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第二章 王子様に秘密がバレました
2-3 大丈夫、バレてない……よね!!
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◆◆◆◆
バーベナはディアルムドを振り切り、その場を離れるべく魔法で転移した。
追跡されないよう何回か連続で転移し、念には念を入れて帰宅したのである。
呪文や魔法陣などの媒介なしに魔法を繰り返し使うのは危険な行為だが、背に腹は代えられない。
もし向こうが本気で魔法を仕掛けてきたら、いくら強い魔力に目覚めたバーベナといえども無傷ではいられなかっただろう。
――見られた! ディアルムド殿下に魔法を見られてしまった!?
バーベナは心の中で悲鳴を上げた。ドッ、ドッ、と心臓はいまだ激しく鼓動している。
舞踏会のあった日、ディアルムドはバーベナを見たと言っていた。もしやあのとき、本当に目が合ったということか。
だがこちらが彼を王子だと認識していても、必ずしも向こうが自分を知っているとは限らない。
そもそもほんのちょっと顔を見たくらいで、素性が明らかになることはないだろう。
――大丈夫、バレてない……よね!!
興奮冷めやらずに屋敷の階段を駆け上りながら、バーベナは何度も自分に言い聞かせる。
「ねえ、ご主人様」
自室に入ると、肩の上に乗ったミアンが顔を上げた。
屋根裏にある自室は、日当たりはいいものの、名家の令嬢の過ごす部屋には到底見えない。物置も同然のみすぼらしい部屋だ。
ただし内緒話をするにはうってつけかもしれない。
家族はおろか使用人たちも近寄りたがらないからだ。
「さっきの人って、どこからどう見てもあのときの王子様よね?」
「……う、うーん? 気のせいじゃないかな」
『王子様』という言葉に、バーベナの体がビクリと跳ね上がる。
とっさにその場を取り繕おうと笑みを意識したが、逆に頬が引き攣って不自然なものになってしまった。
「何言ってるのよ。私にまで下手な芝居を打たなくてもいいから」
ミアンが食い気味に言う。心なしかその目は爛々と輝いている。
バーベナは外套を脱ぎ、深く溜息をついた。
「…………うう、そうね。あの方はディアルムド殿下で間違いないわ。あんなにかっこいい人が国じゅういたるところにいるわけがないもの」
彼が目を惹くような美丈夫であることは間違いない。
シンプルなローブ姿がかえって彼の美しさを引き立てていると言っていい。いかにもお忍びの王子様といった風情だった。
「だけど王族に不敬な態度を取ってしまって、のちのちバレたら大変なことになりそう……」
「うまく逃げ出せたのだから、心配はいらないんじゃない? 問題は、あの殿下の目がギラついてたことよね」
「ギラ……?」
「私にはわかるわ。あれは獲物を狙う猛禽の目よ」
「ええっ!?」
ふふんと鼻を鳴らしながら自信たっぷりに言うミアンに、バーベナはなんとなく薄ら寒さを感じてみずからの両腕を抱く。
――とっ捕まえて不敬罪で罰してやろう、とか……?
だとしたら、怖すぎる。
こちらの正体がバレていようがいまいが、話も聞かずに手を振り払い、あまつさえ魔法で目眩ましを食らわせたのだ。相手が怒っている可能性はじゅうぶんある。
もし身元を突き止められたら? 翌朝にもディアルムドが屋敷に乗り込んできたら?
「まずいことになったかも……」
戦々恐々とするバーベナをよそに、平和な朝が訪れた。
ディアルムドが屋敷に押しかけてくることはなく、王城はもちろん父親から呼び出しを食らうこともない。
妹から相変わらず心無い言葉をかけられるだけで、バーベナはすっかり安心してしまった。
いいや、いじめられている時点で平和もへったくれもないが、自分の本当の力が露見するよりもずっといいと思ってしまったのだ。
――ああ、よかった。どうやら心配のしすぎみたい。
「ちょっと拍子抜けしちゃったわ。質素な朝ご飯がいつにもまして美味しく感じたもの」
「うーん、安心するのは早いんじゃない?」
ミアンは疑わしげな目を主人に向ける
「わかってるわ。幸先のいいスタートかなって思ったの」
ゆうべは不安のあまりうまく寝つけなかったのだから、少しくらい心に余裕を持ちたいというもの。
しかしながら、寝不足の頭ではろくに物事を考えられなかったのも事実で――。
ミアンが指摘した通り、バーベナは仕事先の魔法道具店に着くなり悲鳴を上げる羽目になってしまったのだ。
いつものように店のドアを開けると、カランコロンというベルの音とともに後ろのほうから声をかけられる。
「そこのきみ――」
店の主人ではない。お手伝いの子でもない。聞き慣れない声だったが、振り向かずともそれがいったい誰の声なのか、バーベナは嫌というほどわかってしまった。
「また会いましたね」
「きゃあっ!!」
低く、艶のある美声にバーベナは震え上がる。
おそるおそる振り返れば、客との打ち合わせに使う小さな丸テーブルに若い男性が腰かけているのが見えた。
ただ座っているだけにもかかわらず、姿勢一つ目線一つとっても優雅で、彼の高貴な雰囲気を隠しきれていない。
雑多な――いかにも庶民的といった雰囲気の店の隅から、場違いなほどの尊い輝きが放たれている。
さすがの店主も物言いたげな顔を向けていたが、これはいったいどういうことなのかとその場で問い詰めるような真似はしなかった。この場合、できない、といったほうが正しいのかもしれない。気の毒なほど緊張している。
――ま、まさか……!?
そう、職場に居座るこの男こそ、先日舞踏会で見かけ、そして昨日も無視を決め込んでしまったディアルムド王子その人だったのだ。
おそらく王子の従者だろうか、後ろにはニコニコと満面の笑みを浮かべる少年の姿も見える。
「な、な……なんでこの場所がっ!?」
――まさか、私のことを調べて……?
いくらなんでもバレるのが早すぎる。
動転するあまり店の主人と一緒に震えていると、さすがに焦れったくなったようでディアルムドが口を尖らせた。
「あなたに話があります」
バーベナはそこでやっと我に返り、慌てて答える。
「いえ、大丈夫です! 私にはありませんので!」
「俺は用があるんです」
「ですから、私のほうには――」
無礼だろうがなんだろうが、なりふり構っていられない。
ないです、とすげなく言おうとして、ふうん、という相槌とともに不敵な笑みを被せられた。
「命令されたいのですか? それとも……」
ディアルムドは席を立ち、バーベナのほうに歩み寄る。
「俺としては……今ここであなたの正体をバラしてもいいのですが? はたして店主は庶民のなりをしたあなたが大貴族の娘だと知っているのでしょうか?」
バーベナのすぐそばまでやってくると、ディアルムドは声を落として言った。
思わずゾッとして足が竦む。
それは、明らかな脅迫だった。
同時に、バーベナの正体を知っているという意味でもある。
――やっぱりバレていたんだわ!
逆にバレていないと思うほうがどうかしていたのだ。
「それは……」
バーベナは答えに窮し、ディアルムドの目を見返せないまま俯いてしまった。
せっかく腕を買われて働き始めたのに、平民ではなく貴族の出だと知られたら、これ以上雇ってもらえなさそうだ。
ここで揉めるのは得策ではない。そう判断したバーベナはためらいがちに口を開いた。
「わ、わかりました……ですが、仕事もありますので……その、手短にお願いできないでしょうか?」
「いいでしょう」
「え? よろしいのですか?」
今すぐにでもどこかへ連れていかれるのではないかと危惧していただけに、あっさりと頷いたディアルムドにバーベナは目を丸くする。
「勝手に押しかけてきた自覚くらいはあります。店の邪魔になるかもしれないと思うのは当然です」
「は、はあ……」
――え? 何? さっきまでは鬼気迫る勢いだったのに急にしおらしく……? 信じられないのだけど。
勝手に押しかけたとわかっているのなら、このまま大人しく帰ってほしい。
ただ人生計画を台無しにされたくないので、そのことはあえて口にしない。
そうこうしているうちに、ディアルムドが思い出したように先ほど座っていた席に戻り、テーブルの上から何かを持ってくる。
「これは、俺が温室で育てた花です」
ディアルムドが手にしていたのは薔薇の花束だ。
差し出されるがまま、バーベナはついつい受け取ってしまった。
「まさか殿……ではなく、あなた様が? 温室で……育てた?」
一瞬、バーベナの頭が真っ白になる。
「ほら、ほかに手土産もあります。好きなんでしょう? こういうお菓子が」
追加で差し出された紙袋には、なんとお菓子が入っているらしい。
バーベナはさらに首を捻った。
「え? こちらは……どこかの有名店でお買い求めになられた……ものでしょうか?」
「ムースです。昨日の晩に仕込んで、朝早起きして仕上げました」
「手作り!?」
「あなたがお菓子好きなのは知っていますよ」
「え!?」
――知っているって……どうして!?
丁寧な言葉遣いを心がけたが、最後までできなかった。
衝撃だ。いろんな意味で。ツッコミどころが多すぎてすぐに返す言葉が出てこない。
「……灯台下暗しとはよく言ったものですね。俺は一度見たものを忘れませんので」
「ええと……以前どこかでお会いしましたか? 私たちは初対面ですよね?」
「それをまだ言いますか。あのときリスのようにデザートに夢中になっていたでしょう?」
「リス?」
ということは、舞踏会でも目が合っていたのだ。
無駄だと知りながらもとぼけてみたが、ディアルムドはバッサリと斬り捨てるように言った。ふたたびバーベナのそばへ寄り、前屈みになりながら耳元で囁きかける。
「バーベナ・ウア・グロー、それでは手短に用件を言いましょうか」
小声とはいえ突然出てきた自分の名に、バーベナは心臓が跳び上がりそうになるほど驚いた。
しかしもっと驚いたのは、ディアルムドが次に口にした言葉だ。
「俺の妃になってください」
バーベナはディアルムドを振り切り、その場を離れるべく魔法で転移した。
追跡されないよう何回か連続で転移し、念には念を入れて帰宅したのである。
呪文や魔法陣などの媒介なしに魔法を繰り返し使うのは危険な行為だが、背に腹は代えられない。
もし向こうが本気で魔法を仕掛けてきたら、いくら強い魔力に目覚めたバーベナといえども無傷ではいられなかっただろう。
――見られた! ディアルムド殿下に魔法を見られてしまった!?
バーベナは心の中で悲鳴を上げた。ドッ、ドッ、と心臓はいまだ激しく鼓動している。
舞踏会のあった日、ディアルムドはバーベナを見たと言っていた。もしやあのとき、本当に目が合ったということか。
だがこちらが彼を王子だと認識していても、必ずしも向こうが自分を知っているとは限らない。
そもそもほんのちょっと顔を見たくらいで、素性が明らかになることはないだろう。
――大丈夫、バレてない……よね!!
興奮冷めやらずに屋敷の階段を駆け上りながら、バーベナは何度も自分に言い聞かせる。
「ねえ、ご主人様」
自室に入ると、肩の上に乗ったミアンが顔を上げた。
屋根裏にある自室は、日当たりはいいものの、名家の令嬢の過ごす部屋には到底見えない。物置も同然のみすぼらしい部屋だ。
ただし内緒話をするにはうってつけかもしれない。
家族はおろか使用人たちも近寄りたがらないからだ。
「さっきの人って、どこからどう見てもあのときの王子様よね?」
「……う、うーん? 気のせいじゃないかな」
『王子様』という言葉に、バーベナの体がビクリと跳ね上がる。
とっさにその場を取り繕おうと笑みを意識したが、逆に頬が引き攣って不自然なものになってしまった。
「何言ってるのよ。私にまで下手な芝居を打たなくてもいいから」
ミアンが食い気味に言う。心なしかその目は爛々と輝いている。
バーベナは外套を脱ぎ、深く溜息をついた。
「…………うう、そうね。あの方はディアルムド殿下で間違いないわ。あんなにかっこいい人が国じゅういたるところにいるわけがないもの」
彼が目を惹くような美丈夫であることは間違いない。
シンプルなローブ姿がかえって彼の美しさを引き立てていると言っていい。いかにもお忍びの王子様といった風情だった。
「だけど王族に不敬な態度を取ってしまって、のちのちバレたら大変なことになりそう……」
「うまく逃げ出せたのだから、心配はいらないんじゃない? 問題は、あの殿下の目がギラついてたことよね」
「ギラ……?」
「私にはわかるわ。あれは獲物を狙う猛禽の目よ」
「ええっ!?」
ふふんと鼻を鳴らしながら自信たっぷりに言うミアンに、バーベナはなんとなく薄ら寒さを感じてみずからの両腕を抱く。
――とっ捕まえて不敬罪で罰してやろう、とか……?
だとしたら、怖すぎる。
こちらの正体がバレていようがいまいが、話も聞かずに手を振り払い、あまつさえ魔法で目眩ましを食らわせたのだ。相手が怒っている可能性はじゅうぶんある。
もし身元を突き止められたら? 翌朝にもディアルムドが屋敷に乗り込んできたら?
「まずいことになったかも……」
戦々恐々とするバーベナをよそに、平和な朝が訪れた。
ディアルムドが屋敷に押しかけてくることはなく、王城はもちろん父親から呼び出しを食らうこともない。
妹から相変わらず心無い言葉をかけられるだけで、バーベナはすっかり安心してしまった。
いいや、いじめられている時点で平和もへったくれもないが、自分の本当の力が露見するよりもずっといいと思ってしまったのだ。
――ああ、よかった。どうやら心配のしすぎみたい。
「ちょっと拍子抜けしちゃったわ。質素な朝ご飯がいつにもまして美味しく感じたもの」
「うーん、安心するのは早いんじゃない?」
ミアンは疑わしげな目を主人に向ける
「わかってるわ。幸先のいいスタートかなって思ったの」
ゆうべは不安のあまりうまく寝つけなかったのだから、少しくらい心に余裕を持ちたいというもの。
しかしながら、寝不足の頭ではろくに物事を考えられなかったのも事実で――。
ミアンが指摘した通り、バーベナは仕事先の魔法道具店に着くなり悲鳴を上げる羽目になってしまったのだ。
いつものように店のドアを開けると、カランコロンというベルの音とともに後ろのほうから声をかけられる。
「そこのきみ――」
店の主人ではない。お手伝いの子でもない。聞き慣れない声だったが、振り向かずともそれがいったい誰の声なのか、バーベナは嫌というほどわかってしまった。
「また会いましたね」
「きゃあっ!!」
低く、艶のある美声にバーベナは震え上がる。
おそるおそる振り返れば、客との打ち合わせに使う小さな丸テーブルに若い男性が腰かけているのが見えた。
ただ座っているだけにもかかわらず、姿勢一つ目線一つとっても優雅で、彼の高貴な雰囲気を隠しきれていない。
雑多な――いかにも庶民的といった雰囲気の店の隅から、場違いなほどの尊い輝きが放たれている。
さすがの店主も物言いたげな顔を向けていたが、これはいったいどういうことなのかとその場で問い詰めるような真似はしなかった。この場合、できない、といったほうが正しいのかもしれない。気の毒なほど緊張している。
――ま、まさか……!?
そう、職場に居座るこの男こそ、先日舞踏会で見かけ、そして昨日も無視を決め込んでしまったディアルムド王子その人だったのだ。
おそらく王子の従者だろうか、後ろにはニコニコと満面の笑みを浮かべる少年の姿も見える。
「な、な……なんでこの場所がっ!?」
――まさか、私のことを調べて……?
いくらなんでもバレるのが早すぎる。
動転するあまり店の主人と一緒に震えていると、さすがに焦れったくなったようでディアルムドが口を尖らせた。
「あなたに話があります」
バーベナはそこでやっと我に返り、慌てて答える。
「いえ、大丈夫です! 私にはありませんので!」
「俺は用があるんです」
「ですから、私のほうには――」
無礼だろうがなんだろうが、なりふり構っていられない。
ないです、とすげなく言おうとして、ふうん、という相槌とともに不敵な笑みを被せられた。
「命令されたいのですか? それとも……」
ディアルムドは席を立ち、バーベナのほうに歩み寄る。
「俺としては……今ここであなたの正体をバラしてもいいのですが? はたして店主は庶民のなりをしたあなたが大貴族の娘だと知っているのでしょうか?」
バーベナのすぐそばまでやってくると、ディアルムドは声を落として言った。
思わずゾッとして足が竦む。
それは、明らかな脅迫だった。
同時に、バーベナの正体を知っているという意味でもある。
――やっぱりバレていたんだわ!
逆にバレていないと思うほうがどうかしていたのだ。
「それは……」
バーベナは答えに窮し、ディアルムドの目を見返せないまま俯いてしまった。
せっかく腕を買われて働き始めたのに、平民ではなく貴族の出だと知られたら、これ以上雇ってもらえなさそうだ。
ここで揉めるのは得策ではない。そう判断したバーベナはためらいがちに口を開いた。
「わ、わかりました……ですが、仕事もありますので……その、手短にお願いできないでしょうか?」
「いいでしょう」
「え? よろしいのですか?」
今すぐにでもどこかへ連れていかれるのではないかと危惧していただけに、あっさりと頷いたディアルムドにバーベナは目を丸くする。
「勝手に押しかけてきた自覚くらいはあります。店の邪魔になるかもしれないと思うのは当然です」
「は、はあ……」
――え? 何? さっきまでは鬼気迫る勢いだったのに急にしおらしく……? 信じられないのだけど。
勝手に押しかけたとわかっているのなら、このまま大人しく帰ってほしい。
ただ人生計画を台無しにされたくないので、そのことはあえて口にしない。
そうこうしているうちに、ディアルムドが思い出したように先ほど座っていた席に戻り、テーブルの上から何かを持ってくる。
「これは、俺が温室で育てた花です」
ディアルムドが手にしていたのは薔薇の花束だ。
差し出されるがまま、バーベナはついつい受け取ってしまった。
「まさか殿……ではなく、あなた様が? 温室で……育てた?」
一瞬、バーベナの頭が真っ白になる。
「ほら、ほかに手土産もあります。好きなんでしょう? こういうお菓子が」
追加で差し出された紙袋には、なんとお菓子が入っているらしい。
バーベナはさらに首を捻った。
「え? こちらは……どこかの有名店でお買い求めになられた……ものでしょうか?」
「ムースです。昨日の晩に仕込んで、朝早起きして仕上げました」
「手作り!?」
「あなたがお菓子好きなのは知っていますよ」
「え!?」
――知っているって……どうして!?
丁寧な言葉遣いを心がけたが、最後までできなかった。
衝撃だ。いろんな意味で。ツッコミどころが多すぎてすぐに返す言葉が出てこない。
「……灯台下暗しとはよく言ったものですね。俺は一度見たものを忘れませんので」
「ええと……以前どこかでお会いしましたか? 私たちは初対面ですよね?」
「それをまだ言いますか。あのときリスのようにデザートに夢中になっていたでしょう?」
「リス?」
ということは、舞踏会でも目が合っていたのだ。
無駄だと知りながらもとぼけてみたが、ディアルムドはバッサリと斬り捨てるように言った。ふたたびバーベナのそばへ寄り、前屈みになりながら耳元で囁きかける。
「バーベナ・ウア・グロー、それでは手短に用件を言いましょうか」
小声とはいえ突然出てきた自分の名に、バーベナは心臓が跳び上がりそうになるほど驚いた。
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