ストーカー体質は異世界でも治らない

希彩(kiiro)

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第2章

ストーカー、手合わせする。

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「レオン様!お願いがありますの!」

別荘生活2日目。今日はレオン様も仕事のない日だ。

「…なんだ?」

「手合わせをしてほしいのですわ!」

泥棒作戦、ミッションその2。共に汗をかき、絆を深める!この時のために私は、秘密裏にトレーニング、素振りを重ね、ロイドの手を借り、体を仕上げてきた。実は私、もと運動部だったりして、スポコン魂をもっていたりする。

「本気で言ってるのか?」

「レオン様の婚約者たる者、それぐらい出来て当然ですわ!」

「…少しだけだ。」

レオン様はものすごい変なものを見る目で私を見て、心の底から溜め息をついたようだった。もちろん、私の頭の中では、すでにトム・ク●ーズが走り回っている。

動きやすい服に着替える。本当はドレスのまま戦いたかったのだが、レオン様が許してくれなかった。さあ!私と一緒に汗をかこうじゃないか!試合の緊張感を恋愛のドキドキと勘違いしてもいいんだよ?吊り橋効果的なやつ?

「魔法の使用は無し、怪我はしないように。」

簡単にルールの説明をしてもらって、木の剣を受け取る。わぁ、修学旅行で買って帰った木刀にそっくりだな。懐かしい。

「いきますわ!レオン様!」

一礼をかわし、私は先手を仕掛ける。経験は向こうが上、筋力もスピードも完封負けだ。だが、根性と意外性で勝負してやる。心には我らが松岡●造さんを飼い慣らして見せようじゃないか!熱くなければ人生じゃない!ってやつだな。

右足を踏み込み、まずは相手の剣を払う。が、レオン様は私の力を軽くいなし、懐に踏み込んでくる。今度は私が左足を踏み出し、至近距離でレオン様の剣を受ける。思っていたより重い。何とか、力のベクトルの方向を逸らし、一旦距離をとる。

「…ほぅ、やるな。」

レオン様は涼しい顔で私に感心しているようだが、私は必死に集中する。この人、まるで隙がないんですけど!?

レオン様はいいことを思いついたといったようにニヤリと笑い、一気に距離を詰めてくる。悪い顔だな!おい!

真正面からの突きを相手のスピードを利用して、後ろ向きに、円を描くようにステップを踏みながら、受けるようにはじく。その勢いを利用し、そのまま剣を逆手に持ち替え、狙うのは相手の喉。

我ながら完璧なカウンターで決まったと思ったのに、レオン様は自分の剣を空中でもう片方の手に持ち替え、私の剣を思い切り弾いた。衝撃で私の剣が手から離れ、宙を舞う。

「俺の勝…!?」

自由になった右手で相手の胸ぐら、左手で腕を掴み、背負い投げを決める。

「…痛てぇ。」

そう言いながらも、きっちり綺麗な受け身をとって、私の喉元には剣を添えている。

「負けてしまいました。」

くそぅ。いい線いったと思ったのにな。すまない、松岡さん、私負けたよ。頭の中で「おめでとう!また強くなれる!」と言ってくれている。そうだね!頑張るよ!

緊張感が解け、その場に座り込む。あー、疲れた。

レオン様が私の背負い投げで、砂だらけになっているのがなんだかおかしい。

「突然変なことを言いだすと思えば。…どこであんな技覚えるんだ。」

「こんなの護身術程度ですわ。もっと強くならないと!」

あんな背負投げ、中学校の体育レベルだ。女子の力じゃないだろ!とよく非難されたものだけど。プロレスごっことかしてたもんなぁ。

「フ、ハハッ、そんな令嬢がいてたまるか。」

私の回答が面白かったらしく、レオン様が声を出して笑った。それは、この世界で見たことのない屈託のない笑顔で。オレンジ色の夕日が金色の髪に反射して、この世の何よりも美しく見えた。

「っ!おい!?なんで泣いて…」

苦しかったトレーニングも、辛かった素振りも、こっそり潰した手のマメも、なんでもない。むしろ、やってきてよかった。なんだってこの笑顔のためになら頑張れる。そう思うと、自然と涙が溢れた。

「ふふ。レオン様のお陰で、幸せすぎて泣いちゃいましたわ!」

「…意味がわからん。」

流した汗は私を裏切らなかった。ミッションその2、完了だ!
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