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110話 ラムの誓い
しおりを挟む「ティア様、お話し合い、うまくいったようで、よかったですね…」
ラムは、ティアが自室のソファで座る横に立って言うと、
「ええ、ありがとう、ラム。
なんだかよくわからないうちに、リンド様が婚約は継続と決めてくださって…
本当にほっとしたわ。
すごく冷たい目をなさってたから、もう婚約破棄の一点張りで押し切られてしまうのかと、ヒヤヒヤしてたんですもの!」
とても嬉しそうな顔で、ティアは話す。
先程庭園から戻り、ティアはリンドとの話し合いを終えて、自室で一息ついていた。
ラムは別に嬉しくなかった。いや、全く嬉しくなかった!
ティアにベタベタしていたかと思えば、
記憶をなくしたとかで、急にティアに冷たくし始めたリンドに、ラムは心底怒り狂っていた。
ティアお姉様を不幸にするヤツは許さない!
嬉しそうなティアの顔を見ると、余計にメラメラと、怒りの焔が全身を駆け巡るような感覚に襲われる。
婚約破棄すればよかったのよ!
あんなヤツじゃティアお姉様を絶対幸せにできない!
…前はもう少しマシかと思っていたのに…
ラムは、あの幸せそうだった2人の日々を思い出して、本当に悔しくなった。
なんで忘れるのよ!
しかもティアお姉様とそこに関わる人物だけ⁈
馬鹿なんじゃないの⁉︎
とラムは怒りが止まらない。
そう。
ティアと出会ってからのことがゴッソリと抜けてしまったリンドは、
ティアだけでなく、ティアの家族のことも、
一緒にティア付きの侍女としてついてきたラムのことも、
自分がティアのために連れてきた孤児院の子たちのことも…
みんなみんな忘れてしまっていたのだ。
「それにしても…
どのようなお話し合いで、あの冷たい目のリンドール様が、婚約継続を決められたのですか?」
と、ラムは失礼な質問と思いつつも、どうしても気になっていたことをティアに聞いた。
もしや、また初めて出会った日のように、改めて好きになったのだろうかと、ラムは一縷の望みをかけて聞いた。
「ええ、それがね?変なの。
私が15歳かお尋ねになられて、そうだと言ったら、
…その、あの…ね?…えっと、手を…出したか?とお尋ねになられたの。
だから、わからないってお答えしたら、責任をとるとおっしゃって、婚約はそのままになったの。
なんだかよくわからないでしょう?
ラムはわかる⁇
あなた、私より1つ歳下なんだし、もっとわからないわよね?ふふっ」
とティアは苦笑いした。
それを見たラムは愕然とする…
…まずいわ
ティアお姉様は本当に何もわかっていないし
あの公子は、…たぶん勘違いしているわね…
今まで色々怪しげな本なども嗜んできたラムは、実は色々なことを知っていた。
だからこそ、その話を聞いたラムは、全てを悟った。悟ってしまった…
ラムは静かに考える。
あの男…
もうどうせお手つきで、結婚の覚悟はきめているからと、
何度しても同じことと思って本当に手を出してしまうんじゃ…
まずい!それは絶対まずいわ‼︎お姉様の貞操の危機だわ‼︎
ラムは焦りに焦り始め、部屋をウロウロし始めた。
「?ラム?どうしたの?」
「ティア様!お願いがあります!
もし今のリンドール様と仲良くなられても、以前のように同じベッドで寝るようなことは絶対になさらないでください!
絶対に!絶対にですよ?約束してください!」
あまりの勢いに気圧されたティアは
「えっ…ええ、そんなこと、思い出してもらえない限り、もう無理だと思うわよ。
でも、そんなに心配しなくて大丈夫よ、ラム。
ありがとう。」
自分のことをこんなに心配してくれる、大事な妹代わりのラムに、ティアは本当に嬉しくて、優しく微笑んだ。
ティアお姉様!何にもわかってない!
見張りを強化しなくちゃだわ‼︎
ラムはティアを絶対守ると改めて誓った…
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