汚された初恋

アリス

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プロローグ

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「お前は自分が何を言っているのか理解しているのか?」

菊呂翔(ひろと)は目の前の男の言葉を理解することができなかった。

荒唐無稽、支離滅裂、という言葉が似合うほど、目の前の男が発する言葉はどれも意味不明だった。

菊呂翔の言葉に男は気分を害することはなく、さも当然だ、と言わんばかりに満足げに頷いた。

自分以外の人間にこの現象を理解することなど誰にもできない。

そう告げられたが、理解したくもないという言葉を菊呂翔は飲み込んだ。

菊呂翔は目の前の男が正気ではないとわかっていた。

自分と二歳しか歳は変わらないのに、髪は染めた綺麗な白髪ではなく、ストレスで白くなっただけのお世辞にも綺麗とは言えない髪。

顔はやつれている。

男の五年前の写真を入手したが、そこに写っていたのは顔が整っている好青年で、異性から物凄く好意を寄せられる顔立ちをした青年だった。

目も輝いていたのに、今では死んだ魚以上に不気味で黒く塗りつぶされたような光を全く宿していない目をしている。

目の前の男と写真の男が同一人物だと言われても信じられないほど、別人で老けている。

何かに取り憑かれていると疑ってしまうほどだ。

いや、取り憑かれているのかもしれない。

菊呂翔は高校生のときにこれと似たことがあったことを思い出した。

そのときも、殺人犯の男は取り憑かれていた。

きっと、目の前のにいる男も何かに取り憑かれているのだろう。

菊呂翔は思った。

この事件は見ることも感じることも、特別な力を持たない、平凡で一般人の自分の手には負えないものだと。
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