51 / 81
謝罪
しおりを挟む
「マクス」
練習場で無我夢中で剣を振り続けるマンクスフドに声をかける。
他の騎士達には軽く挨拶を済ませてこら一直線でマンクスフドの元に来た。
「お嬢様」
その声は悲しみや失望、救いを求めている感じだった。
「少し休憩にしない。お茶を用意したの。一緒に食べよう」
練習場に向かう途中で会った使用人にお茶の準備をするよう頼んでから来た。
「はい、お嬢様」
ヘリオトロープは少し離れたところで待機させ人払いして二人でお茶をする。
「マクス。本当にごめんなさい」
「お嬢様、頭をお上げください。私のような者にそのようなことをする必要はございません」
「いいえ、これはしなくてはならないことよ。私達は貴方の信頼を裏切ってしまったのだから。謝っても許されないことをしてしまったわ。ごめんなさい」
もう一度頭を下げ謝罪をする。
「それなら私も同罪です。公爵家に忠誠を誓ったのにも関わらず仇なす者を見つけることができなかったせいで、このような事態にしてしまいました。本当に申し訳ありません」
跪いて謝罪をする。
「立って、マクス。今の私達にそんな風にしてもらう権利なんてないわ」
跪いて忠誠を示すマンクスフドに申し訳なくなる。
「それは違います。お嬢様は何一つ悪くありません。悪いのは全てお嬢様方を裏切った者達のせいです。そして、その者達を見つけることができなかった我々のせいです」
「いいえ、きちんと指導出来なかった私のせいよ。貴族と使用人その立場を曖昧にし線引きしなかった私のせいよ」
マーガレットの世話をする使用人達を思い出す。
あの中の殆どがマーガレットのことを馬鹿にしている。
勿論マーガレットの前だけでサルビアやカトレア、マンクスフドの前では絶対にしない。
「もうこんなことが起きないようきちんとするわ」
そう言いながら申し訳なさそうな顔をするマーガレットに何も言えない自分に腹が立つのと同時に使用人達にも腹を立てる。
今の話し方だとそういう態度をしている使用人達がいるのではないかと気づく。
今までそんな風に感じたことはなかったが、マーガレットの前だけでもしかしたらそんな態度をとっているのではないかと疑う。
マーガレットは町の子供達のせいで服を汚されても笑って許し一緒に遊んだりする。
良く言えば優しく器が大きい。
悪く言えば一部の人間に貴族としての品格がないと馬鹿にされてしまう。
使用人達の中にもそう思っている人物がいる。
その事実が腹ただしく許せない。
主人に仕える身でありながら礼を尽くさず馬鹿にするなどあってはならない。
見つけ次第八つ裂きにしてやりたいと思ってしまう。
「はい、わかりました。ですがお嬢様、これだけは覚えておいてください。お嬢様は何一つ悪くありません。使用人の分際で主人を裏切るなど許されざる行為。一度忠誠を誓ったのならその身を捧げなくてはならないのだと。それが騎士であれ使用人であれそれは変わらないのだと。もし、裏切り者のせいで心が痛むようなら私におっしゃってください。私の手で終わらせますので」
マーガレットが産まれたときサルビアにこれからはマーガレットが主人だと言われずっと守ってきた。
最初はサルビアの命だっだが、七歳のときに忠誠を誓い主人と認めた。
小さい子供がある貴族の服を汚してしまい罵倒され連れていかれそうになっていた。
周りの大人達はただ見るだけで何もしなかったが、マーガレットはその光景を見た瞬間走り出しその子供を背に隠して貴族に立ち向かった。
マンクスフド達はまさかの行動に目を見張り出遅れたがすぐにその場にいきマーガレットを守るようにその貴族の前に立った。
マーガレットがブローディア家の娘とわかった瞬間態度を変え逃げ出すようにその場を去っていった。
あの後屋敷に戻りどうしてあのような行動を取ったのか尋ねると「困っている人がいたら助けるのは当然のことでしょう」と。
確かに当然のことだがそれをできる人間は少ない。
貴族の人間なら尚更自分達にとって都合の良いようにする。
ーーああ、この子はそういう子ではない。旦那様と奥様の子だからとか関係なく、忠誠を誓いたい。
そう思い、マンクスフドはマーガレットに忠誠を誓い主人として認めた。
「ありがとう、マクス。でも大丈夫よ。これは私がやらなければならないことだから」
マーガレットならそう言うと思った。
暫く二人共何も話さなかった。
「マクス。彼はどう」
「そうですね。将来が楽しみです。後一、二年程で国に名を馳せる騎士になるかと」
マンクスフドはカラントの事を高く評価していた。
「そう。それは楽しみね」
当然だと思った。
五年後、カラントはブローディア家を潰し大陸中に名を馳せ国一番の騎士として認められる。
「はい」
少し複雑な気持ちになる。
罪悪感が生まれる。
マンクスフドは過去の記憶がない。
カラントが自分達を殺した事を知らない。
だから、自分のことのようにカラントの成長を喜べる。
ずっと守って来てくれた大切な兄みたいな存在が殺したい程憎い相手と仲良くなっていくのをこれから見守らないといけないと思うとどうしてもやるせない気持ちになる。
「じゃあ、そろそろ行くわ。楽しかったわ。また一緒にお茶しましょう」
あれからいろんな話をしてその時を楽しんだ。
これ以上マンクスフドの稽古の邪魔をする訳にはいかないと部屋に戻ると。
マンクスフドは稽古を見にくるかと尋ねるが「また今度にする」と言って別れる。
練習場に戻るとカラントがやってきてマーガレットの事を尋ねる。
「また今度見にくるって。お嬢様がくるときの為に頑張って少しでも強くなろう」
な、と微笑みかけ頭を撫でる。
「は、い。が、がんば、ります。ごしどう、よろ、しく、お、おねがい、します」
マーガレットを守れるよう強くなりたいと。
そのためにはマンクスフドの指導が必要不可欠。
頑張って、頑張って、一日でも早くマーガレットの専属騎士になれるよう稽古に励もう。
そう心に誓う。
練習場で無我夢中で剣を振り続けるマンクスフドに声をかける。
他の騎士達には軽く挨拶を済ませてこら一直線でマンクスフドの元に来た。
「お嬢様」
その声は悲しみや失望、救いを求めている感じだった。
「少し休憩にしない。お茶を用意したの。一緒に食べよう」
練習場に向かう途中で会った使用人にお茶の準備をするよう頼んでから来た。
「はい、お嬢様」
ヘリオトロープは少し離れたところで待機させ人払いして二人でお茶をする。
「マクス。本当にごめんなさい」
「お嬢様、頭をお上げください。私のような者にそのようなことをする必要はございません」
「いいえ、これはしなくてはならないことよ。私達は貴方の信頼を裏切ってしまったのだから。謝っても許されないことをしてしまったわ。ごめんなさい」
もう一度頭を下げ謝罪をする。
「それなら私も同罪です。公爵家に忠誠を誓ったのにも関わらず仇なす者を見つけることができなかったせいで、このような事態にしてしまいました。本当に申し訳ありません」
跪いて謝罪をする。
「立って、マクス。今の私達にそんな風にしてもらう権利なんてないわ」
跪いて忠誠を示すマンクスフドに申し訳なくなる。
「それは違います。お嬢様は何一つ悪くありません。悪いのは全てお嬢様方を裏切った者達のせいです。そして、その者達を見つけることができなかった我々のせいです」
「いいえ、きちんと指導出来なかった私のせいよ。貴族と使用人その立場を曖昧にし線引きしなかった私のせいよ」
マーガレットの世話をする使用人達を思い出す。
あの中の殆どがマーガレットのことを馬鹿にしている。
勿論マーガレットの前だけでサルビアやカトレア、マンクスフドの前では絶対にしない。
「もうこんなことが起きないようきちんとするわ」
そう言いながら申し訳なさそうな顔をするマーガレットに何も言えない自分に腹が立つのと同時に使用人達にも腹を立てる。
今の話し方だとそういう態度をしている使用人達がいるのではないかと気づく。
今までそんな風に感じたことはなかったが、マーガレットの前だけでもしかしたらそんな態度をとっているのではないかと疑う。
マーガレットは町の子供達のせいで服を汚されても笑って許し一緒に遊んだりする。
良く言えば優しく器が大きい。
悪く言えば一部の人間に貴族としての品格がないと馬鹿にされてしまう。
使用人達の中にもそう思っている人物がいる。
その事実が腹ただしく許せない。
主人に仕える身でありながら礼を尽くさず馬鹿にするなどあってはならない。
見つけ次第八つ裂きにしてやりたいと思ってしまう。
「はい、わかりました。ですがお嬢様、これだけは覚えておいてください。お嬢様は何一つ悪くありません。使用人の分際で主人を裏切るなど許されざる行為。一度忠誠を誓ったのならその身を捧げなくてはならないのだと。それが騎士であれ使用人であれそれは変わらないのだと。もし、裏切り者のせいで心が痛むようなら私におっしゃってください。私の手で終わらせますので」
マーガレットが産まれたときサルビアにこれからはマーガレットが主人だと言われずっと守ってきた。
最初はサルビアの命だっだが、七歳のときに忠誠を誓い主人と認めた。
小さい子供がある貴族の服を汚してしまい罵倒され連れていかれそうになっていた。
周りの大人達はただ見るだけで何もしなかったが、マーガレットはその光景を見た瞬間走り出しその子供を背に隠して貴族に立ち向かった。
マンクスフド達はまさかの行動に目を見張り出遅れたがすぐにその場にいきマーガレットを守るようにその貴族の前に立った。
マーガレットがブローディア家の娘とわかった瞬間態度を変え逃げ出すようにその場を去っていった。
あの後屋敷に戻りどうしてあのような行動を取ったのか尋ねると「困っている人がいたら助けるのは当然のことでしょう」と。
確かに当然のことだがそれをできる人間は少ない。
貴族の人間なら尚更自分達にとって都合の良いようにする。
ーーああ、この子はそういう子ではない。旦那様と奥様の子だからとか関係なく、忠誠を誓いたい。
そう思い、マンクスフドはマーガレットに忠誠を誓い主人として認めた。
「ありがとう、マクス。でも大丈夫よ。これは私がやらなければならないことだから」
マーガレットならそう言うと思った。
暫く二人共何も話さなかった。
「マクス。彼はどう」
「そうですね。将来が楽しみです。後一、二年程で国に名を馳せる騎士になるかと」
マンクスフドはカラントの事を高く評価していた。
「そう。それは楽しみね」
当然だと思った。
五年後、カラントはブローディア家を潰し大陸中に名を馳せ国一番の騎士として認められる。
「はい」
少し複雑な気持ちになる。
罪悪感が生まれる。
マンクスフドは過去の記憶がない。
カラントが自分達を殺した事を知らない。
だから、自分のことのようにカラントの成長を喜べる。
ずっと守って来てくれた大切な兄みたいな存在が殺したい程憎い相手と仲良くなっていくのをこれから見守らないといけないと思うとどうしてもやるせない気持ちになる。
「じゃあ、そろそろ行くわ。楽しかったわ。また一緒にお茶しましょう」
あれからいろんな話をしてその時を楽しんだ。
これ以上マンクスフドの稽古の邪魔をする訳にはいかないと部屋に戻ると。
マンクスフドは稽古を見にくるかと尋ねるが「また今度にする」と言って別れる。
練習場に戻るとカラントがやってきてマーガレットの事を尋ねる。
「また今度見にくるって。お嬢様がくるときの為に頑張って少しでも強くなろう」
な、と微笑みかけ頭を撫でる。
「は、い。が、がんば、ります。ごしどう、よろ、しく、お、おねがい、します」
マーガレットを守れるよう強くなりたいと。
そのためにはマンクスフドの指導が必要不可欠。
頑張って、頑張って、一日でも早くマーガレットの専属騎士になれるよう稽古に励もう。
そう心に誓う。
2
あなたにおすすめの小説
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる