勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴

文字の大きさ
66 / 121

66 廃墟都市ルルド····?

しおりを挟む
「古代遺跡の調査よ。そこから怪しい鳴き声が聞こえてくるから調べて欲しいって、変わった依頼」

 古代遺跡?イルマレーラ?
 私は記憶を掘り起こす様に『うーん』と唸る。古代遺跡····確かゲームではいくつか存在したなぁ。この大陸の古代遺跡のダンジョンは3つ。地底湖のロズワード。空中都市ネルファーキル。廃墟都市ルルド····。

 廃墟都市ルルド!

「ルルド?」

「あら?モナちゃん知っているの?」

 血の気がサーッと引く。あそこはかなり後半にならないと行けないところだった。それもあそこは

「駄目!そこに行っちゃ駄目!」

「モ、モナちゃん?」

「そこはアイテムがいる。『闇待月』が必要!だから、駄目!」

 私の言葉にジュウロウザがビクッと反応した。そう、ジュウロウザが探してこいと言われた、次元の狭間にある闇待月。

「それが無い限り出て来れない。だから母さん行かないで!」

「モナ。出てこれないって、そこには何がいるんだ?」

 いつの間にか父さんが近くに来ていた。

「『死して尚、封印せざる神のなれの果』」

 名はなかった。恐らく、名を持って力を取り戻すことを恐たのだろう。

「それは確かにそれは荷が重そうだね」

 うぉ!思ったより近くからフェリオさんの声が聞こえた。

「フェリオ、どうする?」

「そうだねぇ。モナちゃん?」

「な、なんですか?」

 声近いよ。すごく近いよ。ジュウロウザの背中に隠れつつ、腰に付けている調教用のムチに触れる。いつでも振るえるように。

「もし、そのアイテムが無いとどうなるのかな?」

 闇待月は封印を解く物であって、ダンジョンの攻略に必要なものでは無い。だけど、今存在する国がゲームの時間軸では存在せず、廃墟の都市になっていた。それに古代遺跡の機能も殆ど停止していて、行けるところが限られていた。

 その現状から考えると何かしらの遺跡の防衛機能が働いて、街を中心に国を消滅させたと思われる。死した神を外に解き放たないように。

「国の消滅」

 誰かが息を飲む音が聞こえた。

「それは流石に···」

 信じられないと。まぁ、そうだね。所詮子供の戯れ言だ。証明しろと言われてもできるものじゃない。

「依頼はキャンセルだね。封印された神ほど恐ろしい者はいない」

 あれ?信じてくれるの?

「そうね。村の現状を言って、落ち着くまで遠くの依頼を受けるのをやめるって言えばいいかしら?」

「シア。そうしよう!この前家に戻ったらソフィーにどちら様ですか?って言われたんだ!家でゆっくり過ごす事も大切だ!」

 父さん、それはソフィーの贈り物に幸運の大蛇の抜け殻なんて送るからだよ。ソフィーは蛇が大の苦手な物なのに。

「そうね」

「じゃ、決まったならギルドに報告に行こうか。モナちゃんたちはもう、街を出るんだよね?」

 私はジュウロウザの腕を叩いてフェリオさんの質問に答える様に促す。

「はい、南下してエトマまで行って、プルム村に戻る予定をしています」

「そうか、無理せずにゆっくり戻るといいよ。村の事は心配しなくても大丈夫だよ。みんな戻って来ているからね」

 村の外に出ていた人達が戻ってきてくれているのなら安心だ。
 やっぱり弱っているときに家族がいるのといないのとでは、気の持ちようが違ってくるからね。大切な人が側にいるって、とても安心感があるから。


_____________

『グランツ』 side

 門の外を見送る3人の男女がいる。その内、二人は人の目を引き付けるほど美しい容姿をしており、その二人を守るかの様に大柄の人物が背後に控えていた。

「モナちゃん。元気で良かったね」

 キラキラとした笑顔を男性は隣の女性に向けている。

「ええ、本当に良かった。一時は自分の愚かさを呪ったわ」

 美しい女性は風に煽られた白金の髪に白い雪を纏わせ、涙目で笑っている。そして、後ろに立っている体格がよい、正に戦士と言っていい偉丈夫は、女性の髪に付いた雪を払いながら言った。

「同じ誤ちを繰り返さなくて良かったじゃないか。今回は流石にヤバかったようだが」

 そう、この者たちは娘を見送るためにロビーで待っていたわけではなかった。なぜなら、出発の別れは昨晩終わらせており、日が昇ると共に隣国に出発するつもだったのだ。


 時は4時間前に戻る。
 外はまだ暗く、日が昇る前である。しかし、空は曇天に覆われているため、外が明るくなるにはまだ時間がかかりそうだ。

 シアはそろそろ起きて準備をしなければと思い目を開け、体をむくりと起こす。しかし、部屋の寒さにぶるりと震え、毛布に包まりたいとの欲求を振り払うかのように頭を振り、顔にかかった髪をかき上げたところで気がついた。
 娘が作った幸運の腕輪がない事に、慌てて寝ていたところをみると、細切れに切れた糸が散乱していた。まるで刃物で切り刻んだかのように無惨にバラバラになっていた。

 シアは慌てて隣で寝ていた夫を起こす。

「テオ!起きて!大変なの!」

 しかし、隣に寝ているテオは起きそうにない。シアは寝ているテオの上に馬乗りになって、両肩を揺さぶり起こす。

「起きて!」
「シア!大変だ!」

 その時、フェリオが部屋の扉を勢いよく開けて入ってきたのだ。ベッドの上の夫の上に馬乗りになる妻の姿これは···

「お取り込み中。ごめんね」
「ちがーう!フェリオ待って!扉を閉めないで!テオを起こして!」

 慌ててシアはフェリオを引き止める。その、二人の声に流石のテオも目を覚ました。

「なんだ?朝から?騒がしい」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました

七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。  「お前は俺のものだろ?」  次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー! ※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。 ※全60話程度で完結の予定です。 ※いいね&お気に入り登録励みになります!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...