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適当に昼飯でも食おうと思って、ちょうど近くを通りかかったショッピングモールに立ち寄った。
安く早く済ませた昼食の後、あれは何階だっただろうか。クレーンゲームがたくさん並べてあるだけの、手抜きのようでいて明るく楽しそうなスペースが目の前に広がっていた。
最近はぬいぐるみ一つも凝っているよな。そんなことをぼんやり思いながら、気まぐれにその中へと入った。
どうせ取れないと分かっているから一回百円でも俺はやらないが、一回百円を何度も繰り返す楽し気な人達を、通り過ぎながら見るのは嫌いじゃなかった。
クレーンゲームにはいろんな人がハマる。中には一組、親子連れがいた。
まだ若そうな母親と、好奇心旺盛そうな、三歳くらいの男の子。幼い息子の興味を母親は否定せず、取れそうに見えて全然取れないそのゲームを二人でやっていた。
ポフッと、小さなぬいぐるみは案の定、その場ですぐに落っこちた。
「うわ、結構重いねえっ」
「うー」
「こっちは? 次これやろー!」
幼い息子の前で隣のクレーンを指さす。母親はまるで友達みたいに、しゃがんでその子と目線を合わせながら気の向くままに、無邪気に誘った。男の子は取れなくても不機嫌になるどころか、小さな手で楽しそうにクレーンを操作した。
百円で手に入る幸せだ。なのにとても、大事なもののように見えた。
ほんなささやかな、なんて事のない、どこにでもあるこの光景を。
願えない大人にだけは、なりたくなかった。
安く早く済ませた昼食の後、あれは何階だっただろうか。クレーンゲームがたくさん並べてあるだけの、手抜きのようでいて明るく楽しそうなスペースが目の前に広がっていた。
最近はぬいぐるみ一つも凝っているよな。そんなことをぼんやり思いながら、気まぐれにその中へと入った。
どうせ取れないと分かっているから一回百円でも俺はやらないが、一回百円を何度も繰り返す楽し気な人達を、通り過ぎながら見るのは嫌いじゃなかった。
クレーンゲームにはいろんな人がハマる。中には一組、親子連れがいた。
まだ若そうな母親と、好奇心旺盛そうな、三歳くらいの男の子。幼い息子の興味を母親は否定せず、取れそうに見えて全然取れないそのゲームを二人でやっていた。
ポフッと、小さなぬいぐるみは案の定、その場ですぐに落っこちた。
「うわ、結構重いねえっ」
「うー」
「こっちは? 次これやろー!」
幼い息子の前で隣のクレーンを指さす。母親はまるで友達みたいに、しゃがんでその子と目線を合わせながら気の向くままに、無邪気に誘った。男の子は取れなくても不機嫌になるどころか、小さな手で楽しそうにクレーンを操作した。
百円で手に入る幸せだ。なのにとても、大事なもののように見えた。
ほんなささやかな、なんて事のない、どこにでもあるこの光景を。
願えない大人にだけは、なりたくなかった。
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