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聖女の涙
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ドルチェの気遣いでカナの件はここまで。
まあいいか。間違っていない訳だから……
「カナさんねえ…… 」
シンディはまだ拘ってる。まさか彼女も何か知ってるのか?
確かに俺とカナはただの幼馴染ではない。
中途半端な関係。
恋人にもなりきれないし兄弟にもなりきれない。
お嬢様と使用人の関係が一番しっくりくるがそれも変だ。
カナへの思いも好き嫌いや愛してるとかではなく尊敬してるが正しい。
「それで大河さんこの後どうしましょう? 」
命令に忠実なブリリアント。彼女なら何でも言うことを聞いてくれるだろう。
「俺は引き続き『聖女の涙』探しをする。
出来れば協力して欲しいが無理強いはしたくない。
俺は俺の。お前たちはお前たちの使命を果たせ」
「はい分かりました! 」
三人が声を揃える。
「その上で何でもいい。関係ありそうなことはすべて俺に知らせてくれ」
「あの…… それは一体どう言ったものなんですか? 」
「分からない。俺だって見たことがない。それに本当に伝説の通りなのか疑わしい」
「伝説の通りって? 」
シンディ―が興味を示す。
「まあ簡単に言えばあらゆる病に効く全能の秘薬らしい」
まさしく奇跡を起こす秘薬。もし発見されれば大騒ぎになるだろう。
「僕たちが普段飲んでいるようなものなの大河? 」
神経質に尋ねるシンディー。どの辺に興味を持ったのか積極的だ。
「ああそうだな。君たちの薬は正直良く分からないが意識を遠のかせるもので……
辛い記憶を思い出させないよう心を落ち着かせる安定剤かなんかだろう」
「大河さんも似たような薬をお持ちでしたよね」
俺の告白からブリリアントが推測する。
「これだ! 」
ポケットから小さな容器を取り出す。
「谷底に落ちた時に拾ったもので謎の彼によってもたらされたもの」
地獄から助け出してくれた恩人。今どこにいるやら。
一堂が目を見開き中身を確かめる。
「これにはどのような効果が? 」
ブリリアントが容器を開ける。
「そうだな…… 俺のけがを二、三日で治し、寝不足や睡眠障害にも効果があった。
他にも何かしらの効果はあるだろうが彼女を、カナを目覚めさせる効果はない。
『聖女の涙』はそれ以上の効果がある。いやすべてに効く全能の薬」
ブリリアントは頷いてるが本当に理解したか怪しい。
シンディーは僕としか言わなくなった。
やはりここはドルチェに頼る。今も難しい表情を浮かべ考えている。
「あの大河さん…… 」
躊躇いがちに自分の持っている情報を提供するドルチェ。
「父が酒の席で『聖女の涙』伝説の話をしてました。
何でも酒仲間の副村長から直接聞いたとか。
もちろん酔いの席です。酔っぱらいの戯言と片付けることもできますが念のため」
「副村長から聞いたとなると信憑性はあるな。
副村長は酔うと何でもかんでもぶちまけちまうからな。それで君の親は何と? 」
「いえちょっと待ってください。あの時言ってたのは確か……
グリー酒の作り方だったような。でも父はこうも言ってました。
それに何かを加えると伝説のあれになると言ってました。
まあ父の世代になるとあれ。たぶん『聖女の涙』のことを指してるかと」
ドルチェから新たな情報がもたらされる。
「ドルチェさん凄い! 」
ブリリアントが抱き着く。
「ちょっと! 」
柄にもなく照れる…… まさか本当に嫌がってるのか?
「僕も! 」
遅れてシンディーも突っ込む。
「二人とも止めてよ…… 」
嬉しそうに恥ずかしそうに下を向くドルチェ。
「それで具体的には? 」
「それが詳しくは覚えてなくて。ミックスするとか専用の器で量るとか。
割合は確か一対一で最後に一滴垂らすと完成みたいな。
済みません。具体的には何一つ。聞き流していましたから」
まあ仮に聞いたとしても興味のないものは右から左に流れていくだけ。
「お父さんと連絡はとれるか? 」
ドルチェの表情が曇る。
まずい余計なことを聞いてしまったか?
デリケートな問題だと分かっていながらつい彼女に甘え踏み込んでしまう。
「たぶんこの島を出たかもう亡くなっているかのどちらかでしょう。
あの人は私がいなくては何もできない人でしたから。
島のガイドだって毎週ある訳ではありませんしそれに…… 」
項垂れるドルチェ。
それもそうか。もはや消息不明。近所に聞いて回ってもその後を知る者は居ないか。
「済まないドルチェ。軽はずみだった」
「いえ私なら平気ですから」
仕方なく抱きしめて慰める。
「本当に済みません」
「いやいい。よく思い出してくれた。まあ手掛かりは途絶えたが何とかなるさ」
「あの…… 副村長に直接尋ねてみたらいかかがですか? 」
冷静なブリリアントがつぶやく。さすがは優秀な我が助手。頼りになる。
そうかその手があったか。でも一つだけ問題がある。
それは……
続く
まあいいか。間違っていない訳だから……
「カナさんねえ…… 」
シンディはまだ拘ってる。まさか彼女も何か知ってるのか?
確かに俺とカナはただの幼馴染ではない。
中途半端な関係。
恋人にもなりきれないし兄弟にもなりきれない。
お嬢様と使用人の関係が一番しっくりくるがそれも変だ。
カナへの思いも好き嫌いや愛してるとかではなく尊敬してるが正しい。
「それで大河さんこの後どうしましょう? 」
命令に忠実なブリリアント。彼女なら何でも言うことを聞いてくれるだろう。
「俺は引き続き『聖女の涙』探しをする。
出来れば協力して欲しいが無理強いはしたくない。
俺は俺の。お前たちはお前たちの使命を果たせ」
「はい分かりました! 」
三人が声を揃える。
「その上で何でもいい。関係ありそうなことはすべて俺に知らせてくれ」
「あの…… それは一体どう言ったものなんですか? 」
「分からない。俺だって見たことがない。それに本当に伝説の通りなのか疑わしい」
「伝説の通りって? 」
シンディ―が興味を示す。
「まあ簡単に言えばあらゆる病に効く全能の秘薬らしい」
まさしく奇跡を起こす秘薬。もし発見されれば大騒ぎになるだろう。
「僕たちが普段飲んでいるようなものなの大河? 」
神経質に尋ねるシンディー。どの辺に興味を持ったのか積極的だ。
「ああそうだな。君たちの薬は正直良く分からないが意識を遠のかせるもので……
辛い記憶を思い出させないよう心を落ち着かせる安定剤かなんかだろう」
「大河さんも似たような薬をお持ちでしたよね」
俺の告白からブリリアントが推測する。
「これだ! 」
ポケットから小さな容器を取り出す。
「谷底に落ちた時に拾ったもので謎の彼によってもたらされたもの」
地獄から助け出してくれた恩人。今どこにいるやら。
一堂が目を見開き中身を確かめる。
「これにはどのような効果が? 」
ブリリアントが容器を開ける。
「そうだな…… 俺のけがを二、三日で治し、寝不足や睡眠障害にも効果があった。
他にも何かしらの効果はあるだろうが彼女を、カナを目覚めさせる効果はない。
『聖女の涙』はそれ以上の効果がある。いやすべてに効く全能の薬」
ブリリアントは頷いてるが本当に理解したか怪しい。
シンディーは僕としか言わなくなった。
やはりここはドルチェに頼る。今も難しい表情を浮かべ考えている。
「あの大河さん…… 」
躊躇いがちに自分の持っている情報を提供するドルチェ。
「父が酒の席で『聖女の涙』伝説の話をしてました。
何でも酒仲間の副村長から直接聞いたとか。
もちろん酔いの席です。酔っぱらいの戯言と片付けることもできますが念のため」
「副村長から聞いたとなると信憑性はあるな。
副村長は酔うと何でもかんでもぶちまけちまうからな。それで君の親は何と? 」
「いえちょっと待ってください。あの時言ってたのは確か……
グリー酒の作り方だったような。でも父はこうも言ってました。
それに何かを加えると伝説のあれになると言ってました。
まあ父の世代になるとあれ。たぶん『聖女の涙』のことを指してるかと」
ドルチェから新たな情報がもたらされる。
「ドルチェさん凄い! 」
ブリリアントが抱き着く。
「ちょっと! 」
柄にもなく照れる…… まさか本当に嫌がってるのか?
「僕も! 」
遅れてシンディーも突っ込む。
「二人とも止めてよ…… 」
嬉しそうに恥ずかしそうに下を向くドルチェ。
「それで具体的には? 」
「それが詳しくは覚えてなくて。ミックスするとか専用の器で量るとか。
割合は確か一対一で最後に一滴垂らすと完成みたいな。
済みません。具体的には何一つ。聞き流していましたから」
まあ仮に聞いたとしても興味のないものは右から左に流れていくだけ。
「お父さんと連絡はとれるか? 」
ドルチェの表情が曇る。
まずい余計なことを聞いてしまったか?
デリケートな問題だと分かっていながらつい彼女に甘え踏み込んでしまう。
「たぶんこの島を出たかもう亡くなっているかのどちらかでしょう。
あの人は私がいなくては何もできない人でしたから。
島のガイドだって毎週ある訳ではありませんしそれに…… 」
項垂れるドルチェ。
それもそうか。もはや消息不明。近所に聞いて回ってもその後を知る者は居ないか。
「済まないドルチェ。軽はずみだった」
「いえ私なら平気ですから」
仕方なく抱きしめて慰める。
「本当に済みません」
「いやいい。よく思い出してくれた。まあ手掛かりは途絶えたが何とかなるさ」
「あの…… 副村長に直接尋ねてみたらいかかがですか? 」
冷静なブリリアントがつぶやく。さすがは優秀な我が助手。頼りになる。
そうかその手があったか。でも一つだけ問題がある。
それは……
続く
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