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二ヶ月
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「信近様」
門下生の一人に名を呼ばれ今の光景を見られたのではと焦りバッと後ろを振り向く。
「どうした」
近くまできた門下生に動揺しているのを気づかれないように尋ねる。
「あらかた捜しましたが、生存者はいませんでした」
「そうか。悪いがもう少し先でお前達は捜してみてくれ。私は火を消す。頼んだぞ」
生存者がいないならさっさと火を消して撤退しようと思いそう指示を出す。
門下生は返事すると他の門下生達を率いてもう少し先の方を捜しにいく。門下生達は二手に分かれ大声で叫びながら生存者がいないか捜す。
「やるか」
息を深く吐き、霊力を両手に集め大量の水を発生させる。龍を作り町に覆う火を信近を中心に回りながら火を消していく。
夜が明ける頃には火も完全に消え、数名の生存者が瓦礫の下から助け出された。
生き残った人達は泣いて喜び、妖魔から命懸けで守ってくれた桐花家に感謝した。
二ヶ月後。
「すごいな。流石、桐花家。あっという間に町が元通りになった」
妖魔の襲撃で崩壊した町が桐花家の力でたった二か月で元通りになる。
「やっぱり、信近様は凄いわ。私達がこうしてまたここに住めるのは信近のおかげよ」
女性は頬を赤らめて信近を褒める。
「それを言うなら寧々様もだぞ。寧々様が張った結界のおかげで俺達は助かったんだ。寧々様がいなければ俺達は今ここにいないんだ。生きてられるのは寧々様のお陰だ」
「そうだな。二人のお陰で俺達は生き残れ、またここに住める。二人がいればここは安全だ。何の心配も要らないな」
一人の男の言葉に全員が大きく頷く。
二か月前にあった襲撃を忘れた訳ではないのに楽観視する。それに今、信近や寧々のことを褒める人達は舞桜が亡くなってから来たのでこの町が昔どうだったか知らない。
知っていたらこんなことを言わない。
舞桜が生きて当主だった頃は妖魔が襲撃してくることも、この町が危機に陥ることも、人同士で争いが起こることなどあり得なかった。
この町で人が死ぬのは寿命か医者でも治せない病だけだったが、信近が当主になってからは人が死ぬのは妖魔や人によって殺された者が大勢いた。
町の雰囲気も陽気で笑顔が絶えない町から貧富の差が激しく人を見下す町にと変わる。
だから、誰もこの町が最悪な町になった事を知らない。むしろ、前住んでいた所より良い町だと思っていた。
「それに比べてあの娘は本当に仕えないよな。いつまで引きこもっているつもりだ」
あの娘。それは未桜のことだ。
町の人達にとって未桜は桐花家の長女として自分達を守る人だと最初は認識していたが、信近、寧々、末姫達のせいで最悪な娘という認識に変わる。
力は自分を守る為にしか使いたくない。
自分達のような人間に力を使いたくない。
そんな人間だと思われていた。
「本当にその通りよね。私達の為に力を使う気が無いならどこかに行ってくれないかしら。図々しいにも程があるわ」
美しい女性が悲しい表情で言うと周りの男性達はポッと顔を赤くする。
「桐花家の血を受け継いでいるからって町のために力を使わないなら、桐花家の名を名乗る資格などないだろう。恥ずかしくないのか。先祖は町のためにその身を捧げたというのに」
深く息を吐き未桜にたいする不満を口にする。
「きっと大して霊力が無いのよ。恥ずかしくて家から出られないんじゃ無いかしら」
クスクスと馬鹿にしたように笑う。
「だからって、安全な場所に隠れるのは違うだろう。今回の襲撃で大勢の人が死んだ。例え大した力が無くても桐花家を名乗るなら俺達を命懸けで助けるべきだろう」
「仕方ないよ。出来損ないの娘なんだから。妖魔に立ち向かう勇気もない小娘なんだよ。きっと」
自分達の事は棚に上げてよく言う。
もしも、ここに助さんがいたら全員に水をぶっかけて大声で怒鳴り散らしただろう。
「はぁーー。何でここにいるんだろうね。そもそも、何で産まれてきたんだろう。先代の当主は強かったらしいけど、娘にはその力を受け継がせれなかったんだね。もっとマシな子を産めなかったのかしら」
「本当、その通りだ。もっとマシな娘を産んでいたら、俺達はこんな思いしなかったし、大勢死ぬこともなかった。親子揃って使えない」
「おい、その言い方だと信近様も使えないってことになるぞ」
一人の男が注意すると「そういうつもりで言ったんじゃない!信近様は俺達の恩人だぞ!俺がそんなこと言う訳ないだろう!」と胸ぐらを掴む。
「わかってるよ。でも、他の人が聞いたらそう思んじゃないかと」
手を上げ勘弁してくれと苦笑いする。
チッ。
大きな舌打ちをすると男を突きとばす。
「まぁ、確かにお兄さんの言う通り信近様は別としてあの親子は使いものにはならないわね」
その場にいた一人の女性が場の空気を変えようと明るい口調で言い、コホンと咳払いしてこう続ける。
「それに比べて末姫様は立派よね。寧々様を産んだのだから」
「ああ、そうだな。寧々様を産んでくださった末姫様には感謝しかないな。いつも、俺達のことを気にかけてくださってる。あんなに優しい人はこの世にいないよ」
さっまで男の胸ぐらを掴んで怒鳴っていた男かと疑いたくなるほど表情が違った。寧々の話になった瞬間恋する乙女のような表情になる。
ここにいる誰もが察した。
男のは寧々に惚れているのだと。
「それに比べて未桜だったか、名前は。あんな女さっさと死んでしまえばいいのに。寧々様のように美しい訳でも強いわけでもない。俺達、町の人達に好かれている訳でもない。ただ、桐花家の血を受け継いでいるだけのお高くとまった嫌な女だろ」
例え血は受け継いでいなくても、寧々の方が桐花家の人間として相応しいと。
男その考えに全員その通りだと口々に声に出して賛同する。
「本当何でそんな奴が生きてるんだろうね。死ねば良かったのに」
ボソッと少年が呟く。
その声は男のとは違い本気でそう思っていた。
男はふざけて冗談みたいな感じで言ったが、少年は心の底から死んで欲しいと願っていた。
今回の襲撃で少年は目の前で家族を殺されこれから一人で生きていかないといけない。
少年が助かったのは運良く出くわした倫太郎が、妖魔を倒してくれたから。
自分がこんな目にあったのも家族が殺されたのも未桜が義務を果たさず一人安全な所に隠れていたせいだと思い恨んでいた。
「そうね。本当に死んでくれないかしら」
少年の意見に一人また一人と未桜の死を望む者が増えていく。
門下生の一人に名を呼ばれ今の光景を見られたのではと焦りバッと後ろを振り向く。
「どうした」
近くまできた門下生に動揺しているのを気づかれないように尋ねる。
「あらかた捜しましたが、生存者はいませんでした」
「そうか。悪いがもう少し先でお前達は捜してみてくれ。私は火を消す。頼んだぞ」
生存者がいないならさっさと火を消して撤退しようと思いそう指示を出す。
門下生は返事すると他の門下生達を率いてもう少し先の方を捜しにいく。門下生達は二手に分かれ大声で叫びながら生存者がいないか捜す。
「やるか」
息を深く吐き、霊力を両手に集め大量の水を発生させる。龍を作り町に覆う火を信近を中心に回りながら火を消していく。
夜が明ける頃には火も完全に消え、数名の生存者が瓦礫の下から助け出された。
生き残った人達は泣いて喜び、妖魔から命懸けで守ってくれた桐花家に感謝した。
二ヶ月後。
「すごいな。流石、桐花家。あっという間に町が元通りになった」
妖魔の襲撃で崩壊した町が桐花家の力でたった二か月で元通りになる。
「やっぱり、信近様は凄いわ。私達がこうしてまたここに住めるのは信近のおかげよ」
女性は頬を赤らめて信近を褒める。
「それを言うなら寧々様もだぞ。寧々様が張った結界のおかげで俺達は助かったんだ。寧々様がいなければ俺達は今ここにいないんだ。生きてられるのは寧々様のお陰だ」
「そうだな。二人のお陰で俺達は生き残れ、またここに住める。二人がいればここは安全だ。何の心配も要らないな」
一人の男の言葉に全員が大きく頷く。
二か月前にあった襲撃を忘れた訳ではないのに楽観視する。それに今、信近や寧々のことを褒める人達は舞桜が亡くなってから来たのでこの町が昔どうだったか知らない。
知っていたらこんなことを言わない。
舞桜が生きて当主だった頃は妖魔が襲撃してくることも、この町が危機に陥ることも、人同士で争いが起こることなどあり得なかった。
この町で人が死ぬのは寿命か医者でも治せない病だけだったが、信近が当主になってからは人が死ぬのは妖魔や人によって殺された者が大勢いた。
町の雰囲気も陽気で笑顔が絶えない町から貧富の差が激しく人を見下す町にと変わる。
だから、誰もこの町が最悪な町になった事を知らない。むしろ、前住んでいた所より良い町だと思っていた。
「それに比べてあの娘は本当に仕えないよな。いつまで引きこもっているつもりだ」
あの娘。それは未桜のことだ。
町の人達にとって未桜は桐花家の長女として自分達を守る人だと最初は認識していたが、信近、寧々、末姫達のせいで最悪な娘という認識に変わる。
力は自分を守る為にしか使いたくない。
自分達のような人間に力を使いたくない。
そんな人間だと思われていた。
「本当にその通りよね。私達の為に力を使う気が無いならどこかに行ってくれないかしら。図々しいにも程があるわ」
美しい女性が悲しい表情で言うと周りの男性達はポッと顔を赤くする。
「桐花家の血を受け継いでいるからって町のために力を使わないなら、桐花家の名を名乗る資格などないだろう。恥ずかしくないのか。先祖は町のためにその身を捧げたというのに」
深く息を吐き未桜にたいする不満を口にする。
「きっと大して霊力が無いのよ。恥ずかしくて家から出られないんじゃ無いかしら」
クスクスと馬鹿にしたように笑う。
「だからって、安全な場所に隠れるのは違うだろう。今回の襲撃で大勢の人が死んだ。例え大した力が無くても桐花家を名乗るなら俺達を命懸けで助けるべきだろう」
「仕方ないよ。出来損ないの娘なんだから。妖魔に立ち向かう勇気もない小娘なんだよ。きっと」
自分達の事は棚に上げてよく言う。
もしも、ここに助さんがいたら全員に水をぶっかけて大声で怒鳴り散らしただろう。
「はぁーー。何でここにいるんだろうね。そもそも、何で産まれてきたんだろう。先代の当主は強かったらしいけど、娘にはその力を受け継がせれなかったんだね。もっとマシな子を産めなかったのかしら」
「本当、その通りだ。もっとマシな娘を産んでいたら、俺達はこんな思いしなかったし、大勢死ぬこともなかった。親子揃って使えない」
「おい、その言い方だと信近様も使えないってことになるぞ」
一人の男が注意すると「そういうつもりで言ったんじゃない!信近様は俺達の恩人だぞ!俺がそんなこと言う訳ないだろう!」と胸ぐらを掴む。
「わかってるよ。でも、他の人が聞いたらそう思んじゃないかと」
手を上げ勘弁してくれと苦笑いする。
チッ。
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「まぁ、確かにお兄さんの言う通り信近様は別としてあの親子は使いものにはならないわね」
その場にいた一人の女性が場の空気を変えようと明るい口調で言い、コホンと咳払いしてこう続ける。
「それに比べて末姫様は立派よね。寧々様を産んだのだから」
「ああ、そうだな。寧々様を産んでくださった末姫様には感謝しかないな。いつも、俺達のことを気にかけてくださってる。あんなに優しい人はこの世にいないよ」
さっまで男の胸ぐらを掴んで怒鳴っていた男かと疑いたくなるほど表情が違った。寧々の話になった瞬間恋する乙女のような表情になる。
ここにいる誰もが察した。
男のは寧々に惚れているのだと。
「それに比べて未桜だったか、名前は。あんな女さっさと死んでしまえばいいのに。寧々様のように美しい訳でも強いわけでもない。俺達、町の人達に好かれている訳でもない。ただ、桐花家の血を受け継いでいるだけのお高くとまった嫌な女だろ」
例え血は受け継いでいなくても、寧々の方が桐花家の人間として相応しいと。
男その考えに全員その通りだと口々に声に出して賛同する。
「本当何でそんな奴が生きてるんだろうね。死ねば良かったのに」
ボソッと少年が呟く。
その声は男のとは違い本気でそう思っていた。
男はふざけて冗談みたいな感じで言ったが、少年は心の底から死んで欲しいと願っていた。
今回の襲撃で少年は目の前で家族を殺されこれから一人で生きていかないといけない。
少年が助かったのは運良く出くわした倫太郎が、妖魔を倒してくれたから。
自分がこんな目にあったのも家族が殺されたのも未桜が義務を果たさず一人安全な所に隠れていたせいだと思い恨んでいた。
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