11 / 122
多数決
しおりを挟む
「いい加減にしてください! 」
怒らせてしまった。
「しかし…… 何もすぐに立ち去りたいからではなく危険だと言ってるんですよ」
なぜ理解してくれない? 俺を信用してくれたっていいのに。
「分かりました。多数決にしましょう。半数以上の賛同が得られたらすぐにでも」
無駄なことを。誰が殺人事件のあった現場に留まりたいと言うのだ?
そんな物好き存在するものか。警察や探偵かジャーナリスト、テレビぐらいなもの。
普通の人はすぐに帰ろうとするはず。それが常識。非常識な奴などここにはいない。
仮にいても一人か二人。だから多数決を採れば下山するのは見えている。
ああもうそんな無駄なことをしてどうする? こっちは時間がないんだぞ。
依頼人を待たせてる。これ以上ここにいられるか。
「ちょっとガイドさん」
お婆さんの邪魔が入り中断。
やはり彼女はガイドさん。ここの管理も任されてるのだろう。
責任感が強いのは良いが探偵の言うことを素直に受け入れるのが客の為。
安全管理や危機意識が希薄ではもしものことが起きては使い物にならない。
いやもう現実に起きてしまっている。
少々厳しい言い方をすれば責任者失格。
まあ私も間違えてドスグロ山に来た手前強くは言えないが。探偵失格?
大丈夫だよ。一緒にこの危機を乗り越えて行こう。
今のうちにもう一度現場を見ておくか。
再び現場に戻る。
何か違和感があるんだよな。
一体何が気になってるんだ。
壺。凶器は壺。
たまたま置いてあった壺で撲殺。
確かにカッとなって衝動的に壺を取ることもあるだろう。
それは否定しない。ただ練りに練った計画殺人だとしたらお粗末。
その場にあるものを凶器にするのは理に適っていても不確実。
いくらあらかじめ準備していたとしても心もとない。
だとすればやっぱり。
明らかに違う。
複数の陶器の破片が散乱している。
これは部屋に持ち込まれたものの証明になる。
ただそれが二つ以上あることが判明しただけでいくつかまでは分かっていない。
一歩前進なのは間違いないが。
凶器は恐らく壺。しかし飾ってあったものではなくあらかじめ用意したもの。
だとすれば犯人は現場に壺を持ってきたことになる。
いくら夜とは言え目立ち過ぎる。
壺を抱える間抜けな光景が目に浮かぶ。
全員をレストランに集める。
「ええ多数決を採ります。
今すぐ帰りたい方? 」
「おい冗談じゃない。たかが一人亡くなったくらいで予定は変更できないぜ」
若い男が吠える。
彼は私が一族の次男と勝手に決めつけていたその人で。
若そうに見えるがもしかすると大学生?
はいはいはい。
三名。要するに否決された。
三名は俺とガイドと男。
ガイドは私の説得に応じた形。まあ当然か。このツアーの責任者。
責任が問われるとしたら彼女だろうからな。
男は嫌な予感がすると言って騒ぎ出した。
取り敢えず誰かが代表して下山することを進言。
結局俺たち三人で行くことに。
これで脱出できる。
何も連続殺人を恐れているのではない。
ただ出来るなら急いで薄曇り山に。
「では出発しましょう」
地面が濡れる。ぽつぽつと雨が降って来たと思ったらすぐに土砂降りに。
視界が悪くこれ以上進めば危険。引き返すべきか判断が迫られる。
遠くの方で雷まで鳴りだした。
やはりドスグロ山の雷人は通してくれそうにない。
さっきまで快晴だった空が真っ暗。
まだ昼だというのにおかしな天気だ。
ドスグロ山なだけある。
それでも行けるだけ行ってみる。
「急ぎましょう」
今ハンドルを握っているのは見知らぬ男。
本来ガイドさんがやるべきところだろうがまだ事件のショックが大きい。
もちろん私は免許がないので助手席だ。
まあ行きは歩いたので他の奴よりは記憶に残っている。
意外とこのメンバーは好都合なのかもしれない。
「さあここを下れば山入り口のはずです」
昨日は散々だった。
道に迷うわそもそも山を間違えるわ。
倒木で遠回りするわでついてない。
登山を開始したのは夕方。大雨で休憩と大変だった。
六時に着く予定が八時過ぎになってしまった。
合計四時間越えのの強行軍。
筋肉痛にならないのは日頃の鍛錬のおかげ。
毎朝のランニングと筋トレが実を結んだ形。
まあ探偵としては当然。
「ああストップ! ストップ! 」
薄々は感じていたがやはり大雨の影響で土砂崩れ。それに倒木と。
道が塞がれてしまっている。
続く
怒らせてしまった。
「しかし…… 何もすぐに立ち去りたいからではなく危険だと言ってるんですよ」
なぜ理解してくれない? 俺を信用してくれたっていいのに。
「分かりました。多数決にしましょう。半数以上の賛同が得られたらすぐにでも」
無駄なことを。誰が殺人事件のあった現場に留まりたいと言うのだ?
そんな物好き存在するものか。警察や探偵かジャーナリスト、テレビぐらいなもの。
普通の人はすぐに帰ろうとするはず。それが常識。非常識な奴などここにはいない。
仮にいても一人か二人。だから多数決を採れば下山するのは見えている。
ああもうそんな無駄なことをしてどうする? こっちは時間がないんだぞ。
依頼人を待たせてる。これ以上ここにいられるか。
「ちょっとガイドさん」
お婆さんの邪魔が入り中断。
やはり彼女はガイドさん。ここの管理も任されてるのだろう。
責任感が強いのは良いが探偵の言うことを素直に受け入れるのが客の為。
安全管理や危機意識が希薄ではもしものことが起きては使い物にならない。
いやもう現実に起きてしまっている。
少々厳しい言い方をすれば責任者失格。
まあ私も間違えてドスグロ山に来た手前強くは言えないが。探偵失格?
大丈夫だよ。一緒にこの危機を乗り越えて行こう。
今のうちにもう一度現場を見ておくか。
再び現場に戻る。
何か違和感があるんだよな。
一体何が気になってるんだ。
壺。凶器は壺。
たまたま置いてあった壺で撲殺。
確かにカッとなって衝動的に壺を取ることもあるだろう。
それは否定しない。ただ練りに練った計画殺人だとしたらお粗末。
その場にあるものを凶器にするのは理に適っていても不確実。
いくらあらかじめ準備していたとしても心もとない。
だとすればやっぱり。
明らかに違う。
複数の陶器の破片が散乱している。
これは部屋に持ち込まれたものの証明になる。
ただそれが二つ以上あることが判明しただけでいくつかまでは分かっていない。
一歩前進なのは間違いないが。
凶器は恐らく壺。しかし飾ってあったものではなくあらかじめ用意したもの。
だとすれば犯人は現場に壺を持ってきたことになる。
いくら夜とは言え目立ち過ぎる。
壺を抱える間抜けな光景が目に浮かぶ。
全員をレストランに集める。
「ええ多数決を採ります。
今すぐ帰りたい方? 」
「おい冗談じゃない。たかが一人亡くなったくらいで予定は変更できないぜ」
若い男が吠える。
彼は私が一族の次男と勝手に決めつけていたその人で。
若そうに見えるがもしかすると大学生?
はいはいはい。
三名。要するに否決された。
三名は俺とガイドと男。
ガイドは私の説得に応じた形。まあ当然か。このツアーの責任者。
責任が問われるとしたら彼女だろうからな。
男は嫌な予感がすると言って騒ぎ出した。
取り敢えず誰かが代表して下山することを進言。
結局俺たち三人で行くことに。
これで脱出できる。
何も連続殺人を恐れているのではない。
ただ出来るなら急いで薄曇り山に。
「では出発しましょう」
地面が濡れる。ぽつぽつと雨が降って来たと思ったらすぐに土砂降りに。
視界が悪くこれ以上進めば危険。引き返すべきか判断が迫られる。
遠くの方で雷まで鳴りだした。
やはりドスグロ山の雷人は通してくれそうにない。
さっきまで快晴だった空が真っ暗。
まだ昼だというのにおかしな天気だ。
ドスグロ山なだけある。
それでも行けるだけ行ってみる。
「急ぎましょう」
今ハンドルを握っているのは見知らぬ男。
本来ガイドさんがやるべきところだろうがまだ事件のショックが大きい。
もちろん私は免許がないので助手席だ。
まあ行きは歩いたので他の奴よりは記憶に残っている。
意外とこのメンバーは好都合なのかもしれない。
「さあここを下れば山入り口のはずです」
昨日は散々だった。
道に迷うわそもそも山を間違えるわ。
倒木で遠回りするわでついてない。
登山を開始したのは夕方。大雨で休憩と大変だった。
六時に着く予定が八時過ぎになってしまった。
合計四時間越えのの強行軍。
筋肉痛にならないのは日頃の鍛錬のおかげ。
毎朝のランニングと筋トレが実を結んだ形。
まあ探偵としては当然。
「ああストップ! ストップ! 」
薄々は感じていたがやはり大雨の影響で土砂崩れ。それに倒木と。
道が塞がれてしまっている。
続く
0
あなたにおすすめの小説
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
あやかし警察おとり捜査課
紫音みけ🐾書籍2冊発売中!
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~
ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。
兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。
異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。
最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。
やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。
そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。
想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。
すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。
辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。
※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
※8万字前後になる予定です。
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる