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第三話 再会と人気
嘘
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お昼ご飯を食べている間、以前見た夢の意味を考えていた。
「どうしたの?何か浮かない顔してるぞ」
「うん?そうかな・・・、別に普通だけど」
もし疲れている顔をているとすれば、きっとあの夢のせいだ。どうして真鳳だったのか、私の中で真鳳はどういう人間なのか、私自身がもっと知りたい。
「そ?ならいいけど。あ、今日って真鳳来るよな?」
「さあ、来ないんじゃない?」
彼が学校を休む頻度は、日に日に増えていった。今週登校したのも確か月曜日の午前中くらい、今日は木曜だってのに。
「よっ!」
お昼ご飯を食べるのに夢中で前を見ていなかった。だから彼の気配に気が付かなかった。そして、他の人も一緒だったみたいだ。
「真鳳、どうした?」
「あ?いや、残りの仕事は放課後だから」
煌太の質問に淡々と答え、自分の席に着く。
「お昼は?」
「差し入れの中に弁当あったからそれ食った。んでも少し減ってんだよね」
そう言って私の方を見る。
「悪い、ちょっと鈴乃借りていいか?」
目が合ったのは、私の弁当の中身を確認したからのように思えた。
「分かった。ごめん、ちょっと行って来る」
教室を後にして向かったのは、緋奈が泣いていたあの場所だった。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあってな」
ずっと真剣な顔をしている真鳳は、暗闇の中に入ることで、季節外れの冷たい風を吹かせた。恐怖心を帯びながらも、彼からの言葉を待つ。
「最近の緋奈、調子どうかなって」
重たい荷物がすっと降りた。
「そんなこと?別に気にすることないと思うよ?ずっと元気だし、いい感じでも愚痴も言ってるし」
私は正直に緋奈のことを話した。大丈夫そう伝えたはずなのに冷たい風を吹き止まない。
「そうか。それじゃあ、本題なんだけど」
降りた荷物がまた私の肩に乗り、重圧という言葉が目視できた。喉が渇き、右足が引く。
「お前、何者なんだ」
彼の演技力は、私の予想を超えていた。画面越しでは何度か見た。でも、今の迫力を感じたことはない。
「え?」
暗闇が私の目と鼻の先まで押し寄せる。
「最近、お前が夢に出てきたり、似ている人を見かけると確認しないと気が済まなくなったり」
「は?」
何それ。そんな勝手なことで私はこの圧を受けているの?
「桃山台高台公園」
私の地元、慎之介とよくいた公園の名前。私の夢の舞台。
「何でその名前を」
「やっぱり知ってるか」
確か、真鳳には私の地元の話もしていない。どうしてその公園の存在を彼が知っているのか、意味が分からなかった。
「良く夢に出てくるんだよ」
恥ずかしいのか考えているのか、思い出しているのか、頭をかいて圧が無くなっていく。
「『夕焼けのその公園で泣いている鈴乃』の夢、何で泣いているのかは覚えてないけど、その景色はよく見る」
私と同じ夢?でも、私が見たのは五回程度。同時に見たことがあるとしても、その回数は少ない。
「実は、私も聞きたかったことがあるの」
私が一度だけ彼をシンくんだと思った理由、あの頭に直接影響を与えてくる歌、彼はそれをどうして知っているのか。それを聞こうとする私の口が開くと昼食に使う時間が終わった。
お昼休み、今日一日の中で一番長い休み時間。私たちは人が来ることのない体育館裏の階段を上る。
「それで?俺に聞きたいことってのは?」
転入してすぐ、彼があの歌を歌っていた。そのことが私は忘れることが出来ない。
「私が駅で声を掛けられたあの日、教室で何か歌ってなかった?」
「あぁ、あれか。あれがどうかしたの?」
「あれ、私と慎之介の思い出の歌なの。私たちが作った私たちの歌。どうしてそれを真鳳が歌えるのか気になった」
彼は私の話を聞くと、携帯で何かを検索し始めた。私の前にある動画の待ち画面を持ってきた。
「俺はこの動画でその歌を覚えたんだ」
動画の再生回数は数百回、歌っているのはまだ幼い男の子。多分慎之介なのだろう。でも顔までは見えない。
「初めてこの歌を聞いた時、何か懐かしく思えたんだよね。んでいつの間にか覚えた。それだけ」
チャンネルを見ると、一年半前から更新されていない。そのころから彼は私を見なくなったというのだろうか。
「ってか、鈴乃と作ったってことは、このハッシュタグ、鈴乃のこと言ってるんじゃないの?」
彼の指先を見ると、#幼馴染に届け#好きな人に届け など会えない人に伝わるようなものが付けられていた。
「つまり、一年半前から私のことを忘れたってこと?」
「そんなの俺が知るわけないだろ。それが分かるのはあいつだけだろ」
不思議に思ったのは、更新が突然終わっていること。普通他に好きな人が出来たならこういう配信をするのを隠すか、徐々にやめていくかだろう。なぜ突然やめたのだろう。
「それに、忘れたんじゃなくて、出来なくなったとかかもしれないだろ」
「え?どういうこと」
「事故とか、故障とか急に出来なくなる理由なんていくつでもあるだろ」
今思えば、私はどうして彼をシンくんだと思ったんだろう。手紙やメールをよこすことのなかった彼、それに対して彼女や知り合いの女子のために何でもするこの男。真逆といっても過言じゃない。
「確かに」
「それに、きついこと言うけど、単に諦めただけかもしれないだろ」
「は?!」
「連絡先知らないかったんだろ?だから慎之介がその人だと気づかなかった。あいつは、自分はここにいると言い続けたのに、鈴乃からの返事はない。それじゃ諦められても仕方ないだろ」
真鳳の正論に、私は何も言えなくなった。その代わりに一つの疑問を思い出した。
「真鳳ってさ、何で慎之介のことそんなに嫌うの?」
私が久しぶりに慎之介に会った時、彼に対する真鳳の苛立ちは目に余った。
「あれ?・・・あいつ嘘ついてるから」
「それだけ?」
「それだけってなんだよそれだけって」
「いや、だって」
その嘘一つであそこまで起こるのかと驚いた。だって、彼がやっている演技のお仕事だって、言ってしまえばうその塊じゃないか。
「怒り過ぎか?」
誰もがあの光景を見れば同じことを思うだろう。
「何でかはよく分からんけど、あいつが鈴乃と関わってるとこ見るとさ、正直、虫唾が走るんだよ。意味が分かんないけど」
「なんで?私のことを好きなんじゃないんでしょ?彼女いるわけだし」
「そうなんだけど・・・」
緋奈に男子が話しかけても特に何も思わない様に見えていた。だから独占欲的なやつじゃないのだろう。
「行ってみる?」
何のヒントもないこの瞬間がものすごく長く感じた。その結果出た言葉が、彼の中の何かを見つけに行くことだった。
「どこに?」
「夢に出てきた公園」
「そうだな。行ったら何か分かるかもな」
彼の答え聞こえた直後、彼の携帯から聞きなれた着信音が聞こえた。電話の内容が仕事だったらしく、彼は私を置いて学校を去っていった。その時、どうしてだが空気感が冷たく感じた。
最近、帰り道が物足りない気がする。緋奈と煌太と帰っても、陽介君や慎之介のことが分かっていこう、母も少しおかしいような気もする。
『母さんもシンくんに会いたい』
なんて言葉も最近はよく言われる。でも、慎之介は家族と会ったことはほとんど覚えていない。母の料理が上手だと勘違いしていた。
「うん。勉強が意外とレベル高いんよ。普通より倍は速いんやで?毎日追いつこうとするだけで精一杯なんよ」
親には、私の中の考えを全部話す必要もない、そう思うと料理上手な父親が帰ってきた。
「ただいまぁ。今から晩御飯作んねんけど、何食べたい?」
「ウチ、ナス食べたい」
私の両親は、本当に仲がいい。いまだに外で集合してデートに行くくらいだ。そんな両親を見ていると、私も将来こんな夫婦になりたい、家庭を築きたいと思うばかりだ。
「分かった。ほな茄子で適当に作るけど、鈴乃はそれでええか?」
私も頷いてお手洗いに向かう。
「そう言えば鈴乃、真鳳君と会ったんやて?」
「え?父さん何で真鳳のことを知ってんの?」
同じクラスの男子と称して真鳳のことを話してはいたが、彼の名前を家族に知らせた覚えはない。
「だって、シンくんに会ったんやろ?」
「え・・・?」
「せやから、シンくんだよ。『神城 真鳳』くん」
父親から知らされた彼の苗字は、私の知っている真鳳の苗字とは違った。でも、幼かった私と違う、父の記憶では彼の名前は慎之介ではなくて、真鳳だった。つまり、慎之介は嘘をついている・・・?
「あぁ、うん。会ったよ」
とりあえず、父親の話に合わせてこの場を続ける。会話も食事も何となくで済ませて、私の部屋に戻る。
どうしよう、何も頭が働かない、残っている課題もまだ多いのに。慎之介はシンくんじゃない。そして、真鳳がシンくんである可能性がある。ベッドに横たわり、今までの私を見つめる。
「あいつがシンくん」
確かに、真鳳とシンくんが重なるところは多い。そして、慎之介は重ならないことが多い。意味が分からない。仮に真鳳がシンくんだとして、どうして慎之介はシンくんだと名乗ったのか、私のことを知っていたのだろう。
『もしもし、どしたん?』
親友の雫と話してみて、どうにか頭を回そうとする。
「ちょっと頼みたいことがあってん」
『何や、また別の人に恋でもしたんか?』
「ちゃうわ!そっちで調べて欲しいことがあんねん」
雫は、私の知る限り友人の数は誰よりも多く、探偵のような行動を頼むのに彼女よりうってつけの人はいない。
『あんなぁ、毎度毎度探偵みたいに仕事させてるけど、ウチは普通のJKやねんで』
「そんなん、分かってるわ。でも、大阪の友人に聞いて回らなあかんから頼むしかないねん。やからお願い!頼めるのは雫しかおらんねん」
『しゃあないな。なら今度、東京に行くからそん時、案内してや』
これで大阪の方は大丈夫。私は、真鳳の方をあたらないと。とりあえずは、海華さんに連絡を取りたい。彼女なら真鳳の昔のこと、何か知っているはず。って、どうやって話しかけたらいいのか分からない。一般人だとしても友人の彼女に聞きにくいことを聞こうとしているのに、芸能人が相手なんて難易度跳ね上がり過ぎる。
翌日、私は学校で慎之介が来るのを待つ。
「おはよう鈴乃」
「おはよう。慎之介、早いね」
「まぁ、珍しく早起きしたからね」
廊下で、どうにか海華さんに連絡できる手段がないかずっと見ていた。どうにかして繋がれないか、真鳳の力を使うことなく、海華さんと話す手段はないのか。
「鈴乃は?」
「・・・実は、慎之介に聞きたいことがあって」
彼がどうして嘘をついているのか、シンくんとは真鳳のことなのか、私がこのモヤモヤを晴らすには彼にすべてを聞く必要がある。
「『神城 真鳳』って知ってる?」
「は?何、急に」
「別に知らないならいいの」
真鳳の名前を出してから、どこか動きを止まっているように見えた。でも、手足は小刻みに震えているようにも見えた。
「そう、だね。知らない、かな」
「そっか!ならいいの。ありがとう」
あの時、駅で声をかけられた日に真鳳に教えてもらった状況と、答え方、反応からするに慎之介は嘘をついている。
「どうしたの?何か浮かない顔してるぞ」
「うん?そうかな・・・、別に普通だけど」
もし疲れている顔をているとすれば、きっとあの夢のせいだ。どうして真鳳だったのか、私の中で真鳳はどういう人間なのか、私自身がもっと知りたい。
「そ?ならいいけど。あ、今日って真鳳来るよな?」
「さあ、来ないんじゃない?」
彼が学校を休む頻度は、日に日に増えていった。今週登校したのも確か月曜日の午前中くらい、今日は木曜だってのに。
「よっ!」
お昼ご飯を食べるのに夢中で前を見ていなかった。だから彼の気配に気が付かなかった。そして、他の人も一緒だったみたいだ。
「真鳳、どうした?」
「あ?いや、残りの仕事は放課後だから」
煌太の質問に淡々と答え、自分の席に着く。
「お昼は?」
「差し入れの中に弁当あったからそれ食った。んでも少し減ってんだよね」
そう言って私の方を見る。
「悪い、ちょっと鈴乃借りていいか?」
目が合ったのは、私の弁当の中身を確認したからのように思えた。
「分かった。ごめん、ちょっと行って来る」
教室を後にして向かったのは、緋奈が泣いていたあの場所だった。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあってな」
ずっと真剣な顔をしている真鳳は、暗闇の中に入ることで、季節外れの冷たい風を吹かせた。恐怖心を帯びながらも、彼からの言葉を待つ。
「最近の緋奈、調子どうかなって」
重たい荷物がすっと降りた。
「そんなこと?別に気にすることないと思うよ?ずっと元気だし、いい感じでも愚痴も言ってるし」
私は正直に緋奈のことを話した。大丈夫そう伝えたはずなのに冷たい風を吹き止まない。
「そうか。それじゃあ、本題なんだけど」
降りた荷物がまた私の肩に乗り、重圧という言葉が目視できた。喉が渇き、右足が引く。
「お前、何者なんだ」
彼の演技力は、私の予想を超えていた。画面越しでは何度か見た。でも、今の迫力を感じたことはない。
「え?」
暗闇が私の目と鼻の先まで押し寄せる。
「最近、お前が夢に出てきたり、似ている人を見かけると確認しないと気が済まなくなったり」
「は?」
何それ。そんな勝手なことで私はこの圧を受けているの?
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「何でその名前を」
「やっぱり知ってるか」
確か、真鳳には私の地元の話もしていない。どうしてその公園の存在を彼が知っているのか、意味が分からなかった。
「良く夢に出てくるんだよ」
恥ずかしいのか考えているのか、思い出しているのか、頭をかいて圧が無くなっていく。
「『夕焼けのその公園で泣いている鈴乃』の夢、何で泣いているのかは覚えてないけど、その景色はよく見る」
私と同じ夢?でも、私が見たのは五回程度。同時に見たことがあるとしても、その回数は少ない。
「実は、私も聞きたかったことがあるの」
私が一度だけ彼をシンくんだと思った理由、あの頭に直接影響を与えてくる歌、彼はそれをどうして知っているのか。それを聞こうとする私の口が開くと昼食に使う時間が終わった。
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「それで?俺に聞きたいことってのは?」
転入してすぐ、彼があの歌を歌っていた。そのことが私は忘れることが出来ない。
「私が駅で声を掛けられたあの日、教室で何か歌ってなかった?」
「あぁ、あれか。あれがどうかしたの?」
「あれ、私と慎之介の思い出の歌なの。私たちが作った私たちの歌。どうしてそれを真鳳が歌えるのか気になった」
彼は私の話を聞くと、携帯で何かを検索し始めた。私の前にある動画の待ち画面を持ってきた。
「俺はこの動画でその歌を覚えたんだ」
動画の再生回数は数百回、歌っているのはまだ幼い男の子。多分慎之介なのだろう。でも顔までは見えない。
「初めてこの歌を聞いた時、何か懐かしく思えたんだよね。んでいつの間にか覚えた。それだけ」
チャンネルを見ると、一年半前から更新されていない。そのころから彼は私を見なくなったというのだろうか。
「ってか、鈴乃と作ったってことは、このハッシュタグ、鈴乃のこと言ってるんじゃないの?」
彼の指先を見ると、#幼馴染に届け#好きな人に届け など会えない人に伝わるようなものが付けられていた。
「つまり、一年半前から私のことを忘れたってこと?」
「そんなの俺が知るわけないだろ。それが分かるのはあいつだけだろ」
不思議に思ったのは、更新が突然終わっていること。普通他に好きな人が出来たならこういう配信をするのを隠すか、徐々にやめていくかだろう。なぜ突然やめたのだろう。
「それに、忘れたんじゃなくて、出来なくなったとかかもしれないだろ」
「え?どういうこと」
「事故とか、故障とか急に出来なくなる理由なんていくつでもあるだろ」
今思えば、私はどうして彼をシンくんだと思ったんだろう。手紙やメールをよこすことのなかった彼、それに対して彼女や知り合いの女子のために何でもするこの男。真逆といっても過言じゃない。
「確かに」
「それに、きついこと言うけど、単に諦めただけかもしれないだろ」
「は?!」
「連絡先知らないかったんだろ?だから慎之介がその人だと気づかなかった。あいつは、自分はここにいると言い続けたのに、鈴乃からの返事はない。それじゃ諦められても仕方ないだろ」
真鳳の正論に、私は何も言えなくなった。その代わりに一つの疑問を思い出した。
「真鳳ってさ、何で慎之介のことそんなに嫌うの?」
私が久しぶりに慎之介に会った時、彼に対する真鳳の苛立ちは目に余った。
「あれ?・・・あいつ嘘ついてるから」
「それだけ?」
「それだけってなんだよそれだけって」
「いや、だって」
その嘘一つであそこまで起こるのかと驚いた。だって、彼がやっている演技のお仕事だって、言ってしまえばうその塊じゃないか。
「怒り過ぎか?」
誰もがあの光景を見れば同じことを思うだろう。
「何でかはよく分からんけど、あいつが鈴乃と関わってるとこ見るとさ、正直、虫唾が走るんだよ。意味が分かんないけど」
「なんで?私のことを好きなんじゃないんでしょ?彼女いるわけだし」
「そうなんだけど・・・」
緋奈に男子が話しかけても特に何も思わない様に見えていた。だから独占欲的なやつじゃないのだろう。
「行ってみる?」
何のヒントもないこの瞬間がものすごく長く感じた。その結果出た言葉が、彼の中の何かを見つけに行くことだった。
「どこに?」
「夢に出てきた公園」
「そうだな。行ったら何か分かるかもな」
彼の答え聞こえた直後、彼の携帯から聞きなれた着信音が聞こえた。電話の内容が仕事だったらしく、彼は私を置いて学校を去っていった。その時、どうしてだが空気感が冷たく感じた。
最近、帰り道が物足りない気がする。緋奈と煌太と帰っても、陽介君や慎之介のことが分かっていこう、母も少しおかしいような気もする。
『母さんもシンくんに会いたい』
なんて言葉も最近はよく言われる。でも、慎之介は家族と会ったことはほとんど覚えていない。母の料理が上手だと勘違いしていた。
「うん。勉強が意外とレベル高いんよ。普通より倍は速いんやで?毎日追いつこうとするだけで精一杯なんよ」
親には、私の中の考えを全部話す必要もない、そう思うと料理上手な父親が帰ってきた。
「ただいまぁ。今から晩御飯作んねんけど、何食べたい?」
「ウチ、ナス食べたい」
私の両親は、本当に仲がいい。いまだに外で集合してデートに行くくらいだ。そんな両親を見ていると、私も将来こんな夫婦になりたい、家庭を築きたいと思うばかりだ。
「分かった。ほな茄子で適当に作るけど、鈴乃はそれでええか?」
私も頷いてお手洗いに向かう。
「そう言えば鈴乃、真鳳君と会ったんやて?」
「え?父さん何で真鳳のことを知ってんの?」
同じクラスの男子と称して真鳳のことを話してはいたが、彼の名前を家族に知らせた覚えはない。
「だって、シンくんに会ったんやろ?」
「え・・・?」
「せやから、シンくんだよ。『神城 真鳳』くん」
父親から知らされた彼の苗字は、私の知っている真鳳の苗字とは違った。でも、幼かった私と違う、父の記憶では彼の名前は慎之介ではなくて、真鳳だった。つまり、慎之介は嘘をついている・・・?
「あぁ、うん。会ったよ」
とりあえず、父親の話に合わせてこの場を続ける。会話も食事も何となくで済ませて、私の部屋に戻る。
どうしよう、何も頭が働かない、残っている課題もまだ多いのに。慎之介はシンくんじゃない。そして、真鳳がシンくんである可能性がある。ベッドに横たわり、今までの私を見つめる。
「あいつがシンくん」
確かに、真鳳とシンくんが重なるところは多い。そして、慎之介は重ならないことが多い。意味が分からない。仮に真鳳がシンくんだとして、どうして慎之介はシンくんだと名乗ったのか、私のことを知っていたのだろう。
『もしもし、どしたん?』
親友の雫と話してみて、どうにか頭を回そうとする。
「ちょっと頼みたいことがあってん」
『何や、また別の人に恋でもしたんか?』
「ちゃうわ!そっちで調べて欲しいことがあんねん」
雫は、私の知る限り友人の数は誰よりも多く、探偵のような行動を頼むのに彼女よりうってつけの人はいない。
『あんなぁ、毎度毎度探偵みたいに仕事させてるけど、ウチは普通のJKやねんで』
「そんなん、分かってるわ。でも、大阪の友人に聞いて回らなあかんから頼むしかないねん。やからお願い!頼めるのは雫しかおらんねん」
『しゃあないな。なら今度、東京に行くからそん時、案内してや』
これで大阪の方は大丈夫。私は、真鳳の方をあたらないと。とりあえずは、海華さんに連絡を取りたい。彼女なら真鳳の昔のこと、何か知っているはず。って、どうやって話しかけたらいいのか分からない。一般人だとしても友人の彼女に聞きにくいことを聞こうとしているのに、芸能人が相手なんて難易度跳ね上がり過ぎる。
翌日、私は学校で慎之介が来るのを待つ。
「おはよう鈴乃」
「おはよう。慎之介、早いね」
「まぁ、珍しく早起きしたからね」
廊下で、どうにか海華さんに連絡できる手段がないかずっと見ていた。どうにかして繋がれないか、真鳳の力を使うことなく、海華さんと話す手段はないのか。
「鈴乃は?」
「・・・実は、慎之介に聞きたいことがあって」
彼がどうして嘘をついているのか、シンくんとは真鳳のことなのか、私がこのモヤモヤを晴らすには彼にすべてを聞く必要がある。
「『神城 真鳳』って知ってる?」
「は?何、急に」
「別に知らないならいいの」
真鳳の名前を出してから、どこか動きを止まっているように見えた。でも、手足は小刻みに震えているようにも見えた。
「そう、だね。知らない、かな」
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