36 / 122
懺悔の時間
しおりを挟む
相変わらず外は雨が降り続いている。
皆殺しになるまで閉じ込める気でいるかのように。
警察のヘリもこの天気では無理だろう。
土砂崩れによる通行止めもまだ解除されていない。
いつになるかまったく分からないが希望を失ってはいけない。
大丈夫。必ず無事に帰れるさ。
今はただそう信じるしかない。
食糧はどうにか一週間分はある。
さあヘリが先か救助隊が先か?
その時には我々は果たして何人生き残ってられるか?
食堂にて。もうレストランなどとシャレるほどの余裕はない。
「アリバイのある方は? 」
挙手制を採用。
もうプライバシーだとか過去だとか言ってる時ではない。
早くしなければ。一日でも早い解決が求められる。
ただ必ずしも真犯人である必要はない。
疑わしく否定できない者に押し付ける。
この際だから犯人役を被ってもらうつもりで話を聞く。
はっきり言ってどう考えてもこの密室は難問だ。
一日や二日でどうにかなるものではない。
「そんなのある訳がない! 」
奈良がそう叫ぶと龍牙が同意。
この二人の関係は良くできている。いや出来過ぎな気がする。
まるで演じているかのように庇い合ってる。
片方は臆病でもう片方は冷静。
おかしい。何て怪しのだろう。
アリバイはなかった。
それも当然のこと。深夜ではアリバイも何もない。
結局は愚問なのだ。それでも聞いてるのは一人でも排除できればなと思うから。
「いい加減にしてくれ! こっちはもう限界だ」
黒木は吠える。それに続くようにして皆が騒ぎ出す。
「そうだ。もう放っておいてくれよ! 」
販売員は何だか元気がない。震えたまま突っ伏す。
お婆さんとマジシャンはただ黙っている。
「心当たりのある者は挙手お願いします」
今回の連続殺人事件のターゲットになりうる者を探るが……
誰も手を挙げない。どうやら指摘するまでシラを切るつもりらしい。
「黒木さん。失礼ですが狙われてますよね」
根拠もなく言ってるのではない。
被害者たちの仲間だったであろう黒木と販売員の男はすでにマーク済み。
もしまだ続くとすればそのターゲットは彼らに違いない。
「俺…… 俺が? まさか冗談だろ? ははは…… 」
豪快に笑うが震えが治まる気配はない。
「いいんです。今さら取り繕っても意味がありません」
時間がもったいない。包み隠さずに告白してもらえると助かる。
「黒木さん。話してください。何もかもすべて話すんだ黒木! 」
強引に迫る。
懺悔の時間だよ! ちょっと古いか……
「分かったよ。仕方ないな」
観念したらしい。
「俺たちは一般的に言うところの詐欺師だ。だからお客から恨まれても当然さ」
多くの人からお金をだまし取ったことを認めた。
詐欺師は決して己の罪を認めようとしないもの。
言い逃れるだけ言い逃れようとする。
だが黒木は違った。まだ人間の心を持っているようだ。
「これでいいだろ。俺は認めた。以上だ」
ここまでしたのには閉ざされた山で次々に仲間が殺され、堪えたからだろう。
特に愛人であるミサを失ったのが大きい。
「まさか壺を売りつけてたなんてありませんよね? 」
「そうだな。何年か前にチームを組んで派手にやっていた覚えがある。
だがそれがどうした? これくらいどってことないだろ? 」
開き直る悪党。その態度が気に喰わない。
「ではもう一人のあなたもきちんと答えてくれますよね? 」
販売員の方に視線を送る。
「ふざけるな! 巻き込むなよ。このおっさんも今までの奴も知るもんか! 」
「黒木さん! 」
「さあな。俺は口をつぐむぜ」
仲間は売らないと黒木は格好つけるが無駄な抵抗。
「往生際が悪いですよ千田さん! 」
「だから関係ないって! 」
まだただの観光客を装うらしい。無理がある。
詐欺みたいに宝石を売っていたではないか。
彼ほど分かりやすい者はいない。
彼らが今回の主催者と考えるのが妥当だろう。
人数までは分からないがそれも正直に白状してもらえばいいのだ。
「もう諦めてください。今改心すれば許してもらえるかもしれないんですよ」
無理だとは分かっている。そんなことで逃れられるほど甘くないだろう。
それだけ罪深いことを過去にしている。
「うるさい! いい加減にしろ! 何を根拠に? 」
この期に及んで言い逃れができると思ってるらしい。
今回の連続殺人の動機が彼らの詐欺行為にあるに違いない。
「私は関係ない。関係…… 」
震えが止まらずにコーヒーカップを割ってしまう。
もう冷静では居られない。限界が近い。
「では詳しい話を包み隠さずにお話しください」
販売員は頑なに否定していたが堪えきれずに語り始めた。
続く
皆殺しになるまで閉じ込める気でいるかのように。
警察のヘリもこの天気では無理だろう。
土砂崩れによる通行止めもまだ解除されていない。
いつになるかまったく分からないが希望を失ってはいけない。
大丈夫。必ず無事に帰れるさ。
今はただそう信じるしかない。
食糧はどうにか一週間分はある。
さあヘリが先か救助隊が先か?
その時には我々は果たして何人生き残ってられるか?
食堂にて。もうレストランなどとシャレるほどの余裕はない。
「アリバイのある方は? 」
挙手制を採用。
もうプライバシーだとか過去だとか言ってる時ではない。
早くしなければ。一日でも早い解決が求められる。
ただ必ずしも真犯人である必要はない。
疑わしく否定できない者に押し付ける。
この際だから犯人役を被ってもらうつもりで話を聞く。
はっきり言ってどう考えてもこの密室は難問だ。
一日や二日でどうにかなるものではない。
「そんなのある訳がない! 」
奈良がそう叫ぶと龍牙が同意。
この二人の関係は良くできている。いや出来過ぎな気がする。
まるで演じているかのように庇い合ってる。
片方は臆病でもう片方は冷静。
おかしい。何て怪しのだろう。
アリバイはなかった。
それも当然のこと。深夜ではアリバイも何もない。
結局は愚問なのだ。それでも聞いてるのは一人でも排除できればなと思うから。
「いい加減にしてくれ! こっちはもう限界だ」
黒木は吠える。それに続くようにして皆が騒ぎ出す。
「そうだ。もう放っておいてくれよ! 」
販売員は何だか元気がない。震えたまま突っ伏す。
お婆さんとマジシャンはただ黙っている。
「心当たりのある者は挙手お願いします」
今回の連続殺人事件のターゲットになりうる者を探るが……
誰も手を挙げない。どうやら指摘するまでシラを切るつもりらしい。
「黒木さん。失礼ですが狙われてますよね」
根拠もなく言ってるのではない。
被害者たちの仲間だったであろう黒木と販売員の男はすでにマーク済み。
もしまだ続くとすればそのターゲットは彼らに違いない。
「俺…… 俺が? まさか冗談だろ? ははは…… 」
豪快に笑うが震えが治まる気配はない。
「いいんです。今さら取り繕っても意味がありません」
時間がもったいない。包み隠さずに告白してもらえると助かる。
「黒木さん。話してください。何もかもすべて話すんだ黒木! 」
強引に迫る。
懺悔の時間だよ! ちょっと古いか……
「分かったよ。仕方ないな」
観念したらしい。
「俺たちは一般的に言うところの詐欺師だ。だからお客から恨まれても当然さ」
多くの人からお金をだまし取ったことを認めた。
詐欺師は決して己の罪を認めようとしないもの。
言い逃れるだけ言い逃れようとする。
だが黒木は違った。まだ人間の心を持っているようだ。
「これでいいだろ。俺は認めた。以上だ」
ここまでしたのには閉ざされた山で次々に仲間が殺され、堪えたからだろう。
特に愛人であるミサを失ったのが大きい。
「まさか壺を売りつけてたなんてありませんよね? 」
「そうだな。何年か前にチームを組んで派手にやっていた覚えがある。
だがそれがどうした? これくらいどってことないだろ? 」
開き直る悪党。その態度が気に喰わない。
「ではもう一人のあなたもきちんと答えてくれますよね? 」
販売員の方に視線を送る。
「ふざけるな! 巻き込むなよ。このおっさんも今までの奴も知るもんか! 」
「黒木さん! 」
「さあな。俺は口をつぐむぜ」
仲間は売らないと黒木は格好つけるが無駄な抵抗。
「往生際が悪いですよ千田さん! 」
「だから関係ないって! 」
まだただの観光客を装うらしい。無理がある。
詐欺みたいに宝石を売っていたではないか。
彼ほど分かりやすい者はいない。
彼らが今回の主催者と考えるのが妥当だろう。
人数までは分からないがそれも正直に白状してもらえばいいのだ。
「もう諦めてください。今改心すれば許してもらえるかもしれないんですよ」
無理だとは分かっている。そんなことで逃れられるほど甘くないだろう。
それだけ罪深いことを過去にしている。
「うるさい! いい加減にしろ! 何を根拠に? 」
この期に及んで言い逃れができると思ってるらしい。
今回の連続殺人の動機が彼らの詐欺行為にあるに違いない。
「私は関係ない。関係…… 」
震えが止まらずにコーヒーカップを割ってしまう。
もう冷静では居られない。限界が近い。
「では詳しい話を包み隠さずにお話しください」
販売員は頑なに否定していたが堪えきれずに語り始めた。
続く
0
あなたにおすすめの小説
腹黒薬師は復讐するために生きている
怜來
ファンタジー
シャルバリー王国に一人の少女がいた。
カナリヤ・ハルデリス
カナリヤは小さい頃から頭が冴えていた。好奇心旺盛でよく森に行き変な植物などを混ぜたりするのが好きだった。
そんなある日シャルバリー王国に謎の病が発生した。誰一人その病を治すことができなかった中カナリヤがなんと病を治した。
国王に気に入れられたカナリヤであったが異世界からやってきた女の子マリヤは魔法が使えどんな病気でも一瞬で治してしまった。
それからカナリヤはある事により国外追放されることに…
しかしカナリヤは計算済み。カナリヤがしようとしていることは何なのか…
壮絶な過去から始まったカナリヤの復讐劇
平和な国にも裏があることを皆知らない
☆誤字脱字多いです
☆内容はガバガバです
☆日本語がおかしくなっているところがあるかもしれません
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
雪嶺後宮と、狼王の花嫁
由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。
巫女として献上された少女セツナは、
封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。
人と妖、政と信仰の狭間で、
彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。
雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~
ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。
兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。
異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。
最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。
やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。
そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。
想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。
すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。
辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。
※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
※8万字前後になる予定です。
処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません
藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。
けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」
侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。
その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。
けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。
揺らぐ心と、重ねてきた日々。
運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。
切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。
最後まで見届けていただければ幸いです。
※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます
にて、親世代の恋愛模様を描いてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる