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142話 悪女
しおりを挟む公爵家に着いて馬車を降りると、すぐそこには、
赤は赤でも毒々しげでダークな赤色のドレスを見に纏うキャロラインが待っていた。
たぶんリンドの目の色なのだろうが、実際はもっと澄んだ明るく美しい赤で、
こんなにドス黒い赤ではないのに、
キャロラインにはそのように見えていたのだろうか
と、ティアは思う。
「あら、皆様、お揃いで。
ようこそ我がホーネット家へ」
馬車までカッカッとヒールの音を響かせながら近づいてきて、キャロラインは言った。
「リズティア様、お手並み拝見させて頂きますわよ」
ニヤリと悪女のような笑みでティアを見た。
ティアはドキリとして、緊張感がさらに増してしまった。
「では、どうぞ。中へご案内致します」
ティアが固くなる様子を見て内心ほくそ笑んだキャロラインは、余裕の表情で言った。
そして、リンドに近寄ると、
「リンド様はこちらへ」
と、嫌そうな顔で睨むリンドの手をニコニコして取ると、
中へ颯爽と入って行った。
その後ろから、ロズウェルにエスコートされながらティアが入って行く。
「ティア、大丈夫?
あの子と勝負するのかい?
なんだか…すごい子だね…
ティアを虐めるなら、…僕がなんとかしてあげようか?」
柔らかい微笑みを浮かべながらも、美しい緑の瞳の中には闇が広がっていく。
「お兄様、ありがとうございます、でも大丈夫!」
そんな闇に気づかないティアは、心配してくれる兄に素直に感謝して、微笑んだ。
「そう?…本当に大丈夫?」
と、まだ不安気なロズウェルに、ティアはさらにニッコリ微笑むと、
「私ここまでしっかり努力してきたから、大丈夫!
なんとか絶対勝負に勝てるようにがんばります!」
別に、リンドと結婚するためなんかに、そんなに頑張らなくてもいいのに、と思うロズウェルだった。
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