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 バッ。

 体がくるりと反転し、斜めに受け止められた。

銀盆サルヴァっ!  」

 視界が暗転する。

 見上げれば、左掌に巨大な銀盆を展開したバズが、とんがり帽からの攻撃を受け止めていた。

 ジリジリジリジリ……

 次第に赤熱して行く。

「はっ!  」

 バズがとんがり帽へと銀盆を放った。

「っ!?」

 真ん中からぐにゃりと曲がり、とんがり帽が包み込まれる。
 つかの間、もにゅもにゅと動き回ったソレは、銀の光沢を取り戻すと共に、沈黙した。

 どどどどどどーっ!

 ばりばりばりばりばりっ!

 待っていましたとばかりに、両サイドから水流攻撃と雷攻撃が襲いかかる。

「えっ」

 バズが、アクヤの腕をそっととり、クルリと後方へと回転させた。
 同時に二本カトラリーが放たれ、とんがり帽の杖を的確に突いていく。

 バリーーーンッ!  

 魔石が砕ける音が空気を揺るがせた。それに合わせ、魔法が霧散する。

 その後ろでアクヤは、巨大なカクさんに抱き止められていた。いつの間にか、最初に出会った頃の巨体に戻っている。

 アクヤを抱え、山の如く動けぬカクさんを、とんがり帽が標的にする。
 無数の火炎弾や電撃に襲われたカクさんが煙をだし赤熱し始めた。

 ばっ!  

 脇を擦り抜けたスケさんが、アクヤをさっそうと奪い去る。

 パッカーーーーンっ!

 耐えかねたカクさんの背中が咲け、無数の卵弾が発射された。それは的確にとんがり帽たち向かっていく。

 にゅぅーーう

 指輪からミズタンが飛び出しスケさんを包み込む。アクヤは、無事、ミズスケの胸元へと収まることが出来た。




 その後も、攻防は続いていく。

 大剣ダイヤモンドソードは巨大氷河を叩き割り、襲いかかる火炎弾は、指から放たれる聖水で鎮火された。

 杖の先から迸る火炎放射を、狼の遠吠えがかき消し、鳴り響く雷鳴は箒が描く闇へ吸収されていった。

 カトラリーや果物ナイフやらが魔石を破壊し、箒と雑巾がとんがり帽の存在を散らしていく。
 黄金に輝く剛糸は、魔法諸共それらの動きをも拘束した。




 少なくとも、互角の戦いであった。

 バズが、そう叫ぶ、その時までは。

「くっ、奴らの狙いも同じか!  
 まずいっ、このままでは先に殺られますっ!  皆さん、重詠魔導師デュアルウェルダーを狙って攻撃してくださいっ!  」

「でゅある……?」

 思わず、聞き返してしまう。
 周りの魔衆もキョトン顔だった。

 ぽぅ、ぽぅ、ぽぅぽぅぽぅぽぅぽぅ…

 その疑問に答えるように、とんがり帽の魔法陣が、飛び飛びで赤黒く輝始めた。

「二本の杖を持ったとんがり帽のことよっ!  」

 ミズスケの胸から飛び出したアクヤが、無我夢中で叫ぶ。

 次の瞬間、360度全方位から一斉に、広範囲五属性魔法の嵐が展開されていった。
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