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13話 王子の願い

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「いつも送って頂いて、本当に申し訳ありません、アーク様」

「何言ってるんだ、エレナ。俺はこの時間だけが唯一の癒しなんだ。俺から大事な時間を奪わないでくれ」

馬車の座席に並んで座っている2人だったが、アークはそう言うと、自分の目線の少し下に見えるエレナの頭にそっと自分の頭をもたげた。

エレナはその重みが心地良く、アークの頭を退けずにそのままの姿勢で、

「本当にそうですね。私もアーク様とのこの時間がとても大事ですわ。ずっとこうしていたいくらいです」

と微笑んで言った。アークは目を閉じて、

「ほんとだな…」

と、2人だけの時間に浸っていた。

しかし、その沈黙をエレナが破る。

「アーク様、…私実はちょっと困っているんです」

「ん?」

と、離れたくないアークは頭をそのままにして聞いた。

「私、今回の合宿がとても不安で…

私の魔力量は普通くらいしかありませんから、クラスの皆さんとは大差がありますし、

魔物討伐の様子を見るなんて、とても恐ろしくて…」

アークはエレナの不安そうな顔を覗き込むと、

「…俺が無理にこのクラスに付き合わせたせいだな。

不安にさせて申し訳ない…

だが、俺もフェリスもマーガレットも一緒のグループだから、何があっても守ってやれるし、心配ない。

あまり不安なようなら、…君に適したクラスへきちんと戻すように手配することもできるが……

お互い王と王妃の教育で離れ離れの時間ばかりだったから、できれば学園生活くらい一緒に過ごしたい…

わがままで悪いとは思ってるが…
俺のそばに…いてくれないか?」

エレナは、悲しそうに懇願してくるアークの様子を見て、しばらく考えた末、小さく頷いた。

「私のような者があのクラスにいるのはとても烏滸がましいことですけれど、

アーク様が笑顔になってくださるのなら、
…どうかおそばにいさせてください」

と、少し困った顔で微笑んだ。

アークはそんなエレナをそっと抱きしめると、ありがとう、と小さく耳元で言った。

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