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24章-1 魔の大陸-魔女への依頼
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自分勝手。今まで散々、神というものに振り回されてきたのだ。そう表現してもおかしくは無い。
「シェリーは双子の子ども達に術を施す前に何を視ていたのかな?また、ナディア様が来ていたの?」
カイルの声が上から降ってきた。
「ええ、そうですね」
シェリーは肯定の言葉のみを言う。お腹に回された手の圧迫感が増して不快感を現しているのだ。神という存在に忌避的とまでとはいかなが、シェリーが神と関わること自体、カイルは嫌なようだ。
「シェリーのさっきの術は能力の剥奪にならないのかな?」
神の名を用いて力の否定をした術だ。とてもとても強力な呪だ。
「なりませんよ。私は魔眼を封印したのみ。はぁ、能力の剥奪の件は忘れてください。口が滑っただけで·····は?」
シェリーは突然声を上げ、斜め上の方を見上げる。と同時にお腹の圧迫感が増した。
「カイルさん力を緩めてください。苦しいです」
流石のシェリーでも苦情を訴えた。そして、緩んだ腕に、ホッとため息を吐く。
「はぁ。別に構わないそうです。簡単に言いますと神が与えた力を神自身が回収する。それが、能力の剥奪です。滅多にあり得ることではありません」
シェリーは目の前に座っているスーウェンを見る。エルフ族は白き神を崇め、一大陸の覇権の頂点に立ったのだ。それに大きく貢献したのが、神の加護だ。
「エルフ族は誰しも、あの白き神から特殊な能力を与えられていますよね。しかし、あの神の機嫌を損ね新たに生まれてくる者には加護を与えないと言われても、今持っている能力の剥奪はされていない。普通は剥奪まではされません」
そのシェリーの言葉にスーウェンは顔色を悪くする。想像してしまったのだろう。あの姿を顕わすだけで、強制的にひれ伏したく存在なら、エルフ族に与えた加護など取り去っていくことなど容易だと。
もし、そのような事をされれば、エルフ族など、滅んでしまうかもしれないと。
「それは、そんな事をされれば、白き神から存在自体を否定された事と同じではありませんか。エルフ族は滅ぶし未来しか選択できなくなる」
スーウェンの顔色は青を通り越して白くなっている。
「じゃ、ナディア様はそれを行うのか?」
女神ナディアから愛し子の加護を得ているグレイが尋ねる。
「ナディア様も滅多には行わないと聞いていますが、魔眼の力を悪用しようとした者は、ナディア様自ら慈悲を与えられたと聞きました」
「じひ?」
「慈悲です。これ以上、力の悪用をしないように死を与えるそうです」
女神自ら己の血族に死を与える。それは慈悲と呼べるものなのだろうか。神から与えられた力で悪事を働いた者が神から死を与えられる。
この国の者からすればそれは、とても恐ろしいことではないのだろうか。神に見捨てられた者。オーウィルディアが知らなかったということは歴史の闇に葬られたに違いない。
「シェリー。その言い方だと女神自身から聞いたように思えないのだが?」
リオンがシェリーの言葉に疑問を持ったようだ。女神ルーチェの言葉を光の巫女が代弁しているような、微妙な違和感。
「聞いたのはラース様からです」
「あー。前から疑問に思っていたんだけど····初代大公って生きているのか?いや、以前ナディア様がラースに会いに来いって言っていたのは比喩じゃなくって、本人?」
グレイがそもそもの疑問を口にした。女神ナディアが今回もシェリーに催促したことだが、ラースに会いに来るようにと言ったことだ。そして、シェリーの口からラースの名が出た。国を示す名でもなく、一族を示す名でもなく、個人を示す名を言ったのだ。ラース様と。
しかし、シェリーはそんなグレイの質問に呆れたような顔をする。
「グレイさん、何を言っているのですか?ナディア様を見ていればわかるじゃないですか。神であるあの御方の愛はとても重いと」
その続きの言葉はシェリーは口にしなかった。いや、出来なかった。
「カイルさん。苦しいと言っているではありませんか!」
「シェリーは神々に気に入られすぎているから、心配なんだ。あの神にシェリーを連れて行かれてしまえば、手が出せなくなる」
シェリーが目の前に居ても、このように抱きしめていても、不安がなくなることはない。現に目の前にシェリーがいても精神だけを彼の世界に連れて行かれてしまったのだから。
しかし、そんなカイルにシェリーはため息を吐く。もう、何度目のため息だろうか。
「ですから、そんなことも普通の神々はしませんよ。ナディア様だからです」
シェリーはそう言葉にして思うのだった。
女神ナディアに愛されてしまったラースという男はなんて哀れなのだろうと。神に愛されてしまったため、ただの人でしかなかった者が、神眼というモノを押し付けられ半分神と至った男は不憫でしか無い。
しかし、この事は決して言葉にして口に乗せることはしない。そんな事をすれば女神ナディアがどう行動を起こすかわからない。それはそれで恐ろしいことだ。
「シェリーは双子の子ども達に術を施す前に何を視ていたのかな?また、ナディア様が来ていたの?」
カイルの声が上から降ってきた。
「ええ、そうですね」
シェリーは肯定の言葉のみを言う。お腹に回された手の圧迫感が増して不快感を現しているのだ。神という存在に忌避的とまでとはいかなが、シェリーが神と関わること自体、カイルは嫌なようだ。
「シェリーのさっきの術は能力の剥奪にならないのかな?」
神の名を用いて力の否定をした術だ。とてもとても強力な呪だ。
「なりませんよ。私は魔眼を封印したのみ。はぁ、能力の剥奪の件は忘れてください。口が滑っただけで·····は?」
シェリーは突然声を上げ、斜め上の方を見上げる。と同時にお腹の圧迫感が増した。
「カイルさん力を緩めてください。苦しいです」
流石のシェリーでも苦情を訴えた。そして、緩んだ腕に、ホッとため息を吐く。
「はぁ。別に構わないそうです。簡単に言いますと神が与えた力を神自身が回収する。それが、能力の剥奪です。滅多にあり得ることではありません」
シェリーは目の前に座っているスーウェンを見る。エルフ族は白き神を崇め、一大陸の覇権の頂点に立ったのだ。それに大きく貢献したのが、神の加護だ。
「エルフ族は誰しも、あの白き神から特殊な能力を与えられていますよね。しかし、あの神の機嫌を損ね新たに生まれてくる者には加護を与えないと言われても、今持っている能力の剥奪はされていない。普通は剥奪まではされません」
そのシェリーの言葉にスーウェンは顔色を悪くする。想像してしまったのだろう。あの姿を顕わすだけで、強制的にひれ伏したく存在なら、エルフ族に与えた加護など取り去っていくことなど容易だと。
もし、そのような事をされれば、エルフ族など、滅んでしまうかもしれないと。
「それは、そんな事をされれば、白き神から存在自体を否定された事と同じではありませんか。エルフ族は滅ぶし未来しか選択できなくなる」
スーウェンの顔色は青を通り越して白くなっている。
「じゃ、ナディア様はそれを行うのか?」
女神ナディアから愛し子の加護を得ているグレイが尋ねる。
「ナディア様も滅多には行わないと聞いていますが、魔眼の力を悪用しようとした者は、ナディア様自ら慈悲を与えられたと聞きました」
「じひ?」
「慈悲です。これ以上、力の悪用をしないように死を与えるそうです」
女神自ら己の血族に死を与える。それは慈悲と呼べるものなのだろうか。神から与えられた力で悪事を働いた者が神から死を与えられる。
この国の者からすればそれは、とても恐ろしいことではないのだろうか。神に見捨てられた者。オーウィルディアが知らなかったということは歴史の闇に葬られたに違いない。
「シェリー。その言い方だと女神自身から聞いたように思えないのだが?」
リオンがシェリーの言葉に疑問を持ったようだ。女神ルーチェの言葉を光の巫女が代弁しているような、微妙な違和感。
「聞いたのはラース様からです」
「あー。前から疑問に思っていたんだけど····初代大公って生きているのか?いや、以前ナディア様がラースに会いに来いって言っていたのは比喩じゃなくって、本人?」
グレイがそもそもの疑問を口にした。女神ナディアが今回もシェリーに催促したことだが、ラースに会いに来るようにと言ったことだ。そして、シェリーの口からラースの名が出た。国を示す名でもなく、一族を示す名でもなく、個人を示す名を言ったのだ。ラース様と。
しかし、シェリーはそんなグレイの質問に呆れたような顔をする。
「グレイさん、何を言っているのですか?ナディア様を見ていればわかるじゃないですか。神であるあの御方の愛はとても重いと」
その続きの言葉はシェリーは口にしなかった。いや、出来なかった。
「カイルさん。苦しいと言っているではありませんか!」
「シェリーは神々に気に入られすぎているから、心配なんだ。あの神にシェリーを連れて行かれてしまえば、手が出せなくなる」
シェリーが目の前に居ても、このように抱きしめていても、不安がなくなることはない。現に目の前にシェリーがいても精神だけを彼の世界に連れて行かれてしまったのだから。
しかし、そんなカイルにシェリーはため息を吐く。もう、何度目のため息だろうか。
「ですから、そんなことも普通の神々はしませんよ。ナディア様だからです」
シェリーはそう言葉にして思うのだった。
女神ナディアに愛されてしまったラースという男はなんて哀れなのだろうと。神に愛されてしまったため、ただの人でしかなかった者が、神眼というモノを押し付けられ半分神と至った男は不憫でしか無い。
しかし、この事は決して言葉にして口に乗せることはしない。そんな事をすれば女神ナディアがどう行動を起こすかわからない。それはそれで恐ろしいことだ。
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