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75 吾の魂
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暗い穴の中を落ちていく。私はジュウロウザに掴まり着地の衝撃に耐える為にかまえているが、衝撃がなく落下が止まった。周りをみると、左右上下が壁に囲まれた空間だった。私にはわからなかったけど、魔石の明かりだけで、ジュウロウザは横穴の場所が見えていたようだ。
ジュウロウザが縦穴の方に振り返ると、暗い縦穴の壁には槍のようなものが突き刺さっていた。ジュウロウザはそれを手を伸ばして引っこ抜く。
長い柄の先には鉾と片刃の刃が付いた戟と呼ばれる武器だった。その姿はゲームで見たものと寸分違わぬ姿だった。
「あとはこのまま落ちて裏ルートで戻るのだったな」
「そう、それでいいです」
裏ルート。一方通行の帰り専用のルートだけど、魔物が格段に強くなる。ジュウロウザとシンセイなら、問題ない強さだ。問題は私だけ。だけど、この戻り方が一番早い。
私は神殿の泉の水を片手に持っているから構わず、駆け抜けるように言ってある。
なぜなら、もう一日ダンジョンにいるなんて私の精神が耐えられないからだ。暗いし、変な匂いがするし、魔物がいつ飛び出てくるかビクビクしながら過ごすのは、これ以上無理だ。
私の確認を取ったジュウロウザは再び暗闇の中に身を投じた。亡者の叫び声のような『吾の魂!!!!』という声が響いている闇の中にだ。
39階層にたどり着いたときも、衝撃もなく着地をした。不思議だと首を捻りつつ、周りを見渡そうと顔をあげると、ジュウロウザの外套の内側に囲われていた。
「あの?キトウさん、何も見えないのですが?」
「モナ殿。少し待ってくれ『砂塵裂破!』」
刀が抜かれる音と共にジュウロウザが技を振るった。え?いや、待って!なんでここで全てが砂状に崩壊する技を使う必要が?
「おお。これは目汚しを、姫にいらぬ物を見せるところでしたな」
え?何のこと?シンセイの声が聞こえたってことは無事なんだろうけど。何が目汚し?
私はジュウロウザから下に降ろされ、やっと自分の足で立つことができた。自分の足で立てるって素晴らしい!
そして、ジュウロウザからシンセイの武器を差し出された。いや、私の武器じゃないからそれはシンセイに渡して!
「モナ殿からシンセイ殿に」
「???」
よくわからないけど、ジュウロウザから渡された、戟を受け取って、振り返りシンセイに差し出····あれ?いない。
視線を下に向けると、杖を地面に置いて跪いて頭を下げ、片手を拳のように固く握りそれをもう片方で覆うように合わせ掲げているシンセイがいた。
え?なにこれ?受け取ってくれないのかな?
「シンセイさん。貴方の魂である武器をどうぞ」
そう言って戟を両手に持って差し出す。重い。腕がぷるぷるする。早く受け取ってくれない?
「吾が魂。吾が命を。吾に生きる意味を与えてくだされた姫に捧げる事を吾が神、武神郭羽に誓おう」
え?そういう重いものは誓わなくていいから!
するとシンセイの掲げていた腕から垣間見えていた黒い龍が動いた。いや、形が変化している。色が黒から金に変わっていき、形が花の紋様に変化していった。こ、これは桜!
私はジュウロウザを振り返る。
ジュウロウザは満足そうに頷いていた。だから、何がどうなってこんな事になっているんだ!
私は戟をシンセイに押し付け、二人に向かって言った。
「なんですか!これは!なんで守護者が増えるのですか!」
己の魂と言っていい武器を取り戻したシンセイはすくっと立ち上がり、満足そうに笑って言った。
「それは吾が魂を姫に捧げると誓ったからでありますぞ」
「シンセイさん!私はただの村娘です!そんな重い誓は必要ありません」
「モナ殿。女神殿がモナ殿には複数の守護者がいるような言い方をしていたし、モナ殿が気にしていたから、守護者だろうと当たりをつけていた」
複数って何?守護者って複数居ることが普通なの?
それに私が気にしていたのはそれなりに使えるキャラだったからで···。ん?そもそもエトマが気になったからと言って来たのは私の所為か。
え?私が?なんだか自分で自分の事がわからなくなってきた。
頭を抱えて座り込む。これは私がこの現況を起こしたってこと?いやいや、でも、しかし····はぁ、考え込んでもわからない。
そもそも私には守護者という存在の情報がない。考えてもわからないもの考え続けるのは時間の無駄。それよりも、命の危険のあるダンジョンを出るのが先決だ。
私が顔を上げると、心配そうな二人の顔が映った。私は再びため息を吐き、立ち上がる。
「はぁ。なんだかよくわからないので、考えるのは後でいいです。さっさとダンジョンを出ましょう。これ以上変な冒険者にからまれるのも、落下するのも、嫌ですから」
そして、ちらりとシンセイのステータスを視る。
秦 清(シンセイ)
72歳
職種:老将
Lv.74
HP 166582
MP 12203
STR 762251
VIT 12032
AGI 9802
DEX 15002
INT 90554
MND 33220
LUK 12200
老将って職種になるのだろうか?やはり、ジュウロウザ程とはいかないが、高いステータスだ。
そして、称号は【聖帝の守護者】が黒く反転しており、【シンキの守護者】が····?シンキ?ジュウロウザを視る【カミトの守護者】のままだ。え?余計に守護者というものがわからなくなってきた。
私のステータスを確認する。あ、うん。称号が増えている。
【最恐のシンキ】
もっと意味がわからなくなってきた。
コゥラァー!武神ってヤツ出てこいや!この私のどこが最恐なんじゃー!!(巻き舌で失礼しました)
ジュウロウザが縦穴の方に振り返ると、暗い縦穴の壁には槍のようなものが突き刺さっていた。ジュウロウザはそれを手を伸ばして引っこ抜く。
長い柄の先には鉾と片刃の刃が付いた戟と呼ばれる武器だった。その姿はゲームで見たものと寸分違わぬ姿だった。
「あとはこのまま落ちて裏ルートで戻るのだったな」
「そう、それでいいです」
裏ルート。一方通行の帰り専用のルートだけど、魔物が格段に強くなる。ジュウロウザとシンセイなら、問題ない強さだ。問題は私だけ。だけど、この戻り方が一番早い。
私は神殿の泉の水を片手に持っているから構わず、駆け抜けるように言ってある。
なぜなら、もう一日ダンジョンにいるなんて私の精神が耐えられないからだ。暗いし、変な匂いがするし、魔物がいつ飛び出てくるかビクビクしながら過ごすのは、これ以上無理だ。
私の確認を取ったジュウロウザは再び暗闇の中に身を投じた。亡者の叫び声のような『吾の魂!!!!』という声が響いている闇の中にだ。
39階層にたどり着いたときも、衝撃もなく着地をした。不思議だと首を捻りつつ、周りを見渡そうと顔をあげると、ジュウロウザの外套の内側に囲われていた。
「あの?キトウさん、何も見えないのですが?」
「モナ殿。少し待ってくれ『砂塵裂破!』」
刀が抜かれる音と共にジュウロウザが技を振るった。え?いや、待って!なんでここで全てが砂状に崩壊する技を使う必要が?
「おお。これは目汚しを、姫にいらぬ物を見せるところでしたな」
え?何のこと?シンセイの声が聞こえたってことは無事なんだろうけど。何が目汚し?
私はジュウロウザから下に降ろされ、やっと自分の足で立つことができた。自分の足で立てるって素晴らしい!
そして、ジュウロウザからシンセイの武器を差し出された。いや、私の武器じゃないからそれはシンセイに渡して!
「モナ殿からシンセイ殿に」
「???」
よくわからないけど、ジュウロウザから渡された、戟を受け取って、振り返りシンセイに差し出····あれ?いない。
視線を下に向けると、杖を地面に置いて跪いて頭を下げ、片手を拳のように固く握りそれをもう片方で覆うように合わせ掲げているシンセイがいた。
え?なにこれ?受け取ってくれないのかな?
「シンセイさん。貴方の魂である武器をどうぞ」
そう言って戟を両手に持って差し出す。重い。腕がぷるぷるする。早く受け取ってくれない?
「吾が魂。吾が命を。吾に生きる意味を与えてくだされた姫に捧げる事を吾が神、武神郭羽に誓おう」
え?そういう重いものは誓わなくていいから!
するとシンセイの掲げていた腕から垣間見えていた黒い龍が動いた。いや、形が変化している。色が黒から金に変わっていき、形が花の紋様に変化していった。こ、これは桜!
私はジュウロウザを振り返る。
ジュウロウザは満足そうに頷いていた。だから、何がどうなってこんな事になっているんだ!
私は戟をシンセイに押し付け、二人に向かって言った。
「なんですか!これは!なんで守護者が増えるのですか!」
己の魂と言っていい武器を取り戻したシンセイはすくっと立ち上がり、満足そうに笑って言った。
「それは吾が魂を姫に捧げると誓ったからでありますぞ」
「シンセイさん!私はただの村娘です!そんな重い誓は必要ありません」
「モナ殿。女神殿がモナ殿には複数の守護者がいるような言い方をしていたし、モナ殿が気にしていたから、守護者だろうと当たりをつけていた」
複数って何?守護者って複数居ることが普通なの?
それに私が気にしていたのはそれなりに使えるキャラだったからで···。ん?そもそもエトマが気になったからと言って来たのは私の所為か。
え?私が?なんだか自分で自分の事がわからなくなってきた。
頭を抱えて座り込む。これは私がこの現況を起こしたってこと?いやいや、でも、しかし····はぁ、考え込んでもわからない。
そもそも私には守護者という存在の情報がない。考えてもわからないもの考え続けるのは時間の無駄。それよりも、命の危険のあるダンジョンを出るのが先決だ。
私が顔を上げると、心配そうな二人の顔が映った。私は再びため息を吐き、立ち上がる。
「はぁ。なんだかよくわからないので、考えるのは後でいいです。さっさとダンジョンを出ましょう。これ以上変な冒険者にからまれるのも、落下するのも、嫌ですから」
そして、ちらりとシンセイのステータスを視る。
秦 清(シンセイ)
72歳
職種:老将
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MND 33220
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老将って職種になるのだろうか?やはり、ジュウロウザ程とはいかないが、高いステータスだ。
そして、称号は【聖帝の守護者】が黒く反転しており、【シンキの守護者】が····?シンキ?ジュウロウザを視る【カミトの守護者】のままだ。え?余計に守護者というものがわからなくなってきた。
私のステータスを確認する。あ、うん。称号が増えている。
【最恐のシンキ】
もっと意味がわからなくなってきた。
コゥラァー!武神ってヤツ出てこいや!この私のどこが最恐なんじゃー!!(巻き舌で失礼しました)
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