感情喪失少女

紗霧 鈴

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夢李の過去

弱々しい君に私は何も言えない。

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「お前本当に男か?」
そうクスクス笑いながら彼が見下ろす視線の先に居たのは私の見知った少年…幼馴染の悠崎飴彩である……
まさかこんな再会の仕方になるなんて最悪だ。
彼はお腹を押さえ丸くなり蹲っている。
多分みぞおちをグーで殴られたって所だろう。
「はぁ……面倒くさ…」
小さく溜息を吐いて叫んだ。
「じゃあ、貴方は同じ所を同じように殴られても平気なのね?」
そう言って私は彼を助けた……

~その後~
その後は適当に投げ飛ばしてやった。
女1人に男が寄ってたかるなんて本当に男って奴はしょーもない。女も変わらんけど。
彼の手はじんわり汗ばんでいて私が少しでも力を緩めれば離れてしまうほど弱々しかった。
そんなことを考えながら彼に言った。
「現実を受けいれなくちゃ前に進めない。」
彼はポカーンとしていた。
私はもう無くしたはずなのだ。
感情も友情も愛情も何処かに忘れてきてしまった筈なのだ。
なのにどうして??
なんで彼を見ていると泣けてくるの??
どうしてなのか教えてよ。
彼は酷い間抜けズラで私を見てた。
あんなの見てて泣けてくるなんて、私の頭はきっと狂ってるんだろう。
「うっ……うわ…くっ……なんでっ…!?」
悔しい。悔しい。なんであんな奴の為に泣かなきゃいけないんだよ。分かんないよ。
自分の中でいくら答えを探しても出て来ない。
辛い辛い辛い。
独りぼっち…いつもの事……今更なのに…
彼を見ると全てが出てしまいそうになる。
弱音を吐いてしまいそうになる。
苦しい苦しい。
誰かが私を助けてくれるわけじゃない。
それでも……ただただ願った。
淡い期待が叶わぬ願いが何処かに居るかも知れない神に届くよう切実に言葉を紡いだ。
「彼の前では正直な気持ちになってしまうのなら、それ以外では偽らせて。
出来れば彼の前でも私を偽らせて。
彼は大事な幼馴染だから傷付けたくないのよ…
私は…偽りで良いから彼の前では冷酷なイメージにして。」
願った。祈った。
彼の前で正直になれば笑ってしまう。
全てを吐き出してしまう。
全て吐き出したら彼を傷付けるだろう。
もう誰も……失いたくない。
誰にも……傷ついて欲しくない…
全てを自分の中に押しこめる。
これで……良いんだ。
貴方は笑ってね。
それだけで私は幸せだよ。
だから、だからね……
私は忘れてよ……
私の本音がぽろりと呟く。
“彼に全て話せば感情は元に戻るんじゃ…?
本当は戻りたいんでしょ?我慢しなくていいんじゃないの?”
……そうだよ。
でもね……
私は感情が無い方が
幸せなんだよ。
だからね……分かってよ。
貴方は……貴方みたいな感情は……

もう私には必要ないんだってば。

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