白船亭事件考

隅田川一

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第8章

白い侍

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 稲荷千太郎は、乳井しんに伝えたとおり、各人に今後の外出等は注意するようにと各部屋を巡回した。まず、礼次郎の部屋に行き、その旨の注意をした。礼次郎は、幸一が殺害されたことに相当なショックを感じてはいたが、恐怖は感じていなかった。兄弟を含む二名の人間が殺害され、自分も狙われる可能性があるにも拘わらず、案外平気な顔をしていた。

「そもそも私が狙われているかどうかも分からないのですから、それを気にし過ぎるばかりに日頃の生活まで変えたくないですね」

 と、礼次郎は言った。

「しかしですね。気をつけて頂くに越したことはない。私はあなたが狙われていると思っています。本当に気を付けてください」

「はいはい。分かりました。気をつけましょう」

 礼次郎は、稲荷千太郎の忠告を適当にあしらった。

 その後、稲荷千太郎は紗枝の部屋に行った。娘の早紀の部屋は、被害者の幸一の隣りに位置していたため、早紀はしばらく紗枝の部屋で一緒に寝るということにしたらしい。

 稲荷千太郎が紗枝の部屋に入ったとき、早紀は疲れ果てて紗枝のベッドに横になって静かに寝ていた。紗枝の部屋は幸一の部屋とは違って、十畳程度の広さがあった。全体白船亭は木造の日本家屋であったが、この部屋と一階の応接間だけは洋室だった。紗枝が喜平に頼みこんで部屋を和室から洋室に変更してもらったのである。床は板の間で、壁はシックな柄の壁紙が貼られていた。そこにベッドと、三面鏡、洋風の箪笥が置かれていた。

「早紀ちゃんも、疲れましたよね」

「はい。私も同じです。ここに居るのが嫌になりました」
 
 稲荷千太郎は頷いた。

「たった数日の出来事ですからね。私もこのようなことは初めてです」

「娘はしばらくの間は、学校を休ませようと思っています」

「そのほうが無難ですね」

「はい」

「紗枝さん、早紀さん両名共、本当に気を付けてください。恐怖を与えて申し訳ありませんが、この家の人々は犯人に狙われている可能性があります。幸一さんが最後とは限りません」

「その辺のことはよく分かりませんが、昼間の買い物以外はなるべく出ないようにします」

「その方がよろしいかと・・・」

 少しの間、沈黙が続いた後、紗枝が口を開いた。

「ところで稲荷さん」

「はい」

 紗枝はかしこまって稲荷千太郎に聞いた。

「犯人は誰なのでしょうか?目星はついているのでしょう?」

「いえ、まだ目星はついていません」

「土井という人?それとも幸二さん?」

「全く分かりません。ただ・・」

 と、稲荷千太郎は一瞬言葉を詰まらせた。

「ただ?」

「ただ、この事件の犯人は、どうも我々の頭を混乱させようと考えていますね。そう感じます」

「頭を混乱?」

「はい」

「どのように?」

「つまり、犯人は、こちら側に色々な可能性があるということを感じさせようしています。それが見事に成功している」

「と、いうことは稲荷さんとしては、犯人は土井でも幸二さんでもないと?」

「まだ分かりません。第一義的には土井か幸二さんでしょう。しかし第三者が犯人である可能性もあるということですね。色々な可能性を残している」

 紗枝は、不安げで困惑した顔つきをした。紗枝は小綺麗な女性で和服の似合う日本的な顔立ちをしていた。その凛とした顔つきが、いざ不安になると、本当に弱々しく見えた。

「私、怖いです」

「はい。本当に怖いと思います。だからこそ、外出には十分に気を付けてください」

「はい。ありがとうございます」

「ときに、紗枝さん。もしも早紀ちゃんが不思議な夢を見たら私に教えて下さいませんか?」

「えっ?」

「先ほど聞いた予知夢のような不思議な夢です」

「稲荷さんは、早紀の話を信じるのですか?」

「もちろんです。私は、色々な不思議な事件に遭遇しています。過去にも不思議な体験はたくさんありました。だから私は信じますね。人の中にはたまに不思議な能力を持っている人も居ますよ」

「早紀がその話を聞けば喜びますよ。何せあの子は、友達からも気持ち悪いと言われたこともありますしね。自分としては、そんな能力を持っていること自体が嫌なようです」

「それも分かる気がします」

しばらく沈黙が続いた。

「それでは、私は失礼します。くれぐれもご注意を」

 稲荷千太郎は、紗枝の部屋から退室した。

早紀は、よほど疲れていたらしく、稲荷千太郎と紗枝の話声などを気にせずに小さないびきをかいたまま寝ていた。稲荷千太郎は、早紀を起こさないように静かにドアを閉めた。

 稲荷千太郎は、仮に使わせてもらっていた自分の部屋に入った。廊下の南側から幸一、早紀、紗枝、礼次郎の部屋が並び、礼次郎の部屋がちょうど、北側の突き当たりの位置であった。建物はほぼ一周できる構造なので、北側突き当たりの礼次郎の部屋を左に曲がると、更に部屋が続いていた。稲荷千太郎が寝泊まりしていたのは、礼次郎の部屋を左に曲がった一つ目の部屋だった。そして、稲荷千太郎の部屋の更に隣りの部屋が乳井しんの部屋で、その更に隣りが乳井しんの息子の新吉の部屋だった。

 稲荷千太郎は、流石に疲れたらしく、その日はヨレヨレの背広姿のまま蒲団を敷いて、そのまま寝てしまった。稲荷千太郎の口からは巨大なイビキが流れていた。

 白船亭は臨時休業となった。たまたま予約の団体客がなかったため仕事上での大きなトラブルは生じなかった。喜平は、白船亭の正面の観音開きの大きな木製の扉を閉めたままで、そこに臨時休業と書かれた紙を貼った。臨時休業の日数は三日間であった。

 従業員も臨時休業ということで、それぞれ帰宅させた。従業員の全員が、幸一が殺害されたことを知ると、驚きの表情を見せ、そして悲しみ、恐怖した。喜平が出勤した従業員にこのことを説明し終ると、その説明を受けた従業員はトボトボと家路に向かった。
 
 村越警部一行は、既に警察署へ戻っていた。

 翌日、稲荷千太郎は、夕方まで自室にこもって何やら考察していた。そもそも、何故、自分がこのような複雑な事件に巻き込まれてしまったのかである。まず、白船喜平が自分の事務所へ来て遺言書の作成を依頼した。次に土井宗次郎から送られてきたと推測される脅迫状が届いたことで、自分にガードマンの役目を依頼する。その後、喜平ではなく、戦友かつ友人の渡辺新造が殺害され、その後に、白船家の長男の幸一が殺害された。大まかに言うと、このような出来事が時系列で生じた。稲荷千太郎がここからキーワードを導いたのは、遺言書と脅迫状である。

 しかし、遺言書と脅迫状を結びつける要素はなかった。遺言書、脅迫状と言う言葉を何度も稲荷千太郎は呟いた。しかし、この二つのキーワードと殺人を結びつける関連は見出すことはできない。

 稲荷千太郎は、次に密室において幸一が殺害された件について、幸一の部屋の簡単な平面図を自分で描いてみた。当初、稲荷千太郎は合鍵を利用した犯人が部屋に入り幸一を殺害したのではないかと推測しているが、犯人が捜査を混乱させる目的で密室殺人を実行した可能性も否定できないと少し考えを変更させた。

 稲荷千太郎は、事務所から持参した便箋に鉛筆で線を引いた。

 幸一の部屋のドアを開けると、まず正面に窓がある。その窓の前に文机が置いてある。ドアを開けて正面にある窓の方向を見た場合に、左側に腰高程度の物入れがあった。また、右側は蒲団を仕舞うための押入れがあった。非常にシンプルな和室であった。事件当時の様子を回想すると、文机には作りかけの飛行機の模型が置かれていた。おそらく幸一は、日常的に座布団に座り、窓の外を見ながら、模型を制作していたのだろう。幸一が倒れていた様子では、座布団に座っていたであろうと推測される。彼が倒れていたのは、その座布団辺りの位置だった。文机の右側の引き出しは中途半端に開けられていた。部屋の天井には無数の金属製のホックが括りつけられており、そこには紐を利用して完成している飛行機の模型が飾られている。ただ、飛行機の模型の数よりも金属製のホックの数の方が多かった。そして、部屋の鍵は掛っており、いわゆる密室状態であった。

 稲荷千太郎は、なぜ犯人が密室状態を作り出したのかを考察するのを断念した。この時点ではその理由が全く想像することが出来なかったからである。その代りに、密室殺人をどのように行ったのかを先に検討することにした。この時点においては、稲荷千太郎が幸一の室内で特徴的なことをピックアップしたのは、窓の外に庭の木があること、天井に金属製のホックが無数あったこと、文机の引き出しが半分開いたままであったことの三点である。しかし、このいずれもが密室殺人を行う道具であるとは到底思われなかった。また、凶器は短刀であったが、その短刀の柄は外され、裸身の状態だった。そして、目釘穴の付近には剥がれかけたガムテープが付着していた。この凶器の状態についても、不可思議ではあるが、どのような利用をされていたのかは全く不明であった。稲荷千太郎は、これらのことについて、室内に籠って考えた。

 時刻は、夕方の五時を周っていた。稲荷千太郎は、疲れ目を擦って、大きなあくびをすると思考を止めた。

 稲荷千太郎は、ふと「熱燗」という屋号の居酒屋を思い出した。

 幸一が、友同会という交流会で良く行く居酒屋である。時間的にも、店の人間が出勤している頃だろうと思われたため、稲荷千太郎は、その「熱燗」に行ってみることにした。幸一殺害に関する何らかの情報を得られるかもしれないと思ったからである。

 稲荷千太郎は、白船亭を出た。白船亭から北側へ三十メートル程度行くと、雷門通りがあり、そこを東側へ右折して、しばらく歩くと、浅草寺の雷門がある。雷門を超えると仲見世で、その突き当たりが浅草寺であるが、「熱燗」は、その浅草寺の裏手にあるという話だ。

 夕方の六時を過ぎれば、仲見世も人通りが少なくなり、土産物屋も閉まり始めている。 
稲荷千太郎が、ここを通った時間は、五時半だった。参拝客が最後にひしめき合う時間帯で、仲見世は人々でごった返していた。

 浅草もこれだけの人気があるのだから大した街だな、と稲荷千太郎は思った。しかし、何も浅草は、浅草寺だけの街ではない。少し前までは芝居や演劇を中心とした芸能活動も盛んだった。有名な喜劇役者も多数輩出した。そういえば、乳井しんの長男の新吉も劇団に所属している役者だったな、とそのことも思い出した。

 仲見世を突き当たると浅草寺の本堂が見えて来る。「熱燗」は、本堂を突き当たって、左側に周り込み、浅草寺の真後ろに行って更に二百メートル程歩く位置にある。

 稲荷千太郎は、本堂付近で立ち止まっている若い男女達をすり抜けて本堂の左手に周った。しばらく行くと、土井が泊った「浅草旅館」と、短刀を購入したと思われる刀屋が見えてきた。

 昨日、ここに来たばかりだな、と稲荷は思った。この事件のここまでの特徴は、その目まぐるしさにあった。検視の結果はまだ分からないが、渡辺新造が殺害されたのは、その遺体の状況から判断して、死後さほどの時間しか経過していないものと予想された。そして、その渡辺新造の殺害に関して調査をしている矢先に幸一が殺害された。普通で考えると。あまりにも慌ただしい連続殺人事件である。

 ということは、犯人はこの近くにずっと居なければおかしいし、まだこの周辺に居て第三の殺人の機会を狙っている可能性が大きい。
稲荷千太郎はそう考えていた。

 浅草旅館を超し、浅草寺の背後に周って、稲荷千太郎は「熱燗」に着いた。「熱燗」はこじんまりした小さい居酒屋だった。店主とその細君が一緒に働いていた。五人程度腰かけることが出来る木製のカウンターと丸椅子、そしてテーブル席が一つという規模の純粋な和風の居酒屋だった。

「ごめんください」

 と、稲荷千太郎は「熱燗」の引き戸を開けた。

「はい。いらっしゃい、と言いたいところだけど、申し訳ないが六時からの営業です」

 店主は、カウンターの中におり、仕込みの最中だった。何かを千切りにしている途中で、それを切りながらそのように言った。

「え?」

 稲荷千太郎は腕時計を見た。五時五十分だった。

「実は、客ではないのです」

「何かの押し売り?」

「いえ、白船亭の者と言うか、居候とでも言うか、そんな感じの者です」

 店主は、稲荷千太郎の風貌を下から上まで眺めた。

「そうですか。白船亭さんの・・・。ところで何のご用件ですかね?」

「実は幸一さんの件で・・・」

「幸一さんですね。よく存じていますよ。毎週と言ってよいと思います」

「その幸一さんが・・・」

 言いかけたところで稲荷千太郎は一瞬、ためらったが、店主の顔を見つめながら静かに語った。

「幸一さんが亡くなりました」

 店主の形相が変わった。驚きの表情を見せた。

「ま、まさか。幸一さんが」

「そのまさかなのです」

「数日前に来たばかりですよ。それで何の病気ですか?まさか事故?」

「実は・・・」

「実は?」

「幸一さんは、昨日、殺害されました」

 店主は目を丸くして、叫ぶように言った。

「まさか。まさかそんなことが。そんなことはあるはずがない」

「ところがあったのですよ。そこで、私がこちらへ、最近の幸一さんの様子とかを聞きに来たのです」

 店主は、しばらく呆然としていた。

「本当に幸一さんが殺されたのですか?」

「はい。本当なのです」

「しかし、どんな風に殺害されてしまったのですか?」

 稲荷千太郎は一呼吸置いた。

「自室で刺されました」

「あああ・・・」

 店主は、残念そうな表情をしながら驚きの声を上げた。

「信じられない」

「そこでお聞きしに来ました。幸一さんは誰かに恨まれているような雰囲気がありましたか?」

「ないですね。私の記憶ではそういうことはありません」

「そうですか?幸一さんは、いつも同じような人とこちらで飲んでいたのですか?」

「そうです。友同会の仲間だったり、学生時代の地元の友人とか、そんな人々ですね」

「一回でも良いのですが、今まで見たことがないような人間と飲んでいたことはありませんか?」

 店主は、一点を見つめながら、しばらく思い出した。

「そういえば、数回ありますね。思い出しました」

「本当ですか?そ、それはどんな人でしたか」

「はい。特徴がありましたので、考えたら直ぐに思い出せました」

「特徴?」

「片腕がなかったのですよ。その人は」

 稲荷千太郎の予感していたことが当たった。

「片腕がない?」

「はい。特徴がありましたから良く覚えています。何しろ幸一さんの話だと、その人は親戚だと言っていました。確かに顔も幸一さんに似ていましたしね。年も幸一さんに近い感じでした。そう、まるで双子のようでした。ただ、片腕の無い人は幸一さんと比べて垢ぬけてないというか、老けているというか。そんな感じだったので、顔はそっくりでも幸一さんよりも少し年配に見えました」

「そ、そうですか」

 稲荷千太郎は、うれしそうに鼻毛を抜いた。

 店主は稲荷千太郎の仕草を見て、嫌悪感を示した。

「それはいつ頃の話ですか?」

「そうですね。直近では半年くらい前ですかね」

「どんな会話をしていたか、少し聞こえたりしませんでしたか?」

 店主は、仕込みを一時中断して、稲荷千太郎の顔を見た。

「そういえば、あの人は幸一さんに、悪いな、と言って金銭をもらっていましたね。封筒に入っていましたが、あの中身は金銭ですね。封筒の中を覗き込んで中身を確認していましたから」

 それが幸二だとすれば、ここまでの話は幸一が言っていた通りだった。金銭を要求しに幸福に何不自由なく育った幸一の元へ現れていたということは、幸一の聴取から稲荷千太郎は分かっていた。幸一は幸二の口座に金銭を振り込んだことがあると言っていたが、現金を手渡したこともあったようだった。

「先ほどの繰り返しになりますが、その人と幸一さんは何らかのトラブル的な会話をしていませんでしたか?」

 稲荷千太郎は、その辺については、しつこく聞いた。

 店主は再び、一点を見つめて稲荷千太郎の質問に対して考え込んだ。

「トラブルと言うほどの会話でもなかったのですけど、一風変わったことを言っていました」

「誰が?」

「その人が幸一さんにです」

「何と言いましたか?」

「買い取れ、とか言っていましたね。何のことやらと、思って気になって聞いてしまいました。刀を買い取れとか・・・」

「刀?」

「名刀だから高く買い取ってくれ、と何回も迫っていました」

「そ、そうですか?それで幸一さんは、何と?」

「そんな金はないから買うことはできないと言いました。すると、その人が自分は金がなくて困っている。だから、買ってくれと引き下がりませんでした。幸一さんは、ならば骨董商にでも売れば良いだろうと勧めていましたが、その人はそのようなことは出来ないと言いました。その言い方は、かなり強い口調でした」

「他に覚えていることは?」

「あとはありません」

 稲荷千太郎は、店主に丁重な挨拶をして、その店から出た。

 幸二と推測される男が幸一に買い取ることを要求したのは「村正」だろうと推測ができた。幸二の母親である恵美子が喜平の元から消えた時に持ち去った「村正」しか考えられない。相当高額で売買されているものだから、幸一に買い取ることを要求しても、そう簡単に買い取ることはできないだろう。

 稲荷千太郎は、トボトボを来た道を白船亭に引き返した。

 その後、数日が経過した。稲荷千太郎は、一旦、自宅兼事務所へ戻り、再び白船亭に戻ってきた。そして、それから更に三日が過ぎていた。

 村越警部等の警察組織は、そのまま方々へ捜査を行っているため白船亭には、ここ数日間は来なかった。白船亭は、確かにその後は何事も起こらなかったため、静まり返っていた。しかし、ただ静かだったわけではなく、人が殺害されたという事実と、これから更に事件が起きるのではないかと言う静かな恐怖のほうが勝っていた。

 稲荷千太郎は、ここ数日間、今回の渡辺新造、幸一の二者が殺害されたことに関しての疑問と論点を整理した。

 まず、容疑者を土井宗次郎、幸二の二者に設定した。もちろん、この二者以外の第三者の可能性もあるわけだが、それは現在のところ検討も付かないわけであるから、彼はひとまず、容疑者をこの二者に絞って考えた。

 そして、重要な疑問を列挙した。

 一、土井宗次郎は生きているのか死んでいるのか?

 二、幸二は生きているのか死んでいるのか?

 三、白船喜平と渡辺新造の両名に脅迫状を送りつけてきたのは誰か?

 四、渡辺新造、白船喜平、白船幸一の三名に何らかの恨みを持つ人間は誰か?

 五、旅館に宿泊し、骨董屋で短刀を購入し、クリーニング屋の前をうろついていた人物は犯人か?

 このように整理してみると、土井と幸二の共通点は、それぞれ右腕がないこと、白船家を恨んでいることである。しかし、重要な部分で良く分からないところがある、四番目にメモした、「三者に恨みを持つ者」である。この点、土井宗次郎は、戦地での出来事があり、渡辺新造にも恨みがあり、喜平にも恨みがある。そして、白船家という単位では、白船家全体に恨みを抱いても不自然ではない。三者に恨みがあると言っても過言ではない。

 幸二はどうだろうか?稲荷千太郎に分からないのは、幸二が犯人だとすれば、渡辺新造を彼が恨む理由が思い浮かばなかった点である。生前の幸一の話では、幸二に会ったときに、幸二は渡辺新造に対して「あんな奴は死ねばいい」と、言っていたという話であった。しかし、それが渡辺新造を殺害すると言うまでの動機かどうかも不明であるし、何の恨みがあってそのような言葉を残したのかも理由が分からない。

 また、順番は前後するが、喜平の元へ来た脅迫状には、喜平と土井にしか分からないキーワードがあった。それは「きの字」という喜平のニックネームだった。喜平の言うところ、このニックネームは自分と土井と渡辺新造の三者にしか分からないものであった。戦時中のみに上官の土井から呼ばれていたニックネームであり、それを幸二が知るはずはなかった。

 現在のところは、土井が犯人である可能性が高い。しかし、尚も稲荷千太郎の頭の中は迷っていた。次の殺人が有り得るからである。動機と犯人の予想が出来なくては、もしも次に殺人があるとしても、それを阻止しにくくなる。

 既に起きてしまったことも重要ではあるが、稲荷千太郎は、もしも次の殺人があるとすればそれを食い止めるしかない。むしろ、関心はそちらへ向いていた。

 稲荷千太郎は、横になって天井を見つめていた。そのとき、ドアを誰かがノックした。

「どうぞ」

 稲荷千太郎が言うと、ドアが開いた。乳井しんが立っていた。

「稲荷先生。村越警部がお見えです。お話があるそうですが」

「えっ。村越警部が?そうですか。どうぞ、部屋まで通して下さい」

 そういうと、数分後に乳井しんは村越警部を連れて再び部屋に顔を出した。乳井しんは稲荷千太郎に一礼して、その場から離れた。

 村越警部は、少し笑みを浮かべながら部屋に入ってきた。稲荷千太郎は、横になった姿勢から起きあがったが、そのまま蒲団の上に座った。

 村越警部は、その稲荷千太郎の側に腰を下ろした。

「ときに、稲荷さん。なかなか窮屈な部屋ですな」

「まあ、こんなものでしょう。居候ですからね」

「居候ですか?」

「そうです。居候でも報酬をもらっていますよ。十分過ぎるほどの・・」

「そうでしたな。しかし、稲荷さん。あんたは、代書なんかしていないで、探偵でもやった方が良いですよ。きっと、そのほうが儲かります」

「そうですかね。まあ、この事件が解決できたら考えますわ」

 と、言うなり稲荷千太郎は笑った。

「村越さん。今日は何かありましたか?」

「そうそう。こんな世間話をしている場合ではなかった」

 何の話だろうと、稲荷千太郎はかしこまった。

「実は、いくつかのことが判明しました。渡辺新造さんの死亡推定時刻ですが、稲荷さんと白船さんが渡辺新造さんのお宅へ伺って、その遺体を発見した日の前日の午前中に殺害されたと見てよい。それから死因ですが、見た通り、はがい絞めをした後に首を掻き切ったと思われます。背後から、そのようにしたのでしょう。そして、その後に首を切断して、あのような惨たらしい光景を演出したわけです」

 稲荷千太郎は、村越警部の話を聞いてしばらく黙っていた。

「その刃物は、やはり短刀とか脇差のようなものでしょうかね?」

「そうですね。あの狭い場所で日本刀を振り回すことは出来ないでしょう」

「確かにそうですね。そういえば、幸一さんの脳天に短刀が突き刺さっていましたが、その短刀との関係はどうでしょうか?」

「それも調べました」

「で、どうだったのですか?」

「やはり、片腕のない男が浅草の骨董屋で購入した物でしたな」

 村越警部は苦々しい顔でそう言った。

 稲荷千太郎はその話を聞いても落ち着き払っていた。そして天井をしばらく見つめて。

「村越警部。まずはこの事件の犯人は土井宗次郎ということで話を進めて行く必要があります。浅草旅館に宿泊して宿帳に氏名が書かれていたのは土井宗次郎でしたし、刀を買ったのもおそらくはその男です。普通なら土井宗次郎ということになる」

 村越警部は大きく頷いた。

「そして、この土井宗次郎が短刀を買ったとなれば、それは使うしかない。なぜなら使わないのなら刀を買う必要がないからです」

 村越警部は、稲荷千太郎が話終えたところで、

「ときに稲荷さん。幸二さんの件ですが・・・」

「幸二さんの件?」

「そう。幸二さんの件です。幸二さんの住所を調べて、家の若い者に命じて捜査させたのです。栃木県の佐野でした」

「佐野?」

 稲荷千太郎は、沈黙して何かを考えていたようだった。

「それで署の方は幸二さんに会ったのですか?」

「いや、それが・・・」

 と、村越警部は一瞬声を詰まらせた。

「いや、それが行方不明でした」

「えっ?行方不明?」

 村越警部の話によると幸二は、白船幸二という名前で戸籍に記載されていた。そこから住所を追いかけた結果、幸二は栃木県の佐野市に在住していることが分かった。部下の米田刑事に早速、佐野の幸二の元へ行くように命じた。そして、米田刑事は佐野へ向かったわけであるが、やや呆然とした表情で帰ってきた。

 米田刑事の話によると、幸二の住所は佐野厄除け大師から程なく近い場所の貸家であった。木造トタン葺きの平屋建てが練担している場所であった。道路といっても私道で、道は舗装されておらず、砂利道だった。そういう場所に、平屋の貸家が並んで建っていたというわけである。その平屋建ての家は二十軒ほどあり、幸二の住んでいる家はそのちょうど真ん中辺りだった。

 米田刑事が、その家の前に立ち、玄関をノックしても誰も出て来ない。ちょうど、仕事をしていれば休みだろうと思い、米田刑事は日曜日に出かけた。しかし、その的は外れ、幸二は米田刑事が訪問したときには居なかった。そこで、米田刑事は、隣の家の住人を訪ねて、いくつかの情報を聞いた。

 隣の住人は初老の婦人で一人暮らしをしていた。見た目にも決して裕福とはいえない。そもそも、この貸家群は、貧困の人が借りているということを平然と初老の婦人は話していた。そこで、米田刑事が幸二のことを婦人に尋ねると、「そう、お隣さんは、片腕がないでしょう。だから、ろくな仕事にも就けなくなってしまったのね。凄く可哀想な人だよ」と、言った。そして、続けて「あの人の母親は自殺したっていう話だよ。その後に、あの人はここに引っ越してきた。私はその当時からここに住んでいるからね。私の方が古くからの住人と言うことになるわ。そうそう、それであの人が引っ越してきた時は既に片腕がなかった。随分悪いことでもしたのだろうと勘ぐっていたけど、話によると工場の事故で腕を失ったっていう話でね。何をやるにしても、なかかな難しい。気が付いたら、家でゴロゴロと過ごす姿のほうが目立ち始めたってわけ」と言った。

 米田刑事は、日曜日に来なくても幸二に会えた可能性があると思って、そのことを婦人に聞いた。すると、婦人は、ここ一カ月程度、幸二は自宅に帰ってないということを言った。

米田刑事は、あせりをその時に感じた。

 米田刑事は婦人から、ここに並んでいる貸家の大家の住所を聞いた。とりあえず、大家からも何らかの幸二に関する情報を得ようと考えたからである。大家は、その場所から十分程度歩いた場所にあった。流石に複数の貸家を所有しているだけあって、家主の家は豪農という雰囲気が漂う立派な家であった。米田刑事は門をくぐると玄関先に立った。声を掛けるとしばらくすると小太りの六十歳程度に見える男が出てきた。米田刑事が幸二を探していることを告げると、家主は「あの人が何かなさったのですか?」と聞いてきた。米田刑事は、決してそうではなく、ある事件に深く関係している可能性がある、とだけ言った。

 家主が言うには、今月の賃料がまだ支払われていない。今月の滞納分を含めると既に四カ月分の賃料が支払われおらず、困っているということだった。幸二の行き先について、心当たりがあるかどうかを聞いたところ、全く覚えがないと言う。

 その話を聞くと稲荷千太郎は黙り込んだ。

「そうですか。ということは、幸二さんは行方不明ということですね」

「そうです。ただ・・・」

「ただ?」

「その家主が言うには、幸二さんが行方不明になったことに関するあてはないものの、少し気になることがあると言っていたそうです。」

「気になること?」

 村越警部は、間髪いれず、

「幸二さんの元にはほとん来客はいない、と思っていたのですが、一年ほど前に見知らぬ男性が幸二さんの家に居たそうです」

「見知らぬ男性?」

「つまり、幸二さんの家に、家主は毎月家賃の催促へ行くらしいのですよ。ほとんどは何とか回収できているらしいですが、ここのところ数カ月分の滞納が累積されていたらしい。家主は、何年もかような催促と集金に行っているらしいですが、来客は初めて見たそうです」

「しかし、それは偶然であって、家主が幸二さんの住まいに毎日通っていたわけでもないのでしょうから、幸二さんの元に来客がいても全く不思議ではない」

 と、稲荷千太郎は言った。

「まあ、それはそうでしょうね。しかし、それを言ってしまっては、何も始まりませんね。そう、まだ話は残っています」

 稲荷千太郎は、いささかガッカリした顔をしていたが、村越警部の話を引き続き真剣に聞いた。

「家主が幸二さんの家に行ったその時、家主はノックもせずに、幸二さんの家の扉を開いたそうです。その貸家は、家賃も安いので、ドアを開くと正面に四畳程の居間が見える。そこに、男が座っていたらしい。何事か、幸二さんと言い争いになっていたのか、激しい口調の会話をしていたらしいです」

「ど、どんな男ですか?そしてどんな会話を?」

「慌てないでください。今説明します」

 村越警部は、落ち着いていた。

「その男は、幸二さんに、お前は悔しくないのか、復讐しなくて良いのか、というようなことを大きな声で言っていたらしいです。家主の話だと、それほど年配の男性ではなかった、ということですね。三十代又は四十代というイメージです」

「家主は顔を見たのですか?」

 村越警部は残念そうな顔をして、

「それが見てないのです。黒いコートを着ていて黒いスボンを履いていた、ということは覚えていましたが、その男は家主が立っていた玄関の方には振り向かなかったそうです。家主に対しては、幸二さんが玄関先まで慌ててやって来て、今日は都合が悪いから明日来てくれと言ったそうです」

「そ、そうですか」

「稲荷さんは、このことについてどう思われますか?」

 村越警部は、稲荷千太郎に質問を投げかけた。稲荷千太郎は、急にニコニコしながら、嬉しそうに鼻毛を抜いた。

「もしかすると、ですが・・・。その男は事件に関係しているかもしれませんね。まず、家主が来ても振り向かないというのは、顔を見られたくない、という心理の現れかもしれません。そして、復讐と言う言葉も普通は使わない言葉ですしね」

「し、しかし、その復讐って何のことですかね?」

 村越警部は稲荷千太郎の顔をまじまじと見た。

「復讐の意味は分かりませんよ。幸二さんの私生活も全く知りませんしね。もしかすると幸二さんは、複数人の人間を恨んでいるかもしれない。ただ、言えることは、その恨んでいる人達の中に白船家が混じっていることは確かかと思います」

「それは分かるが・・・」

「実際に殺された幸一さんの所へお金を無心に来ていますし」

「それも分かる。しかし、幸二さんの家に来ていた男は?」

 村越警部はイライラしていた。

「それは誰だか分かりません。しかし、三十代から四十代程度の男が来ていたこと、その後に幸二さんは居なくなったこと。この二つは事実です」

「しかし、その男と幸二さんの関係が分からない限り、何とも言えませんな」

 稲荷千太郎は大きく頷いた。

「もちろんです。私が言いたいのは可能性です。幸二さんは行方不明なのですよ。その男が来た後に失踪した。何らかの事件性がああるとは思えませんか?」

「そうですね。あらゆる可能性を追求しないとこの事件は解決しませんな。難しくて頭が混乱していますよ」

「私もです。全く分かりません。こういう事件のときほど急がば周れをしないといけませんね」

 二人の間で沈黙が続いた。二分程度経った頃だろうか、稲荷千太郎の部屋のドアを誰かがノックした。

「はい。どなたですか」

「紗枝です」

「紗枝さんですか?どうぞ」

 稲荷千太郎は何事があったのかと驚いた。紗枝がドアを開けた。そこには、早紀も一緒だった。

 紗枝は、村越警部が室内に居たのを見ると、いささか驚いていたが、ニッコリと笑って、会釈をした。

「警部さんが居ますが大丈夫ですか」

 と、稲荷千太郎は紗枝に言った。

「はい。大丈夫です」

「早紀ちゃんも一緒に・・・。どうかしましたか?」

 紗枝は早紀のほうを見た。早紀は緊張して黙って突っ立っていた。

「この子が夢を見たのです」

「見た?」

 稲荷千太郎は、早紀の方を見て言った。

 早紀は、直立したまま、やや下向き加減で軽く頷いた。

 村越警部は、興味を示してはいないようだった。夢の話などしていられない、というのが本音だろう。

「早紀ちゃん。どんな夢を見たのかおじさんに教えてくれるかな?」

 稲荷千太郎は、子供相手だけに優しい目線で早紀に聞いた。

「片腕のない男の人が現れたの」

 早紀は、その夢を思い出したのか、顔が恐怖で強張っていた。紗枝はそんな早紀の肩を抱き寄せた。村越警部は、早紀の夢については興味がない素振りをしていたが、片腕のない男と聞いて、態度を変え、早紀のほうを見た。

「片腕のない男の人?前に見た黒いコートの人と同じ?」

「そうじゃないの」

「え?」

「そうじゃなくて、侍の人」

 稲荷千太郎は、一瞬焦った顔つきをした。

「え?侍?」

「うん。侍」

 稲荷千太郎と、早紀の会話を聞いて、村越警部は、この話に興味を失った。がっかりした面持ちに戻った。侍の夢を見たというのは、予知夢等ではなく、一般的な夢に過ぎない、と感じたからだろう。

 しかし、稲荷千太郎は、真剣にその話を早紀から聞き出そうと試みた。

「早紀ちゃん。それはどんな侍だったの?」

「うん。白い着物っていうのかな。それに帯を締めていて・・・。片腕のない男の人で刀を左手で持っていたの」

「刀はどんな状態?鞘に入ったまま?」

「いいえ。刀を抜いた状態で。それを片手で持っていて、ニヤニヤ笑っていたの。それが怖くて、気持悪くて、夢から覚めてしまったのです」

「他にその侍は、何かを話したり、動いたりしなかった?」

「うん。しなかった。ただ、笑っていただけ」

「そ、そうだったのだね」

 そこで今まで沈黙していた村越警部が早紀に質問した。

「顔は?顔は覚えているかね?」

「いえ、覚えていません。おぼろげなのです」

「しかし、たった今、ニヤニヤしていて気持ちが悪いと言ったばかりではないかね?」

 と、村越警部は優しく語った。

「はい。でも、それはイメージなのです。厳密には顔は覚えていないし、おぼろげなのです」

 村越警部は、

 「ありがとうね。参考にさせてもらうよ」
 
 と、言った。
 
 稲荷千太郎は、村越警部とは違い、かなり真剣な顔つきをしていた。

「早紀ちゃん。本当にありがとう。警察の村越警部も参考になったらしいよ。また、次に夢を見たらおじさんに教えてくるかい?」

 早紀は、ニコニコして、

「はい。もちろんです。でも稲荷さんに役立ったかしら?」

「あぁ、凄く役に立つ情報だよ。侍の格好をしていたのだね。しかも、白い着物だったわけだね」

「そう。覚えておいてね」

 早紀と紗枝は稲荷千太郎の室内から退室した。
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