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25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気
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「それでは、姉は普通の人生を歩めないように聞こえるのですが?」
ルークの言葉にカイルは答えない。聖女として役目を背負っているのであれば、普通とは言い難いが、シェリー自身が納得してその道を歩んでいるとすれば、それはシェリー自身が選んだ道といえるだろう。
例えそれが黒のエルフが未来視したものであったとしても。
「僕では姉の力にはなれないということでしょうか?」
その質問に対しての答えもカイルは持ち合わしてはいない。世界が敵だとすれば、ルークはシェリーにとっての人質であり、唯一の弱点だと言える。
そんなルークがシェリーの力になれるかと言えば、難しいところだ。オリバーほどの力を持つことができれば、それも可能だろうが、こればかりは、何とも言えない。
「弟くんは6番目の力になりたいの?」
カイルが答えない代わりに今までロビンの戦う姿を見ていたラフテリアが二人の間に割り込んできた。
シェリーとロビンはというと、手合わせが終わっており、二人で先程の手合わせの検証をしているようだ。
「それは無理だと思うよ。だって君は神様から選ばれていないもの」
ラフテリアはルークに向かって言い切った。ラフテリアの基準はやはり白き神に認められているかどうかのだろう。
「赤い女神さまからは力を貰っているみたいだけど、エリーほどじゃないよね。エリーは本当にすごかったよ?ロビンに色々教えてくれたしね」
違ったようだ。赤い女神様というのは、女神ナディアのことだろう。女神ナディアは己とラースの血族に対しては加護を与えてる。確かにルークにも魔眼という形で女神の加護を受けていることに間違いはない。
「エリー?」
ルークは首を傾げる。誰の事を言っているのかわからない。
「だから、君じゃ無理だよ。そうだね。ここの入り口で、出迎えてくれた人なら、6番目の力になれるよ。白い神様からの力をもらっているからね」
いや、やはりラフテリアの基準は白き神が一番のようだ。
ルークはラフテリアの言葉に驚く。白い神様とは教会で唯一神と掲げる白き神のことだと。その神から自分の父親であるオリバーが加護を戴いているとこの時初めて知った。親子であるのにそんなことすら知らず、今日初めて会った人外の少女から教えられるとは。今日だけで自分がどれだけ家族と思われる人から何も教えられていなかったということを思い知らされた。
「リア。無理だなんて決めつけるのはよくないよ」
「ロビン!」
シェリーとの話が終わったのだろう。ニコニコとほほえみながら、ラフテリアの言葉を注意するロビン。名を呼ばれたラフテリアはロビンの元に駆けつけ、腕に抱きつく。
こうしてラフテリアの非常識を諌めるのもロビンの役目である。そうしなければ、ラフテリアは自分が思うまま行動をしてしまうのだ。
「話は聞こえていたけど」
ロビンはそう切り出す。シェリーと手合わせをしながらも、ルークとカイル。そして、ラフテリアの会話を聞いてたようだ。
「シェリーちゃんの力になりたい?」
「ロビン様!」
ロビンのルークへの問いかけに、シェリーはロビンにルークを巻き込まないよう名前を呼んで止めるように促した。
しかし、ロビンはそのまま話し出す。
「力になりたいのなら、生半可なことじゃ駄目だよ。僕たちの敵は人々の心だからね」
「人々の心?」
ルークは目の前の青年が何を言っているのか分からなかった。心という物は形を持っているものではなく、姿が見えるものでもなく曖昧な物だ。それを敵だと言った。
「そう、人々の心。人が存在している限り終わることはない戦い。わかるかな?人は欲深く愚かだ。際限ないことこの上ない。だから、世界が悲鳴を上げている。けれど、それに誰も気が付かない。気がつこうとしない。だから、場当たり的な対処しかしない。結局何も解決にならず悪化の一途を辿っている」
ルークからは困惑の表情が見て取れる。ますます黒髪の青年が言っている意味がわからなくなったのだろう。
ルークはロビンの後ろに立っているシェリーを見る。だが、シェリーは心配そうな表情をルークに向けるのみで、ロビンの言葉に理解を示しているのか、うかがい知ることはできない。その横にはカイルも心配そうな顔をしてシェリーを見ているだけだ。
「まず、レベルが足りないね。レベル90の壁を超える。全てはそこからだ。超えられないと言うなら君はそこまでの者だったというだけ」
レベル90の壁。一度は耳にしかことがある言葉だ。言葉にすれば簡単な言葉だが、実際には相当な努力が必要だ。一生かけてレベル90に達する者もいると耳にするほど、難しいことなのだ。黒髪の青年が言う生半可なことでは駄目だというのはこの事なのだろうか。
「剣にしろ魔術にしろ、レベル100からが極めどころだ。君はどこまで到達できる?レベル90で挫折するか、レベル100まで達し術を極めるか。若しくは超越者まで達するか。まぁ、せめて英雄クラスにならないと話にならないと言うことは覚えておくといいよ」
ルークの言葉にカイルは答えない。聖女として役目を背負っているのであれば、普通とは言い難いが、シェリー自身が納得してその道を歩んでいるとすれば、それはシェリー自身が選んだ道といえるだろう。
例えそれが黒のエルフが未来視したものであったとしても。
「僕では姉の力にはなれないということでしょうか?」
その質問に対しての答えもカイルは持ち合わしてはいない。世界が敵だとすれば、ルークはシェリーにとっての人質であり、唯一の弱点だと言える。
そんなルークがシェリーの力になれるかと言えば、難しいところだ。オリバーほどの力を持つことができれば、それも可能だろうが、こればかりは、何とも言えない。
「弟くんは6番目の力になりたいの?」
カイルが答えない代わりに今までロビンの戦う姿を見ていたラフテリアが二人の間に割り込んできた。
シェリーとロビンはというと、手合わせが終わっており、二人で先程の手合わせの検証をしているようだ。
「それは無理だと思うよ。だって君は神様から選ばれていないもの」
ラフテリアはルークに向かって言い切った。ラフテリアの基準はやはり白き神に認められているかどうかのだろう。
「赤い女神さまからは力を貰っているみたいだけど、エリーほどじゃないよね。エリーは本当にすごかったよ?ロビンに色々教えてくれたしね」
違ったようだ。赤い女神様というのは、女神ナディアのことだろう。女神ナディアは己とラースの血族に対しては加護を与えてる。確かにルークにも魔眼という形で女神の加護を受けていることに間違いはない。
「エリー?」
ルークは首を傾げる。誰の事を言っているのかわからない。
「だから、君じゃ無理だよ。そうだね。ここの入り口で、出迎えてくれた人なら、6番目の力になれるよ。白い神様からの力をもらっているからね」
いや、やはりラフテリアの基準は白き神が一番のようだ。
ルークはラフテリアの言葉に驚く。白い神様とは教会で唯一神と掲げる白き神のことだと。その神から自分の父親であるオリバーが加護を戴いているとこの時初めて知った。親子であるのにそんなことすら知らず、今日初めて会った人外の少女から教えられるとは。今日だけで自分がどれだけ家族と思われる人から何も教えられていなかったということを思い知らされた。
「リア。無理だなんて決めつけるのはよくないよ」
「ロビン!」
シェリーとの話が終わったのだろう。ニコニコとほほえみながら、ラフテリアの言葉を注意するロビン。名を呼ばれたラフテリアはロビンの元に駆けつけ、腕に抱きつく。
こうしてラフテリアの非常識を諌めるのもロビンの役目である。そうしなければ、ラフテリアは自分が思うまま行動をしてしまうのだ。
「話は聞こえていたけど」
ロビンはそう切り出す。シェリーと手合わせをしながらも、ルークとカイル。そして、ラフテリアの会話を聞いてたようだ。
「シェリーちゃんの力になりたい?」
「ロビン様!」
ロビンのルークへの問いかけに、シェリーはロビンにルークを巻き込まないよう名前を呼んで止めるように促した。
しかし、ロビンはそのまま話し出す。
「力になりたいのなら、生半可なことじゃ駄目だよ。僕たちの敵は人々の心だからね」
「人々の心?」
ルークは目の前の青年が何を言っているのか分からなかった。心という物は形を持っているものではなく、姿が見えるものでもなく曖昧な物だ。それを敵だと言った。
「そう、人々の心。人が存在している限り終わることはない戦い。わかるかな?人は欲深く愚かだ。際限ないことこの上ない。だから、世界が悲鳴を上げている。けれど、それに誰も気が付かない。気がつこうとしない。だから、場当たり的な対処しかしない。結局何も解決にならず悪化の一途を辿っている」
ルークからは困惑の表情が見て取れる。ますます黒髪の青年が言っている意味がわからなくなったのだろう。
ルークはロビンの後ろに立っているシェリーを見る。だが、シェリーは心配そうな表情をルークに向けるのみで、ロビンの言葉に理解を示しているのか、うかがい知ることはできない。その横にはカイルも心配そうな顔をしてシェリーを見ているだけだ。
「まず、レベルが足りないね。レベル90の壁を超える。全てはそこからだ。超えられないと言うなら君はそこまでの者だったというだけ」
レベル90の壁。一度は耳にしかことがある言葉だ。言葉にすれば簡単な言葉だが、実際には相当な努力が必要だ。一生かけてレベル90に達する者もいると耳にするほど、難しいことなのだ。黒髪の青年が言う生半可なことでは駄目だというのはこの事なのだろうか。
「剣にしろ魔術にしろ、レベル100からが極めどころだ。君はどこまで到達できる?レベル90で挫折するか、レベル100まで達し術を極めるか。若しくは超越者まで達するか。まぁ、せめて英雄クラスにならないと話にならないと言うことは覚えておくといいよ」
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