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消えた空蝉
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正体不明の飛行物体。
UFO?
いやこれはドクターヘリだ。
近隣の島からの要請でヘリが一機。患者を乗せ飛び立ったようだ。
これはチャンス?
脱出の機会が訪れた。
そうだ。今しかない。
笛を咥えると力の限り吹き続ける。
もうこのチャンスを逃せば次はいつになるか分からない。
だが当たり前だが笛ではヘリの轟音に太刀打ちできない。
仕方ない次の手だ。
おーい!
おーい!
必至に手を広げるが反応はない。
降りてくることもないし旋回することもない。
やはり無駄だったか。
ヘリは行方不明者を捜索しているわけではないのだ。
あくまで患者を速やかに近くの病院に運ぶことが任務。
一分一秒を争っている。
下の景色を楽しんでいる余裕はない。
こちらからすれば無視されたようにしか見えない。しかし気が付くはずがない。
空から人間は豆粒にしか見えない。
よっぽど注意深く見ない限り気づくはずがない。
だから諦めるしかない。
だがコテージは別だ。
建物は多少は目に入る。
だからもし気付いてもらいたかったら建物に『SOS』でも書くしかない。
山小屋は特に目立つ。
次にヘリが通った時に気付いてもらう確率が上がる。
しかし今は当然無理だ。
そんな考え今までなかった。
そもそもこの島に寄せ付ける訳にはいかなかった。
お宝を奪われる恐れがあったからだ。
もちろん今は違う。状況が変わった。
お宝は手元にないとは言え場所は分かっている。
もし最悪ハンターだとしてもいくらでも逃げ切る方法がある。
この島を知り尽くした俺たちと奴らとでは当然こちらに分がある。
脱出を優先に考えるべきだ。
本当にハンターだったとしてももう遅い。
気付かれることなく宝を持って脱出できる。
だから気づいてさえくれれば……
お願いだ!
頼む!
しかし無情にもヘリは東の空に消えて行った。
あの方角に大きな病院があるのだろう。
次の機会を待つしかない。
ベストを尽くす。
山小屋へ。
『SOS』
できる限りの対策。
山奥のあばら屋にも施す。
たとえまたこの辺り上空を飛ぶとは限らないとしても。無駄な努力だとしても。
翌日
続きに取り掛かる。
これでコテージにも『SOS』を描いた。
あとは奇跡を待つだけだ。
ドクターヘリで運ばれた患者が回復して戻って来ればまたこの辺りを飛ぶかもしれない。
そうなったらこの『SOS』を発見してもらえる。
楽観的かもしれないが有り得ないことではない。
頼む! お願いだ!
俺を脱出させてくれ!
果たして願いは叶うのか?
物語は最終章へ。
最終章
「ゲンジさん」
「あれ空蝉…… 」
「良いんですよこれで。私の、いえ、皆の気持ちをくみ取ってください。
もしそれでも私を選ぶと言うならこのまま…… 」
「何を言っている? ちょっとした冗談じゃないか。空蝉らしいな」
「冗談? からかったんですか? 」
「うん。いや…… うーん。どっちかな? 」
自分でも良く分からない。
「俺は自分に正直だ。お前はどうだ? 」
「もちろん嬉しいです。本気なら」
「本気だ! 本気に決まっている! 」
「では信じていいんですね? 」
空蝉は目を輝かせ見つめてくる。
「行こう! 二人で新たな扉を開けるのだ! 」
「ゲンジさん! 」
「空蝉! 」
もう戻れない。
うおおお!
なんだ夢か……
昨夜あんなことになったものだから意識してるのかな?
空蝉……
もう外は明るい。
またしても昼過ぎに目が覚める。
少女たちが何事か騒いでいる。
「おーい! 」
「空蝉! 」
「どこに行ったの? 」
朝から騒々しいなまったく。
もちろん俺にとっての朝だ。世間ではこれを昼と呼ぶがな。
「どうしたアイミ? うるさいぞ! 」
「それが…… ううん何でもない。行こう皆」
俺だけ仲間外れ? それはないよ。
「おい亜砂! 何の騒ぎだ? 」
「それが空蝉が見当たらないの。どこを探しても居ないの。ゲンジは心当たり無い? 」
心当たりがないと言えば嘘になる。
空蝉はこの中で一番真面目だ。
別に他の子が遊んでいるとか思っているわけではない。
しかし昨夜の空蝉はおかしかった。
余りにも大胆だった。
あんなことをする子ではない。
俺が煮え切らないものだから勘違いさせてしまったか?
「ゲンジ! やっぱり居ないよ」
「どこかに出かけたんじゃないか? 」
「うーん。違う気がする。それにどこに行ったって言うの? 」
「それは何とも…… だが大げさに騒ぐことか? この島で迷子になるなんて考えられない。そのうち戻ってくるさ。心配ないって」
「でも…… 」
亜砂は納得がいってないようだ。
「よし分かった。俺も協力するよ。お前らは西を探せ。俺たちは東の方に向かう」
二手に分かれ捜索開始。
「リン行くぞ! 」
「おう! 」
念のためだ。どうせ暇なのだから協力するのも悪くない。
「空蝉! おーい! 返事をしてくれ! 」
「空蝉! 空蝉! 」
いくら呼びかけても返ってこない。
この辺りにはいないのだろう。
一体どこへ行ってしまったんだ?
失踪した空蝉。
本当に戻ってくるのだろうか?
胸騒ぎがする。
空蝉。その存在は徐々に薄れていく。
ついには記憶からも消えて……
記憶は上書きされてしまい……
居なかったことに。
まさかな……
思い過ごしだといいんだが。
空蝉……
昨夜の思い出がよみがえる。
【続】
UFO?
いやこれはドクターヘリだ。
近隣の島からの要請でヘリが一機。患者を乗せ飛び立ったようだ。
これはチャンス?
脱出の機会が訪れた。
そうだ。今しかない。
笛を咥えると力の限り吹き続ける。
もうこのチャンスを逃せば次はいつになるか分からない。
だが当たり前だが笛ではヘリの轟音に太刀打ちできない。
仕方ない次の手だ。
おーい!
おーい!
必至に手を広げるが反応はない。
降りてくることもないし旋回することもない。
やはり無駄だったか。
ヘリは行方不明者を捜索しているわけではないのだ。
あくまで患者を速やかに近くの病院に運ぶことが任務。
一分一秒を争っている。
下の景色を楽しんでいる余裕はない。
こちらからすれば無視されたようにしか見えない。しかし気が付くはずがない。
空から人間は豆粒にしか見えない。
よっぽど注意深く見ない限り気づくはずがない。
だから諦めるしかない。
だがコテージは別だ。
建物は多少は目に入る。
だからもし気付いてもらいたかったら建物に『SOS』でも書くしかない。
山小屋は特に目立つ。
次にヘリが通った時に気付いてもらう確率が上がる。
しかし今は当然無理だ。
そんな考え今までなかった。
そもそもこの島に寄せ付ける訳にはいかなかった。
お宝を奪われる恐れがあったからだ。
もちろん今は違う。状況が変わった。
お宝は手元にないとは言え場所は分かっている。
もし最悪ハンターだとしてもいくらでも逃げ切る方法がある。
この島を知り尽くした俺たちと奴らとでは当然こちらに分がある。
脱出を優先に考えるべきだ。
本当にハンターだったとしてももう遅い。
気付かれることなく宝を持って脱出できる。
だから気づいてさえくれれば……
お願いだ!
頼む!
しかし無情にもヘリは東の空に消えて行った。
あの方角に大きな病院があるのだろう。
次の機会を待つしかない。
ベストを尽くす。
山小屋へ。
『SOS』
できる限りの対策。
山奥のあばら屋にも施す。
たとえまたこの辺り上空を飛ぶとは限らないとしても。無駄な努力だとしても。
翌日
続きに取り掛かる。
これでコテージにも『SOS』を描いた。
あとは奇跡を待つだけだ。
ドクターヘリで運ばれた患者が回復して戻って来ればまたこの辺りを飛ぶかもしれない。
そうなったらこの『SOS』を発見してもらえる。
楽観的かもしれないが有り得ないことではない。
頼む! お願いだ!
俺を脱出させてくれ!
果たして願いは叶うのか?
物語は最終章へ。
最終章
「ゲンジさん」
「あれ空蝉…… 」
「良いんですよこれで。私の、いえ、皆の気持ちをくみ取ってください。
もしそれでも私を選ぶと言うならこのまま…… 」
「何を言っている? ちょっとした冗談じゃないか。空蝉らしいな」
「冗談? からかったんですか? 」
「うん。いや…… うーん。どっちかな? 」
自分でも良く分からない。
「俺は自分に正直だ。お前はどうだ? 」
「もちろん嬉しいです。本気なら」
「本気だ! 本気に決まっている! 」
「では信じていいんですね? 」
空蝉は目を輝かせ見つめてくる。
「行こう! 二人で新たな扉を開けるのだ! 」
「ゲンジさん! 」
「空蝉! 」
もう戻れない。
うおおお!
なんだ夢か……
昨夜あんなことになったものだから意識してるのかな?
空蝉……
もう外は明るい。
またしても昼過ぎに目が覚める。
少女たちが何事か騒いでいる。
「おーい! 」
「空蝉! 」
「どこに行ったの? 」
朝から騒々しいなまったく。
もちろん俺にとっての朝だ。世間ではこれを昼と呼ぶがな。
「どうしたアイミ? うるさいぞ! 」
「それが…… ううん何でもない。行こう皆」
俺だけ仲間外れ? それはないよ。
「おい亜砂! 何の騒ぎだ? 」
「それが空蝉が見当たらないの。どこを探しても居ないの。ゲンジは心当たり無い? 」
心当たりがないと言えば嘘になる。
空蝉はこの中で一番真面目だ。
別に他の子が遊んでいるとか思っているわけではない。
しかし昨夜の空蝉はおかしかった。
余りにも大胆だった。
あんなことをする子ではない。
俺が煮え切らないものだから勘違いさせてしまったか?
「ゲンジ! やっぱり居ないよ」
「どこかに出かけたんじゃないか? 」
「うーん。違う気がする。それにどこに行ったって言うの? 」
「それは何とも…… だが大げさに騒ぐことか? この島で迷子になるなんて考えられない。そのうち戻ってくるさ。心配ないって」
「でも…… 」
亜砂は納得がいってないようだ。
「よし分かった。俺も協力するよ。お前らは西を探せ。俺たちは東の方に向かう」
二手に分かれ捜索開始。
「リン行くぞ! 」
「おう! 」
念のためだ。どうせ暇なのだから協力するのも悪くない。
「空蝉! おーい! 返事をしてくれ! 」
「空蝉! 空蝉! 」
いくら呼びかけても返ってこない。
この辺りにはいないのだろう。
一体どこへ行ってしまったんだ?
失踪した空蝉。
本当に戻ってくるのだろうか?
胸騒ぎがする。
空蝉。その存在は徐々に薄れていく。
ついには記憶からも消えて……
記憶は上書きされてしまい……
居なかったことに。
まさかな……
思い過ごしだといいんだが。
空蝉……
昨夜の思い出がよみがえる。
【続】
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