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第四章 精霊と呪い
偽りの愛と母の愛(1)
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辺りはすでに闇の瀑布が降りていた。
ラップラントの村はすでに人通りも絶え、鎧戸も固く閉ざされていた。
少し欠けた歪な丸い月明かりとゲオルグの杖が照らす青白い光だけが、ほんのりと辺りを認識させる程度だった。
さらに一里ほど過ぎたところで、馬車はようやく止まった。
シグルンはお尻を摩りながら馬車を降りると、いててと小さく呻いた。
相変わらず馬車の旅路は快適ではないが、ゲオルグもヨハンナも割と平気そうにしているのが不思議だ。
「ではシグルン様、我々はここまでです」
つと呟くように言ったのはゲオルグだった。
シグルンははっとする。
そうだった。二人とはこのままお別れだった。
出会ってからたったの数日のことだった。
過ごした時間は大したことないくらい、むしろちっぽけなものなのに、シグルンはすっかりゲオルグとヨハンナのことが好きになりかけていた。いや、結構好きだと思う。
昨晩は自分が傷付きたくないばかりに、後先考えずに逃げることを優先させてしまったが、王宮にはゲオルグ、ヨハンナ、フロスティー、そして大好きだと気付いてしまったアレクだっていた。
後悔したって後の祭りだが。
「あの、送っていただきありがとうございます」
「いいえ、此度はシグルン様のお力になれず申し訳ありません」
「……そんなことはありません! 親切にしていただきありがとうございます。ゲオルグさんとヨハンナさんがいなかったら、私も今頃もっと大変だったと思います。本当にお世話になりました」
シグルンは慌ててお辞儀したが、ゲオルグは苦虫を潰したように言った。
ヨハンナは控えめにゲオルグの後ろに立ったまま静かに首を振る。
「今夜はここでゆっくりしていきな」
だが、シグルンが本当にお別れなんだなと感慨深く耽っていると、背後から聞き慣れた声が割って入ってきた。
一瞬シグルンは自分にかけられた言葉かと思って振り返ったが、ややあってゲオルグとヨハンナが返事をしたので、そうでないことを理解する。
振り返った先には、いつからそこにいたのだろうか、丘の上に建った懐かしの我が家の前にゾーイが立っていた。
ゾーイの杖の頭からは橙色の光が灯り、群青色の空を小さく照らしている。
ゾーイの赤い髪と目がゆらゆら揺れているように見えた。
「……お母さん!」
言うが早いか、シグルンは駆け出した。
揺れていたのはゾーイではなくシグルン自身だと気付く頃には、シグルンの目には涙が溢れんばかりに溜まっていた。
ぶわり、風とともに無数の白い蝶が舞った。
シグルンは蝶に驚くよりも先にゾーイに抱きついた。
ゾーイは嫌がる素振りを見せることなく、むしろ嬉しそうに受け入れる。
ゾーイのふふふと笑う声が上から聞こえた。
「分かったかい?」
ゾーイは唐突に聞いてきた。
「何が、よ。全然分からない」
そこは真っ先にお帰りなさいでしょう。
もしくは突然追い出すように王都にやってごめんねとか。
シグルンは涙声で返し、また始まったと心の中で突っ込んだ。
ゾーイお得意の、分からないことは自分で考えて答えを見つけなさい、が。
お陰で大変な目に遭ったんだ。
冷たくされたり、親切にされたり、好きな人に出会えたり……
シグルンはたった何日間かの出来事が走馬灯のうに頭に駆け巡り、ずきずきと心が痛んだ。
「……全然分からないよ、お母さん。ちゃんと教えてよ……」
視界に映るちらつく蝶を隅に捉えながら、シグルンは子供っぽく口を尖らせた。
せめてもの嫌味にとゾーイを睨めつければ、ゾーイはさも気にしてないとばかりに喉を鳴らし返す。
ゾーイの真意は未だ分からないままだった。
それもそのはず。シグルンは尻尾を巻いて王都から逃げ出したのだから。
『可愛い子には旅をさせよ』などという言葉があるが、シグルンのはとてもじゃないが旅に片足を突っ込んだ程度で、何か成長できた気などしなかった。
「でも、お前はもう答えたを見つけてきたようじゃないか。自分では気付いていないかもしれないが」
「答えって?」
(私の人生の課題は何? 答えは?)
「それは私の口からは言えない」
「それじゃ意味が分からないわ」
「答えはもうお前の胸にあるんだよ」
ゾーイは満足気によくやったと言ったが、シグルンは理解に苦しんだ。
尚も食い下がるがやっぱり分からない。ゾーイは何が言いたいんだ。
二人の話は噛み合わず平行線を辿った。
微妙な沈黙が流れる。
するとゾーイは観念したように両手を上げ、顰めっ面で口を開いた。
「いつかくると分かっていたよ。だから、そのときがくるまでは黙っていようと思っていたのさ……」
「……そのとき?」
「ああ、そのときだとも。それまでは自分の足で、目で、頭で考えなくちゃいけない。私が物事の本質をあらかじめこうだと説いたところで、それが正しいことだとどうして分かる? お前は曇りなき眼で見定め、自分で幸せを見つけなきゃならない」
シグルンは居た堪れずゾーイから目を逸らした。
ゾーイはシグルンが答えをすでに見つけたと言うが、シグルンからすれば問題から逃げ出した敵前逃亡も同然だ。
何が何だかやっぱり分からない。
「シグルン、この白い蝶は何だと思う?」
ゾーイは囁くようにシグルンに問いかける。
シグルンはゾーイの指差した先で、無数に舞う白い蝶をしっかりと見た。
魔法の残滓が月明かりに反射してきらきらと光っている。
「お母さんの魔法、ではない?」
「これは精霊の魔法だよ、精霊の」
ゾーイは語尾を強調すると、今度は何もない空中に手を突っ込んだ。
一瞬宙が歪んで手が呑み込まれたかと思うが、ゾーイは捜し物をする手付きで腕を揺らした後、少しして手を引き抜く。
手にしていたのは小さな木箱。宝石箱というよりかは質素で、片手に収まるくらいの大きさの箱だ。
ゾーイは突然それをシグルンの前に差し出した。
「え? 何これ?」
シグルンが疑問に思ったのも当然だ。
見たことのない木箱を何の気なしに出されてもどうすればいいか分からない。
シグルンはゾーイと木箱を交互に見て、ゾーイの説明を待った。
「これはお前の本当の母親から預かったものだよ」
雷に打たれたような衝撃がシグルンの全身を貫いた。耳のずっと奥で心臓の音がドクッと聞こえる。
本当の母親……
ゾーイが養母であることは幼い頃から聞かされてきたが、本当の親については聞いたことがなかった。
子どもの頃は多少なりとも気になったことはあったが、ゾーイ以上の親はいないという気持ちもあったし、何より聞くこと自体に申し訳なさもあり、シグルンは本当の両親について聞くことはなかったのだ。
寝耳に水だが、それでも聞けるものなら話を聞きたい。
「お母さんは私の本当のお母さんを知ってるの?」
シグルンは身を乗り出して尋ねた。
自分はずっとどこかの森で拾ってきた子なんだと思っていた。
なぜ捨てられたのか。
母親もシグルンと同じ醜い顔をしていたのか。
愛されていなかったのか。
聞くのは怖いが、知りたい気持ちの方が大きい。
シグルンの問いにゾーイは深く頷いた。
「お前の母親については、私もよく知っているわけではないんだよ。ただ、シグルンを産んですぐ私のところにやってきてね、赤ん坊のお前とそれを遺していったのさ」
「じゃ、じゃあ……本当のお母さんは……生きてる?」
「いいや、お前を預けてすぐ亡くなったよ。産後の肥立ちが悪くてね」
シグルンは『死』という言葉に身を竦めた。
薬師の真似事をしているシグルンにとって死はとても身近なものだが、できることなら立ち会いたいものではない。
「箱の中を開けてごらん」
シグルンはゾーイから木箱を受け取り、鍵のかかっていないただ被さるように覆っただけの蓋を開けた。
「わぁ、綺麗!」
「それはお前の母親が遺したものだ」
「私のお母さんが?」
「そうだよ」
箱の中に入っていたのは小さな指輪だった。
何年も手入れもされずに仕舞われていたためか、指輪は艶を失い白っぽい鼠色をしている。だが、目を凝らせば精緻な意匠が施されており、王冠のように真ん中に乗った大振りのルビーは、時を忘れさせない輝きを持っている。
シグルンは指輪を月明かりに翳し、反射して赤く煌めく宝石に魅入った。
外見は老婆で似合わないと言われたらお終いだが、世の女性がそうであるようにシグルンもまた美しいものは好きだ。
ふいに一頭の蝶が指輪の頭に乗った。
忘れていたわけではないが、この蝶を見る度に少しずつ驚きは減っていた。
シグルンはぼんやりと眺めていると、不思議なことに視界も曖昧に霞んでくる。
(……あれ?)
シグルンは疑問を口にしたつもりだったが、言葉にならずに心の中で押し止まったようだ。
気が付けば、シグルンはたなびく霞に包まれ、真っ白な世界に朧に浮かんでいた。
ラップラントの村はすでに人通りも絶え、鎧戸も固く閉ざされていた。
少し欠けた歪な丸い月明かりとゲオルグの杖が照らす青白い光だけが、ほんのりと辺りを認識させる程度だった。
さらに一里ほど過ぎたところで、馬車はようやく止まった。
シグルンはお尻を摩りながら馬車を降りると、いててと小さく呻いた。
相変わらず馬車の旅路は快適ではないが、ゲオルグもヨハンナも割と平気そうにしているのが不思議だ。
「ではシグルン様、我々はここまでです」
つと呟くように言ったのはゲオルグだった。
シグルンははっとする。
そうだった。二人とはこのままお別れだった。
出会ってからたったの数日のことだった。
過ごした時間は大したことないくらい、むしろちっぽけなものなのに、シグルンはすっかりゲオルグとヨハンナのことが好きになりかけていた。いや、結構好きだと思う。
昨晩は自分が傷付きたくないばかりに、後先考えずに逃げることを優先させてしまったが、王宮にはゲオルグ、ヨハンナ、フロスティー、そして大好きだと気付いてしまったアレクだっていた。
後悔したって後の祭りだが。
「あの、送っていただきありがとうございます」
「いいえ、此度はシグルン様のお力になれず申し訳ありません」
「……そんなことはありません! 親切にしていただきありがとうございます。ゲオルグさんとヨハンナさんがいなかったら、私も今頃もっと大変だったと思います。本当にお世話になりました」
シグルンは慌ててお辞儀したが、ゲオルグは苦虫を潰したように言った。
ヨハンナは控えめにゲオルグの後ろに立ったまま静かに首を振る。
「今夜はここでゆっくりしていきな」
だが、シグルンが本当にお別れなんだなと感慨深く耽っていると、背後から聞き慣れた声が割って入ってきた。
一瞬シグルンは自分にかけられた言葉かと思って振り返ったが、ややあってゲオルグとヨハンナが返事をしたので、そうでないことを理解する。
振り返った先には、いつからそこにいたのだろうか、丘の上に建った懐かしの我が家の前にゾーイが立っていた。
ゾーイの杖の頭からは橙色の光が灯り、群青色の空を小さく照らしている。
ゾーイの赤い髪と目がゆらゆら揺れているように見えた。
「……お母さん!」
言うが早いか、シグルンは駆け出した。
揺れていたのはゾーイではなくシグルン自身だと気付く頃には、シグルンの目には涙が溢れんばかりに溜まっていた。
ぶわり、風とともに無数の白い蝶が舞った。
シグルンは蝶に驚くよりも先にゾーイに抱きついた。
ゾーイは嫌がる素振りを見せることなく、むしろ嬉しそうに受け入れる。
ゾーイのふふふと笑う声が上から聞こえた。
「分かったかい?」
ゾーイは唐突に聞いてきた。
「何が、よ。全然分からない」
そこは真っ先にお帰りなさいでしょう。
もしくは突然追い出すように王都にやってごめんねとか。
シグルンは涙声で返し、また始まったと心の中で突っ込んだ。
ゾーイお得意の、分からないことは自分で考えて答えを見つけなさい、が。
お陰で大変な目に遭ったんだ。
冷たくされたり、親切にされたり、好きな人に出会えたり……
シグルンはたった何日間かの出来事が走馬灯のうに頭に駆け巡り、ずきずきと心が痛んだ。
「……全然分からないよ、お母さん。ちゃんと教えてよ……」
視界に映るちらつく蝶を隅に捉えながら、シグルンは子供っぽく口を尖らせた。
せめてもの嫌味にとゾーイを睨めつければ、ゾーイはさも気にしてないとばかりに喉を鳴らし返す。
ゾーイの真意は未だ分からないままだった。
それもそのはず。シグルンは尻尾を巻いて王都から逃げ出したのだから。
『可愛い子には旅をさせよ』などという言葉があるが、シグルンのはとてもじゃないが旅に片足を突っ込んだ程度で、何か成長できた気などしなかった。
「でも、お前はもう答えたを見つけてきたようじゃないか。自分では気付いていないかもしれないが」
「答えって?」
(私の人生の課題は何? 答えは?)
「それは私の口からは言えない」
「それじゃ意味が分からないわ」
「答えはもうお前の胸にあるんだよ」
ゾーイは満足気によくやったと言ったが、シグルンは理解に苦しんだ。
尚も食い下がるがやっぱり分からない。ゾーイは何が言いたいんだ。
二人の話は噛み合わず平行線を辿った。
微妙な沈黙が流れる。
するとゾーイは観念したように両手を上げ、顰めっ面で口を開いた。
「いつかくると分かっていたよ。だから、そのときがくるまでは黙っていようと思っていたのさ……」
「……そのとき?」
「ああ、そのときだとも。それまでは自分の足で、目で、頭で考えなくちゃいけない。私が物事の本質をあらかじめこうだと説いたところで、それが正しいことだとどうして分かる? お前は曇りなき眼で見定め、自分で幸せを見つけなきゃならない」
シグルンは居た堪れずゾーイから目を逸らした。
ゾーイはシグルンが答えをすでに見つけたと言うが、シグルンからすれば問題から逃げ出した敵前逃亡も同然だ。
何が何だかやっぱり分からない。
「シグルン、この白い蝶は何だと思う?」
ゾーイは囁くようにシグルンに問いかける。
シグルンはゾーイの指差した先で、無数に舞う白い蝶をしっかりと見た。
魔法の残滓が月明かりに反射してきらきらと光っている。
「お母さんの魔法、ではない?」
「これは精霊の魔法だよ、精霊の」
ゾーイは語尾を強調すると、今度は何もない空中に手を突っ込んだ。
一瞬宙が歪んで手が呑み込まれたかと思うが、ゾーイは捜し物をする手付きで腕を揺らした後、少しして手を引き抜く。
手にしていたのは小さな木箱。宝石箱というよりかは質素で、片手に収まるくらいの大きさの箱だ。
ゾーイは突然それをシグルンの前に差し出した。
「え? 何これ?」
シグルンが疑問に思ったのも当然だ。
見たことのない木箱を何の気なしに出されてもどうすればいいか分からない。
シグルンはゾーイと木箱を交互に見て、ゾーイの説明を待った。
「これはお前の本当の母親から預かったものだよ」
雷に打たれたような衝撃がシグルンの全身を貫いた。耳のずっと奥で心臓の音がドクッと聞こえる。
本当の母親……
ゾーイが養母であることは幼い頃から聞かされてきたが、本当の親については聞いたことがなかった。
子どもの頃は多少なりとも気になったことはあったが、ゾーイ以上の親はいないという気持ちもあったし、何より聞くこと自体に申し訳なさもあり、シグルンは本当の両親について聞くことはなかったのだ。
寝耳に水だが、それでも聞けるものなら話を聞きたい。
「お母さんは私の本当のお母さんを知ってるの?」
シグルンは身を乗り出して尋ねた。
自分はずっとどこかの森で拾ってきた子なんだと思っていた。
なぜ捨てられたのか。
母親もシグルンと同じ醜い顔をしていたのか。
愛されていなかったのか。
聞くのは怖いが、知りたい気持ちの方が大きい。
シグルンの問いにゾーイは深く頷いた。
「お前の母親については、私もよく知っているわけではないんだよ。ただ、シグルンを産んですぐ私のところにやってきてね、赤ん坊のお前とそれを遺していったのさ」
「じゃ、じゃあ……本当のお母さんは……生きてる?」
「いいや、お前を預けてすぐ亡くなったよ。産後の肥立ちが悪くてね」
シグルンは『死』という言葉に身を竦めた。
薬師の真似事をしているシグルンにとって死はとても身近なものだが、できることなら立ち会いたいものではない。
「箱の中を開けてごらん」
シグルンはゾーイから木箱を受け取り、鍵のかかっていないただ被さるように覆っただけの蓋を開けた。
「わぁ、綺麗!」
「それはお前の母親が遺したものだ」
「私のお母さんが?」
「そうだよ」
箱の中に入っていたのは小さな指輪だった。
何年も手入れもされずに仕舞われていたためか、指輪は艶を失い白っぽい鼠色をしている。だが、目を凝らせば精緻な意匠が施されており、王冠のように真ん中に乗った大振りのルビーは、時を忘れさせない輝きを持っている。
シグルンは指輪を月明かりに翳し、反射して赤く煌めく宝石に魅入った。
外見は老婆で似合わないと言われたらお終いだが、世の女性がそうであるようにシグルンもまた美しいものは好きだ。
ふいに一頭の蝶が指輪の頭に乗った。
忘れていたわけではないが、この蝶を見る度に少しずつ驚きは減っていた。
シグルンはぼんやりと眺めていると、不思議なことに視界も曖昧に霞んでくる。
(……あれ?)
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