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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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シェリーとカイル、炎王にオリバーは陽子のダンジョンに連れて来られていた。炎王は一国を背負うものであるため暇ではないし、オリバーが機嫌がいいうちにさっさと終わらせてしまおうということで、陽子のダンジョン内を移動する術でダンジョンの一角に連れて来られた。
ただ、シェリーが姿を現すとシェリーのツガイたちはシェリーの方に意識を取られてしまうので、オリバーに屋敷の周りに張っている結界と同じものを施してもらい姿を隠している。
「という事で、今回は趣向を変えてみようと思うよー」
「いや、どういう事かわからないし」
「いつになったらシェリーに会えるんだ?」
「もうダンジョンから出てもいいのではないのですか?」
「いつまで続けるつもりだ?」
ドーム状にくり抜いたような空間の中央で陽子が彼らの前で言っているが、4人が4人共陽子の方を見ていない。グレイとオルクスは手合わせをしており、スーウェンは何やら分厚い本を読んでおり、リオンは水色の髪の少年を投げ飛ばしていた。
「青龍くん。もういいからダンジョンの管理に戻って、ほら4人とも構えてよー。陽子さんは逃げるから助けてあげられないから頑張るんだよ」
そう言って陽子は地面の中に消えていった。残された4人は何だという感じで陽子がいた地面を見ている。
地面に消えていった陽子はシェリーたちが隠れている場所の地面からにょきりと顔だけを出した。
「一応、陽子さんも結界を張ったから、やってもらっていいよ。陽子さんは消えるからね」
陽子は本当に悪魔という存在が嫌なようだ。陽子は再び地面の中に潜っていき、顔を出すことはなかった。
「術を使ってくれたまえ」
オリバーの言葉にシェリーと炎王は頷き、呪を口にする。
「『夢の残像』」
「『空中楼閣の幻夢』」
空気が変わった。それを感じ取った4人は一斉に武器を取り、辺りを警戒する。生暖かい風が吹き抜ける。ゾワゾワと悪寒がするように肌が粟立つ。
『やぁやぁ、今日はなんていい月夜なのだろう。こんな月夜は矮小なモノ達の悲鳴がよく似合う』
声がした方に4人が一斉に振り向く。そこには赤い2つの月を背にした者が立っていた。体中に這うように浮き出た青白い血管のようなモノが異様に浮き出た存在は何かを引きずっていた。何か。それは人だったものだ。髪を掴み首だけになった者。足だけの者を投げ捨てる。その異様な存在の周りには人の死体の山ができていた。
『次はそこの矮小なモノたちがいい鳴き声を聞かせてくれるのかなぁ』
そう言って、にたりと笑う存在。
グレイは汗をかき、震えていた。これは相手にしては駄目だと本能が告げている。震えが止まらない。このまま背を向けて去りたい。逃げたい。そんな心に囚われる一方で目の前の存在を排除しなければならないという思いにも囚われる。だが、己如きでは敵う相手ではないということも肌で感じてしまっていた。
オルクスもまた目の前の存在に恐怖を抱いていた。今まで、どんな魔物でも人でもここまで恐怖を抱いたことはない。心の底から沸き起こる恐怖。それが言葉を操り人々の死体の絨毯を作り出している。あれは排除しなければならない。しかし、歯の根が合わずガチガチとうるさく鳴っている。
スーウェンは目の前存在は死だと感じた。あれは死をもたらす存在だと。その死が足をこちらに向けて進んでくる。何か対抗する術をと頭の中で巡らすが、息が上がり考えがまとまらず、術の構築すらままらない。迫ってくる死に対して思考を止めてしまった。
リオンは目の前の存在が何かは理解できた。初代である炎王が戦ったという悪魔の特徴を目の前の存在は現していたからだ。
全体が黒く青白い血管が異様に目を引いたと。角がある者もいれば、羽をもつ者もいると聞いた。だが、このように心底から沸き起こるような恐怖に嫌悪感、死すら間近に感じてしまうとか聞いていない。刀を握る手が汗で滑りそうになる。
あれは、あれは····悪の塊だ。
「えー?やっぱ、綺麗な月夜は酒を飲んで愛でるのが一番やろ?」
ここで重苦しい雰囲気には似合わない軽い口調の声が降ってきた。3人はこの声には聞き覚えがない。あるのはグレイだけだ。いや、スーウェンも会ったことはあるはずだが、思考を止めてしまったスーウェンには分からない。
そこでグレイだけが気がついた。これはおかしいと。
『クククッ』
恐怖を撒き散らす存在は笑いながら歩みを進め、手を前に突き出す。その手は振り下ろされた剣先を受け止めていた。
3人は剣を振り下ろす黒髪の人物の後ろ姿を目にし、ほっとしていた。グレイはというと周りを見渡し、これを行っている者を探そうとしている。
「俺に魔眼は効かんで、さっさと死んでくれへんか?」
そんな事を言いながら、黒髪の人物は恐怖を撒き散らす存在に攻撃をし続け、恐怖を撒き散らす存在は笑いながら攻撃をしている。
二人の攻撃に死の絨毯は肉塊を撒き散らしながら崩れていく。黒髪の人物に死者に対する哀れみというものはないのだろうか。そう、思ってしまうほど、この場を破壊し続けている。いや、悪魔との戦いにそんなことを言っている場合ではないのは理解できる。できるが、···できるが、あまりにも凄惨な光景だった。
その状況にグレイは頭を抱えていた。知っている人物なだけに、これはあまりにも無いのではと。
他の3人は呆然と悪魔と勇者ナオフミとの戦いを見ていた。
ただ、シェリーが姿を現すとシェリーのツガイたちはシェリーの方に意識を取られてしまうので、オリバーに屋敷の周りに張っている結界と同じものを施してもらい姿を隠している。
「という事で、今回は趣向を変えてみようと思うよー」
「いや、どういう事かわからないし」
「いつになったらシェリーに会えるんだ?」
「もうダンジョンから出てもいいのではないのですか?」
「いつまで続けるつもりだ?」
ドーム状にくり抜いたような空間の中央で陽子が彼らの前で言っているが、4人が4人共陽子の方を見ていない。グレイとオルクスは手合わせをしており、スーウェンは何やら分厚い本を読んでおり、リオンは水色の髪の少年を投げ飛ばしていた。
「青龍くん。もういいからダンジョンの管理に戻って、ほら4人とも構えてよー。陽子さんは逃げるから助けてあげられないから頑張るんだよ」
そう言って陽子は地面の中に消えていった。残された4人は何だという感じで陽子がいた地面を見ている。
地面に消えていった陽子はシェリーたちが隠れている場所の地面からにょきりと顔だけを出した。
「一応、陽子さんも結界を張ったから、やってもらっていいよ。陽子さんは消えるからね」
陽子は本当に悪魔という存在が嫌なようだ。陽子は再び地面の中に潜っていき、顔を出すことはなかった。
「術を使ってくれたまえ」
オリバーの言葉にシェリーと炎王は頷き、呪を口にする。
「『夢の残像』」
「『空中楼閣の幻夢』」
空気が変わった。それを感じ取った4人は一斉に武器を取り、辺りを警戒する。生暖かい風が吹き抜ける。ゾワゾワと悪寒がするように肌が粟立つ。
『やぁやぁ、今日はなんていい月夜なのだろう。こんな月夜は矮小なモノ達の悲鳴がよく似合う』
声がした方に4人が一斉に振り向く。そこには赤い2つの月を背にした者が立っていた。体中に這うように浮き出た青白い血管のようなモノが異様に浮き出た存在は何かを引きずっていた。何か。それは人だったものだ。髪を掴み首だけになった者。足だけの者を投げ捨てる。その異様な存在の周りには人の死体の山ができていた。
『次はそこの矮小なモノたちがいい鳴き声を聞かせてくれるのかなぁ』
そう言って、にたりと笑う存在。
グレイは汗をかき、震えていた。これは相手にしては駄目だと本能が告げている。震えが止まらない。このまま背を向けて去りたい。逃げたい。そんな心に囚われる一方で目の前の存在を排除しなければならないという思いにも囚われる。だが、己如きでは敵う相手ではないということも肌で感じてしまっていた。
オルクスもまた目の前の存在に恐怖を抱いていた。今まで、どんな魔物でも人でもここまで恐怖を抱いたことはない。心の底から沸き起こる恐怖。それが言葉を操り人々の死体の絨毯を作り出している。あれは排除しなければならない。しかし、歯の根が合わずガチガチとうるさく鳴っている。
スーウェンは目の前存在は死だと感じた。あれは死をもたらす存在だと。その死が足をこちらに向けて進んでくる。何か対抗する術をと頭の中で巡らすが、息が上がり考えがまとまらず、術の構築すらままらない。迫ってくる死に対して思考を止めてしまった。
リオンは目の前の存在が何かは理解できた。初代である炎王が戦ったという悪魔の特徴を目の前の存在は現していたからだ。
全体が黒く青白い血管が異様に目を引いたと。角がある者もいれば、羽をもつ者もいると聞いた。だが、このように心底から沸き起こるような恐怖に嫌悪感、死すら間近に感じてしまうとか聞いていない。刀を握る手が汗で滑りそうになる。
あれは、あれは····悪の塊だ。
「えー?やっぱ、綺麗な月夜は酒を飲んで愛でるのが一番やろ?」
ここで重苦しい雰囲気には似合わない軽い口調の声が降ってきた。3人はこの声には聞き覚えがない。あるのはグレイだけだ。いや、スーウェンも会ったことはあるはずだが、思考を止めてしまったスーウェンには分からない。
そこでグレイだけが気がついた。これはおかしいと。
『クククッ』
恐怖を撒き散らす存在は笑いながら歩みを進め、手を前に突き出す。その手は振り下ろされた剣先を受け止めていた。
3人は剣を振り下ろす黒髪の人物の後ろ姿を目にし、ほっとしていた。グレイはというと周りを見渡し、これを行っている者を探そうとしている。
「俺に魔眼は効かんで、さっさと死んでくれへんか?」
そんな事を言いながら、黒髪の人物は恐怖を撒き散らす存在に攻撃をし続け、恐怖を撒き散らす存在は笑いながら攻撃をしている。
二人の攻撃に死の絨毯は肉塊を撒き散らしながら崩れていく。黒髪の人物に死者に対する哀れみというものはないのだろうか。そう、思ってしまうほど、この場を破壊し続けている。いや、悪魔との戦いにそんなことを言っている場合ではないのは理解できる。できるが、···できるが、あまりにも凄惨な光景だった。
その状況にグレイは頭を抱えていた。知っている人物なだけに、これはあまりにも無いのではと。
他の3人は呆然と悪魔と勇者ナオフミとの戦いを見ていた。
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