言葉の暴力で世界最強! 消えたヒロインを追い求めて世界へ! 幼馴染に告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を

二廻歩

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疑い

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コイントスで爺さんを仲間に加えることにした。
お近づきの印としてお酒を用意。
お爺さんは上機嫌。顔にすべて出ている。
さっきまでの不機嫌が嘘みたい。単純で助かるぜ。

「良かろう。儂が仲間に加わったからには儂に従ってもらうぞ」
そうこれでいい。従えと言うなら従おう。
すべて人任せの俺にはこれくらいのリーダーシップを持った者がいたほうがいい。
楽だし安心感もある。暴走したら暴言カードで止めればいいのだ。

「そう言えばきちんと自己紹介をしてなかったな。
儂は世界を股にかけるさすらいのハンター。
バグと申す。以後よろしく。仲間からはバグだとかバズだとか言われている」
あれ? 爺さんの目の色が変わったぞ。
「おおこれは素晴らしいの。どこで手に入れたんじゃ? 」
バグは金に汚く二十四金にも興味津々。
まさか仲間の金を取る気はないよな?
周りからは金のバグと言われてるそうだ。
自慢にはならないと思うがまあいい。本人が満足してるのだから。
金に汚くがめついし無駄な金は一切払いたくないらしい。
どおりでドンテで安く済まそうとしていた訳だ。

ドリンクバーも普通のバーとは違い格安だったしな。
雰囲気は別として大人は当然のこと子供だって追い返されることなかった。
それは俺で証明している。
もう十六の大人だが見た目は幼いとエクセルにもアトリにも言われる始末。

俺も改めて名乗ることにする。
「世界を股にかける海賊団の親玉のゲン様だ!
お前の船を奪ってやろうか? ははは! 」
多少格好つける。ハッタリでもしないとやってられない。
ただの情けない男だと思われたくないしね。

だがその言葉を聞き逃さない淑女のおばさま方。
「きゃああ! 海賊よ! 」
大げさに騒ぎ立てる。困ったな。冗談も通用しないらしい。

何事かと船員に囲まれ呆気なく捕まってしまう。
そうモンスターには最強だが人間には弱い。
いくら最新のワードフォルダーがあってもフィールド以外では使いづらい。

「ほらこいつらを連れて行け! 」
いきなり船長の命により監禁されてしまう。
「ちょっと待ってよ! 冗談に決まってるじゃないか! 」
いくら言い訳したところで誰も聞いてくれない。
うわ…… 俺は何てことをしちまったんだ?
口は災いの元。俺自身で災いを引き寄せてしまった。
それでも格好つけるから誤解が解けることはない。

「うるさいんだよあんた! 」
監禁室は個室ではなかった。
個室は高いので俺の身分ではダメらしい。
グレードアップ希望なのに。

「おーい! おーい! 」
騒ぎ続けると暇な船員が話し相手になってくれる。
見た目は良い人そう。言葉使いも丁寧。
なぜここで海の男をしてるのか気になるぐらい。
何かあったんだろうな。でも詮索するのは野暮だしな。
聞いたって教えてくれないさきっと。

「なぜ俺を閉じ込める? 」
「あなたは異人ですね? ただでさえ監視の対象だと言うのに騒ぎを起こして。
他のお客様の迷惑です。お静かに願います」
「だから冗談で言っただけで海賊船の船長な訳ないだろ? 」
ですがあなた脱獄された経験をお持ちですね? 」
どうやら第二世界へ行く時の話をしてるらしい。

「もしかしてそう見えるの? 」
「いいえまったく。私にはただ子供にしか見えません」
「だったら早くここから出してよ! 泣いちゃうよ」
「明日までお待ちください。乗客から話を聞いてるところですから」
どうやら今日はここで大人しくしてろと言うことらしい。
参ったなあ。暇じゃないんだけどな。まあいいか。

せめて個室だったら良かったのだが。仕方ない。
切り替えよう。要するに俺より先に悪さをしてとっ捕まった間抜けがいる。
でもおかしいぞ。そんな騒ぎはなかった。さすがに気づくよな。

「ご主人様? ご主人様? 」
アトリが様子を見にやって来た。
声のみのやり取り。
見張りがいる訳でもないのでその辺は自由だ。
「俺がいなくてもあの爺さんとしっかりやるんだぞ? 」
「アトリには自信ありません。ああご主人様! 」
泣き出す始末。俺の為を思って何て健気なんだろう?
つい釣られて涙が溢れる。
「アトリ…… 俺まで泣けてくるよ」
「おいおい情けない奴じゃな! めそめそしおって! 」
爺さんから酷い言われよう。
ただ同情して解放してもらおうとしただけなんだがな。
意外にも気づかれてない。これでは意味がない。
この演技は見張りがいて成立するもの。

仕方がない。次の手を打つことにしよう。

                続く
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