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動機
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さあこれからは動機を見て行くことにしよう。
「山田さんなぜこのような大それたことを? 極刑は免れませんよ」
いくら恨みとは言え四人も殺せば情状酌量の余地はない。
どうしてこのような残忍な犯行に駆り立てられたのか?
「覚悟の上です」
もう諦めたのか落ち着いた低い声を発する。笑みも見られる。
「山田さん! 」
「私には息子が居ました…… 」
ようやく犯行動機を語りだす。
「ちょっと待ちなよ山田さん! 」
「まさか私どもが調べていたあの事件が関係するんですか? 」
せっかくの犯人語りを遮る小駒さん。龍牙も続く。
「あれは確かに悲惨だったよな。俺も聞いてて頭に来たぐらいだからな」
奈良も興奮して立ち上がる。
「確か三年前でしたよね皆さん? 」
千田から聞いたような気がする。黒木も証言していた。
「探偵さんも知ってるようですね。そう過去のことなので私は大丈夫。
そう自分に言い聞かせてきた。もう立ち直ったつもりでいました。
だがまだ懲りもせず悪さを続けている奴らが許せなかった。
反省して真面目になったかと思いきや未だに詐欺を続けている。
私が止めなければ悲惨な被害者が増える一方。
これでは天国の智樹に合わせる顔がない」
落ち着いた様子でポツポツ語る山田さんの姿が自然に見えるから不思議なものだ。
息子さんは智樹君と言うのか。
同情した小駒さんはもうすでに頬を濡らしている。
釣られるように龍牙と奈良も。
マジシャンも沈んでしまっていつもの明るさが見られない。
ここにいるメンバーは詐欺被害者。気持ちが痛いほど分かるのだろう。
我々は堪えるしかない。駄目だ…… 雰囲気に呑まれそうになる。
「おい…… 」
黒木は震えている。
「俺は関係ない。俺は…… 」
震えながらもどうにか身の潔白を訴える黒木。
もうこの段階では滑稽でしかない。
「あの日のことはよく覚えてます。友人に誘われて何となく行ったんだったと。
そこであの女、ミサと出会いすべてが狂ってしまった。一瞬で地獄に。
ミサが面白い話を聞かせてくれました。まさか私がその父親だとも知らずにね。
お酒を呑むと楽しそうにポロポロと。
「うわああ! 俺は知らない! 俺は関係ないんだ! 」
黒木は必死に否定する。
「ああ直接本人に聞いたので事実です。千田は黒木に報告したと言っていたな」
「だから俺は後で聞かされたんだ…… 命令してないんだきっと…… 」
往生際の悪い黒木は保身に走る。
「偽物とも知らず壺を買わされそれでも嬉しそうに。
この際本音を言えばね騙されたって、高い壺を買わされたっていいんです。
それもいい社会勉強。ガラクタを掴まされたと笑い話にすればいいんだから。
でもそうはさせてくれなかった。自分たちの罪を隠す為に販売した壺を壊そうと。
そして悲劇が。止まり切れずに息子を轢いてしまったんだ。
でも轢いた奴は殺人罪に問われずやったもん勝ち。息子の前方不注意だそうです。
目撃者もいたから悔しいが受け入れざるを得なかった。
結局そのドライバーは交通刑務所に。それが千田だ。
千田は金儲けの為に息子を誘い運悪く轢き殺した。
さすがに殺そうとまではしてなかっただろうが結果は変わらない。
こうして奴らは千田を切り捨て詐欺の発覚を免れた」
「まさかその目撃者って? 」
小駒さんもすべてを理解した上で合いの手を入れる。
「そうミサだ。証拠隠滅に殺してしまったのは事実。
要するにわざとやった。それなのにミサの証言により大した罪に問われなかった」
「お気の毒に…… ねえ黒木さん」
「俺に振るんじゃねえ! 仕方ないだろ頭が悪いんだから。
確かに壺を壊せと命じたよ。だがあんな手荒な真似をするなんて考えもしなかった。
結局それ以来危険だと判断して違う手に出た。それが鑑定士の雑見のインチキ鑑定。
奴がお墨付きを与えれば敢えてもう一度鑑定しやしないと踏んでな。
そうして今のスタイルに。だからあんたには悪いが俺にはどうしようもなかった。
心から反省してる。俺の管理が甘かったせいでお前の息子を轢き殺してしまった。
済まない。この通り」
そう言うと頭を深々と下げる黒木。これでも誠意が伝わるだろう。
だがここは頭を床にこすりつけ土下座する方がより気持ちが伝わるはず。
しかし彼はそれ以上の反省の気持ちを示さない。
「黒木! もっと下げなってんだ! 」
小駒さんの一喝で黒木は頭を擦りつける。
「この通りだ! 頼む助けてくれ! お願いだ! 」
「黒木さん…… あなたは彼らとは違うとそう言うんですか? 」
「ああ奴らとは考え方が違った。俺はまとめ役。
冷静で常識も持ち合わせている。だから心を痛めていたんだ。だからお願いだ」
跪く黒木を哀れに思ったのか山田さんに笑みが。
「顔を上げてください。私は黒木さん。あなたを許そうと思います」
何とここに来て黒木は許される? そんな馬鹿な。衝撃的な和解。
「ちょっと何を言ってるんだい? あんたの息子を奪った奴だよ。
簡単に許していいはずがない。正気かい? 」
小駒さんは落ちつくように促すがどちらが冷静かは一目瞭然。
「皆さんも本当に申し訳ありませんでした。ご迷惑を掛けまして。
特にガイドさんにはとんでもない役割を押し付けてしまった。心から反省してます」
山田さんの謝罪を受け入れるしかないガイドさん。
「田中さんも元恋人とは言え嫌な記憶を蘇らせてしまったと思います」
山田さんはやはり彼女の過去を知っていた。それに悩んでいることも。
だがその情報をどこから仕入れたかは謎のまま。このままでは迷宮入り間違いなし。
そもそも轢き逃げ事故の顛末もどこから?
続く
「山田さんなぜこのような大それたことを? 極刑は免れませんよ」
いくら恨みとは言え四人も殺せば情状酌量の余地はない。
どうしてこのような残忍な犯行に駆り立てられたのか?
「覚悟の上です」
もう諦めたのか落ち着いた低い声を発する。笑みも見られる。
「山田さん! 」
「私には息子が居ました…… 」
ようやく犯行動機を語りだす。
「ちょっと待ちなよ山田さん! 」
「まさか私どもが調べていたあの事件が関係するんですか? 」
せっかくの犯人語りを遮る小駒さん。龍牙も続く。
「あれは確かに悲惨だったよな。俺も聞いてて頭に来たぐらいだからな」
奈良も興奮して立ち上がる。
「確か三年前でしたよね皆さん? 」
千田から聞いたような気がする。黒木も証言していた。
「探偵さんも知ってるようですね。そう過去のことなので私は大丈夫。
そう自分に言い聞かせてきた。もう立ち直ったつもりでいました。
だがまだ懲りもせず悪さを続けている奴らが許せなかった。
反省して真面目になったかと思いきや未だに詐欺を続けている。
私が止めなければ悲惨な被害者が増える一方。
これでは天国の智樹に合わせる顔がない」
落ち着いた様子でポツポツ語る山田さんの姿が自然に見えるから不思議なものだ。
息子さんは智樹君と言うのか。
同情した小駒さんはもうすでに頬を濡らしている。
釣られるように龍牙と奈良も。
マジシャンも沈んでしまっていつもの明るさが見られない。
ここにいるメンバーは詐欺被害者。気持ちが痛いほど分かるのだろう。
我々は堪えるしかない。駄目だ…… 雰囲気に呑まれそうになる。
「おい…… 」
黒木は震えている。
「俺は関係ない。俺は…… 」
震えながらもどうにか身の潔白を訴える黒木。
もうこの段階では滑稽でしかない。
「あの日のことはよく覚えてます。友人に誘われて何となく行ったんだったと。
そこであの女、ミサと出会いすべてが狂ってしまった。一瞬で地獄に。
ミサが面白い話を聞かせてくれました。まさか私がその父親だとも知らずにね。
お酒を呑むと楽しそうにポロポロと。
「うわああ! 俺は知らない! 俺は関係ないんだ! 」
黒木は必死に否定する。
「ああ直接本人に聞いたので事実です。千田は黒木に報告したと言っていたな」
「だから俺は後で聞かされたんだ…… 命令してないんだきっと…… 」
往生際の悪い黒木は保身に走る。
「偽物とも知らず壺を買わされそれでも嬉しそうに。
この際本音を言えばね騙されたって、高い壺を買わされたっていいんです。
それもいい社会勉強。ガラクタを掴まされたと笑い話にすればいいんだから。
でもそうはさせてくれなかった。自分たちの罪を隠す為に販売した壺を壊そうと。
そして悲劇が。止まり切れずに息子を轢いてしまったんだ。
でも轢いた奴は殺人罪に問われずやったもん勝ち。息子の前方不注意だそうです。
目撃者もいたから悔しいが受け入れざるを得なかった。
結局そのドライバーは交通刑務所に。それが千田だ。
千田は金儲けの為に息子を誘い運悪く轢き殺した。
さすがに殺そうとまではしてなかっただろうが結果は変わらない。
こうして奴らは千田を切り捨て詐欺の発覚を免れた」
「まさかその目撃者って? 」
小駒さんもすべてを理解した上で合いの手を入れる。
「そうミサだ。証拠隠滅に殺してしまったのは事実。
要するにわざとやった。それなのにミサの証言により大した罪に問われなかった」
「お気の毒に…… ねえ黒木さん」
「俺に振るんじゃねえ! 仕方ないだろ頭が悪いんだから。
確かに壺を壊せと命じたよ。だがあんな手荒な真似をするなんて考えもしなかった。
結局それ以来危険だと判断して違う手に出た。それが鑑定士の雑見のインチキ鑑定。
奴がお墨付きを与えれば敢えてもう一度鑑定しやしないと踏んでな。
そうして今のスタイルに。だからあんたには悪いが俺にはどうしようもなかった。
心から反省してる。俺の管理が甘かったせいでお前の息子を轢き殺してしまった。
済まない。この通り」
そう言うと頭を深々と下げる黒木。これでも誠意が伝わるだろう。
だがここは頭を床にこすりつけ土下座する方がより気持ちが伝わるはず。
しかし彼はそれ以上の反省の気持ちを示さない。
「黒木! もっと下げなってんだ! 」
小駒さんの一喝で黒木は頭を擦りつける。
「この通りだ! 頼む助けてくれ! お願いだ! 」
「黒木さん…… あなたは彼らとは違うとそう言うんですか? 」
「ああ奴らとは考え方が違った。俺はまとめ役。
冷静で常識も持ち合わせている。だから心を痛めていたんだ。だからお願いだ」
跪く黒木を哀れに思ったのか山田さんに笑みが。
「顔を上げてください。私は黒木さん。あなたを許そうと思います」
何とここに来て黒木は許される? そんな馬鹿な。衝撃的な和解。
「ちょっと何を言ってるんだい? あんたの息子を奪った奴だよ。
簡単に許していいはずがない。正気かい? 」
小駒さんは落ちつくように促すがどちらが冷静かは一目瞭然。
「皆さんも本当に申し訳ありませんでした。ご迷惑を掛けまして。
特にガイドさんにはとんでもない役割を押し付けてしまった。心から反省してます」
山田さんの謝罪を受け入れるしかないガイドさん。
「田中さんも元恋人とは言え嫌な記憶を蘇らせてしまったと思います」
山田さんはやはり彼女の過去を知っていた。それに悩んでいることも。
だがその情報をどこから仕入れたかは謎のまま。このままでは迷宮入り間違いなし。
そもそも轢き逃げ事故の顛末もどこから?
続く
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