5 / 68
05
しおりを挟む
「えっ!? 」
ズキズキと痛む手に、ひんやりとしたモノがふれた。それは、まるで頬擦りするかのようにスリスリ動いている。
手元に視線を向けると、件の水玉が動きを止め、首を傾げていた。
「きゃっ! 」
思わず手を引っ込めた。
頬擦りされた手を確認する。
何ともなってい──た。
指輪に嵌っているハズの宝石がなくなっている。
まるで、お母様とアンの想いを、台無しにされたような気がした。
バツっ。
アクヤ中で何かがキレた。
いや、逆に繋がったのかもしれない。
「控えなさいっ! 無礼者っ!
いきなり飛びかかってくるとは、何事ですっ!! 」
立ち上がり、叫んでいた。
内側から力が湧いてくる。
アクヤの体は黄金色に輝いていた。
首をかしげたまま固まっていた水玉が、プルプルと震え始める。
アクヤは、警戒を強めた。
水玉は少しだけ上に伸びると、下半身がにゅーっと二股に割れた。
そして、二足歩行で脱兎のごとく逃げていった。
呆気にとられていたアクヤは、それを呆然と見送ることしかできなかった。
「あいたたたっ! 」
長時間屈んでいたために、腰が悲鳴をあげた。
岩陰から顔を覗かせていた水玉が引っ込む。
アクヤは一度大きく伸びをすると、また、宝石探しを再開した。
ソロソロと這い出てきた水玉が、アクヤ後ろでデローンと広がった。チラリと確認すると、水玉が少しだけ縮んだ。
どうやら、捜索を手伝ってくれているようだ。
「あちらの端から順に、探してきてくださる? 」
指示を出すアクヤに、一瞬ギョッとした様子で固まった水玉は、こくりと頷き端へと移動していった。
女性の上に立つものとして、家事の分担指示はお手のものだった。女王陛下直々の厳しい王子妃教育を、何年にも渡り熟してきた経歴は伊達ではない。
アクヤも作業に戻るべく、四つん這いの体勢に戻った。
「きゃっ!! 」
手と膝がヒンヤリとしたものに、ズブリと呑み込まれた。
デローーン 、ニョローーン
そんな音が聞こえてきそうなほど、水玉が緩み切り、岩と岩の間を埋めつくしていた。
「もういいわ」
ぺこりと頭を下げる水玉に、アクヤはそう返した。結局、宝石は出てこなかった。
「貴方のお陰で効率よく宝石を探すことができたわ。ありがとう」
最善を尽くしたのだ。お母様とアンは許してくれるだろう。むしろ、魔物? に襲われて無傷な上に、良好な関係を築けたのだから、泣いて喜んでくれるはずだ。
水玉としては、アクヤではなく宝石が気に入っただけのようだが。
「はい、これ。御礼に貴方もどう? 」
アクヤは水玉に干し芋を差し出した。
器用に触手を伸ばして掴むと、口? に突き立てる。芋が体内に取り込まれた瞬間、水玉がふるふるっと揺れ、デローンと広がった。
予想以上に美味しかったらしい。
残りをするするするっと呑み込むと、アクヤに飛びかかってきた。
バツっ。
「控えなさいっ! 無礼者っ! 」
プルプルプルっ
にゅーっ、パッカーン
トテッ、トテッ、トテッ……
……。
─とあるS級冒険者の鑑定眼※─
※本人達も作者も、何も知りません。
【名前】 アクヤ・クレイ Lv.5
【種族】 人族
【ステータス】 高位貴族
【スキル】 王子妃の教養(免許皆伝)
回避、覇王の威圧、意思疎通
【名前】 水玉(仮) Lv.2
【種族】 魔族水操玉目 水操玉
【ステータス】 覇王の眷属
【スキル】 鉱石鑑定、二足歩行逃避
じゅうたん探索、消化・吸収
ズキズキと痛む手に、ひんやりとしたモノがふれた。それは、まるで頬擦りするかのようにスリスリ動いている。
手元に視線を向けると、件の水玉が動きを止め、首を傾げていた。
「きゃっ! 」
思わず手を引っ込めた。
頬擦りされた手を確認する。
何ともなってい──た。
指輪に嵌っているハズの宝石がなくなっている。
まるで、お母様とアンの想いを、台無しにされたような気がした。
バツっ。
アクヤ中で何かがキレた。
いや、逆に繋がったのかもしれない。
「控えなさいっ! 無礼者っ!
いきなり飛びかかってくるとは、何事ですっ!! 」
立ち上がり、叫んでいた。
内側から力が湧いてくる。
アクヤの体は黄金色に輝いていた。
首をかしげたまま固まっていた水玉が、プルプルと震え始める。
アクヤは、警戒を強めた。
水玉は少しだけ上に伸びると、下半身がにゅーっと二股に割れた。
そして、二足歩行で脱兎のごとく逃げていった。
呆気にとられていたアクヤは、それを呆然と見送ることしかできなかった。
「あいたたたっ! 」
長時間屈んでいたために、腰が悲鳴をあげた。
岩陰から顔を覗かせていた水玉が引っ込む。
アクヤは一度大きく伸びをすると、また、宝石探しを再開した。
ソロソロと這い出てきた水玉が、アクヤ後ろでデローンと広がった。チラリと確認すると、水玉が少しだけ縮んだ。
どうやら、捜索を手伝ってくれているようだ。
「あちらの端から順に、探してきてくださる? 」
指示を出すアクヤに、一瞬ギョッとした様子で固まった水玉は、こくりと頷き端へと移動していった。
女性の上に立つものとして、家事の分担指示はお手のものだった。女王陛下直々の厳しい王子妃教育を、何年にも渡り熟してきた経歴は伊達ではない。
アクヤも作業に戻るべく、四つん這いの体勢に戻った。
「きゃっ!! 」
手と膝がヒンヤリとしたものに、ズブリと呑み込まれた。
デローーン 、ニョローーン
そんな音が聞こえてきそうなほど、水玉が緩み切り、岩と岩の間を埋めつくしていた。
「もういいわ」
ぺこりと頭を下げる水玉に、アクヤはそう返した。結局、宝石は出てこなかった。
「貴方のお陰で効率よく宝石を探すことができたわ。ありがとう」
最善を尽くしたのだ。お母様とアンは許してくれるだろう。むしろ、魔物? に襲われて無傷な上に、良好な関係を築けたのだから、泣いて喜んでくれるはずだ。
水玉としては、アクヤではなく宝石が気に入っただけのようだが。
「はい、これ。御礼に貴方もどう? 」
アクヤは水玉に干し芋を差し出した。
器用に触手を伸ばして掴むと、口? に突き立てる。芋が体内に取り込まれた瞬間、水玉がふるふるっと揺れ、デローンと広がった。
予想以上に美味しかったらしい。
残りをするするするっと呑み込むと、アクヤに飛びかかってきた。
バツっ。
「控えなさいっ! 無礼者っ! 」
プルプルプルっ
にゅーっ、パッカーン
トテッ、トテッ、トテッ……
……。
─とあるS級冒険者の鑑定眼※─
※本人達も作者も、何も知りません。
【名前】 アクヤ・クレイ Lv.5
【種族】 人族
【ステータス】 高位貴族
【スキル】 王子妃の教養(免許皆伝)
回避、覇王の威圧、意思疎通
【名前】 水玉(仮) Lv.2
【種族】 魔族水操玉目 水操玉
【ステータス】 覇王の眷属
【スキル】 鉱石鑑定、二足歩行逃避
じゅうたん探索、消化・吸収
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
139
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる