ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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語られる真実

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続いて第三の事件へ。
あらかじめ疑われるよう部屋を選んでいたことで千田や黒木が喰いつく。
龍牙も奈良もこの時は賛成に回る。
誰しも不可能犯罪とは言えこの私が一番怪しいと。
そして自分の部屋に閉じ込められることに。
皆さん恐怖からか操られたかのように思い通り動いてくれました。
運が悪ければ他の場所に閉じ込められる恐れもあった。
だが私が最後に説得され折れた風を装ったので何の疑いもなく二号室に閉じ込めた。
いやあ今回これだけは自分の力ではどうにもなりませんでしたから。
最悪被害者の会の者に打ち明けて協力を要請するところまで考えてたんですけどね。
簡単に閉じ込めてもらえて拍子抜けしたぐらいです。
バリケードまで勝手に築くなどどれだけ幸運だったか。
自ら提案すればどうしたって疑われるし記憶にも残りやすい。

とにかくこうして二号室に閉じ込められた。
後は探偵さんが推理した通り隣の一号室の秘密の通路を抜け晴れて自由の身に。
それからは一号室にある壺を手に六号室の雑見の元へ。
探偵さんを装い部屋を開けてもらうとすぐに犯行に及ぶ。
まさかダイイングメッセージを残すへまをやらかしてしまうとはね。
気付いたのは朝。もうすぐガイドさんがやって来る時間。
仕方なく自分の手を使ってダイイングメッセージを付け足した。
こうしなければ山の文字が目立ち私に辿り着くと思ったから。
あの時は慌てていたばかりに自分の血を残すことに無頓着だった。
それ以外にも汗や指紋に靴跡などを残してるので警察が調べれば一発で分かる。

第三の事件も前回同様隣の部屋から脱出。
ガイドさんが腰を抜かしてる間に秘密の抜け道を使いお婆さんの部屋へ。
この時ばかりは誰にも気づかれずに二号室へ。相当大変だった。
時間との戦いだった。
お婆さんが出て行った後に皆が視線を一か所に集めたのでどうにかなったが。
これもガイドさんと大騒ぎをしてくれた龍牙のお陰。
どうにか一号室に辿り着くと秘密の抜け穴を使って急いで二号室に。
時間を稼いだので呼吸も整えられた。
そして気付かれる前に大げさに怖がって見せた。
閉じ込められてる状況で事件が起きればパニックになりかねない。
私はこうして第三の事件で疑いが晴れた。

そうして第四の事件へ。
千田殺害。
これは簡単。事件が発生した時に閉じ込められていた私は誰よりも信じられる存在。
トリックに気付かなければ自ら地獄への扉を開くことになる。
私は遠慮することなく千田を手にかける。
今度は疑われないように部屋にあった壺で撲殺。
千田殺害後第二、第三の事件同様息を潜める。
鍵を使って秘密の通路を抜け元の場所へ。
そして今度はマジシャンが現場に駆けた時に隣の部屋へ。
無事に脱出に成功。
こうして第四の事件も無事に完了。

残すは黒木だけとなったところで探偵さんたちの用意した罠に。
それから……
山田さんは第一の事件から全部を白状した。
だからと言って彼らが生き返る訳でもない。
後悔してるだろうか?
黒木をなぜ手に掛けなかったのかが少々気になるがただの強がりとも取れる。

ではもう一度動きを整理しよう。
第一の事件。一号室。
美術商の海老沢氏。
秘密の抜け穴を通り撲殺。その後同じ道から戻る。
この時は余裕があったので鍵を掛けただろう。

第二の事件。三号室。
二号室から廊下を経由して盗んだ鍵で侵入。
翌朝ガイドさんの悲鳴に紛れて隣の部屋へ。
この時は焦っていたのか秘密の部屋の鍵は掛けられていなかった。

第三の事件。六号室。
鑑定士の雑見氏。
二号室から秘密の抜け穴で一号室へ。堂々と部屋から入り不意を突いて撲殺。
その後早朝に悲鳴と共に隣の部屋へ。
今回は鍵がかかっていた。前回の失敗を生かす形。

第四の事件。九号室。
販売員の千田。
やはり堂々と中へ。
撲殺して例の秘密の鍵で翌朝に十号室へ。
やはり鍵はしっかり掛けられていた。

こうしてみると真犯人の動きは似ているがすべて違う行動になっている。
すべてはガイドさんとお隣さんとの関係。
あまりにも危険な賭け。
こんな綱渡りの犯行は果たして計画的と言えるのか?
山田さんの幸運には驚かされるばかり。
だがよく考えればここに集まった大半は犯罪被害の関係者。
協力を求めることも目を瞑ることも翻弄することも出来た訳だ。
だからこそ彼らの協力を得てでも殺人を実行しようとしたのだろう。
だが幸運にも見つからずに共犯者に頼ることもなく連続殺人を実行してしまった。
良いんだか悪いんだか。
当初の目的である復讐を果たしたことは尊敬に値する。
だがこれで捕まれば最高刑は免れないだろう。
これで良かったのか? 疑問が残る。
しかし本当に誰一人気付かなかったのだろうか?
山田さんが決行したのは潜在的共犯者を見込んでのこと。
即ちポテンシャルワーカーの存在が犯行を後押しした形に。

さあこれからは動機の面から見て行くことにしよう。

                 続く
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