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上司と飲んでたらうっかり食われた。
「課長……ッ……待、ちょ、落ち着いて下さい!」
「うるせえ。男なら腹くくれ」
「ムリです!!」
「無理でも括れ」
一週間の仕事を終えた金曜。土日の休日を控え開放的な気分で迎えるはずの夜のひと時は、本来であれば家で一人寛ぎ過ごしているはずだった。しかし今、俺はなぜか上司の家のベッドの上に居る。
まあ久々に付き合えと、就業後にそう言った課長は俺を飲みにつれ出した。普段から仕事ができて頼りになる課長の誘いとあって喜んで付いて行った俺だが、軽く一杯引っかけたところで早々に店を出て、そしてその次に向かった先がなぜかここ。課長が住むこのマンションだった。
課長にはいつもすごく世話になっているしもちろん尊敬だってしている。俺もこんな男になりたいと、密かな憧れまで抱いていた。
そんな人の家に上がり込むのは当然ながらこの上ない緊張感を伴う訳で、玄関でヘコヘコしながら焦りを隠す事もできずにお邪魔しますと口にした。
どうやらとんでもない事になった。まさかこの人の部屋に上がれるなんて。
緊張の中、多少は浮かれた気分も持ち合わせつつ課長の後に続いて入ったリビング。部屋でゆっくり飲み直そう、そういう意図だろうと思っていたのだが、しかし課長の足はリビングのソファーにもダイニングの四角いテーブルにも向かなかった。
首を傾げる俺の腕を引き、連れられたのはどうしてなのか寝室。ベッドがあるんだからそこは間違いなく寝室だ。
なんで。どういう事。さてはこの人、実はものすげえ眠いのか。なんて思っていると体は宙に浮いていた。
「え…」
「大人しくしてろよ」
「ぎゃっ!」
ボスッと投げ飛ばされた。文字通り、俺は課長によってベッドの上へと投げ飛ばされた。
そしてなぜか。どれだけ死ぬ気で頭を捻ったところで全くもって意味が分からないんだけど。
「か、課長……?」
「準備してくるから待ってろ。騒ぐなよ。大人しくしてりゃ怖い思いはさせねえから」
「なんで……ろ、ロープ?……なんですか、何するんですか」
課長の手には何の用途か麻縄が。持った両端をピシッと張る光景を見せつけられ、身に感じた恐怖から俺はじりじりと壁の方に後ずさった。
しかしギシリと課長もベッドに乗り上げてきて、追い詰められれば逃げ場はなくなる。恐怖で竦み上がる俺の腕を問答無用で鷲掴みにすると、ささやかな抵抗なんてすべて無効化されてベッドヘッドのパイプにこの腕は縛り付けられていた。
「逃げるなよ」
逃げらんねえよ!
心の中で必死に叫び、涙目になりながら離れていく課長を見上げる。準備とは一体何か、どうして俺は人んちのベッドに拘束されているのか。
訳も分からず半ベソかきながら待つ事二十分弱。シャツだけ羽織ったあられもない姿で、明らかにシャワー浴びてきた感じの課長が再び俺の前に現れた。そして言われた一言。
「ヤラせろ」
顔面蒼白になったのは言うまでもない。
***
そして今。相変わらず縛られたまま、俺の上には課長が乗っている。タイは外され、シャツのボタンは全開で、ズボンとパンツを引きずり下ろされたのがついさっき。
「待って下さい!!」
「待たねえ」
「俺ムリです! ほんとムリです!!」
「気持ち良くイかせてやる。お前は寝てるだけでいい」
「いい事なんてなんもないですよね!?」
大変だ。課長がおかしい。このままだと俺は確実に食われる。
風呂に行ったせいかほんのりと色づいたその頬も、どこか虚ろにぼんやりとした目元も、いつもバリバリ仕事をこなすカッコイイ課長とはまるで別人のようだ。
誰よりも厳しくて、けれど誰よりも頼りになって優しくて、社内の女の子達で課長に憧れない子はいないとまで言わせるほどのハイスペックイケメンなこの人。そんな人が。なんで。
「悪いな」
「そ……そう思うんなら退いて下さい……ッ」
「それは駄目だ。もう限界なんだよ。お前見てるとムラムラして仕方ねえ」
「!!!」
なんか言われた衝撃的一言。どういう事ですか。あんたずっと俺をそんな目で見てたんですか。
余りの驚愕に声も出なくなっている俺をよそに、課長は堪えきれないと言わんばかりに上体を伏せて俺の体に唇を寄せた。
「かちょっ、…」
ちゅっと、首筋に吸い付かれ、そこから下へ下へと肌を堪能するようにゆっくり舌を這わせていく。鎖骨にカリッと噛みつかれると思わず肩が小さく揺れて、課長はそんな俺の反応を逐一観察しては目を細めていた。
妙に、うっとりと。俺の体を触って何が楽しいのかその表情はまさに恍惚といった感じだ。上気した頬もぼんやりとした眼差しも時折のぞかせる赤い舌も、どこもかしこも色めき立っていて同じ男とは言え目のやり場に困る。
「課長……も、やめましょうって……おかしいですよこんなの、どうしちゃったんですか……ッ」
控え目に窺い立てればチラッとその目が俺を見下ろした。ところが話を聞いてくれる気になったかといささかホッとしたのも束の間、課長の手はおもむろに俺の下半身へと伸びた。
「ひっ……」
ガシッと鷲掴みにされた、硬度を持たないままのソレ。まさか握り潰されでもするのかと一瞬ヒヤッとしたものの、幸いな事に強引な手つきは最初だけだった。形に添って包み込み、反応を窺うように緩く揉まれる。
「かっ、ちょ……!」
ビクリと体が揺れ、咄嗟に左右の足を閉じた。しかし課長はそれを許さずもう片方の手でぐいっと俺の左足を押し広げ、グニグニと揉み扱きながら俺の顔に自分の顔を突き合わせてくる。
微かに開いている課長の口元がエロい。色付く目元がじっと俺を見つめてくるから、動揺のあまり手の中のブツも心なしか反応を始めた。
「やめ……駄目です課長っ……放して下さい……ッ」
「何がダメだよ。硬くしてんじゃねえか」
「それは……っ」
男ですからっ。扱けば勃つんです、若いので余計にッ。
心の叫びはきっと課長には届かなかった。俺の制止など聞く耳持たずで、スッと課長の目が下方向に向けられたかと思うと頭を伏せた。そしてちゅくっと。
「ちょっとッ!?」
吸われた乳首。素っ頓狂な声が出た。女の子にだって吸われた事なんてないのに。どうして男に、っていうか課長に。
「待っ……課長ホントにどうしちゃったんですかッ! 変ですよなんでこんな事し、っぅあ」
突起にカプリと、痛くはない甘噛みに加えて、下ではその手が先端を強くこすった。手つきはやたら卑猥だし、死にそうなくらい心臓には負荷がかかっている。
視界に入れる課長の腰は時折揺れて、またその動作のエロい事。なんでか知らないが課長に四つん這いになって組み敷かれている有り得ない状況の中、カッターシャツ一枚を隔てて描かれる背中の曲線は非常に目の毒だ。
色っぽく欲情めいた匂いを醸しだし、ペロペロとまるで猫みたいに乳首を舐め続けてくるこの人にあっちへこっちへと翻弄される。
「っ……やめてください!」
「悪いが無理な相談だ」
「なんでッ……っも……ダメですって……ッ」
何を言っても無駄だった。課長の口も手も止まる事はない。下半身をまさぐる掌は男らしく大きいけれど、長い指の動きは繊細で柔らかみのない手のはずなのに欲望は素直に煽られる。
勃起させられたそこを上下に擦られ、先端を指先が掠めれば聞きたくもない水音を耳にして顔を覆いたくなった。生憎縛られているせいでできないが。
尊敬する憧れの上司だ。右も左もわからない新入社員だった頃、指導係の先輩は他にもいたけどこの人は自らちょくちょく俺を気にかけてくれた。
基本的には仕事に対して厳しいから何かミスをすると物凄く怒られる、そしてとても怖い。けれど落ち込んでいればさり気なく話を聞いてくれて、飲み屋でこの人に何度泣き言を聞いてもらったかは片手で数えきれないだろう。
死ぬ訳じゃない。この先に待ち構えている可能性的未来を実際に体験したとしても、俺の生がそこで終わりを告げる事は決してない。
けれどこの頭は走馬灯のように課長と過ごしてきた日々を思い出していた。この人みたいになりたいと、仕事に飽きたらず男としての目標と思っていた相手に、こんな行為をされてしまっては週明けからどんな顔をして一緒に仕事をしていけばいいのか分からない。
だがそうこう思考を巡らせている間に課長は俺の胸からようやく顔を離し、かと思えば体ごと後方に下がってさっきまで掌で弄り倒していた股間を真上から凝視している。
これはもうダメだ。嫌な予感しかしない。ヤラせろ宣言を受けた時以上に顔面を真っ青にさせ、俺はカラッカラに乾いた喉から叫びだすようにして声を上げた。
「課長……ッ!!」
俺が叫んだのと、完勃ちしているそれを課長がパクリと咥えたのとは同時だった。
感じる温かさと舌の柔らかさ。躊躇いもなくねっとりと舐められ、目を見開いて自分の下半身を凝視した。
俺の足と足の間に挟まり、股間に顔を埋める課長の姿。有り得ない。これは夢だと誰か言ってほしい。
しかし人生とは無情なもので、気まぐれに口内からソレを出しては愛おしげにちゅっちゅと口付けていく課長の顔をもろに見てしまった。
眩暈がする。大した経験もないけれど、俺の人生の中でこれ以上のエロい体験はきっと無かった。
ちゅぷちゅぷと怒張した男のブツを口に出し入れし舌を這わせる課長。誰だよコレ、こんな人を俺は知らない。この人は課長ではない別の誰かだ。
「ぅっ……く……」
「ん……」
鼻から抜ける課長の吐息。もはやそれだけで頭が爆発しそう。俺の太腿に手を置いて、顎と舌、口全体を使って男を愛撫する。
まさかこんな事をされるとは予想だにしなかったのは当然だが、少なからず慣れてるっぽいこの人にショックを受けたのは紛れもない事実だ。
だってもう、文句なしに上手い。嬲るタイミングも吸い付く強さも、計算なのか本能なのかとにかく気持ちいい。
「ッ……は、……かちょ、……ヤバイ」
「……イケ。飲むから」
「……へっ?」
「……ん」
聞き捨てならない事を言われたかと思えばスパートをかけてきた。一際強く吸い付かれ、呆気なく達しそうになるのを寸前で堪える。
「まっ!……え、飲む……飲むッ?!」
こくり。フェラに夢中の課長は答えを言うのも億劫らしい。一つ頷くと先端にカリッと微弱に歯を当てた。
「ぅあッ、あ、ダメ……課長、ダメっ……それはヤメ……っ」
「んー」
「課長!!」
ズズズッ……と。さっさと出せこの野郎みたいな意思を感じる吸引力。瞬間俺は、敢え無く果てた。
「っっっ!!」
弾け散るその先。もちろん課長の口の中。良く分からないままはあはあと荒い息を繰り返し、纏わりつく柔らかい舌が一滴たりとも残さないとでも言いたげに俺が出した物を舐め取っていく。
課長の喉が動くことで宣言通り飲まれた事を知る。最後にちゅっと吸い付かれて敏感な部分はピクリと震えた。
「あ……は、……マジかよ……」
顔を覆い隠したい。できれば今の俺を見ないでほしい。しかし俺が課長を見られるという事は課長も俺の顔を見られるという事だ。
指先で先端の液体を掬い取り、ちゅくっと口に含んだそんな光景を目の当たりにして死にたくなった。
「……若えな」
「課長……絶対変だ……おかしいだろなんだよコレ」
「ショックすぎて敬語も飛んだか」
「……すみません」
「バカ、責めてる訳じゃねえ」
会話が成り立ったことにひとまず安堵した。明らかに完勃ちしている課長のソレも気になるしその顔は相変わらずエロさ全開だけど、出てくる言葉は辛うじて普段通りでほっとする。
けれど一息つく暇なんて俺には与えられなかった。立ち直れない俺をよそに不意に身を乗り出した課長は、ベッドサイドの低い棚を何やらゴソゴソ言わせ始めた。
すぐに目当ての物を掴んだようで、同じ位置に戻ってきた課長の手の中を見てピシッと凍りつく。
だってもう、どう見たってローション。と、ついでとばかりにコンドーム。
「…………」
「なあ、許せ」
「……待って下さい」
「いい思いしかさせねえよ。保証する」
そんな保証いらない。何考えてんだこの人。完璧なイケメンが真っピンクのラブローションなんか常用してんなよ。その減った半分なんなんだよ、誰と使ったんだ。
言いたい事はごまんとあるが、パクパクと口を開け閉めする以外俺は既にできなくなっている。あからさまにやらしい液体をトロリと手に落とし、目を逸らすのも忘れている俺に見せつけるかのように自らの腕を後ろへと伸ばした。
どうなっているかなんて、この位置にあっては詳細を見る事はできない。けれどもこの人の顔が物語るのは凄まじい光景な訳で。
「ン……」
卑猥に響く粘着質な水音。課長の眉間が切なげに寄っている。
俺はこの時ほど自分の想像力を恨んだ事はない。ぬぷっとローションで濡らした指先が肌に食い込むリアルな音に、バクバクと鳴り止まない俺の心臓が悲鳴を上げた。
「……かちょ、う……」
「ッは、……なに」
「さっき、風呂で……何して……」
ぐちぐちと自分で後ろを弄りながら、課長は問いかけた俺をそっと見下ろす。物欲しげな瞳の色を直視して無意識のうちにゴクリと喉がなり、大体の想像はつくのに敢えて本人に聞いてみる自分の愚かさに正直驚いた。
何聞いてんだ俺。何してんだこの人。
「……すみません」
「準備してくる、っつったろ……。女とは……勝手が違えんだよ……」
課長の肩が呼吸に合わせて揺れている。時折ビクビクと震える様子はなんだか辛そうだ。艶っぽく唇を噛みしめ、声を上げそうになるのを堪えているのが分かる。
声聞きたいなと、不意に思って、それに気づいてこの状況の危うさに気づいた。
これはもう認めるしかない。なぜなら物証がここに在る。さっき出したばかりだと言うのに、課長のこの姿を見ている俺の下半身はかなり元気な事になっていた。
「課長……」
「ん……」
「……ツラいんですか……?」
頷きも、応えもしない代わりに少しだけ瞼が伏せられる。儚げな表情は切なく繊細なもので色も深かった。
どうしよう、可愛い。こんな顔もするんだ。
「……俺でいいんですか」
「……ああ。欲しい」
熱に浮かされたその目。こっちまで当てられそう。ごくりと再び生唾を飲み込み、手を伸ばせない事を心からもどかしく感じた。
そんな俺を課長は窺うように見下ろし、後ろを慣らしていた自らの指をそこから引き抜いた。
「なあ……いいか……?」
ここまでしておきながら唐突に聞かれ、切羽詰まった顔をする課長に息が止まった。
男なんて知らないし、同性とどうこうなんて考えた事もないけれど。たぶん俺は、この人とならできる。
正直な所、いくら男と分かっていてもこの色気はただ事ではない。どう答えるべきなのか躊躇いつつも、当たり障りのない所で口を開いた。
「……俺でいいなら」
「俺はお前がいい」
女の高い声なんかじゃない。それは良く聞き知った綺麗な男の声。けれどもドキッと、貫かれるような衝撃とともに心臓が高鳴った。
壮絶な光景に煽られて、この先に待ち構えている誘惑が俺を唆す。
「ぁ……」
昂ぶったソコに課長の手がそっと触れた。シーツの上に投げ出されていたゴムをぱっぱと装着させられる。
その手際の良さは慣れていそうだという俺の疑惑を確信に変えさせた。腰を浮かせ、男の性器を自分の後ろへと宛がうこの人は、やっぱり俺の知らない別の誰かとしか思えない。
尊敬する上司が持つ、いつもとは異なるもう一つの顔。切なげに寄せられた眉が心底色っぽい。
クニッと先端が柔らな皮膚に押し当てられ、瞬きするのも惜しいくらいに体の上で繰り広げられるとてつもない生映像を凝視した。
「ん……」
「かちょ、……」
相手は自分と同じモノを勃たせているのに、それにさえ劣情を湧き立たせている俺はどうかしてしまったのだろうか。
課長が自ら慣らした後ろは難なく俺の雄を受け入れ、ゆっくりと腰が下ろされるのに合わせて徐々に中へと埋まっていく。包み込まれる内壁の熱さに息を詰め、俺のモノを飲み込んでいくその様から目が離せなかった。
薄いゴムを隔て、ギチッと根本まで繋がる俺達。有り得ないと頭の中のごくごく片隅で呆然と呟きながら、はあはあと苦しく息を吐く課長を見ていると中の昂ぶりが疼き始める。
俺の腹に手をついて、熱っぽく眺め下ろされてどうにかなりそう。顔面が熱くなるのを感じ、それを見ている課長はふふっと小さく笑った。
「お前の……スゲえ……。若いと血の気が多くていいな」
「何言って……」
突然のオヤジ発言。でもこの人が言うとなぜだか娼婦の落とし文句みたいに聞こえる。非常にどエロい。
俺の腹の上をいたずらに指先でまさぐり、ピクッとこの肩を揺らすと課長はうっとりと呟いた。
「熱い……」
「……は、い」
有り得ない。分かっている。有り得ない事だ。しかし現実に起きている。
俺を飲み込んだまま、課長はゆっくりと一度だけ腰を動かした。俺の様子を視界の端に捉えながら、中を擦らせて控えめに息を漏らしている。
「ッは……っ」
「……課長」
「嫌なら……目、閉じてろ。途中で萎えられても困る……」
そんな事を言ってこの人はまた腰を揺らした。締め付けは激しくても、柔らかく性器を包み込む中は問答無用で男のサガを呼び起こしていく。
結合部ではぐちゅっと卑猥に音が鳴る。繋がった下半身をドキドキしながら穴が開くほど見つめ、そうしていると課長の表情が気になってチラッとその顔を見上げた。
伏せ気味の上瞼と、上気した頬。艶っぽく開いた口からは苦しげな息が吐きだされ、見ているだけでクラクラしてくる扇情感に下半身が疼く。
どうにも堪えきれず、少しだけと自分の腰を軽く振り上げ、敢えて自分を焦らすこの人の中を突き上げた。
「ッひ、ぁ……っ」
ビクッと、不意打ちに大きく跳ねた課長の肩。さっきから声を出そうとはしないこの人はすぐさま自分の手を口に押し当てて、俺から顔を隠すように背けて腰を揺らしはじめた。
奥にゴリゴリと先端が擦り付けられ、その度に塞がった課長の口元からはくぐもった悲鳴が漏れている。押し寄せる快感の波に酔わされる中、グチュグチュと自らの体を俺に犯させているこの人に触れたくて堪らない。
「っかちょう……」
「くっ、ぅ……ふ……」
ビクビクと課長の体が震える。シャツから覗くその体は紛れもなく男のものだ。きっと抱きしめたところで柔らかさなんてないはずだけど、それでも溢れ出る色気は俺を追い立てるには十分すぎるくらいだった。
内壁で上下に扱かれるオスが張り裂けそうなくらい昂ぶっている。その怒張をこの人のイイ場所に突き立ててやりたくて、後になって怒られるのを覚悟で俺も大人しくしているのをやめた。下から緩く腰を動かせば、課長の切ない目が俺を見下ろしてくる。
「んん……ッ」
揺り上げた腰で奥をゴリッと擦り付けると、課長は逃げはしない代わりに俺の腹に両手をついて制止をかけた。
引き結んだ唇を開く様子はない。やめろと言う合図を察知しつつ、ガツガツと下から攻めた。
「ッン、は……ぁっ……っお前は、こんな……しなくていい……」
「俺だってしたい……ッ」
「バカ……俺がもたねえよ……」
キモチいい。恍惚に、トロンとそう呟かれ、課長の中で俺のそれは容量を増した。
「んっ、ぅ……ばか、ヤロ……」
「すみませ……」
「はぁ、っ……ふ……」
繋がった部分から漏れる水音が目立つ。初めての男のカラダは正直なところ極上モノでしかない。
俺は既にイク寸前まで張りつめていて、言葉通り悦に浸る課長の性器からもタラタラと先走りが溢れては俺達が繋がるそこへと落ちていった。
ゆさゆさと課長が動くのに合わせてしっかりしたベッドもいささか程度に軋む。頭の上で拘束された手で今すぐにでもこの人を掻き抱きたくて、それをできないもどかしさは全部目の前の男の体にぶつけた。
奥を突き上げれば肩を震わせるこの人が可愛く見える。キュウキュウと締め付けてくる繋がりに情欲も増した。
「んん……ッは、……は、ぁ……」
「っ課長……ロープ、ほどいて下さい」
「……も、少し……我慢してろ」
「ムリです、触りたい……!」
限界とばかりに叫べば、熱っぽくもキョトンとした顔が返ってくる。どこか困ったような目をして、悩ましげに眉を寄せながらも一度腰を止めた。
そして視界に入った上掛けを手繰り寄せると、なんのつもりかズボッと俺の口に突っ込んできた。
「んぐッ!?」
「お前は……そうしてりゃいい。逆らえない上司にムリヤリ部屋連れ込まれて……拘束されながら男に突っ込まさせられた。それだけだろ」
「んんっ!」
「ノン気のガキが。人に軽々しくユメ見させんな」
言って、課長は再び俺の上で腰を振った。途端に俺の神経は下半身に集まり、抱きたいのに抱かせてもらえない繋がっただけの虚しい状態に苦しくなった。
けれでも男の体なんて正直なもので、擦られれば昂ぶりは増すし激しい締め付けに吐精感も募る。それは課長も同じようで、ずっと放ったからかしになっていた性器をこの人は自ら握った。
「んッ、ん……」
「……っ」
俺のモノで中を突き上げさせながら、自分のオスも上下に扱いては握り締めて射精を促す。男の動作でしかないそれは俺を眩惑させ、親指の腹で亀頭をグリグリと撫で回している光景にはこの喉が何度目かも分からずゴクリと鳴った。
くぷっと溢れる先走りも、ビクビクと震える男性器も、どれをどう見たってこの人の姿は正に悩殺的。口に突っ込まれたシーツをどうにかこうにか舌を動かして吐きだし、快感に浸る課長へと本心を訴えた。
「ッぁ……かちょ、…ヤバイ……エロすぎ」
「っる、せ……」
「イキそう……っ」
「ん。俺も……」
課長はまた少しだけ腰を浮かせ、ギチギチに合わさっているのにも構わず再びストンと根本まで埋めた。ズクッと先端が奥を貫くその瞬間を待ち構え、狙いを定めて俺も下から腰を突き上げた。
「っひ、ゃあッ……!!」
「ぁっ……クッ……」
耳に届く、この人の甘い叫び声。同時に課長は喉を仰け反らせ、包み込んでいる手では受け止めきらない白い飛沫が俺達の間で散った。
切なくキュウゥッと強く締め付けられて俺もイく。ビクビク体を痙攣させるこの人の中で、留まることなく溢れ出てくる精液がゴムの中にじんわりと広がる。
「ん……」
「かちょう……」
「はぁ、は……」
「スゲ……俺、どうしよ……萎えねえ……」
「待て……一旦、抜く……」
とろっとろに溶けた顔でそんな事を言われても逆効果だ。服やら腹やら飛び散っている白い液体は視覚的に抜群の煽りを見せて、未だ完全勃起な俺のイチモツは更に元気に育った。
「て、め……」
「すっ、みませ……いやでも課長、あの声は……」
「…………」
「……ごめんなさい」
すごく睨まれた。だけど赤い目元に滲む生理的な涙は俺の心臓を高鳴らせるだけだ。
苦しみつつもどうにかこうにか俺を中から引き抜いた課長はとにかく艶めかしくて、手の使えない俺の代わりにちゃっちゃとゴムを外していった。
しかしやはり、ブツは萎えない。ソコをじっと見つめられるから恥ずかしさに耐え切れなくて、無意味と知りつつ苦し紛れにもじもじと両足を閉じた。
「……いくら若いっつってもどれだけ元気なんだお前」
「……普段は、こんな事ないんですけど……すみません……」
「…………」
「…………」
スッと課長が身を乗り出し、俺の腹の辺りに跨った。淡い期待と、すぐ近くに来た最高級の誘惑映像実写体。シャツの隙間から覗く胸元の小さな赤い突起に目を奪われ、衝動的にしゃぶり付きたくなる欲求を抑えながら思わずよだれが垂れるのを直前で堪えた。
俺の頭の上に両腕を伸ばす課長は、下から見る俺にとっては美味しそうなご馳走でしかなかった。
「……悪かったな」
「え……」
「……ほら。取ったぞ」
そんな煩悩に爛れた事を考えているうちに課長の目的は終わっている。俺の腕を拘束から解き、良く分からない謝罪を述べて早々に体をどかした。
そのままベッドを下りようとする課長は俺のこれをどうにかしてくれる雰囲気ではなさそうだ。それは困ると慌てて身を起こし、ベッドの淵に腰掛けたこの人の腕をパシッと後ろから掴んだ。
「課長、あの……」
「……お前、もうやめとけ。悪かった。俺の誤算だ。ここまでお前がノッてくるとは思わなかった。後々トラウマになるから悪い夢でも見たんだと思って黙って帰れ」
「……この状態で放り出されるんですか」
「トイレなら貸してやる。済ませたら帰れ。お前が後悔する」
「最初にやり始めたのは課長じゃないですかっ!!」
「だから……悪かった」
開き直られるよりもタチが悪い。平謝りに徹され、俺は俺で張った下半身を持て余している。
「お前の中で金で解決するなら要求は呑む。それで気が済まないなら世間にでも俺を晒せ」
「フザけてんですか。いりませんよ。金も課長の社会的失墜も望んではいないので今晩泊めて下さい」
「……早まるな。今ならまだお前は被害者だ。いい年したおっさんのケツだぞ。俺が言うのもなんだが目を覚ませ」
「ばっちり覚めてます。俺は何もいりませんけど課長は自分のした事に責任取るべきです。俺でムラムラするんでしょう?」
「…………」
「心配しなくても俺は男に興味持った訳じゃないんで大丈夫です。いい年したおっさんのケツなんて掘りたいとは思いませんけどあなたは別です、ってか課長おっさんって感じじゃないし全く」
「そういうの要らねえよ」
「本心なんだから仕方ないじゃないですか。もう一回、今度はちゃんと抱きたい」
はっきり言葉に出すと課長は困ったように眉間を寄せた。まだほんのりと赤い頬が可愛くて、悪戯心にちゅっと口付けてみれば目を見開いたまま固まる。さっきまであんなことを仕掛けてきていた人の反応とは思えない。
「……課長、まともに恋愛経験なかったりします?」
「…………男とはな。一回寝た相手とはそれ以降会わないようにしてきた」
「荒んでますね……」
「何かと面倒なんだよ」
大人の事情らしい。分が悪そうに吐き出す課長は怒っていると言うよりも拗ねている。
横から控えめに抱き寄せてみれば渋々ながらもポスッと頭を埋めてきたから本格的に抱きしめ返した。
「……物好き。女抱く要領で構えてるとガッカリするぞ。それからあんまり近づくな。男ってのは基本的に柔らかい方が好きだろ」
「課長、細いけど意外と体しっかりしてますよね。もしかしてジムとか行ってます?」
「週三で。あとは夜、たまに軽く走ってる」
「へえ」
「ふっつーに男の体だ」
「無駄なく引き締まっててスゲエ綺麗ですよ。肌すべすべだし。シャツ脱いでって言ったら怒りますか?」
「……お前の順応力が俺は怖い」
ボソッと零された課長の言葉を受け流しながら、俺はその体を横へと倒して自分の下に組み敷いた。
終始上半身を隠していたシャツを脱がせて、瑞々しい肌へと唇を落とす。胸に手で触れ首筋を舐め上げれば、息を詰めた課長が俺の頭をそっと撫でた。
「……ムリそうならヤメとけ」
「コレでもそう言えます?」
グイッと、熱の抜けない下半身を課長の内太腿に押し付けた。下からは憂い気な溜息が零れる。
「……若え」
「エロさ半端ないあなたに言われたくありません」
言うようになったもんだと揶揄され、課長の手はそっと俺を引き寄せた。
***
「新卒で入社してきた奴はお前が初めてだった。ウチは基本、即戦力が欲しいっつって中途ばっか雇ってきたからな。ちょっと前まで学生だったガキなんか使いもんになる訳ねえが、とりあえず早々に辞められても迷惑なだけだからどうしたもんかとお前の扱い方考えてて……」
「え、良く声かけて面倒見てくれたのってそんな風に思ってたからなんですか?」
「とりあえず最後まで聞け。どうせ一年と持たねえと考えていたのは本当だがお前は意外と要領よく働くし、若くて元気で社内外問わず新入りの評判がかなりいいもんになっていくからよ。いい逸材が入ったと思って感心してたんだ普通に」
「はあ……。そう言ってもらえると……」
「最近じゃ大体みんなお前に頼ってる。俺もお前のサポートがあると正直かなり心強い」
「課長……」
「はじめの頃は俺の後ろくっ付いて来るだけの仔ガモみてえなガキだったのにな。今じゃ肩並べて歩いてる。追い越されんのもそう先の事じゃねえんだろうよ」
「そんな事……」
「いや、お前はいい男だ。なんやかんや見守ってたらメキメキ成長して順調に立派な男前に育った。その上現在進行形の将来が楽しみなタイプときた。そんなお前の傍にいたらまあ、うっかりクッソ抱かれてえと結構な重さで思っている自分にある日ふと気づいた訳だ」
「ちょっと……。いい話……」
最後に感動してきたところをブチ壊され、じとっとした目をやるとわしゃわしゃと頭を撫でられた。子ども扱いに思う所はあるけれど俺はこの人から離れない。
お互い裸で、シーツを替えたベッドの上で隣同士向き合って横たわり、くたった体を休めながらも二人してどこかしら相手に触れていた。
俺も自分の手を伸ばし、課長の頬へと指先を当てる。その手をすっと上から握られ、距離を詰めるとしかしそこでふいっと目を逸らされた。
「……幻滅したか」
「は?」
「普段お前に偉そうなこと言ってる上司は実の所こんなどうしようもねえビッチ野郎だ。呆れるだろ」
「何言って……っ」
「いい。慣れてる。良く言われる事だ。事実だしな」
「え」
よく言われんの。マジか。確かにすごかったけど色々。でもだからって。
「なんでそんな……酷いこと言うような奴とばっか寝るんですか」
「大抵は行きずりだから仕方ねえ。ヤリたくなったときは適当に男漁りに出て、そこそこ整ってる奴捕まえてくる。一発突っ込んでもらえれば満足するから相手の名前さえ知らない事の方が多くて…」
「ちょ、も、もういいです、言わなくていいんで!」
咄嗟に腕を伸ばし、自嘲を通り越してヤケクソに言い連ねるこの人を抱き寄せた。しなやかな線を直に感じ、ぎゅうぎゅうに抱き込んでも課長はじっと許してくれる。
「……かちょう」
「ああ」
「……他の人とはもうしないで下さい」
「なんだよ。女とヤレって?」
「じゃなくて! 俺だけにしてください!!」
ハハッと笑った課長。馬鹿にされたのは分かって口を尖らせた。
「ガキ」
「どうせガキですよ」
「まだまだ育て甲斐があっていいじゃねえか」
その言葉にぱああっと気分が上昇する。期待感と共に課長を見つめると柔らかく微笑まれて思わず見惚れた。
頼りになる兄貴みたいなカッコイイ上司と思ってきたけど、人の見方なんてきっかけさえあればガラリと変わるもののようだ。
物凄く、課長が可愛く見えて仕方ない。色気の尋常でない綺麗な上司は、男心をこれでもかと巧妙に突いてくる。
長い睫が揺れ動き赤い唇は微かに弧を描き、艶やかなその表情に魅入って釘付けになる。煩い心音を聞きながら眺めていたら、ちゅっと軽く唇にキスされたのにすぐさま気づくことはできなかった。
「……え」
「ボケッとしてんな。食いたくなるだろ」
「へ……」
余裕綽々に大人の笑顔を見せつけられ、思わぬ食いたい発言に大人しくしていた下半身が疼く。あれだけの衝撃的映像を目の当たりにした俺の脳は、課長の一言一句を拾ってはさっきまでの夢心地体験を思い起こさせた。
気づかれないようにゆっくりと尻を後ろに突き出して課長から下半身を遠ざける。しかしそんな動きで目敏く俺の状態に勘づいたこの人は、逃げるなんて許さないとばかりにグイッと自分の膝を俺の股間に捻じ込ませてきた。
「ちょっ……!」
いたずらに与えられる刺激。顔が真っ赤になっていく俺を見て課長はピッタリと俺の体に擦り寄った。
「コラ。冗談だっての。治めろ」
「す、みません。努力するので足退けて……」
「若えよなホント。また今度な」
「は……い……」
確実に遊ばれている。食い込まされていた膝が引き、俺は懇々と頭の中で円周率を唱えた。
しかし必死になる余りそれはどうやら口にまで出ていたようで、しばらく俺を眺めていた課長も途中で堪えきれなくなったらしい。ふっと吹き出し、頭をぐっしゃぐしゃに撫で回された。
抜けないガキ扱い。俺の戦いはこれからだ。
「なあ」
「はい……?」
「明日ヒマか」
「……はい」
とりあえず、手始めにデートから。
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