幸せ望んでいいですか?〜三度目の正直〜

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序章

前世

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 日本で安藤エリとして生を受けた。物心ついた時から、家の中は荒れていて、汚かった。
「お前なんか産まなきゃ良かった!」
「醜い顔を見せないで。」
何度も母親に言われ、叩かれ、物を投げられた。父親はいなかった。

 少しでも身を守るために部屋の隅に縮こまって、存在を消した。それでも身体には痣が増えていった。

 母親は家に帰って来なくなり、空腹で倒れた。はっきりしない意識の中、誰かに抱えられてどこかに運ばれていたような気がした。

 起きたら病院で治療を受けていた。栄養失調と脱水症状で後少し遅かったら死んでいたらしい、としばらく時が過ぎた後に知った。

 それからは児童保護施設で暮らすようになって、学校にも通うようになった。
今まで話したこともなく、同い年の子にも会ったこともなかった私にとって、そこは未知の世界だった。
喋らない私はクラスで浮いていて、俯いてばかりいた。

「下ばかり見てて気味が悪い」
「親に捨てられた奴」
「キモチワルイ」
「ブス」

 クラス中からは避けられ、陰口ばかりで早々にイジメられた。幼いながらにも私は、ここでも存在を許されないんだ。と感じた。

 どこにも自分の存在を許してくれる場所はないと思い、施設でもただただじっとして、部屋の隅で身体を小さくしていた。友達だなんて出来なかった。

 小学校高学年にもなってくると、私を取り巻く環境は少し変わって、
男子からはあまり避けられなくなった。その代わりに、今までと全く違う視線を送られるようになり、それがすごく嫌だった。

 女子からはいじめは陰口だけじゃなく、直接的なものになった。教科書を隠されたり、机に"ブス"、"ぶりっ子"だとか容姿を貶めるようなことを油性ペンで書かれたりした。

 施設では、ただただ距離を置かれた。
私からも壁を作っていたし、仕方のないことだと思う。話しかけられても何を返せばいいのかわからないし、醜い私は人と関わっちゃいけない。と思っていた。

 中学生になっても学校でのイジメは終わらなかった。周りから避けられることは変わらないものの、視線は日々感じた。

男子には、やたらと私の近くで喋り通す人もいたりして、誰に話しかけてるのかわからないけど、うるさかった。顔を向けることもなく本を読んでいたり、授業の予習をしてたりしてたら、急に

     ーダンッ

って、私の机を叩いて大声で何かを怒鳴っていなくなったり、ボソッと何かを呟いていなくなってたり、意味がわからなかった。確か
「無視するんじゃねーよ!ブス!」
「お前みたいなブスに話しかけるかよ!」
とか、言われてた気がするけど全く理解できなかった。まず、私に話しかけてたのか誰に話していたのかが結局わからなかった。でも、ブスと言ってるから、私なんだろうな。と思った。

 そういうことがある度に女子からは何人かで囲まれて、
「男子から話しかけられるからって調子に乗るな」
「かわいこぶってるんじゃねーよ」
とか言われた。係の仕事は押し付けられて、1人で掃除をしたり、教科書以外にも筆箱とかモノもすぐになくなった。
その行動の原理が全く理解できなかった。

 たぶん私は他人の感情がわからない。
私に対しての悪意はわかる。でもそれだけ。それ以外は全くわからなくて…
女子からは悪意を向けられている。でも、理由はわからない…

 そんな私だから余計にクラスの子のイラつきは増していったんだろうと思う。
中学2年生の冬、午後の体育の授業の後、いつも通り後片付けを無理矢理押し付けられて、量が多かったため、放課後まで時間がかかった。

 更衣室に戻ると、制服がなかった。
今までモノを隠されることはあったけど制服や体育着などの衣服は、隠されたりしたことがなかったから考えたことがなかった。
急いで校内を探し回った。
 
 施設にも居場所はないけど、家事は当番制で、その日は私が夕食当番だった。

 教室にも特別教室にもどこを探しても制服は見つからなくて、時間だけが過ぎていった。
校舎の外も探し回って、夕陽が隠れ始めてとても眩しくなって来た頃、体育館裏でやっと見つけた。
体育館裏の水道に乱雑に置かれていた。わざわざ全体を濡らしたみたいで制服はびしょ濡れだった。

 ジャージも持ってきてないので半袖半ズボンも寒い。濡れている制服でもどっちもどっちだと思った。それに、通っているこの中学校では制服以外での登下校は一切許されていない。
 
 更衣室に戻って、よく絞った後、肌に張り付く不快な感覚に身を包み、濡れた制服に肌から体温を奪われる。
着替え終えた頃には、夕陽も見えなく窓から見える景色は暗くなっていた。

"早く帰らないと…。
どうしてここまでされなきゃいけないの…?私がブスだから?
ならほっといてくれればいいのに…。
私は人と関わりたくないの!関わっちゃいけないの!"













   ーグサッ

この感覚知ってるーーーー
頭の中に映像が流れてくる。日本とは全く違う世界での話。
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