変態暗殺令嬢Mは王子を守りたい! 王子暗殺に巻き込まれた女たちのレクイエム 

二廻歩

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消えたフレイト

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忠告を無視してビアンカが王子の懐に飛び込んだ。
これは比喩ではなく心配するあまりのとっさの行動。だから責められない。
もし彼女が本気ならば王子の命はなかったでしょう。
はっきり言って警備体制が甘い。これではいつやられてもおかしくない。
私たちの手を煩わす前に暗殺されてしまう。

「ははは! 済まないな。さあもう大丈夫だから離れてくれないか」
格好をつけるが実年齢よりも幼いせいでどうしても無理してる感じがある。
「ごめんなさい。私ったらつい…… 」
ビアンカが冷静さを取り戻し船内は波の音のみとなった。
果たして王子は本当に狙われたのでしょうか?

まだ真相にたどり着けない。ただお付きのお爺さんが怪しいのは明らか。
お付きで誰よりも王子の身を案じるはずのこの男。
どうしても納得ができない。裏切り者かあるいは…… 私の見立てが間違ってる?

転落した王子が無事に救出された。
慌てた様子からさほど泳げないことが見てとれる。
一大事に王子無事救出の報を聞いて皆安堵した様子。
それは大変喜ばしいこと。しかしこれは事故か事件か?
安堵せずに残念がっている者が裏切り者であり奴らの仲間であり恐らく監視役。
ただ目立ってそのような愚かな動きを見せる者はいない。

私も大げさに喜ばなければ疑われる。でも複雑。
ほぼ関りがない状況で事故なら暗殺者としての罪悪感に苛まれることもない。
今なら…… この地獄のような悪夢から抜け出せるなら王子の命など……
ダメ。そうなればすべてを知る私たちは生かしてはおかない。
暗殺に関わった者の口封じぐらい平気でやるような奴らなんだから。
躊躇も情けもない。それほど冷酷非道な集団。

「申し上げます! フレイト様が姿を見せません」
どうやら一人行方不明になったらしい。とても嫌な感じ。
何かが暗躍しているかのよう。それはきっと奴らの仕業。そうに決まってる。
王子捜索に加わったフレイトが姿を消した。どうなってるの? 

「あの…… フレイトとは? 」
「王子護衛隊で重要な役割を担っている者で警備担当。計画実行のエキスパート」
お付きの鋭い目が向く。ただの質問なんだからそこまで殺気立たないで欲しい。
さっきまでの危機的状況では冷静だったのに一体何が? 
王子よりもこのフレイトが大事だとでも? あり得ない。

フレイト失踪。
不運な事故か? それとも自ら姿を消した? それとも……
まだ捜索中の事故かどうかさえ不明。
捜索が待たれるがこれが奴らの仕業なら跡形もなく消え去るだろう。
捜索は間違いなく難航する。しかしまったく捜索しない訳にも行かない。
隊長とお付きの者が話しをしている。

船はようやく目的地の船着場へと到着。
フレイト捜索は二手に分かれ続いている。

「それではこれで」
ビアンカがそう言うと腕を引っ張られていく。
「ちょっと…… 」
「これ以上は目立ちます。どうせ夜には晩餐会の席でお会いできるのですから」
冷静なビアンカ。行方不明者も気にしてない様子。疑われる方が嫌。当然か。
こうして王子たち一行とは別れ隠れ家に戻ることに。

「待ってよ。せめてお食事だけでも…… 」
ロクに食べてない。それは隠れ家に来てから。まるで残飯を喰らっているかのよう。
美食家のマリオネッタお嬢様には大変むごい仕打ち。
お腹いっぱい美味しいものを食べたい。ですがビアンカ頼りなので勝手はできない。
文句を言いながら従うことに。

ラクエラの地下隠れ家。
ああ嫌になる。またあそこ? 午前と午後では落差があり過ぎる。
帰りたくないな。戻りたくない。だからって戻らないと追っ手を放たれる。
仕方なく牢獄のような地下室へ。

「お帰り。よくやったな。さあ晩餐会までは大人しくしてるんだ」
奴らも警戒が薄まっているらしい。もはや王子暗殺以外頭にないのだろう。
今がチャンス? でも奴らもそこまでバカじゃない。
隠れ家の地下から脱出する者を取り逃がしはしない。
どんな手を使ってでも報復するに決まっている。

「ねえ。本当にこれでよかったの? 」
どうも計画を知らされてないから不安で不安で仕方がない。
「うむ。潜り込めたのも立派だが王子と親しくなれたのは思った以上の成果だ。
後は絶対に王子たちに気づかれないようにするんだ」
注文は受け付けるがいくらなんでもそこまで警戒しろとは無茶な要求。
「そこは任せて。私たちはどうやら気に入られたみたい」
「ははは! それはお前ではなく姉の方だろうが。お前は訝しがられていたぞ。
まったくもう少しで尻尾を掴まれるところだったんだからな」
やはり詳細を知っている。このことを知り得るのはあの船に乗っていた者だけ。
どうやら確実に裏切り者が一名いることになる。
その者がどう立ち振る舞うかが今後の鍵。

「それであのフレイトはどうなったの? 」
王子をお守りする要の一人が行方不明。王子たちにはそのからくりを知る由もない。
しかし私たち暗殺者部隊は当然知っていて共有すべき。
「知る必要のないことだ。お前らはただの殺し屋軍団。余計な詮索はするな」
忠告は素直に受け取るが生きてるか死んでるかぐらい……
「ちょっと! 教えなさい…… 」
「行きましょうマリオネッタ! 」
冷静だ。無駄なことは一切関わらないつもりらしい。
それが正しいのでしょうけれどどうしても感情的になる。

「もう! 」
「ほら準備をしておけ。晩餐会に遅れたら入れないぞ」
意外にも時間厳守らしい。てっきりもっと緩いかと思ったが王子がいますからね。
しかも確実に狙われてる王子。警戒も高まる訳だ。

埃だらけの粗末な部屋に閉じ込められる。
ビアンカは疲れたのか大人しい。私だけ騒いでる感じ。ちょっとやり過ぎかな?


                       続く
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