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神は僕に決断させた
神は母の温もりを彼女に教えた 前編
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■■■■■
彼女が今を楽しんでいるのなら、それが一番だとだと思っていた。
僕は、少なくとも今の彼女にとっては、家族みたいなものだ。
確かに、僕は彼女に特別な好きを抱いている。
だけど見返りは求めないと決めていたし、気持ちも伝えないと宣言したはずだった。
でも少しづつ、その決意が薄れてしまいそうなのは、自分でもわかっていて、それが悔しい。
頭では打ち消そうとしているのに、彼女の笑顔や興味が、自分にだけ向けばいいと思ってしまうのだ。
今は、気持ちは伝えない。
でも、諦めたわけでも断じてない。
僕は僕に出来る最大限のことをして、彼女を迎えにいく。
そうすると、決めたのだ。
◆◆◆
僕にとっては馴染みの風景でも、みんなにとっては新しい発見に溢れている、ということか。
僕らは今日は最後の訪問地、東京タワーに到着した。地上から空を見上げた風景は、朱色の鉄筋が複雑に絡み合い、その存在感は確固たる迫力がある。
別に斜に構えているわけではなかったけど、僕は列の後ろの方で、血走った眼のクラスメートを俯瞰していた。
都内を巡るとなれば、どうしても僕にとって見知った場所ばかりになる。勿論みんなと旅行できるのは楽しいのだけれど、同じテンションではしゃげと言われても、それは少し無理な注文だった。
「恒星。やっぱり故郷の修学旅行は、退屈か? 」
「えっ? いや、そんなことはないですけど。久し振りに来る場所ばかりだし、国会もテレビ局も行ったことはなかったんで、面白いです 」
「そうか。でも東京タワーは、さすがにきたことはあるんだろ? 」
「ええ、それは、まあ…… 」
「彼女とか? 」
「なっ、先生ったら、何を言ってるんですか? 僕が住んでたのは、小学生までの話ですよッ? 家族と来たんですよ、家族とっッ! 」
「オイオイ、そんなに躍起にならなくても、いいだろ? それとも、何だ? 後ろめたい事情でもあるのか? 」
「そんなの、ある訳ないじゃないですかっ! 先生じゃあるまいし 」
「オッ! お前さんも、たまに堂々とブッ込んでくるようになったな? 」
「それは…… 御互い様ですよね? 」
僕は列の後ろで、唐突に村松先生のからかいを受けていた。村松先生は、ここ一ヶ月の間で、僕の担任から、僕の将来の義兄というポジションまで、一気に関係性が飛躍した間柄だった。といっても、深い親戚付き合いがあるわけではないから、弱味を握り合っているというのが、正しい表現かもしれない。
「ところで、恒星。さっき、お義母さんから連絡があって聞いたんだけど 」
「えっ? お義母さんって、うちの母さんのことですか? 」
「ああ。つーか、逆に、他に誰がいるんだよ? 」
「あっ、いや、それは…… その…… 」
「響きは一緒だから、問題はないだろ。とにかくな、お前のところのお祖母ちゃんが、今晩ホテルに面会に来るから、宜しくって言われたんだけど? 」
「えっ? 」
「何だ、恒星。初耳なのか? 」
「ええ、何も聞いてません 」
「そうか。何か、俺と御坂にも会いたがってるって聞いたけど? 」
「ハア……? 」
話が見えて来なかった。
僕は母さんからは、何も聞いてはいなかったし、今朝も至って普通のやり取りしかしていない。
いや、待てよ……
事前に僕が聞いていたら、ばあちゃんとの面会はともかく、麻愛に会わせることに関しては難色を示していた可能性は否めない。それに先生とばあちゃんが会うなんて聞いたら、姉貴は殴り込みレベルで怒るに違いない。
と言うわけで、母さんの強行突破に、一本取られた説が有力な気がしていた。
◆◆◆
それからは、気が気でなかった。
別に、ばあちゃんのことが苦手なわけでも、嫌いなわけでもない。
だけど熱望しているという辺りが、嫌な予感しかしないのだ。それにポロッと言ってはいけないことを滑らせそうで、その点も気がかりだ。
食事や風呂を済ませ、匡輔を振り切ってロビーへと降りると、そこには既に村松先生とばあちゃんが懇談している最中だった。
あの後、よくよく確認してみると、お昼過ぎ頃に、母さんから僕と彼女宛にメールが届いていた。内容を見てみると、急にばあちゃんが会いたいと言い出したと書いてあったけど、ばあちゃんは他人に気を配る方なので、突撃訪問ではないような気がしていた。一応母さんには、ばあちゃんと会うのは僕だけでいいだろ? と抗議の電話もしてみたけれど、案の定取り合っては貰えなかった。
「ごめんな、麻愛。うちのばあちゃんの我が儘に付き合わせちゃって 」
「ううん。気にしなくて大丈夫だよ。あそこに座っている人が、コーセーのお祖母ちゃん? 」
「ああ 」
「っていうことは、稜子ママのお母さん? 」
「うん。まあ、そういう感じ 」
「何だか、コーセーのお祖母ちゃんの割には、若そうに見えるね 」
「あはは、それは見た目が若いだけだから。ばあちゃんは、確か今年で●歳なハズだったと思う 」
「え゛っ、●歳!? 」
「そんなに、驚かなくても。まあ、日本では、元気なおばあちゃんって、結構いるんだよね 」
「そうなんだ。凄いねえ 」
「ああ。一応、まだ現役で仕事もしてるから、余計かもね 」
「いま、お祖母ちゃんは村松先生と話してるけど、マリコとのことを知ってるってことなのかな? 」
「あはは。詳しくは聞いてないけど、まあ、きっとそういうことなんだろうね。本当は僕が一人で会えば良かったんだけど、ばあちゃんがどうしても麻愛に会ってみたいって言い出したみたいで。ごめんな。一瞬でも顔を見たら満足するはずだから 」
「それは、私は構わないけど。でも、おばちゃんが、なぜ私に? 」
「それは…… 」
確かに、言われてみれば、何でだろうとは思う。
そうこうしているうちに、約束の時間は五分ほど押していた。ばあちゃんと先生は世間話しかしていないとは思うけど、そろそろ巻き込まれた義兄のことも助けなくてはならない。
「先生、遅くなってすみません 」
「あっ、恒星、ちょうど良かった。それでは、私はここで失礼します 」
「先生、今日はお時間を頂戴して、ありがとうございました。うちの孫たちを、末長く宜しくお願いします 」
「はい 」
……ばあちゃん、末永くは完全にアウトだろ?
しかもっッ、彼女は一応知らない体なのに、話がややこしくなるではないかっッ。
ばあちゃんと先生がどんな話をしたかはわからないけど、けっこう際ドイ内容になったりはしてないだろうか?
僕は沢山のツッコミどころを胸に抱きつつも、先生と入れ替わるようにソファーへと着席すると、彼女もまた僕の隣にゆっくりと腰を下ろした。
彼女が今を楽しんでいるのなら、それが一番だとだと思っていた。
僕は、少なくとも今の彼女にとっては、家族みたいなものだ。
確かに、僕は彼女に特別な好きを抱いている。
だけど見返りは求めないと決めていたし、気持ちも伝えないと宣言したはずだった。
でも少しづつ、その決意が薄れてしまいそうなのは、自分でもわかっていて、それが悔しい。
頭では打ち消そうとしているのに、彼女の笑顔や興味が、自分にだけ向けばいいと思ってしまうのだ。
今は、気持ちは伝えない。
でも、諦めたわけでも断じてない。
僕は僕に出来る最大限のことをして、彼女を迎えにいく。
そうすると、決めたのだ。
◆◆◆
僕にとっては馴染みの風景でも、みんなにとっては新しい発見に溢れている、ということか。
僕らは今日は最後の訪問地、東京タワーに到着した。地上から空を見上げた風景は、朱色の鉄筋が複雑に絡み合い、その存在感は確固たる迫力がある。
別に斜に構えているわけではなかったけど、僕は列の後ろの方で、血走った眼のクラスメートを俯瞰していた。
都内を巡るとなれば、どうしても僕にとって見知った場所ばかりになる。勿論みんなと旅行できるのは楽しいのだけれど、同じテンションではしゃげと言われても、それは少し無理な注文だった。
「恒星。やっぱり故郷の修学旅行は、退屈か? 」
「えっ? いや、そんなことはないですけど。久し振りに来る場所ばかりだし、国会もテレビ局も行ったことはなかったんで、面白いです 」
「そうか。でも東京タワーは、さすがにきたことはあるんだろ? 」
「ええ、それは、まあ…… 」
「彼女とか? 」
「なっ、先生ったら、何を言ってるんですか? 僕が住んでたのは、小学生までの話ですよッ? 家族と来たんですよ、家族とっッ! 」
「オイオイ、そんなに躍起にならなくても、いいだろ? それとも、何だ? 後ろめたい事情でもあるのか? 」
「そんなの、ある訳ないじゃないですかっ! 先生じゃあるまいし 」
「オッ! お前さんも、たまに堂々とブッ込んでくるようになったな? 」
「それは…… 御互い様ですよね? 」
僕は列の後ろで、唐突に村松先生のからかいを受けていた。村松先生は、ここ一ヶ月の間で、僕の担任から、僕の将来の義兄というポジションまで、一気に関係性が飛躍した間柄だった。といっても、深い親戚付き合いがあるわけではないから、弱味を握り合っているというのが、正しい表現かもしれない。
「ところで、恒星。さっき、お義母さんから連絡があって聞いたんだけど 」
「えっ? お義母さんって、うちの母さんのことですか? 」
「ああ。つーか、逆に、他に誰がいるんだよ? 」
「あっ、いや、それは…… その…… 」
「響きは一緒だから、問題はないだろ。とにかくな、お前のところのお祖母ちゃんが、今晩ホテルに面会に来るから、宜しくって言われたんだけど? 」
「えっ? 」
「何だ、恒星。初耳なのか? 」
「ええ、何も聞いてません 」
「そうか。何か、俺と御坂にも会いたがってるって聞いたけど? 」
「ハア……? 」
話が見えて来なかった。
僕は母さんからは、何も聞いてはいなかったし、今朝も至って普通のやり取りしかしていない。
いや、待てよ……
事前に僕が聞いていたら、ばあちゃんとの面会はともかく、麻愛に会わせることに関しては難色を示していた可能性は否めない。それに先生とばあちゃんが会うなんて聞いたら、姉貴は殴り込みレベルで怒るに違いない。
と言うわけで、母さんの強行突破に、一本取られた説が有力な気がしていた。
◆◆◆
それからは、気が気でなかった。
別に、ばあちゃんのことが苦手なわけでも、嫌いなわけでもない。
だけど熱望しているという辺りが、嫌な予感しかしないのだ。それにポロッと言ってはいけないことを滑らせそうで、その点も気がかりだ。
食事や風呂を済ませ、匡輔を振り切ってロビーへと降りると、そこには既に村松先生とばあちゃんが懇談している最中だった。
あの後、よくよく確認してみると、お昼過ぎ頃に、母さんから僕と彼女宛にメールが届いていた。内容を見てみると、急にばあちゃんが会いたいと言い出したと書いてあったけど、ばあちゃんは他人に気を配る方なので、突撃訪問ではないような気がしていた。一応母さんには、ばあちゃんと会うのは僕だけでいいだろ? と抗議の電話もしてみたけれど、案の定取り合っては貰えなかった。
「ごめんな、麻愛。うちのばあちゃんの我が儘に付き合わせちゃって 」
「ううん。気にしなくて大丈夫だよ。あそこに座っている人が、コーセーのお祖母ちゃん? 」
「ああ 」
「っていうことは、稜子ママのお母さん? 」
「うん。まあ、そういう感じ 」
「何だか、コーセーのお祖母ちゃんの割には、若そうに見えるね 」
「あはは、それは見た目が若いだけだから。ばあちゃんは、確か今年で●歳なハズだったと思う 」
「え゛っ、●歳!? 」
「そんなに、驚かなくても。まあ、日本では、元気なおばあちゃんって、結構いるんだよね 」
「そうなんだ。凄いねえ 」
「ああ。一応、まだ現役で仕事もしてるから、余計かもね 」
「いま、お祖母ちゃんは村松先生と話してるけど、マリコとのことを知ってるってことなのかな? 」
「あはは。詳しくは聞いてないけど、まあ、きっとそういうことなんだろうね。本当は僕が一人で会えば良かったんだけど、ばあちゃんがどうしても麻愛に会ってみたいって言い出したみたいで。ごめんな。一瞬でも顔を見たら満足するはずだから 」
「それは、私は構わないけど。でも、おばちゃんが、なぜ私に? 」
「それは…… 」
確かに、言われてみれば、何でだろうとは思う。
そうこうしているうちに、約束の時間は五分ほど押していた。ばあちゃんと先生は世間話しかしていないとは思うけど、そろそろ巻き込まれた義兄のことも助けなくてはならない。
「先生、遅くなってすみません 」
「あっ、恒星、ちょうど良かった。それでは、私はここで失礼します 」
「先生、今日はお時間を頂戴して、ありがとうございました。うちの孫たちを、末長く宜しくお願いします 」
「はい 」
……ばあちゃん、末永くは完全にアウトだろ?
しかもっッ、彼女は一応知らない体なのに、話がややこしくなるではないかっッ。
ばあちゃんと先生がどんな話をしたかはわからないけど、けっこう際ドイ内容になったりはしてないだろうか?
僕は沢山のツッコミどころを胸に抱きつつも、先生と入れ替わるようにソファーへと着席すると、彼女もまた僕の隣にゆっくりと腰を下ろした。
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