳が机を叩き割る。

「上等だコラァ!! てめぇの顔面も机みてぇに割ってやろうかァ!?」

「感情的ですね。意外でした。
 あなたはもっと冷静に物事を捌くタイプかと――」

「“誰かが泣かされてんのを見て笑ってる奴”に冷静でいられるほど、
 俺は器用に育ってねぇんだよ!!」

 

静馬の目が細くなる。
だが、そこにあったのはわずかな好奇心の色。

「あなたは、“他人のために怒れる人間”なんですね」

「うるせぇ。
 ……お前みたいに、自分の知識と頭脳で誰かを転がして遊んでる奴、
 俺は一番嫌いなんだよ」

 

静馬は立ち上がる。
そして、久賀と向かい合って言った。

「では、試しますか?
 あなたの“怒り”が、どこまで本物か」

 

そのときだった――

 

「――やめろ、久賀」

 

割って入ったのは烏丸真澄だった。
ドアにもたれかかりながら、煙草を咥えて、目だけが鋭い。

 

「お前が今ここで静馬を殴っても、
 “お前の怒りが正しい”って証明にはならねぇ。
 ――ただの、正義中毒の暴走だ」

「……違ぇよ、烏丸。
 俺は正義なんかじゃねぇ。
 “灰谷が、あんな奴に壊されんのが我慢できねぇ”だけだ」

 

久賀のその一言に、静馬が目を見開く。
――感情で、人はここまで揺れるのかと。

 

「俺は、アイツに助けられた。
 “人間じゃない”なんて言ってたアイツが、
 ……本気で誰かを守ろうとしたの、見てんだよ」

 

拳を下ろす久賀。
だがその言葉は、まっすぐ静馬を刺していた。

 

「――てめぇの“正しさ”なんて、
 人間の血が通ってねぇ“計算”だろうが。
 俺はそれが、クソムカつくんだよ。」

 

静馬は、何も言わなかった。
久賀の言葉の中にあった「激情」は、彼の理解の外にあったからだ。

そして烏丸が、低く言う。

 

「いい怒りだな、久賀。
 次はそれを――“守る力”に変えてみせろ。
 ぶん殴るより、そっちの方がずっと難しいんだからよ」

 

久賀は一言も返さず、ただその場を離れていった。

教室の空気には、
**「理屈じゃない何か」**だけが、重く残された。
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