22 / 57
身内 Ⅲ
しおりを挟む
食堂での夕餉が酒の席の様相を見せ始めた頃、よりくつろげる談話室へと場所が移された。
いつも以上に長丁場である夕餉。順に配される食事ではないため、惰性のような形になってしまっているのだ。しかし、砕けた雰囲気に満ちたそれは、苦痛ではなく、むしろとても楽しく過ごせている。
それもこれも、ビルネンベルクとアルティミシオンという立場ある年長者らがそうした場にしようと、砕けた会話ばかりをしてくれているからかもしれない。
内々の話になりそうなところを、蚊帳の外に置かれがちになりかけるキルシェにわざわざ会話を振ってくれるあたりがそうしたことの現れだろう。
ほぼ口を挟むことなく、彼らのやり取りを見守ることが多いとはいえ、お陰で疎外感なく彼らのやり取りを笑いを零しながらキルシェは混ぜてもらっていた。
「__キルシェ」
ふわふわ、とした心地に浸っていると、軽く身体がゆすられてキルシェは目を開ける。
長椅子の隣に座るリュディガーが、揺すったのだとわかるものの、一同の視線がすべて向けられているのが疑問でならない。
それを見、くつり、と笑ったのは一人がけのソファーに腰をすえ、肘掛けに重心を寄せていたアルティミシオンだった。
「日も跨いだ。キルシェ嬢は、そろそろお休みになられたほうがいいのではないか?」
え、と驚けば、ビルネンベルクが部屋の時計を視線で示すので、キルシェはそちらを見る。
確かに、針は日を跨いでしばらく経ったことを示していた。
__いつの間に……。
この家の時計は、この談話室だけでなく吹き抜けの広間にも、大きな時計がある。それは仕掛け時計で、刻を告げる鐘がなる先駆的なものだ。それを聞き逃すとは、にわかには信じがたく、キルシェは驚きを隠せない。
「まるで気づきませんでした……」
「君、だいぶ酒が回っているだろう。さっきから反応がぼんやりしている」
「そうですか……?」
「実際、今、うつらうつらしていた」
アルティミシオンの言葉に頷いたのは、卓を挟んだ反対側に鎮座するビルネンベルクだった。
「いやぁ、仲睦まじさを見せつけられているようで、それはそれでいいものでしたよ」
笑いを含んだ声で言うのは、暖炉脇の背もたれのない椅子__否、足乗せ台に腰掛けるライナルト。
彼は何故笑っているのか__キルシェが怪訝にしていると、すぐそばで咳払いするのはリュディガーだった。
「……だいぶ、回っていらっしゃるようで」
ライナルトは今度は肩をすくめて苦笑を浮かべた。
「雪の中、急かすように私のお使いをさせてしまったから、疲れていたのだろう。酒の回りも早いというもの」
「たしかに。加えて言えば、泣く子も黙る大ビルネンベルク公がいる席です。緊張するな、という方が無理でしょう。気疲れもあったと思いますよ。__ハナトリンデン卿でさえ、緊張する席でしょうからね」
「我々に合わせすぎたのではないのか?」
「いや、我々、というよりも大旦那様にでしょう」
なんだと、と片眉をあげるアルティミシオンはライナルトを軽く睨めつける。その視線には、どちらかといえば、冗談めかしたものがにじみ出ていた。
「__自分も、そう思います」
そこへリュディガーがさらに続けば、アルティミシオンは反対側の肘掛けに体重を移動して、肩をすくめて酒盃を一気に煽ってみせた。
「皆さん、お強いんですね……」
「私はさておき、控えめに言って、ビルネンベルクの方々は、皆そろいもそろって酒豪ですからね」
「私はまだ弱いほうだよ、ライナルト」
「よくおっしゃいます」
「あ、君、以前のあれをまだ根に持っているね」
くつくつ、とビルネンベルクが言った言葉を、アルティミシオンの耳がぴくり、と捉えた。
「以前のあれとは?」
「あぁ、お耳にいれておりませんでしたか。実は、帝都に戻って__」
「先生」
やや強く止めに入るリュディガーに、ビルネンベルクは膝を打って笑う。
「まぁ、それはさておき……。キルシェ、眠気もあるだろう、部屋で休むといいよ。我々にこれ以上付き合うことはしないでいい」
ですが、と困惑して一同の顔を見れば、皆一様に頷いて見せる。
「__なにも無礼だとは思うまいよ。気負わずに」
アルティミシオンが至極穏やかな顔と声で言う。それは十二分に背中を押してくれた。
「……では、先に部屋へ下がらせていただきます」
「そうするといい」
リュディガー、とアルティミシオンが続けて声をかける隙があらばこそ、リュディガーはすでに席を立ち上がっていたのだが、同時にキルシェの身体は何故かリュディガー側にぐらり、と揺らぐので思わず座面に手をついて支える。
どうやら、いくらか体を寄せていたらしい。
大きな手を差し伸べられて、キルシェが手を乗せると引かれるようにして立たせられた。
途端、ふわり、とした感覚が勝って均衡がとりにくく、たたらを踏みそうになってリュディガーがそっと手を添えて支える。
「送ろう」
「いえ、大丈夫です。リュディガーは、このまま……」
「いやいや、ご冗談でしょう、お嬢様。そんな状態なのを自覚ないのであれば、なおさら」
さも愉快、とライナルトが笑うのを困惑していれば、ビルネンベルクが口を開く。
「ライナルトの言う通りだよ、キルシェ。階段から転げ落ちても可笑しくはない」
穏やかな笑みをたたえた顔で言うビルネンベルクであるが、その言葉は真剣なもの。であれば、そうなのだろうか__と、キルシェが支えているリュディガーを振り仰ぐ。
リュディガーは、深く頷いて見せた。彼の顔はより真剣でかたいもので、その表情を見るに譲らない意志が感じ取れて、キルシェは困ったように笑うしかなかった。
「……わかりました。では、お願いします」
キルシェは一度リュディガーから身を離して、居住まいをただす。
「今日まで、皆様には多大な__」
「キルシェ嬢」
口上を遮ったのは、アルティミシオンの笑いを含んだ声だった。
「__よい」
ただその一言。
たった一言は、あまりにも温かく、安心感を抱かせる。
キルシェは驚きとともに声をつまらせてしまった。
「後手後手に回ってしまわざるをえなかったことがある。……それに、このドゥーヌミオンのわがままにかなり振り回されているだろう。それで帳消しだ」
うむ、と視線を向けた先のビルネンベルクは深く首肯する。
「__むしろ、キルシェのほうが割が合わないのだよ」
「ありがとう、ございます……本当に」
過大なほどの温情に、ただただ胸が詰まる。
丁寧に淑女然とした礼をとるのだが、いくらかふらついてしまって、リュディガーがつぶさに支えてくれ、その様を彼らに笑われる。
「__ほら。自覚したかい?」
はい、とビルネンベルクへキルシェは苦笑を返した。
ひとつ咳払いして、キルシェはリュディガーに支えてもらいながら、皆にむかってできる限りの丁寧な礼をとる。
「それでは、おやすみなさい」
皆から口々に、挨拶と笑顔をもらい、キルシェは支えてくれているリュディガーを見上げる。
リュディガーは応じるように手を差し出すので、それに手を置くと、もう一方の身体を支えていた大きな手が背中に改めて添えられた。
そして、その背中に添えられた手に促されるようにしてキルシェは談話室を後にした。
いつも以上に長丁場である夕餉。順に配される食事ではないため、惰性のような形になってしまっているのだ。しかし、砕けた雰囲気に満ちたそれは、苦痛ではなく、むしろとても楽しく過ごせている。
それもこれも、ビルネンベルクとアルティミシオンという立場ある年長者らがそうした場にしようと、砕けた会話ばかりをしてくれているからかもしれない。
内々の話になりそうなところを、蚊帳の外に置かれがちになりかけるキルシェにわざわざ会話を振ってくれるあたりがそうしたことの現れだろう。
ほぼ口を挟むことなく、彼らのやり取りを見守ることが多いとはいえ、お陰で疎外感なく彼らのやり取りを笑いを零しながらキルシェは混ぜてもらっていた。
「__キルシェ」
ふわふわ、とした心地に浸っていると、軽く身体がゆすられてキルシェは目を開ける。
長椅子の隣に座るリュディガーが、揺すったのだとわかるものの、一同の視線がすべて向けられているのが疑問でならない。
それを見、くつり、と笑ったのは一人がけのソファーに腰をすえ、肘掛けに重心を寄せていたアルティミシオンだった。
「日も跨いだ。キルシェ嬢は、そろそろお休みになられたほうがいいのではないか?」
え、と驚けば、ビルネンベルクが部屋の時計を視線で示すので、キルシェはそちらを見る。
確かに、針は日を跨いでしばらく経ったことを示していた。
__いつの間に……。
この家の時計は、この談話室だけでなく吹き抜けの広間にも、大きな時計がある。それは仕掛け時計で、刻を告げる鐘がなる先駆的なものだ。それを聞き逃すとは、にわかには信じがたく、キルシェは驚きを隠せない。
「まるで気づきませんでした……」
「君、だいぶ酒が回っているだろう。さっきから反応がぼんやりしている」
「そうですか……?」
「実際、今、うつらうつらしていた」
アルティミシオンの言葉に頷いたのは、卓を挟んだ反対側に鎮座するビルネンベルクだった。
「いやぁ、仲睦まじさを見せつけられているようで、それはそれでいいものでしたよ」
笑いを含んだ声で言うのは、暖炉脇の背もたれのない椅子__否、足乗せ台に腰掛けるライナルト。
彼は何故笑っているのか__キルシェが怪訝にしていると、すぐそばで咳払いするのはリュディガーだった。
「……だいぶ、回っていらっしゃるようで」
ライナルトは今度は肩をすくめて苦笑を浮かべた。
「雪の中、急かすように私のお使いをさせてしまったから、疲れていたのだろう。酒の回りも早いというもの」
「たしかに。加えて言えば、泣く子も黙る大ビルネンベルク公がいる席です。緊張するな、という方が無理でしょう。気疲れもあったと思いますよ。__ハナトリンデン卿でさえ、緊張する席でしょうからね」
「我々に合わせすぎたのではないのか?」
「いや、我々、というよりも大旦那様にでしょう」
なんだと、と片眉をあげるアルティミシオンはライナルトを軽く睨めつける。その視線には、どちらかといえば、冗談めかしたものがにじみ出ていた。
「__自分も、そう思います」
そこへリュディガーがさらに続けば、アルティミシオンは反対側の肘掛けに体重を移動して、肩をすくめて酒盃を一気に煽ってみせた。
「皆さん、お強いんですね……」
「私はさておき、控えめに言って、ビルネンベルクの方々は、皆そろいもそろって酒豪ですからね」
「私はまだ弱いほうだよ、ライナルト」
「よくおっしゃいます」
「あ、君、以前のあれをまだ根に持っているね」
くつくつ、とビルネンベルクが言った言葉を、アルティミシオンの耳がぴくり、と捉えた。
「以前のあれとは?」
「あぁ、お耳にいれておりませんでしたか。実は、帝都に戻って__」
「先生」
やや強く止めに入るリュディガーに、ビルネンベルクは膝を打って笑う。
「まぁ、それはさておき……。キルシェ、眠気もあるだろう、部屋で休むといいよ。我々にこれ以上付き合うことはしないでいい」
ですが、と困惑して一同の顔を見れば、皆一様に頷いて見せる。
「__なにも無礼だとは思うまいよ。気負わずに」
アルティミシオンが至極穏やかな顔と声で言う。それは十二分に背中を押してくれた。
「……では、先に部屋へ下がらせていただきます」
「そうするといい」
リュディガー、とアルティミシオンが続けて声をかける隙があらばこそ、リュディガーはすでに席を立ち上がっていたのだが、同時にキルシェの身体は何故かリュディガー側にぐらり、と揺らぐので思わず座面に手をついて支える。
どうやら、いくらか体を寄せていたらしい。
大きな手を差し伸べられて、キルシェが手を乗せると引かれるようにして立たせられた。
途端、ふわり、とした感覚が勝って均衡がとりにくく、たたらを踏みそうになってリュディガーがそっと手を添えて支える。
「送ろう」
「いえ、大丈夫です。リュディガーは、このまま……」
「いやいや、ご冗談でしょう、お嬢様。そんな状態なのを自覚ないのであれば、なおさら」
さも愉快、とライナルトが笑うのを困惑していれば、ビルネンベルクが口を開く。
「ライナルトの言う通りだよ、キルシェ。階段から転げ落ちても可笑しくはない」
穏やかな笑みをたたえた顔で言うビルネンベルクであるが、その言葉は真剣なもの。であれば、そうなのだろうか__と、キルシェが支えているリュディガーを振り仰ぐ。
リュディガーは、深く頷いて見せた。彼の顔はより真剣でかたいもので、その表情を見るに譲らない意志が感じ取れて、キルシェは困ったように笑うしかなかった。
「……わかりました。では、お願いします」
キルシェは一度リュディガーから身を離して、居住まいをただす。
「今日まで、皆様には多大な__」
「キルシェ嬢」
口上を遮ったのは、アルティミシオンの笑いを含んだ声だった。
「__よい」
ただその一言。
たった一言は、あまりにも温かく、安心感を抱かせる。
キルシェは驚きとともに声をつまらせてしまった。
「後手後手に回ってしまわざるをえなかったことがある。……それに、このドゥーヌミオンのわがままにかなり振り回されているだろう。それで帳消しだ」
うむ、と視線を向けた先のビルネンベルクは深く首肯する。
「__むしろ、キルシェのほうが割が合わないのだよ」
「ありがとう、ございます……本当に」
過大なほどの温情に、ただただ胸が詰まる。
丁寧に淑女然とした礼をとるのだが、いくらかふらついてしまって、リュディガーがつぶさに支えてくれ、その様を彼らに笑われる。
「__ほら。自覚したかい?」
はい、とビルネンベルクへキルシェは苦笑を返した。
ひとつ咳払いして、キルシェはリュディガーに支えてもらいながら、皆にむかってできる限りの丁寧な礼をとる。
「それでは、おやすみなさい」
皆から口々に、挨拶と笑顔をもらい、キルシェは支えてくれているリュディガーを見上げる。
リュディガーは応じるように手を差し出すので、それに手を置くと、もう一方の身体を支えていた大きな手が背中に改めて添えられた。
そして、その背中に添えられた手に促されるようにしてキルシェは談話室を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜
マロン株式
恋愛
公爵令嬢ユウフェには、ひとつだけ秘密がある。
――この世界が“小説の中”だと知っていること。
ユウフェはただの“サブヒロイン”で、物語の結末では魔王のもとへ嫁ぐ運命にある……はずだった。
けれどーー
勇者の仲間、聖女、そして魔王が現れ、〝物語どおり〟には進まない恋の三角関係(いや、四角関係?)が動き出す。
サブヒロインの恩返しから始まる、ほのぼの甘くて、少し切ない恋愛ファンタジー。
◇◇◇
※注意事項※
・序盤ほのぼのめ
・勇者 ✖ サブヒロイン ✖ 魔王 ✖ 巫女(?)の恋愛模様
・基本はザマァなし
・過去作のため、気になる部分あればすみません
・他サイトと並行改稿中のため、内容に差異が出る可能性があります
・設定ゆるめ
・恋愛 × ファンタジー
二年後、可愛かった彼の変貌に興ざめ(偽者でしょう?)
岬 空弥
恋愛
二歳年下のユーレットに人目惚れした侯爵家の一人娘エリシア。自分の気持ちを素直に伝えてくる彼女に戸惑いながらも、次第に彼女に好意を持つようになって行くユーレット。しかし大人になりきれない不器用な彼の言動は周りに誤解を与えるようなものばかりだった。ある日、そんなユーレットの態度を誤解した幼馴染のリーシャによって二人の関係は壊されてしまう。
エリシアの卒業式の日、意を決したユーレットは言った。「俺が卒業したら絶対迎えに行く。だから待っていてほしい」
二年の時は、彼らを成長させたはずなのだが・・・。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる