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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在
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しおりを挟む「ダンジョンの話はオレよりも佐々···シェリーさんの方が知っていると思うから聞いてみるといい」
炎王はそう言いながら、足を進めリオンの側に行き肩を叩いた。
「帰るぞ」
と言う炎王の一言にリオンは絶望的な表情をする。そんなリオンに呆れた顔をする炎王。
「リオン。リリーナに頼んでいたのだろう?鬼化の儀式をしなくても別に俺は構わないが」
炎王の言葉にリオンは一瞬立ち上がろうと腰を上げたが、やはり何かを思ったのか再び腰を下ろす。
そのリオンの不可解な行動に眉をひそめる炎王。先日まで、力を得ることに意欲的だったリオンの行動としては普通ならありえない。炎王は鬼化の話をすれば、直ぐにリオンと共に炎国に戻るつもりだったのだが、リオンがここから移動するのを拒んでいるように見受けられる。
そして、炎王は恐らく何かあったのだろうと思われるシェリーを見るが、シェリーはルークに無言の視線を向けられニコニコと微笑んでいるだけだ。
「そう言えば、入学祝いを贈っていなかったな」
炎王は動かないリオンの側を離れ、再びルークの側に行き、どこからとも無く一振りの剣を取り出した。
「レッドドラゴンの爪から作られた剣だ。上手く使えこなせば、剣から火がでてくるぞ」
そう言って、鈍色の鞘に包まれた剣をルークに差し出したのだ。剣から火が出てくると聞いてシェリーを見ていた視線が珍しい剣に囚われてしまったルークは、椅子から立ち上がり、炎王の側に行って差し出された剣を受け取った。
鈍色の鞘から剣を抜き、ルークは剣身を顕わにした。赤く波打つような輝きがその剣身に映し出され、ルークの瞳を釘付けにした。
「裏庭で試しに使ってくると良い」
炎王がルークに試し切りでもするように言うと、ルークはもらった剣を大事そうに抱えて、感謝の言葉を言いながらダイニングを出ていった。
言葉では大人ぶっているが、まだ13歳のルークだ。物珍しい物に釣られ、炎王の思惑通り部屋から追い出されたのだ。
「それで···いてっ!」
炎王が本題に入ろうとすると、背後から襲撃された。炎王が己を攻撃した者を振り返りながら見るとショートカットの黒髪にうなぎなのか犬なのかわからないキャラクターのTシャツにジーパンを着ている陽子がハリセンを持って立っていた。
「エンエン!陽子さんは早く出ていってて言ったよね!」
ダンジョンを改装中である陽子がわざわざ文句を言いにここまできたらしい。
「エンエンがここに来たおかげで、地下道が崩落するし、王城の地下とダンジョンが繋がってしまうし、陽子さんの仕事を増やさないよね!」
龍人である炎王が与える影響が大きすぎて、先程炎王にクレームを入れたのは陽子だったようだ。
「あ、いや。わかっているんだが、リオンが戻ろうとしてくれないから、俺も帰れないんだ」
炎王はそもそも今日はリオンに鬼化の儀式の用意が整ったので、連れて帰るためにここを訪れたのだ。だが、肝心のリオンがここを離れるのを拒んでいる。恐らく原因はシェリーにあると思われたために、話を聞く為にルークをこの場から追い出したのだ。
「あ、それ?なんとササッちと竜の兄ちゃんが番になっちゃったから、皆がギスギスしているんだよ」
陽子はあっけらかんと問題発言をした。その言葉に3つの視線が陽子に突き刺さる。
「おお、怖い怖い。でもさぁ、陽子さんから言わせてもらえば、番であることってそんなに必要なのかなぁ」
「「「必要だ!」」」
三人から否定の言葉が陽子に投げかけられた。仲がいいと思える程、揃っていた。
「ああ、そんなことか」
炎王も陽子と同意見なのか、番という者をそこまで重要視していないような言葉が出てきた。リリーナという番がいる炎王からだ。
「リオン。そんなことをいちいち構っていたら、佐々木さんの足を引っ張るだけだぞ」
「しかし、初代様!これは許されることではありません」
炎王にリオンは立ち上がって食ってかかる。番とは己の全てであると言わんばかりに炎王の言葉を否定するリオン。
そんなリオンに炎王はため息を吐いた。
「はぁ、リオン。佐々木さんは神から選ばれた聖女だ。そんなつまらないことで争っている暇があるなら己を鍛えろ」
「つまらない!つまらないとはどういうことですか!」
炎王の言葉にリオンは憤りをぶつける。一人に対して五人の番。その一人が抜け駆けしたのだ。その原因のカイルはまるでシェリーを独占するように抱え込んでいる。先程から3人の機嫌が悪い原因はカイルの行動にもあったということだ。
「リオン。俺の言葉の意味をきちんと考えろ。神から選ばれた者の生きる道は悲惨だ。この俺も幾度と無く死を覚悟した。水龍アマツの未来は残酷だった。黒狼の結末は一族の滅亡だ」
炎王は己が知る白き神から変革者として選ばれた者たちの結末を語ったのだ。
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