勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴

文字の大きさ
35 / 121

35 拾ってませんよ?

しおりを挟む
「モナ殿。そのあたりは大丈夫だ。馬竜で移動が可能だ。馬竜は寒さにも暑さにも耐性があるし、ある程度の魔物は蹴散らすことができる。それに、氷竜は一度倒したことがあるから問題ない」

 クラッシャーはドラゴンスレイヤーだったのか!それに、あの馬竜って優秀だったんだ。なら、問題ない?のか?な?

 う~んと首を傾げる。生きて帰れそう?

「それに、モナ殿は絶対に守るから大丈夫だ」

「あ、うん。ありがとう」

 後は私の寒さ対策か。勇者の装備なら頭の中に有るのだけど、一般人の私が出来る装備はなんだろう?
 そんな事を考えていると、ジュウロウザから先程問われた事を蒸し返された。

「それで、先程の言葉は何処の言葉だ?」

「えーっと、秘密で」

「キョウヤとい言う者に関わりがあるのか?」

「響也!」

 その名前にビクッと体が反応してしまった。
 くー。私、ボロが出すぎ!

「キトウさん、それ以上突っ込まないでください。嫌な記憶も蘇ってくるので」

 この前久しぶりに夢に見てしまったので特にだ。自分の死と未練を夢で見せつけられたのだ。はぁ。と、大きくため息を吐く。

「自分の死の記憶を繰り返すのは·····」

 続きを言葉にできなかった。私はジュウロウザに抱きしめられていた。

「悪かった」

 いや、なんでこんな状況になるのかさっぱり理解できない。私はただ、これ以上突っ込んで来てほしくなかっただけなんだけど?

「嫌だったんだ。わからない言葉を話すモナ殿がモナ殿ではないような気がして、怖かったんだ」

 怖い?何が怖いのか?宇宙人的な感じってこと?

「何が怖いのでしょう?」

 私は首を傾げながらジュウロウザを見る。っていうか、放してもらえないのだろうか。

「俺が捨てられるのではないのだろうかと」

「は?」

 なぜ、そんな話になるのか?私がジュウロウザを捨てる?拾ってもないけど?あれは拾ったに値するのか?いや、違うはずだ。

「私、キトウさんを拾ってませんよ?」

「しかし、俺はモナ殿がいないと生きられない体だ」

 その言い方、誤解を生むから!

「大丈夫です。今まで生きて来られましたから、生きていけます」

「生きていける。確かに生きていけるかもしれない。だが、一所ひとところで過ごすことができず、厄災を振りまく度に逃げるように生きなければならない、この身は本当に生きていていいのか自問自答する日々だった。
 しかし、この数日が幸せだったんだ。とてもとても穏やかな日々。この幸せを手放してしまえば、俺は本当に邪神にでもなってしまうのではないかと思ってしまうのだ」

 あ、うん。LUKは邪神レベルと言っていいかもしれない。でも、ゲームのエンディングでは普通に旅をしていたよ。魔物にまみれていたけれど。まぁ、厄災級だと言われれば、なんとも言えない。

 そう、エンディングでは一度でも仲間にした人のことが映像として流れるのだ。

 ジュウロウザは何処かの山奥で魔物に囲まれて戦っていた。何処の山奥だよって、つっこんだね。

 そして、モナはクズだった。勇者リアンが旅立ちの時に、戻ってきたら結婚をしようと言って旅立ったことは、この私であるモナも実体験したことだ。
 魔王を討伐し勇者の真のヒロインとなった者を村に連れて行く情景からクレジットタイトルが始まる。他の街は10年間の戦いに疲弊し、瓦礫が積まれているにも関わらず、勇者の始まりの村は、長閑な麦畑が広がっていたのだ。

 村に入ると幼馴染みヒロイン、モナが出迎えてくれる。

『あら?戻ってきたの?』

 一番最初に勇者リアンに掛けた言葉がコレだ。そして、モナの腕には小さな子どもを抱きかかえており、足元には10歳ぐらいの子供がモナのスカートを掴んでいたのだ。そう、10歳くらい。

 お前、待つ気が全く無かっただろう!思わず画面に向かって叫んでしまった。

 約束を守る気のない最低な女だった。



 しかし、分かるよゲームのモナ!その気持ち!
 魔王を討伐して更にレベルアップしたリアンと結婚だなんてできるか!って感じだ。

 まぁ、今の私にはそんな相手いないけどね。


 はぁ。今の問題は私の目の前のジュウロウザだ。ジュウロウザの不運の根源のステータスを改善することは、無理だと言っていいだろう。いや、方法がないわけではない。その方法は勇者という力だ。

 中盤になると『勇者の光』というアイテムを手に入れることが出来る。これが重要なのだ。
 勇者の仲間はことごとく何処か問題がある。その問題が『勇者の光』と信頼度によって改善することができる。

 例えば、ドジっ子聖女の回復魔術の成功率が40%から100%にすることができる。

 ただ、この『勇者の光』は別の大陸にある。だから、船を手に入れて海峡を渡らないと行けない。

 何が無理か。中盤になると大体仲間にするメンバーが固定化される。それ以降の戦いが厳しくなるため、信頼度が高いほうが何かと事がうまく運ぶのだ。
 となると、不運の根源を連れて海を無事に渡れるかという問題が出てくるのだ。

 奇跡でも起これば新大陸に上陸できるだろうが、結論からいけば、ほぼ無理。


 ん?これだと私はジュウロウザにくっついていないと駄目ってこと?いやー。それはないわー。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました

七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。  「お前は俺のものだろ?」  次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー! ※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。 ※全60話程度で完結の予定です。 ※いいね&お気に入り登録励みになります!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...