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最後の砦
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くそ! 粘るなこの男。もう懺悔する時間なのに。
「いいですよ。罪を認めて頂ければもうやることも特にありませんから」
「認めます! ですがその前に黒木はどうして殺されなかったと思いますか? 」
「はあああ? 殺されなかったのではなく殺せなかった。違いますか? 」
「そう考えてもらっても一向に構いませんよ探偵さん。
ただ自慢ではありませんがこれほどのことをやってのけたんですよ?
そんな私が黒木如きを葬り去れないのはなぜかと聞いてるんです」
「まさかこの状況でもまだ手があるとでも? 」
信じられない。起死回生の一発逆転があるとでも言うのか?
あり得ない。そんなのただのハッタリ。負け惜しみでしかない。
相手にする必要もないさ。捕まった犯人はよくこの手のことを言う。
山田さんあなたもですか?
「ふふふ…… どうでしょう。それは彼がこのホテルを出るまで言えませんね」
不気味なまでの山田さんの余裕。黒木はガタガタと震え出した。
「嘘だろ…… 」
「ふふふ…… 嘘なんかじゃありませんよ黒木さん。楽しみにしてくださいね」
奈落の底に落とされた絶望の黒木。
この人は何を考えてるんだろう? 警察に引き渡せば黒木には手も足も出せない。
それは自明の理。だがやってのけると言う。
彼が強引にしかも人がいる前で強行するとはどうしても思えない。
これはただの脅しで黒木が慌てふためく様を楽しんでるだけなのか?
そうだとすれば相当な下衆野郎だと言うことになる。
「おいあの男を捕えろ! 」
黒木が吠える。だが当然誰も黒木に味方する者はいない。
「いいのか? お前らだって危険なんだぞ? 見殺しにする気だぞこいつは」
「落ち着いてください黒木さん。もう何も出来やしませんって。それにさせません。
山田さんを頼む」
相棒に後ろからがっちり掴まえておいてもらう。
「おいもっときつくしろ! ロープを! うわわわ…… 」
相棒が睨むと黒木は後退り。
さすがにロープは禁句だ。さっき絞められたばかりなんだから。
「ちょっとやりすぎだよ探偵さん。もう何も出来ないって」
小駒さんが止めに入る。
「心配ありません。ただ動かないようにしててもらうだけです。そうだろ? 」
「ああ。痛くないよね」
「はい心配しないで皆さん。私は問題ありませんから」
「そうかい…… 」
黒木を落ち着かせる為にも相棒に押さえていてもらう。
「では食堂室に行きましょう」
警察が来るまでまだ時間があるので食事休憩。
ついでに山田さんに初日から今までを振り返ってもらう。
真犯人の告白。
探偵としてこの時が一番気持ちいい。
どこまで私の推理が通用したか。どこが間違っていたかを知ることが出来る。
これで探偵としてレベルアップ間違いなし。
「ではお話しください」
「分かりました。すべてお話しましょう。実は…… 」
第一関門のバス。
すぐに全員を見渡せる後ろの席に陣取る。
もちろん何名が乗車するかまで頭に入れてました。
バスは十人少々では広すぎたせいかゆったりと。
出発するとすぐに止まり最後の客のミサが乗って来た。
これも黒木たちの計算でしょう。別のところから乗れば関係が疑われない。
ミサが私の隣に座ると確信してました。
彼女も仲間とは一緒にいられない。そうすると被害者の会のメンバーと。
お婆さんは合わない。男性の方がいい。龍牙と奈良が二人仲良く。
これも想定内。龍牙には顔が知られてるかもしれない。だから安心できない。
残るはマジシャンですが存在感がない。それでは気づきようがない。
そこにミサの好きそうな格好で餌をぶら下げていれば間違いなく隣に。
一気に仲良くなると言う計画。まあ計画通りかな。第一関門突破。
実際は隣に座らなくても旅の内に親しくなる。
ここまで上手く行ったのは彼女の優しさではなく思惑があったから。
彼女を動揺させるために海老沢や千田たちについて話したが知らない振り。
まさか千田の奴がバスで吐くとは思いもしなかった。
ホテルに着くと急いで海老沢の後を追いかける。
その後を健気に追いかけるミサ。上手いよ。でも自分は騙されない。
続いて困ったことになぜか黒木が三号室に。
まあこれ以降は予想通りバラバラ。
詐欺師たちも被害者の会のメンバーも慎重。
龍牙と奈良にはちょっと驚かされたけど。まあこれぐらい問題ない。
さあここまで行けば後は簡単。撲殺するだけでいい。
ただ初めての撲殺。その上自前の壺を用意しなければならない。
大変だったんだから。海老沢を追いかけてあの壺を抱え走るのは。
割れやしないか落としやしないかとヒヤヒヤ。
その壺も割れ具合を見なければいけないし。やることはたくさん。
海老沢には練習台になってもらった。
探偵さんたちが迷い込んだ時から嫌な予感がしたんだよね。
でも決行するしかなかった。今回のチャンスを逃せば一度に抹殺するのは不可能。
海老沢が寝静まった深夜に行動開始。
続く
「いいですよ。罪を認めて頂ければもうやることも特にありませんから」
「認めます! ですがその前に黒木はどうして殺されなかったと思いますか? 」
「はあああ? 殺されなかったのではなく殺せなかった。違いますか? 」
「そう考えてもらっても一向に構いませんよ探偵さん。
ただ自慢ではありませんがこれほどのことをやってのけたんですよ?
そんな私が黒木如きを葬り去れないのはなぜかと聞いてるんです」
「まさかこの状況でもまだ手があるとでも? 」
信じられない。起死回生の一発逆転があるとでも言うのか?
あり得ない。そんなのただのハッタリ。負け惜しみでしかない。
相手にする必要もないさ。捕まった犯人はよくこの手のことを言う。
山田さんあなたもですか?
「ふふふ…… どうでしょう。それは彼がこのホテルを出るまで言えませんね」
不気味なまでの山田さんの余裕。黒木はガタガタと震え出した。
「嘘だろ…… 」
「ふふふ…… 嘘なんかじゃありませんよ黒木さん。楽しみにしてくださいね」
奈落の底に落とされた絶望の黒木。
この人は何を考えてるんだろう? 警察に引き渡せば黒木には手も足も出せない。
それは自明の理。だがやってのけると言う。
彼が強引にしかも人がいる前で強行するとはどうしても思えない。
これはただの脅しで黒木が慌てふためく様を楽しんでるだけなのか?
そうだとすれば相当な下衆野郎だと言うことになる。
「おいあの男を捕えろ! 」
黒木が吠える。だが当然誰も黒木に味方する者はいない。
「いいのか? お前らだって危険なんだぞ? 見殺しにする気だぞこいつは」
「落ち着いてください黒木さん。もう何も出来やしませんって。それにさせません。
山田さんを頼む」
相棒に後ろからがっちり掴まえておいてもらう。
「おいもっときつくしろ! ロープを! うわわわ…… 」
相棒が睨むと黒木は後退り。
さすがにロープは禁句だ。さっき絞められたばかりなんだから。
「ちょっとやりすぎだよ探偵さん。もう何も出来ないって」
小駒さんが止めに入る。
「心配ありません。ただ動かないようにしててもらうだけです。そうだろ? 」
「ああ。痛くないよね」
「はい心配しないで皆さん。私は問題ありませんから」
「そうかい…… 」
黒木を落ち着かせる為にも相棒に押さえていてもらう。
「では食堂室に行きましょう」
警察が来るまでまだ時間があるので食事休憩。
ついでに山田さんに初日から今までを振り返ってもらう。
真犯人の告白。
探偵としてこの時が一番気持ちいい。
どこまで私の推理が通用したか。どこが間違っていたかを知ることが出来る。
これで探偵としてレベルアップ間違いなし。
「ではお話しください」
「分かりました。すべてお話しましょう。実は…… 」
第一関門のバス。
すぐに全員を見渡せる後ろの席に陣取る。
もちろん何名が乗車するかまで頭に入れてました。
バスは十人少々では広すぎたせいかゆったりと。
出発するとすぐに止まり最後の客のミサが乗って来た。
これも黒木たちの計算でしょう。別のところから乗れば関係が疑われない。
ミサが私の隣に座ると確信してました。
彼女も仲間とは一緒にいられない。そうすると被害者の会のメンバーと。
お婆さんは合わない。男性の方がいい。龍牙と奈良が二人仲良く。
これも想定内。龍牙には顔が知られてるかもしれない。だから安心できない。
残るはマジシャンですが存在感がない。それでは気づきようがない。
そこにミサの好きそうな格好で餌をぶら下げていれば間違いなく隣に。
一気に仲良くなると言う計画。まあ計画通りかな。第一関門突破。
実際は隣に座らなくても旅の内に親しくなる。
ここまで上手く行ったのは彼女の優しさではなく思惑があったから。
彼女を動揺させるために海老沢や千田たちについて話したが知らない振り。
まさか千田の奴がバスで吐くとは思いもしなかった。
ホテルに着くと急いで海老沢の後を追いかける。
その後を健気に追いかけるミサ。上手いよ。でも自分は騙されない。
続いて困ったことになぜか黒木が三号室に。
まあこれ以降は予想通りバラバラ。
詐欺師たちも被害者の会のメンバーも慎重。
龍牙と奈良にはちょっと驚かされたけど。まあこれぐらい問題ない。
さあここまで行けば後は簡単。撲殺するだけでいい。
ただ初めての撲殺。その上自前の壺を用意しなければならない。
大変だったんだから。海老沢を追いかけてあの壺を抱え走るのは。
割れやしないか落としやしないかとヒヤヒヤ。
その壺も割れ具合を見なければいけないし。やることはたくさん。
海老沢には練習台になってもらった。
探偵さんたちが迷い込んだ時から嫌な予感がしたんだよね。
でも決行するしかなかった。今回のチャンスを逃せば一度に抹殺するのは不可能。
海老沢が寝静まった深夜に行動開始。
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