25 / 122
尋問
しおりを挟む
三人目は例の鑑定士さん。
小駒さんの話では鑑定に違和感があるらしい。
偽物はすぐに見抜けても本物は隈なく見回さなければ分からない。
鑑定が異常に早いと指摘。
私も彼女の主張には一理あると思っている。
ただ誰にでも食って掛かる彼女の思い込みとも言えなくもないが。
トラブル気質の小駒さんをいまいち信用できない。
「お名前は? 」
「雑見と申します」
「ざつみですか? 変わった名字で」
「放って置いてください。それで何か? 」
年は来年で五十だと。震えも止らず表情も硬い。何か隠してるのは一目瞭然。
「二人との関係は? 」
「はあ…… 」
沈黙が続く。
どこまで続くのか試してみよう。
十分が経過。
「もう分かりましたよ。二人とは鑑定の仕事を通じて何度か。顔見知り程度です」
粘った甲斐があった。
「顔見知り? では犯行動機アリと? 」
「そんな待ってくださいよ…… 何でそうなるんだよ? 」
「さっきまで震えてましたね? 」
「うるせい! 俺が何を…… 私が何をしたと? 」
今でも足が震えている。それを隠そうと必死。
「あなた最重要容疑者となりますが」
脅してみる。さあどうするかな。
「いい加減にしろ! 仲間を殺す訳ないだろ」
余裕がなくなり己を繕えずに大声を上げる。
本当に分かりやすい人。まだ震えも収まっていない。
「仲間とは? 」
「まあ一、二度一緒にやったんで仲間ですよ。私はそんなに不義理じゃない」
どうも良く分からない。仲間なら殺さないとか。
どちらかと言えば無関係だから殺さないが正しいはず。
「でしたら誰か怪しい方は? 」
「それは決まってる。あのメガネの男。文句を言いに来たことがある。
奴なら二人を恨んでいてもおかしくない」
メガネの男とは誰のことを言ってるのだろう?
まさかあの二人組の気の弱そうな彼のこと?
震える足を懸命に手で押さえる男。
「ではなぜ恨んでるのかお教えください」
「それは…… 三年前…… いや知らん。知るものか! 」
三年前と言うキーワードが出た。
これはきっと三年前に何かあったのだろう。
「その震えも関係があるんですか? 」
「うるさい不愉快だ! もう戻らせてもらう」
話を聞くはずがただ怒らせてしまった。
その気はないのだがどうも勘違いされやすい。
やはり探偵から追及されるのは嫌なものなのだろう。
別に私も無理矢理捜査させられただけで本来なら依頼人の元へ戻りたいのだが。
「明日を迎えられるといいね」
まるで予言するかのように相棒が放つ。
「もうお前らに協力してやるものか! 」
相棒の一言で余計に頑なになってしまった。これはまずい。
「おい言い過ぎだぞ」
「ヘイヘイ」
四人目。
鑑定士からの推薦でメガネの男を呼ぶ。
彼も鑑定士動揺まだ震えている。
「名前を? 」
「龍牙です。よろしくお願いします」
「龍牙? 強そうな名前ですね? 本名ですか? 如く? 」
「ははは…… 良く言われます。もちろん本名です」
名前負けしたメガネの男性。震えは収まりそうにない。
彼には強行下山の時お世話になった。知らない仲じゃない。
「龍牙さんは亡くなった二人とお知り合いですよね」
「黙秘します」
ここに来て面倒臭いのに当たったか。
「いえこれはお話を聞くのであって取り調べではありません。話せる範囲でどうぞ」
「黙秘します」
ダメだこれは。それに震え。
うわああ! 震えがこちらにまで伝わってくる。
貧乏ゆすりまで。これは困った。後回しにすべきか?
「そうだ。ドスグロ山の雷人について何か」
「いるんですよ。いやいるものか! あああ…… 」
頭を抱え後ろにのけ反る。もう少しで頭から落ちるところだった。
危ない危ない。何をやってるんだこの人は。
まあ二人も殺されては無理もないか。それに怪物もいると聞かされれば尚更。
「関係あるでいいですよね。ある人から聞いたんですが」
「まったく。我々…… いえ私には身に覚えのないことだ」
まともに答えてはくれない。面倒なのでこれで終了。
「上手い上手い。いい演技だったよ。次も君を使おう」
相棒の嫌味。
「あああ…… 探偵さん。私を信じて」
退場願う。
一旦休憩。残りは午後に回す。
昼を取ることにする。
よく考えればもう何もしなくていいのだ。
午後三時にはバスが迎えに来る。
こうして二泊三日の旅行は終わりを迎えるはずだった……
会員限定の無料バス旅行。
タダより怖いものはない。
ある者は被害者に。
ある者は加害者に。
それ以外は傍観者に。
ただそれも後三時間もすれば解放される。
地獄からの生還が許されるのは誰か?
昼を終え再び話を聞く。
続く
小駒さんの話では鑑定に違和感があるらしい。
偽物はすぐに見抜けても本物は隈なく見回さなければ分からない。
鑑定が異常に早いと指摘。
私も彼女の主張には一理あると思っている。
ただ誰にでも食って掛かる彼女の思い込みとも言えなくもないが。
トラブル気質の小駒さんをいまいち信用できない。
「お名前は? 」
「雑見と申します」
「ざつみですか? 変わった名字で」
「放って置いてください。それで何か? 」
年は来年で五十だと。震えも止らず表情も硬い。何か隠してるのは一目瞭然。
「二人との関係は? 」
「はあ…… 」
沈黙が続く。
どこまで続くのか試してみよう。
十分が経過。
「もう分かりましたよ。二人とは鑑定の仕事を通じて何度か。顔見知り程度です」
粘った甲斐があった。
「顔見知り? では犯行動機アリと? 」
「そんな待ってくださいよ…… 何でそうなるんだよ? 」
「さっきまで震えてましたね? 」
「うるせい! 俺が何を…… 私が何をしたと? 」
今でも足が震えている。それを隠そうと必死。
「あなた最重要容疑者となりますが」
脅してみる。さあどうするかな。
「いい加減にしろ! 仲間を殺す訳ないだろ」
余裕がなくなり己を繕えずに大声を上げる。
本当に分かりやすい人。まだ震えも収まっていない。
「仲間とは? 」
「まあ一、二度一緒にやったんで仲間ですよ。私はそんなに不義理じゃない」
どうも良く分からない。仲間なら殺さないとか。
どちらかと言えば無関係だから殺さないが正しいはず。
「でしたら誰か怪しい方は? 」
「それは決まってる。あのメガネの男。文句を言いに来たことがある。
奴なら二人を恨んでいてもおかしくない」
メガネの男とは誰のことを言ってるのだろう?
まさかあの二人組の気の弱そうな彼のこと?
震える足を懸命に手で押さえる男。
「ではなぜ恨んでるのかお教えください」
「それは…… 三年前…… いや知らん。知るものか! 」
三年前と言うキーワードが出た。
これはきっと三年前に何かあったのだろう。
「その震えも関係があるんですか? 」
「うるさい不愉快だ! もう戻らせてもらう」
話を聞くはずがただ怒らせてしまった。
その気はないのだがどうも勘違いされやすい。
やはり探偵から追及されるのは嫌なものなのだろう。
別に私も無理矢理捜査させられただけで本来なら依頼人の元へ戻りたいのだが。
「明日を迎えられるといいね」
まるで予言するかのように相棒が放つ。
「もうお前らに協力してやるものか! 」
相棒の一言で余計に頑なになってしまった。これはまずい。
「おい言い過ぎだぞ」
「ヘイヘイ」
四人目。
鑑定士からの推薦でメガネの男を呼ぶ。
彼も鑑定士動揺まだ震えている。
「名前を? 」
「龍牙です。よろしくお願いします」
「龍牙? 強そうな名前ですね? 本名ですか? 如く? 」
「ははは…… 良く言われます。もちろん本名です」
名前負けしたメガネの男性。震えは収まりそうにない。
彼には強行下山の時お世話になった。知らない仲じゃない。
「龍牙さんは亡くなった二人とお知り合いですよね」
「黙秘します」
ここに来て面倒臭いのに当たったか。
「いえこれはお話を聞くのであって取り調べではありません。話せる範囲でどうぞ」
「黙秘します」
ダメだこれは。それに震え。
うわああ! 震えがこちらにまで伝わってくる。
貧乏ゆすりまで。これは困った。後回しにすべきか?
「そうだ。ドスグロ山の雷人について何か」
「いるんですよ。いやいるものか! あああ…… 」
頭を抱え後ろにのけ反る。もう少しで頭から落ちるところだった。
危ない危ない。何をやってるんだこの人は。
まあ二人も殺されては無理もないか。それに怪物もいると聞かされれば尚更。
「関係あるでいいですよね。ある人から聞いたんですが」
「まったく。我々…… いえ私には身に覚えのないことだ」
まともに答えてはくれない。面倒なのでこれで終了。
「上手い上手い。いい演技だったよ。次も君を使おう」
相棒の嫌味。
「あああ…… 探偵さん。私を信じて」
退場願う。
一旦休憩。残りは午後に回す。
昼を取ることにする。
よく考えればもう何もしなくていいのだ。
午後三時にはバスが迎えに来る。
こうして二泊三日の旅行は終わりを迎えるはずだった……
会員限定の無料バス旅行。
タダより怖いものはない。
ある者は被害者に。
ある者は加害者に。
それ以外は傍観者に。
ただそれも後三時間もすれば解放される。
地獄からの生還が許されるのは誰か?
昼を終え再び話を聞く。
続く
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる