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 グゥーグゥー、グゥグゥグゥー

 周期性のある異音で、目が覚めた。
 アクヤの足の上にゴワゴワの毛の何かが乗っている。

「っ!?」

 上半身を起こすと、そこには絶望的な光景が広がっていた。

 まず、体調3メートルはありそうな水色の巨大狼がアクヤの足下で丸くなって寝ている。
 ミズタンベッドに護られていなければ、その重みで骨折か、下手したら圧死していそうだった。

 その巨大狼を中心に、丸まった狼集団が水場を埋め尽くすしていた。こちらも一匹一匹が、2メートル近くはありそうだ。

 アクヤはそっと体を戻し目を閉じた。
 夢の世界に戻りたくなる衝動を必死にこらえ、状況を整理する。

 確か、ミズタンと水場を探して、交代で休息をとることにしたはずだ。
 ミズタンが上に寝せてくれて……。

 そこまで考え、アクヤは頭を抱えた。
 余りの寝心地の良さと、極限に達していた疲労により、見張りの当番も決めずに眠り落ちてしまった自分に。

 反省は後だ。

 アクヤは、ゆっくりと目を見開いた。
 やること、いや、できることは単純だった。
 巨大狼の下からアクヤとミズタンが脱出し、狼集団トラップを超えて水場を離れる、それだけだ。

 まず、寝ているであろうミズタンを起こす。
 ぷにぷにと啄いてみても、無反応だった。
 案の定、熟睡しているようだ。

「ミズタン、起きて!  」

 ミズタンのお腹?  を優しくを叩きながら囁く。
 それに反応するようにミズタンが伸びをした。

「だめっ!  」

 触覚を伸ばし、ぐぐぐっと上に伸びるミズタンを必死に静止した。
 異変に気づいたミズタンが、頭をもたげた。
 やっと、巨大狼の存在を認識しプルプルと震えだした。

「大丈夫、大丈夫だから、落ち着いて!  」

 必死に宥め透かし、作戦を伝えた。

 まず、アクヤの脱出だ。これは予想以上に簡単だった。というのも、ミズタンがアクヤを体内に取り込んで横側に吐き出してくれたからだ。
 なんとも言えぬ不思議な感触で、意外と苦しくなかった。今度、中で寝かせて貰うのも、悪く無いかもしれない。

 次に、ミズタンの脱出だ。コレも案外すんなりと達成できた。
 お得意のデローーンで、巨大狼をそっと地面に下ろし、器用にスル、ニュル、スルッと出てきた。

 最後の狼集団トラップからの脱出、これがキツかった。
 音を立てずに、密集している狼達を股いでいかねばならない。複雑に絡む手足を越えるだけで、神経がすり減った。
 狼達は非常に耳がいいらしく、小石を蹴っただけでピクリと体が動く。何度も肝を冷やした。

 トテ、トテ、トテッと、前を歩くミズタンに、何とか着いていく。

 やっとの思いで最後の一匹を超えると、先を行くミズタンが、こちらを振り返りプルプルプルっと震えていた。

 アォーーーーンっ!

 極至近距離で、遠吠えが聞こえてくる。
 ミズタンは、既に駆け出していた。

 一拍遅れて、アクヤも後へと続く。
 背後から無数の殺気が迫ってきた。
 緊張で足が思うように動かない。

「きゃっ!!  」

 出入口にたどり着く前に転んでしまった。
 倒れながら、アクヤへと跳躍する無数の狼達が目に飛び込んできた。

(私、頑張った)

 そう覚悟を決めたとき、アクヤの視界が水色の幕に覆われた。
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