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第1章
ストーカー、敵が減る。
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「ヴィオラは、闇属性についてどんなことを知ってる?」
魔法学についての基礎をひとしきり教えて貰ってた後、エディがやけに真剣な顔で聞いてきた。
「お恥ずかしながら…あまり。でも、過去の王族に1人だけいたことは知ってるわ。」
最初の王の妃。何故か歴史書にはあまり記述が残っていなかった。
「うん。初めに、僕ら闇属性は、光属性と対をなす存在だと言ったよね?」
「そうね、聞いたわ。」
人を癒し治す力と傷付け壊す力。
「実は、それは少し違っていてね…」
例の最初の王妃様は、王族の力がずっと衰えないように、人々から崇められ讃えられるような力を、王族の血のみに限定して与える一種の呪いをかけた。かなり強力な闇属性の魔法で。そうして彼女は力尽きてしまった。呪いに命の代償を払ったとされているらしい。
「つまり、光属性は呪いということ…?」
「僕もようやくここまで辿り着いたんだ。絶対とはいえないけど、光属性は闇属性の魔法が創り出したものという可能性が高い。」
なんてこった。王族が皆呪いにかかっているなんて。
じゃあ、レオン様も?
「エディ!呪いって悪いことはないのよね?」
もしも、副作用的なものがあるとしたら、レオン様が危ないかもしれない。
「それはないよ。最初の王妃…黒の王妃と呼ぼうか。彼女は純粋に王家の血を護りたかったんだろう。」
自分が死んでしまっても護りたかったのか…
ちょっと分かるけど、呪うのは考えようだな。
あれ。じゃあ、なんで?ヒロインちゃん光属性だよね。
嫌な予感が背中を撫でる。考えちゃ駄目なやつかも。
突然、教室の扉が勢いよく開いた。
「エディ!ちょっと助けろ!」
え、なんでこんなとこに、この人が?
「ジーク、この教室を逃げ場にするなって言ってるだろう?」
嫌味大魔王じゃないか。何かから逃げてきたようだ。顔色も悪い。観察してると目が合った。
「げっ、ヴィオラ・クロンキスト…」
なぜフルネーム?しかも「げっ」って化けの皮が剥がれてるよ。
「エディ!なぜコイツがここにいる!?」
「ヴィオラは僕と同じ闇属性だからね。仲悪いの?」
悪い訳じゃない。たぶん。狸と狐の戦いみたいなものだ。
「私、化け狐を好きにはなれないの。」
「同感だな。」
「なるほど。君達、素で話したことがないのか。案外気が合うと思うよ?」
まず人には疑ってかかる。でも、疑う必要のない人も沢山いる。私の場合、自分のような人が一番疑わしく感じるのだ。
「そうね。化かし合いはもう辞めましょうか、ジーク様。私はレオン様と私の仲さえ邪魔されなければいいのですわ。」
「ジークでいいさ。敬語も止めてくれ。まぁ、なんて言うか…悪かった。俺はまず何事も疑ってかかるたちなんだ。」
仲直り?みたいになったけど、敵が減るのはいいことだし、まぁいっか。あちらが素でいる分、こちらも楽になれる。
「疑いを持つことは必要でしょう?貴方は王族なんだから。」
相手が私だったことは例外だが。
「驚いた。本当に気が合いそうで笑えるよ。ただの我儘な気の強い令嬢だと思ってたんだが。」
私のどこが我儘なんだ?失礼しちゃう!
「貴方も、あの頭の軽そうなフリはやめた方が良いでしょうね。」
「はっきり言うなぁ…」
ところで。
「貴方、なぜここに?何かに追われてたようだけど?」
素朴な疑問をぶつけると、彼は決まりが悪そうに押し黙った。
「自業自得な気もするけど、君も大変だよね。毎度あんなに大勢の令嬢に追われるなんてさ。」
えぇ?チャラ男って演技じゃ無かったの?
そういえば、初めて会った時も朝帰りみたいだったし…
「アンタ、よく王族をそんな目で見れるよな。」
おっと、顔に出ていたようだ。危ない危ない。
「この際白状するが、俺は女という生物が大の苦手なんだ。」
そうは見えないけどな。
「けど、情報は欲しいだろ?だから、話を聞こうと軽い男を演じてたんだが…ほら俺、結構顔がいいだろ?それで、本気になった令嬢達に追いかけられるようになってさ。」
途中、かなりムカついたけど、事実なので否定はできなかった。本当に辛そうな顔だし、この人も苦労してんだなぁ。
「ヴィオラは大丈夫なんだ?」
確かに。私は女なのに、普通に話せてるじゃないか。
「いや、だってコイツ、俺のこと微塵も興味無さそうだし。令嬢らしくないだろう?」
失礼か。こちとら立派なレディだぞ!まぁ、この人にそんなに興味はないけど。
「あ!俺のこと好きになるとか本当に辞めてくれよ?」
やっぱり、1発殴っとくか?そこまで考えて、この人が王族だったことを思い出した。
寝言は寝てから言ってほしい。
どうやら、エディの研究の情報源は彼だったらしく、私も協力者に認定された。人前ではこれまで通りにお互いを演じ合うことも決まり、今日はお開きとなった。
レオン様と仲良くなりたいのに、他の人ばっか仲良くなっていくなぁ。それにしても、やっぱり気になるから、私もヒロインちゃんの情報を探ってみるか。
なんか、嫌な予感がするんだよなぁ。
魔法学についての基礎をひとしきり教えて貰ってた後、エディがやけに真剣な顔で聞いてきた。
「お恥ずかしながら…あまり。でも、過去の王族に1人だけいたことは知ってるわ。」
最初の王の妃。何故か歴史書にはあまり記述が残っていなかった。
「うん。初めに、僕ら闇属性は、光属性と対をなす存在だと言ったよね?」
「そうね、聞いたわ。」
人を癒し治す力と傷付け壊す力。
「実は、それは少し違っていてね…」
例の最初の王妃様は、王族の力がずっと衰えないように、人々から崇められ讃えられるような力を、王族の血のみに限定して与える一種の呪いをかけた。かなり強力な闇属性の魔法で。そうして彼女は力尽きてしまった。呪いに命の代償を払ったとされているらしい。
「つまり、光属性は呪いということ…?」
「僕もようやくここまで辿り着いたんだ。絶対とはいえないけど、光属性は闇属性の魔法が創り出したものという可能性が高い。」
なんてこった。王族が皆呪いにかかっているなんて。
じゃあ、レオン様も?
「エディ!呪いって悪いことはないのよね?」
もしも、副作用的なものがあるとしたら、レオン様が危ないかもしれない。
「それはないよ。最初の王妃…黒の王妃と呼ぼうか。彼女は純粋に王家の血を護りたかったんだろう。」
自分が死んでしまっても護りたかったのか…
ちょっと分かるけど、呪うのは考えようだな。
あれ。じゃあ、なんで?ヒロインちゃん光属性だよね。
嫌な予感が背中を撫でる。考えちゃ駄目なやつかも。
突然、教室の扉が勢いよく開いた。
「エディ!ちょっと助けろ!」
え、なんでこんなとこに、この人が?
「ジーク、この教室を逃げ場にするなって言ってるだろう?」
嫌味大魔王じゃないか。何かから逃げてきたようだ。顔色も悪い。観察してると目が合った。
「げっ、ヴィオラ・クロンキスト…」
なぜフルネーム?しかも「げっ」って化けの皮が剥がれてるよ。
「エディ!なぜコイツがここにいる!?」
「ヴィオラは僕と同じ闇属性だからね。仲悪いの?」
悪い訳じゃない。たぶん。狸と狐の戦いみたいなものだ。
「私、化け狐を好きにはなれないの。」
「同感だな。」
「なるほど。君達、素で話したことがないのか。案外気が合うと思うよ?」
まず人には疑ってかかる。でも、疑う必要のない人も沢山いる。私の場合、自分のような人が一番疑わしく感じるのだ。
「そうね。化かし合いはもう辞めましょうか、ジーク様。私はレオン様と私の仲さえ邪魔されなければいいのですわ。」
「ジークでいいさ。敬語も止めてくれ。まぁ、なんて言うか…悪かった。俺はまず何事も疑ってかかるたちなんだ。」
仲直り?みたいになったけど、敵が減るのはいいことだし、まぁいっか。あちらが素でいる分、こちらも楽になれる。
「疑いを持つことは必要でしょう?貴方は王族なんだから。」
相手が私だったことは例外だが。
「驚いた。本当に気が合いそうで笑えるよ。ただの我儘な気の強い令嬢だと思ってたんだが。」
私のどこが我儘なんだ?失礼しちゃう!
「貴方も、あの頭の軽そうなフリはやめた方が良いでしょうね。」
「はっきり言うなぁ…」
ところで。
「貴方、なぜここに?何かに追われてたようだけど?」
素朴な疑問をぶつけると、彼は決まりが悪そうに押し黙った。
「自業自得な気もするけど、君も大変だよね。毎度あんなに大勢の令嬢に追われるなんてさ。」
えぇ?チャラ男って演技じゃ無かったの?
そういえば、初めて会った時も朝帰りみたいだったし…
「アンタ、よく王族をそんな目で見れるよな。」
おっと、顔に出ていたようだ。危ない危ない。
「この際白状するが、俺は女という生物が大の苦手なんだ。」
そうは見えないけどな。
「けど、情報は欲しいだろ?だから、話を聞こうと軽い男を演じてたんだが…ほら俺、結構顔がいいだろ?それで、本気になった令嬢達に追いかけられるようになってさ。」
途中、かなりムカついたけど、事実なので否定はできなかった。本当に辛そうな顔だし、この人も苦労してんだなぁ。
「ヴィオラは大丈夫なんだ?」
確かに。私は女なのに、普通に話せてるじゃないか。
「いや、だってコイツ、俺のこと微塵も興味無さそうだし。令嬢らしくないだろう?」
失礼か。こちとら立派なレディだぞ!まぁ、この人にそんなに興味はないけど。
「あ!俺のこと好きになるとか本当に辞めてくれよ?」
やっぱり、1発殴っとくか?そこまで考えて、この人が王族だったことを思い出した。
寝言は寝てから言ってほしい。
どうやら、エディの研究の情報源は彼だったらしく、私も協力者に認定された。人前ではこれまで通りにお互いを演じ合うことも決まり、今日はお開きとなった。
レオン様と仲良くなりたいのに、他の人ばっか仲良くなっていくなぁ。それにしても、やっぱり気になるから、私もヒロインちゃんの情報を探ってみるか。
なんか、嫌な予感がするんだよなぁ。
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