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脱出ステイ
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翌朝。
ビーチにて。
「面倒だから止めてくれないかな? 」
「すみません。二度としません」
「軽い気持ちでやられちゃうとさあ…… 」
「お許しください」
「分かった今回だけだよ。ムーちゃんだっけ? ふざけた名前だ」
「それはあなたが…… 」
「まさか俺が悪いとでも? 」
「いえ。そのようなことは」
決して逆らうことは無い。
男は満足したのか姿を消した。
ムーちゃんはブルブル震えてその場に座り込んだ。
考えずにしてしまった大失態。
いやああ!
私のつまらない欲が勝った結果とはいえ恐ろしい目に遭った。
まったくこれと言うのもあいつが悪い!
憂さ晴らしにゲンジに突っかかる。
昼過ぎ。
目を覚ます。
うーん。気持ちいい。良く寝た。
「ゲンジさん! 」
ムーちゃんが目の前に現れた。
「どうした? 昨日は見かけなかったけど。心配したんだぞ」
「覚えてないんですか? 」
「何が? 」
「いえ…… あなたに伝えていたはずですが。用事があるって」
「言った? 」
「はい、言いました。それよりももう酔っぱらわないでください! 世話が大変だったんですから」
「俺…… 何か? 」
「だれかれ構わず抱き着いてくるんだからまったく! 」
「おいおい。本当かよ? 信じられないなあ」
「これだから嫌なんです」
「そう言うなよ。俺は君以外興味はない」
「嘘ばっかり! 」
「本当だって。最初に会った時から君の美しさに惹かれていたんだ。
そのスタイルも格別だしな。どうだ俺と? 」
「ふざけないでください! 」
満更でもない様子。
「あなたはそうやっていつも私を試そうとしてる。もう嫌! 」
「おいおい。冗談だよ。冗談」
「結局アイミに行くんでしょう? 」
「アイミか? それも悪くない」
「あの…… 前回話したこと覚えてますか? 」
「ああ。アダムとイブだっけ」
「そう。あなたは私のアダムになれない。それはアイミも同じ」
「どういうことだ? まさか俺を混乱させるつもりか! 」
「ひい! ごめんなさい! ごめんなさい! 」
「ああ。済まない。言い過ぎた。でもどうしてそんな意地悪を言う? 」
「あなたはゲンジさん? 」
「ああ。そうだよ」
「良かった。たまにあなたから…… ううん何でもない。気にしないで」
島の生活にも慣れ飽きたのだろう。
焦らし合いや潰しあいが始まったか。
「ゲンジさん! 」
空蝉が何かを発見したらしい。
「ほら見えるでしょう? 」
何と目の前には巨大な船舶が見えるではないか。
我々を探しているのかもしれない。
「どうしますゲンジさん? 」
「すぐに皆を集めてくれ。上手く行けばここを脱出できるかもしれない」
「分かりましたすぐにでも」
空蝉は姿を消した。
「ちょっと待って」
ムーちゃんが噛みつく。
「博士がこの辺りを回っているのよ」
「ああ。確か…… 」
「彼らに知られてはせっかくの財宝が強奪されるかもしれない」
「でも…… 」
「いいのそれで? あなたの分け前も当然減るのよ」
「しかし…… 」
「博士は一昨日の朝戻って来てすぐに行ってしまいました。宝はすぐそこだって言ってね」
「本当なのかその話? 」
「ええ」
「しかし俺は帰りたい。お前はどうだ? 」
「私だってこんな島…… でも博士が頑張っているなら私耐えられる」
「どいつもこいつ財宝に目が眩みやがって。俺はもう嫌だね。帰ってやる! 」
「待って…… 」
振り払ってビーチに走る。
「おい助けてくれ! 俺はここにいる! 」
おーい!
おーい!
船は東から西へ舵を取る。
こちらを発見するには外に出て双眼鏡でも見てなければ難しい。
あいにく外には人の影が無い。
彼らには何か別の目的があるようだ。
しかしかつてない脱出のチャンス。
気付かせなければ。
何かないか? 何でも良い。
「おい! おーい! 」
そうだ笛があった。
たしか荷物部屋の机の上に。
あった。これだこれ。
ずいぶん汚らしい。埃だらけだ。
だが今はそんなこと言ってられない。
手でこすってから咥え外に走る。
ピー!
ピー!
おもいっきり鳴らす。
気付いてくれ!
行くな! 行くな!
ここに居る! 俺はここに居る!
助けてくれ!
あれ…… 体が拒絶する。
意思に反して吹くのを止めてしまう。
なぜだ? なぜなんだ?
「本当に良いの? 分け前が減るよ」
「お願いだ! 」
「お願い…… 私たちはどうなっちゃうの? 」
「脱出! 」
「この島から出たら私たちは私たちは…… 」
「うおおお! 止めてくれ! 」
「また会えばいいじゃないか。こんな島に居てどうしようってんだ」
「分かる。でもね…… できないの! 」
「ワガママを言うな! 」
「ごめんなさい。最初で最後のわがまま。私たちの想いを聞いて! 」
「何だっていうんだ? 」
「思い出が…… いえすべてが消えてしまう」
「そんな思い出忘れちまえ! 」
「ううん。あなたを信じてる」
汽笛が響いた。
我に返る。
船は西に姿を消した。
「これでいいの。これで……
あなたにとっても私たちにとっても。
たとえ消えゆく世界だとしても……
たとえ失われる命だとしても…… 」
うおおお!
もう何が何だか分からない。
俺は一体誰と話していたんだ?
私たちとは一体?
島を脱出するとどうなるのか?
試したい気もする。
船は行ってしまった。
もう全てにおいて遅い。
空蝉が駆けてきた。
「残念ですねゲンジさん」
「空蝉…… お前も本当はこの島を出たくないんだろ? 」
「私はあなたの意見に従うだけです。決して逆らったり邪魔をしたりしません」
空蝉はこちらをじっと見る。
彼女は信用できそうだ。
「まだ可能性はあります」
「ああ。そうか。そうだよな? 」
単純なことではないか彼らだって帰るのだ。
翌日から海の監視を始める。
【続】
ビーチにて。
「面倒だから止めてくれないかな? 」
「すみません。二度としません」
「軽い気持ちでやられちゃうとさあ…… 」
「お許しください」
「分かった今回だけだよ。ムーちゃんだっけ? ふざけた名前だ」
「それはあなたが…… 」
「まさか俺が悪いとでも? 」
「いえ。そのようなことは」
決して逆らうことは無い。
男は満足したのか姿を消した。
ムーちゃんはブルブル震えてその場に座り込んだ。
考えずにしてしまった大失態。
いやああ!
私のつまらない欲が勝った結果とはいえ恐ろしい目に遭った。
まったくこれと言うのもあいつが悪い!
憂さ晴らしにゲンジに突っかかる。
昼過ぎ。
目を覚ます。
うーん。気持ちいい。良く寝た。
「ゲンジさん! 」
ムーちゃんが目の前に現れた。
「どうした? 昨日は見かけなかったけど。心配したんだぞ」
「覚えてないんですか? 」
「何が? 」
「いえ…… あなたに伝えていたはずですが。用事があるって」
「言った? 」
「はい、言いました。それよりももう酔っぱらわないでください! 世話が大変だったんですから」
「俺…… 何か? 」
「だれかれ構わず抱き着いてくるんだからまったく! 」
「おいおい。本当かよ? 信じられないなあ」
「これだから嫌なんです」
「そう言うなよ。俺は君以外興味はない」
「嘘ばっかり! 」
「本当だって。最初に会った時から君の美しさに惹かれていたんだ。
そのスタイルも格別だしな。どうだ俺と? 」
「ふざけないでください! 」
満更でもない様子。
「あなたはそうやっていつも私を試そうとしてる。もう嫌! 」
「おいおい。冗談だよ。冗談」
「結局アイミに行くんでしょう? 」
「アイミか? それも悪くない」
「あの…… 前回話したこと覚えてますか? 」
「ああ。アダムとイブだっけ」
「そう。あなたは私のアダムになれない。それはアイミも同じ」
「どういうことだ? まさか俺を混乱させるつもりか! 」
「ひい! ごめんなさい! ごめんなさい! 」
「ああ。済まない。言い過ぎた。でもどうしてそんな意地悪を言う? 」
「あなたはゲンジさん? 」
「ああ。そうだよ」
「良かった。たまにあなたから…… ううん何でもない。気にしないで」
島の生活にも慣れ飽きたのだろう。
焦らし合いや潰しあいが始まったか。
「ゲンジさん! 」
空蝉が何かを発見したらしい。
「ほら見えるでしょう? 」
何と目の前には巨大な船舶が見えるではないか。
我々を探しているのかもしれない。
「どうしますゲンジさん? 」
「すぐに皆を集めてくれ。上手く行けばここを脱出できるかもしれない」
「分かりましたすぐにでも」
空蝉は姿を消した。
「ちょっと待って」
ムーちゃんが噛みつく。
「博士がこの辺りを回っているのよ」
「ああ。確か…… 」
「彼らに知られてはせっかくの財宝が強奪されるかもしれない」
「でも…… 」
「いいのそれで? あなたの分け前も当然減るのよ」
「しかし…… 」
「博士は一昨日の朝戻って来てすぐに行ってしまいました。宝はすぐそこだって言ってね」
「本当なのかその話? 」
「ええ」
「しかし俺は帰りたい。お前はどうだ? 」
「私だってこんな島…… でも博士が頑張っているなら私耐えられる」
「どいつもこいつ財宝に目が眩みやがって。俺はもう嫌だね。帰ってやる! 」
「待って…… 」
振り払ってビーチに走る。
「おい助けてくれ! 俺はここにいる! 」
おーい!
おーい!
船は東から西へ舵を取る。
こちらを発見するには外に出て双眼鏡でも見てなければ難しい。
あいにく外には人の影が無い。
彼らには何か別の目的があるようだ。
しかしかつてない脱出のチャンス。
気付かせなければ。
何かないか? 何でも良い。
「おい! おーい! 」
そうだ笛があった。
たしか荷物部屋の机の上に。
あった。これだこれ。
ずいぶん汚らしい。埃だらけだ。
だが今はそんなこと言ってられない。
手でこすってから咥え外に走る。
ピー!
ピー!
おもいっきり鳴らす。
気付いてくれ!
行くな! 行くな!
ここに居る! 俺はここに居る!
助けてくれ!
あれ…… 体が拒絶する。
意思に反して吹くのを止めてしまう。
なぜだ? なぜなんだ?
「本当に良いの? 分け前が減るよ」
「お願いだ! 」
「お願い…… 私たちはどうなっちゃうの? 」
「脱出! 」
「この島から出たら私たちは私たちは…… 」
「うおおお! 止めてくれ! 」
「また会えばいいじゃないか。こんな島に居てどうしようってんだ」
「分かる。でもね…… できないの! 」
「ワガママを言うな! 」
「ごめんなさい。最初で最後のわがまま。私たちの想いを聞いて! 」
「何だっていうんだ? 」
「思い出が…… いえすべてが消えてしまう」
「そんな思い出忘れちまえ! 」
「ううん。あなたを信じてる」
汽笛が響いた。
我に返る。
船は西に姿を消した。
「これでいいの。これで……
あなたにとっても私たちにとっても。
たとえ消えゆく世界だとしても……
たとえ失われる命だとしても…… 」
うおおお!
もう何が何だか分からない。
俺は一体誰と話していたんだ?
私たちとは一体?
島を脱出するとどうなるのか?
試したい気もする。
船は行ってしまった。
もう全てにおいて遅い。
空蝉が駆けてきた。
「残念ですねゲンジさん」
「空蝉…… お前も本当はこの島を出たくないんだろ? 」
「私はあなたの意見に従うだけです。決して逆らったり邪魔をしたりしません」
空蝉はこちらをじっと見る。
彼女は信用できそうだ。
「まだ可能性はあります」
「ああ。そうか。そうだよな? 」
単純なことではないか彼らだって帰るのだ。
翌日から海の監視を始める。
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