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54話 ヒーロー
しおりを挟む「ティア?ティア!俺だ!リンドだよ!わかるか?助けにきたんだ!ティア、帰ろう、精霊界へ!」
「リ、リンドなの?えっ?どうして?ここはどこ?暗いところ…こわい…」
「ティア、よく聞いて。ここは冥界だ。
君は自死の2回目をやってしまってここへ落とされたんだよ。
人間の時間で言うなら、俺ももうあまり覚えていないが、そうだな、数千年にはなる。」
「ええっ⁈」
驚いて悲鳴のようになる。
「迎えにくるのが遅くなってしまって本当にすまない。
急いだつもりだったが、こんなに経ってしまった…
ティア、長く苦しんで辛かったろう。
またあの精霊界に一緒に帰ろう。」
「リンド…そんなことになっていただなんて!…ほんとに迷惑かけてごめんなさい。
えっと…?あれ?でも冥界から出られる方法なんてあったの?」
「あるんだよ、お前が勉強不足なだけで」
ずっと昔のジョルジュの言葉を借りてごまかした。
「それに、リンドの光の色が違うし、尋常じゃない大きさじゃない?」
「それは…そりゃこんだけ長い時が過ぎたんだし、ちょっとくらい位も上がったんだよ」
どのみち忘れてしまうだろうから事情を話しても問題ないが、全部言うには照れ臭すぎた。
「そうなのね。すごいわリンド!おめでとう!
それに、そんなに長い間私のこと忘れないでいてくれて、本当にありがとう。
それにしても、今まであなたはいつも私を止めていてくれてたのにね…
それなのにこんなことになって、私は本当に馬鹿だわ。
こんなに苦しいことだとは知らなかった。
いつまでもいつまでも終わらなくて、すごくすごくこわかった…
リンド…本当に、本当にありがとう…」
「いいんだ、俺のことなんてどうでもいい。お前がまた精霊界に戻ってこれるなら、なんだってするよ、俺は」
「ふふっ。すごく頼もしい味方ね。」
「…ねぇ、ティア。精霊界へ戻ったらさ、ティアはまたティアの器に入るの?」
「ふふっ、そうね、心配してくれるリンドには申し訳ないけど、結局そうしてしまうと思うわ。
ほんとに馬鹿よね、私。
でも何も決着がついていないもの。
このまま次の器にいくなんて悔しくてできないの。…だから…本当にごめんなさい」
「いや、いいんだ。そう言うのはわかってたよ。ティアの気の済むようにしたらいい。
だからさ、次にティアの器に入ったら…えっと、俺もティアのそばの器へ行くよ!」
「えっ?」
驚くティアを無視して続ける。
「そしたら…そしたら…俺とさ、…その…結婚して、俺の手でティアを幸せにさせてくれないか?」
「えっ?リンドが私と⁈」
「…だめか?俺のこと嫌いか?」
「…いいえ、…いいえ、大好きよ、リンド。ずっと大好きだったわ。きっとこれからも変わらず大好きよ。
あなたと、人間の器同士で結婚して愛し合うなんて、素敵ね。それとっても素敵だわ。すごく幸せなハッピーエンドになりそうだもの!…でも、本気なの?」
「もちろんだ!ティアに誓うよ。だから、きっと待ってて。俺が迎えに行くまで、ちゃんと生きて待っててほしい!」
「ふふっ、大げさね。でも、ありがとう。私待ってる。楽しみだわ、次のティアになるのが。そうだ!せっかくだから、間違いなくあなたと会えるように、この記憶持っていきたいわね。絶対結婚しましょうね、未来のだんなさま?ふふっ」
ティアは嬉しそうに笑った。
リンドは押し黙ってしまう。
…忘れるとわかっていても、リンドは誓いたかった。
絶対、絶対出会ってやる…賭けになんて負けるかよっ
そう強く思いながら、精霊界へ戻るよう、リンドは念じ始めた。
「さぁ、じゃあティアそろそろ帰ろう。こんなとこにいても仕方ない。行くよ」
そうして、ティアの光はリンドの大きな光に包まれて、すうっと消えた。
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