君が見せた私の夢

浅村 英字

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第一話 蘇る思い出

過去を再び

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 昨日から私は転校して、新しい学校に通うことになった。新しい学校では芸能教育環境が徹底されていて、私の夢である歌手に大きく近づくための生活を日々過ごしていける。

「昨日みたいなヤンキーはいないみたいだね。良かった」

 私はホッとしたと同時に懐かしさを求めていた。
 駅に着く直前、私はある人の姿に視線が留まった。

「おはよう、緋奈ちゃん」

「あ、おはよう鈴乃ちゃん。昨日はありがとう」

 相手は、昨日いきなり教室内で大恥をかき、昼休みから私と屋上前の踊り場で話し合って、仲良くなった緋奈ちゃん。

「昨日はありがとうね。お陰さまで、今日も楽に登校できるよ」

「そんなぁ、私はただ緋奈ちゃんと仲良くなりたいだけだよ」

 私にはなんとなく言葉に引っ掛かった気がした。何か、後ろめたい感情があるのか・・・。

「それにしても、あの真鳳にちゃんとした彼女がいたなんて思っても見なかったよ」

「私からすればあんな男のどこがいいのかすら分からないんだけどね」

 昨日にあんな会話をされてしまえば、私も本音を話してしまう。

「だよね、出会い方がが結構凄かったもんね」

「ほんと、そう」

「私でも鈴乃みたいな出会い方してたら嫌いになりそう」

 二人で駅の改札を通り、電車が来るのを待っていた。

「でも、すごいね。あの真鳳が学年一位の人気者だなんて思ってもみなかったよ」

「そういうけど、今ではなんとなく分かる気がするでしょ?あのバカがモテる理由」

 最初は、糞食らえって思ってた分、今ではギャップというか、時折見せる優しさになんとなく、いいなと思ってしまう。

「うん、あんなクソ野郎でも、他の人に言えないことを、あの人は何も言わずに代弁してくれる。言えないことでも、言ってくれる。そんなところがいいんだろうね」

 上り電車乗り場で、私と緋奈ちゃんでそんなことを話していると、後ろから応援がきた。

「でも、言葉遣いも悪いし、一つ一つの態度も大きくてムカつきどころしかない。そんなクソ野郎なのに、俺以上にモテやがる・・・」

「ほんと、私以上に煌太は真鳳の悪口言うよね」

「本当にそうだね。煌太くんはどんな立ち位置なのかわからないよ」

「そうか?あいつには何を言っても言わなくても、あのナルシストにはわかっちまうんだから」

 驚いた。正直、この二人が真鳳と仲がいいのが不思議でしかない。仲がいいのに二人とも、私以上に真鳳くんの悪口を言うんだから。

「悪かったな」

 あ、ヤバい。悪魔が来た・・・。

「クソ野郎で、言葉遣いが悪くて、一々態度が大きくて?ムカつきどころしかないような、ナルシストで」

 私たちは後ろを見て、顔を青く染めた。

「げ、お前なんでいつも俺たちのいて欲しくないところにいるんだよ」

 煌太くんの言った通り、後ろに現れた真鳳くんはいつも私のいて欲しくない時によく姿を見せる。

「別に、俺がここから乗るのくらい普通に分かるだろ。俺がいることくらい先に考慮していろよ」

 やっぱり、この男、私は嫌い。

「別に俺はお前に嫌われようとも別に構わないけど」

 私の心を読む彼にやっぱり殺意がすごい溜まっていく。

「いや、鈴乃ちゃん?流石に怒りが表に出過ぎだよ。俺ですら分かるくらいだよ?」

  私はどうやら分かりやすいらしい。煌太くんにも私の感情がバレるなんて。

「ちょっと君、いいかな?」

 誰?ここで話しかけるのなんて大層すごい気力の持ち主だな。だって現れたのは、中年男性のような見た目をしていて、スーツ姿。仕事前なのだろうか。でも、登校中の高校生の肩を掴み、話しかける、普通はしない行動だから。

「僕で良ければ、話聞きますけど?おじさん」

 話しかけられたのは、私だったのに、真鳳くんが代わりに名をあげた。

「いや、僕は君じゃなくてそこのお嬢さんに話しかけたんだけど?」

「高校生っていうのはいくらなんでも理解してもらってるでいいんですよね?」

 なんだか、二人の目つきが変わっていくのが分かった。ちょっとずつ当たりの雰囲気も暗くなっていく。

「もちろん、アンケートのようなものですよ」

 男の人は笑顔でバインダーを確認して、私にさらに、にっこりと笑みをアピールしてくる。

「駅構内で、ですか?」

「何かおかしいですか?」

「駅構内でのこういった行動は駅員さんに許可が必要のはず」

「えぇ、もちろん。許可は得ていますよ?」

 二人の間の空気はだんだん暗くなっていくのが分かった。そして周りの人にもその影響が現れ始めた。

「なら、許可証くらい持っているのが普通じゃないですか?周りの人に配慮をするとしたら、普通なんですけど」

「あぁ、そういうのはないんですよ。構内でのこういった行為は珍しいので許可証自体ないんですから」

「ふん・・・」

 真鳳くんが少し笑った気がした。

『まもなく、上り方面の電車が参ります』

「すいません。僕らはこの電車に乗るのでこれ以上は時間を割くのは」

 真鳳くんは冷静ですごい。単純に言葉で相手を詰めていく。流石にこれで全部終わるよね。

「ですが、お邪魔したのは申し訳ないですし、今日の午後六時半頃で良ければアンケートにでも彼女を答えさせますよ?」

 え、終わらないの?なんで私を巻き込む。

「いえ、大丈夫ですよ。他の人を当たるので」

「いや、この状況を見れば、他の人もあなたの質問に答える人なんてほとんどいないんじゃ?」

「いや、それは・・・」

「それに、ここで断るのなら、僕たちにも一応考えてることがあるんですけど?」

 この人に私には恐怖感を得た。今までとはまた違う、別次元の恐怖感を。

「・・・・・・」

「あと、その時間にちゃんと来てもらえる証拠として、あなたの身分を証明出来るものの写真を撮らせてもらえますか?」

 彼は坦々と言葉をつなげる。

「個人情報はそう簡単に見せられるような・・・」

 男性が話す中、急に彼は言葉を見失ったように黙る。

「何か、不都合が?」

 その時、彼が黙った理由が私にも分かった。真鳳くんの台詞以上に彼の顔は恐怖を植え付けるようだった。

「高校生に、そう易々と個人情報を与えることが出来ないんだけど」

「それは、社会的にですか?それとも・・・?」

 彼の目は恐怖を、圧力を、話しかけたおじさんに植え付けていた。

「うぅ・・・」

「今の状況をよくご存じで?」

 長い沈黙が、彼らに注目の目を集めていた。

「分かった。しかし、社会的にでもなんでも、ここでは教えられない」

「いいでしょう。だったら、あなたの電話番号くらいは教えてもらえますよね?」

 何でだろう、この風景に見覚えがある。この状況に懐かしみを感じる。

「はい、私の電話番号は・・・」

「結構です。俺の番号をここで教えます。今、そのポケットの中にある携帯で電話してください」

 真鳳の顔は、懐かしかった。どこか、シンくんに似ていた。

「はい・・・」

 真鳳くんはなんだか勝ち誇った顔をしていた。
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