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有実の罪
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市場では地元の野菜や果物、海産物が売られ活気づいている。
目の前には今朝水揚げされたばかりの新鮮な魚に群がる人々。
特に人気なのが珍魚と呼ばれる深海魚だ。
サメやハタ系の一見不気味だが煮たり揚げたりすると美味い高級魚ばかり。
物珍しそうに群がるが買う者は僅か。
俺も気が引けるがこっちには何といってもエンゼルカードがある。
妖精さんに買ってもらえばいいさ。
「へいらっしゃい! どれも新鮮だよ」
「真ん中のやつください」
「おお! 安くしとくよ」
「それからマグロとイカも」
「よしサービスだ。アニーサを振りかけてやろう」
この地域ではアニーサは神聖視されている。でも俺はあの動いてる感じがどうも。
「やっぱりいいです」
「何だい…… だったらお会計は…… 」
「エンゼルカードでお願いします」
「ごめん。うちはカード不可なんだよ。まあここらは全部そう。現金で頼むよ」
「だったらいいでーす」
結局ハックがくれたリンゴのみ。これでは腹が膨れない。
「こらーあんた動くんじゃないよ! 」
ははは…… まだやってるよ。騒がしいとこだなここは。
「ハックこれ美味しいね。あれハック…… 」
今まで横にいたはずのハックが姿を消す。
あれ? どこだ……
仕方がなく振り返ると鬼の形相のおばちゃんがなぜかフライパンを持って迫る。
恐らくドンテで買ったのだろう。ドンテのマークが見える。
あそこは本当に何でも売ってるな。でも待てよ。生産までしてたかな?
「どうしました? 」
本当は声を掛けたくはなかった。
だがどう見ても俺を睨みつけてる。
絶対に何か勘違いしてるんだ。ここは落ち着かせるのが先決。
「おい盗人! 舐めた口利くんじゃないよ! 」
うん? 何だこの展開。
いきなりの超展開について行けない。
「あのそれ以上は言葉の暴力になってしまいますよ」
おばちゃんを気遣い諭すがあまり効果がない。
「あんた異人だね? 私らはそんな縛りないよ。だから何を言っても問題ないのさ」
開き直ったお婆さん。そう言えば警告は外の者にしか通用しなかった。
「さあ早く金を払いな! 」
「何を言ってるんだ? 俺は何も…… 」
手にはリンゴ。しかもかじってしまってある。
「もしかしてこれ? 」
「ふざけた奴だね! 」
「俺じゃない。これは仲間が…… 」
「どっちだって構わない。覚悟しな! 」
ドンテのフライパンを振り回す。
どうする? 金もない。言葉も通じない。カードも不可。
もはやされるがまま。
ゴン!
一発大きいのをお見舞いされる。
「ヘン! これに懲りたら二度とやらないんだね! 」
だから一度もやってないって……
怒りは収まったようで帰っていく。
俺は一発お見舞いされて痛いがおばちゃんは果物一個にフライパンまで。
冷静さが求められる。勘違いされての痛み分け。
とっとと先に行くエクセルの後を追う。
まったくなんで俺が? 冗談じゃないよなまったく。
「大丈夫だったかゲン? 」
いつの間にかハックが合流していた。
「何しやがる! ふざけやがって! しかも助けなかったな? 」
「おいおいやめておけって。警告を喰らうぞ」
昨夜の件で警告は三枚にまでなった。
まったくふざけた奴だ。おばちゃん犯人はこいつですよ。
人の大勢いる宿屋から小さな町の市場を経由して随分田舎へ来たようだ。
「こっちで合ってるのか? 」
ハックは疑い深い。さすがはハッカー。罪の意識から慎重だ。
「さあね。でも話の通りならあと少しで例の場所よ」
地図を広げさせハックに確認させる。
「本当かよ? まあでも確かにそうかもな」
海沿いの田舎町。
もう少し行くと海岸が見えてくるそう。
「ああいらっしゃい。都会の人だね」
歓迎ムードの綺麗なお姉さん。ちょっと老け気味だけど。
どうやらこの辺りで観光客相手に商売をしてるのだとか。
昨年は大金持ちがバカンスにやって来て大金を落としていったと自慢。
ここは自然のままで取り立てて名物がある訳でもなく寂れた漁師町。
ほとんどが漁師かその関係でこの女性は遠くから移住してきた珍しいタイプ。
「なあ明日どう? 今日これからでもいいよ」
ハックが誘うも相手にされない。
そう言う星の元に生まれてしまったハック。
俺はどうしてやることも出来ず見守るのみ。
エクセルは呆れ気味。
「それでお客さんも観光ですか? 」
ハックを適当にあしらって商売に精を出す。
「それもそうなんだけど…… 実は人を探してるんだ」
昨夜のクエストでアンたちがこの辺りにいるとの情報を掴んだ。
だが果たして今でも居るかは微妙。
流浪の民は数ヶ月で移動すると言う。もしかしたらもう……
続く
目の前には今朝水揚げされたばかりの新鮮な魚に群がる人々。
特に人気なのが珍魚と呼ばれる深海魚だ。
サメやハタ系の一見不気味だが煮たり揚げたりすると美味い高級魚ばかり。
物珍しそうに群がるが買う者は僅か。
俺も気が引けるがこっちには何といってもエンゼルカードがある。
妖精さんに買ってもらえばいいさ。
「へいらっしゃい! どれも新鮮だよ」
「真ん中のやつください」
「おお! 安くしとくよ」
「それからマグロとイカも」
「よしサービスだ。アニーサを振りかけてやろう」
この地域ではアニーサは神聖視されている。でも俺はあの動いてる感じがどうも。
「やっぱりいいです」
「何だい…… だったらお会計は…… 」
「エンゼルカードでお願いします」
「ごめん。うちはカード不可なんだよ。まあここらは全部そう。現金で頼むよ」
「だったらいいでーす」
結局ハックがくれたリンゴのみ。これでは腹が膨れない。
「こらーあんた動くんじゃないよ! 」
ははは…… まだやってるよ。騒がしいとこだなここは。
「ハックこれ美味しいね。あれハック…… 」
今まで横にいたはずのハックが姿を消す。
あれ? どこだ……
仕方がなく振り返ると鬼の形相のおばちゃんがなぜかフライパンを持って迫る。
恐らくドンテで買ったのだろう。ドンテのマークが見える。
あそこは本当に何でも売ってるな。でも待てよ。生産までしてたかな?
「どうしました? 」
本当は声を掛けたくはなかった。
だがどう見ても俺を睨みつけてる。
絶対に何か勘違いしてるんだ。ここは落ち着かせるのが先決。
「おい盗人! 舐めた口利くんじゃないよ! 」
うん? 何だこの展開。
いきなりの超展開について行けない。
「あのそれ以上は言葉の暴力になってしまいますよ」
おばちゃんを気遣い諭すがあまり効果がない。
「あんた異人だね? 私らはそんな縛りないよ。だから何を言っても問題ないのさ」
開き直ったお婆さん。そう言えば警告は外の者にしか通用しなかった。
「さあ早く金を払いな! 」
「何を言ってるんだ? 俺は何も…… 」
手にはリンゴ。しかもかじってしまってある。
「もしかしてこれ? 」
「ふざけた奴だね! 」
「俺じゃない。これは仲間が…… 」
「どっちだって構わない。覚悟しな! 」
ドンテのフライパンを振り回す。
どうする? 金もない。言葉も通じない。カードも不可。
もはやされるがまま。
ゴン!
一発大きいのをお見舞いされる。
「ヘン! これに懲りたら二度とやらないんだね! 」
だから一度もやってないって……
怒りは収まったようで帰っていく。
俺は一発お見舞いされて痛いがおばちゃんは果物一個にフライパンまで。
冷静さが求められる。勘違いされての痛み分け。
とっとと先に行くエクセルの後を追う。
まったくなんで俺が? 冗談じゃないよなまったく。
「大丈夫だったかゲン? 」
いつの間にかハックが合流していた。
「何しやがる! ふざけやがって! しかも助けなかったな? 」
「おいおいやめておけって。警告を喰らうぞ」
昨夜の件で警告は三枚にまでなった。
まったくふざけた奴だ。おばちゃん犯人はこいつですよ。
人の大勢いる宿屋から小さな町の市場を経由して随分田舎へ来たようだ。
「こっちで合ってるのか? 」
ハックは疑い深い。さすがはハッカー。罪の意識から慎重だ。
「さあね。でも話の通りならあと少しで例の場所よ」
地図を広げさせハックに確認させる。
「本当かよ? まあでも確かにそうかもな」
海沿いの田舎町。
もう少し行くと海岸が見えてくるそう。
「ああいらっしゃい。都会の人だね」
歓迎ムードの綺麗なお姉さん。ちょっと老け気味だけど。
どうやらこの辺りで観光客相手に商売をしてるのだとか。
昨年は大金持ちがバカンスにやって来て大金を落としていったと自慢。
ここは自然のままで取り立てて名物がある訳でもなく寂れた漁師町。
ほとんどが漁師かその関係でこの女性は遠くから移住してきた珍しいタイプ。
「なあ明日どう? 今日これからでもいいよ」
ハックが誘うも相手にされない。
そう言う星の元に生まれてしまったハック。
俺はどうしてやることも出来ず見守るのみ。
エクセルは呆れ気味。
「それでお客さんも観光ですか? 」
ハックを適当にあしらって商売に精を出す。
「それもそうなんだけど…… 実は人を探してるんだ」
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