夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

文字の大きさ
40 / 61

最後の謎解き 犯人は俺?

しおりを挟む
目当てのカニも取れたことだし潮干狩りと行こう。

貝採り。
ザクザク
ザクザク
傷つけないように慎重に掘る。
「お兄ちゃん! 」
リンがはしゃぎまわる。
教えるのも一苦労。

うん? 頭が! 頭が!
封印された思い出がよみがえる。
ザクザク
ザクザク
何だ? 何かを掘っている?
ここは建物の中。
山小屋ではないようだ。
だとしたらコテージ?
いや違う。違和感がある。
ここはどこだろう?
俺は一体何を?
土をかぶせる。
まさか死体?
フラッシュバック?
こちらを睨んでいる。
何を恨めしそうに見ていやがる!
俺が悪いんじゃない。
お前が悪いんだ! お前らが……
うおおお!
止めてくれ! もう思い出したくない。
「誰か助けてくれ! 」
「お兄ちゃん? お兄ちゃん? 大丈夫? 」
リンが心配そうにのぞき込む。
「俺は誰だ? 誰なんだ? 教えてくれ! 」
「お兄ちゃん…… 」

落ち着きを取り戻した。
何とか夕飯には足りそうだ。
間抜けにものこのこ歩いていたカニをキャッチ。
これで文句ないだろう。
戻る。

「ゲンジさん」
アイミと空蝉が戻っていた。
話は飯の時にでも。
リンゴとココナッツもある。
デザートが楽しみだ。

カニと貝のスープを味わう。
うん。出汁が効いている。
「うんうまい。うまい」
たまらずにお代わり。
さすがは空蝉だ。頼りになる。
続いて貝の残りを焼く。
満足満足。
本題に入るとするか。

「なあアイミ。PTって何か分かるか? 」
アイミがムーちゃんを見る。
ムーちゃんが頷き、促す。
「PTに特別な意味はないよ」
「嘘だ! そんなはずはない! 」
なぜ断定できる。なぜ知っているのか?
いくら俺が細かいことを気にしないからと言ってその違和感は払拭できない。
「ほら落ち着いてゲンジ」
「これが落ち着いてられるか! 」
「いい? これはあなたを混乱させるために仕掛けた罠。時間稼ぎの意味もある」
「どういうことだ? 」
「もうしょうがないなあ。本当はPTじゃなくてSTだったの」
「ST? 本当か? なぜ知っている? 」
「私もそう聞いております」
空蝉がデザートを持ってきた。
遠慮なくリンゴを丸かじり。
さほど大きくないミニリンゴなので食後にはもってこい。

「PTに意味はありません」
空蝉が言うと説得力がある。
「そんなことないよ! 意味はあるもん! 」
リンが反論する。
「PTは…… 」
アイミが睨む。
リンは下を向いてしまった。

「まあいいや。それでSTだと」
「はい」
「STってまさか? 」
「もうお分かりになりましたか? そうです。その通りです」
「やっぱり…… 」
「ですが今日はもう遅いですし明日にでも」
「それがいい。ゲンジそうしなよ」
財宝は逃げはしない。
大人しく言うことを聞くか。
楽しみは明日に取っておく。

翌日。
最後の総仕上げ。
ST
青空教室に全員を集める。
「それでは始めようか」
「どうしたのお兄ちゃん。真剣な顔しちゃって」
リンのおふざけが始まった。いちいち付き合ってられない。
無視を決め込む。
「まるで探偵みたいですね」
「そうそうムーちゃんの言う通り」
「誰が犯人なの? 」
「お前ら黙ってろ! 調子が狂う」
「では発表してもらいましょう。おっと失礼。披露してもらいましょうでしたね」
空蝉までふざける。
これでは収拾がつかない。

「犯人は? 探偵さん」
「犯人は俺かな? 」
「おおお! 」
歓声が上がる。
「違う違う。そんな単純なものか。と言うよりもジャンルが違う。
これは宝さがしではないか」
「早くしてよお兄ちゃん! 」
リンは我慢できない。
「では冗談はこれくらいで。STの意味が分かった者? 」
「はーい! 」
「はい! はい! 」
全員分かったようだ。
一晩あったのだ誰でも分かるか。
「では発表しよう」
皆の顔を順に見ていく。
「STとは…… STARTのことだ! 」
「お兄ちゃん凄い! 」
どうやらリンはまだ理解してなかったようだ。
それはそれで立派とも言える。

「STARTとはどこか? 
始まりの場所。
振り出し。
出発地。
この島に当てはめるとそれはコテージになる」

「凄いよお兄ちゃん! 」
「何だ分かったんだ…… 」
「早くしましょう」
リンだけが褒めてくれる。
「よしコテージを掘り返すぞ! 」
「おう! 」

発掘開始。
ザクザク ザクザク
ザック ジャッブ
ザックザック ジャパン
事前に邪魔なベッドを退かしスペースができた。
そこに走り込んでシュート。
「ゴール! 」
リンの悪ふざけだ。
こんな大事な時に何をやらせようと言うのか。
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「もうすぐなんだから邪魔をするな! 」
「ええっ? つまんない! 」
地味な発掘作業に飽きたようだ。
リンらしいが笑ってはいられない。

ザクザク
ザクザク
掘り進めていく。
近い。もうすぐだ。
金銀がもう目の前だ。
オイルマネーで潤った?
莫大な金銀。
「お兄ちゃん? 」
「そこは危ないからどっかに行ってようね」
簡易式の床なので簡単に取り外すことができた。
まあ畳みたいなもの。
ボロ小屋にはお似合いだ。

「リン! 」
危険だから近寄るなと言っているのだが言うことを聞かない。
「手伝うよ」
「良いから! 大人しくしてろ! 」
「はーい」
渋々引き下がった。
リンはまだましだ。
他の奴らは姿を見せようともしない。
まあ穴掘りなんて疲れるだけなので楽しくもない。
リンが稀なのだ。

さあ最後の仕上げといこう。


                 【続】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...