ストーカー体質は異世界でも治らない

希彩(kiiro)

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第1章

ストーカー、閉じ込められる。

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閉じ込められて、数時間はもうここにいる。
本当に眠たくなってきた。アイツらは後先考えずにこんなことをしたんだろうけど、もう許す気はない。
私がいないことに誰か気づいてくれたんだろうか。

目を閉じてレオン様のことを考える。同時に思い出す前世の様々な記憶。何年も続いた奇妙な関係は私達ならではのことだろう。

凌との出会いは中学だった。初対面の印象はお互いに最悪。私は彼を愛想が悪くて暗いなと感じ、彼は私を騒がしくて頭が軽そうだと感じたらしい。つまり、お互いに「コイツと仲良くなることはない」と感じていたのだから、人生というものはわからないものだ。

なんで?と聞かれてもわからなかった。ただ気づいたら、いつも一緒にいた。たまたま3年間クラスが同じだったとか、彼の姉が部活の先輩だったとか、共通の友達が多かったとか、何となく、そうゆう理由で共に過ごした。

恋愛対象として見たことも無かった。私より背も低くて、顔もそんなに格好良いわけでもなかったし、居心地が良すぎて、恋とかじゃないと思っていたんだと思う。

私がストーカーになったのは、彼がそれを許していたからだった。友達の中で1番でいたかった。1番彼を知っていたかったし、多くの時間をすごしたかった。それが独占欲という愛と気づいたのが、高校生の頃。

高校が別々になって、お互い部活が忙しくなって、彼の成長とか、様子とか、知らないことがどんどん増えたとき、寂しいとかじゃなくて怖くなった。私の凌じゃなくなってしまうと思ったのだ。凌の中に私の居場所が無くなることはどうしようもなく嫌だった。

そこからの私はしつこかった。会いに行っては告白し振られ、遊びに誘って告白し振られ、電話を掛けては告白し振られ…諦めなかった。 彼に私は人として好かれていることに自信があったからだ。彼はそれなりにずっと私のことを特別に扱ってくれていたのだ。

彼は高等専門学校に5年間通って就職し、私は高校から大学へ進学した。住む場所が離れた時もあったけど、連絡はずっと取り合って、よく飲みに行ったりした。付き合ってはないけど、きっとそれ以上の関係だったのだと思う。

私は大学を無事卒業後、就職し社会人となった。凌の前以外では猫をかぶっていて、身なりにもそれなりに気を使っていたのが良かったのか、突然のモテ期が到来した。まぁ、彼以外を選ぶなんてことはなかったけど。

そんなこんなで、彼と出会って13年、私の告白の記念すべき500回目が訪れた。

「凌、愛してる!」

「はいはい。」

いつも通りに流されて終わると思ったのに、彼は何処からか指輪の箱を取り出して、私の顔の前で開く。

「結婚したら、ストーキングやめろよ?」
そう言った彼は悪戯が成功したような意地悪な、でも飛び切り優しい顔で笑っていた。



「あの顔、すっごく良かったんだよなぁ。」
今じゃ絶対に見られない。でも、いつか見れるといいな。次は写真撮れるといいんだけど。

ぼんやりと妄想にふけっていたのに、大きな音と共に緊張感を取り戻した。足音からして数人?助けなのか、犯人なのか、どちらにせよまだ気を失ったフリをしてる方が得策かもしれない。

「おい、まだ気を失ってるぞ。」

「起こすか?」

「いや、顔は見られない方がいいんじゃないか。」

犯人かよ。やっぱり、コイツらだったか。目的はなんなんだろう。

「今、他の奴らがウィステリアの野郎をゆすってる。」

やっぱりロイドも巻き込まれてるようだ。馬鹿じゃないのかコイツら。バレたら終わるってわかってんのか?
ロイドも馬鹿じゃないし、無理はしないだろうから安心だろう。たぶん。

もうこの際、家の力でもなんでもいいから、うまいこと解放してくれ。
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