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しおりを挟む(シニタイ……シニタイ……シニタイ……)
「えっ? 」
負の感情が、頭の中に流れてくる。
当然、アクヤの目の前には一人しかいない。
今正に、襲いかからんとする骸骨のみだ。
「えーーっ!? 」
剣を振りかざした骸骨が、つんのめった。
そのまま、体当たりするかのように、アクヤに突っ込んでくる。
ビュッ!
指輪から飛び出したミズタンがアクヤ抱え、骸骨の脇をすり抜けた。
ガシャ、ガシャ、ガッシャーーんっ!
骸骨が、派手な音をたて地面に崩れ落ちる。
いつの間にか、糸でぐるぐる巻きにされていた。
シュタッ!
ミズタンに抱えられたアクヤの隣に、ベビリンを乗せたボスモフが降り立った。
キョェェェェーーェエっ!
ベビリンが胸を反らしながら叫んだ。
「ちょっと ! ボスモフいったい何処から沸いてでたわけっ!? 」
(ふんっ)
アクヤの問を鼻でいなすボスモフ。
その視線の先では、ミズタンが跳ねた時にできた水たまりが、キラキラと輝いていた。
◇ ◇ ◇
パツっ。
「で貴方は、行成襲ってきて、死にたいとは、何事かしら? 死にたいなら、お一人でお逝きなさい。……ちょっと、貴方きいているの? 」
骸骨に話しかけながら、アクヤは違和感をおぼえた。
骸骨の顔が死んでいるのだ。いや、当然、生物学的には死んではいるだろうけれど、その表情には感情が欠落しているのだ。
(シニタイ……シニタイ……シニタイ……)
そして、相変わらず念仏の様に負の感情が流れ込んでくる。
このままでは、話にならない。
アクヤは、骸骨をそっと抱き上げた。
ぐるぐる巻きの上半身を、膝にのせる。
「うぅっ」
途端に、ゾッとするような悲しみの感情が流れ込んできた。
姿を見ただけで恐怖に戦く冒険者。
戦いたくないのに戦闘を強制される悲嘆。
与えられる果てしない激痛。
生半可なダメージでは、また、復活してしまう絶望。
そして、一生逃れられぬ、この呪縛。
(シニタイ……シニタイ……シニタイ……)
そういった感情が、その言葉と共にアクヤの身体中を駆け巡る。
自然と涙がでてきた。
「貴方は、もう、戦わなくていいわ。だから、死にたいなんて、言わないで。
これからは、何者にも縛られず自由に生きなさい」
骸骨を包んでいた糸が、白く輝いた。
その光が、体全体を包み込んでいく。
骸骨の表情が、一瞬、和らいだ……ように見えた
カラカラ、カランッ。
そして、崩れ落ち骨の山になった。
「成仏できたのかしら? 」
アクヤはそっと手を合わせ、骸骨幸せを祈った。
◇ ◇ ◇
「ところで、ベビリン、ミズタン。貴方方には、お話があり、あっ、待ちなさいッ!! 」
アクヤのお説教モードを察知した2匹が、脱兎のごとく逃げていく。
「ミズタン、2人をっ……えっ!? 」
ミズタンに捕獲をお願いしようとして、アクヤが固まる。
その横を、黄金に輝く骸骨が爆速で駆け抜けていった。
─とあるS級冒険者の鑑定眼─
【名前】 アクヤ・クレイ Lv.27
【種族】 人族
【ステータス】 高位貴族、ゴブリンクイーン
【スキル】 王子妃の教養(免許皆伝)
回避、覇王の威圧、念話
子守唄、忍び足、調教、口撃
指輪ノ加護、神速
貴属魔法(初級):物理反射、采配
復元、魔術介入、粘液耐性
操糸、お祓い
【名前】 骸骨 Lv.36
【種族】 魔族死霊目 骸骨戦士
【ステータス】死霊ノ捨駒
【スキル】 不死身、戦闘狂
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