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88話 どうすれば…
しおりを挟むなんてことだ…
夜明け前、リンドはふらふらと空き家から出てきた。
父親は、観念して、驚くほど簡単に全ての事情を話した。
そもそも俺にティアとの婚約を破棄して欲しくて、いずれ話す必要があったからだそうだ。
ひとまず今後の方針が固まるまで、キースの邸の一角にある軟禁部屋で拘束することになり、キースが先に父親を連れて空き家を出た。
そろそろリンドが来る頃だと思っていたキースは、
ポーネットにリンドより先に着いて、空き家近くの宿屋に泊まって待機していた為、
空き家での事情聴取にはキースも合流し、一緒に話を聞いていた。
事情を全て知ったリンドは、呆然としながら、とにかくティアに会いに行こうと、ふらふらしながら孤児院へ向かっていた。
少し考えたかったので、馬はやめて歩いて向かう。
なんてことだ…
あの父親、そんな取り引きをして…
家族のことを愛して、思って、考えた結果、全員を傷つけて…全員を不幸にして…
…俺もティアも、一体何千年の時を苦しい思いで過ごしてきたと思ってるんだ!
ティアは冥界に落ちてまで苦しんだんだぞ!
…許せない…
しかし…セルデュークのやつらはもっと許せない…
ティアを女帝に立たせたら、1番に狙われるのはティアだぞ⁉︎
内紛を起こして戦乱に巻き込むなんて!
どんなに守ろうとしたって、内部で毒を盛られる心配だってあるんだ…
もし、内紛を切り抜けても、恨んだ連中や反対派が一生追い落とそうとしてくる闇の中に、
ティアを置いておけるわけない!
その前に、俺以外のやつと結婚するとか!
ありえないだろ⁉︎
メラメラと強い炎が背中に見えるかのように、リンドは怒りながら、今後のことについて悩む。
しかし、セルデュークのやつら、ティアを渡さなかったら、こっちの国に戦争仕掛けてこないとも限らないな。
ティア派の軍が相当な勢力になっているようだから、その派閥だけでも充分他国とやり合うことはできるだろう。
…これは厄介なことになったな。
ここまで大きな話になるとは…
そう考えているうちに、孤児院についた。
明け方になった空は、とても澄んだ空気の中、少しずつ白み始めていた。
ティア、まだ寝てるかな…
ティアの顔を思い浮かべると、少し気持ちが和らいだ。
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