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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「ルーちゃん。エンさんはもう帰ったのよ」

 炎王からもらった剣を大事そうに抱え込んだルークにシェリーは炎王が帰ったことを伝える。
 そのことにルークは残念そうな顔をしながら入って来た。そして、シェリーとカイルしか居なくなっている現状に首を傾げている。

 そして、カイルに抱えられているシェリーの前の席にルークは腰を下ろした。

「ルーク。魔剣はそんなに簡単には扱えない。冒険者でもBランクぐらいの実力がないと難しいだろう」

 剣を渡した炎王にアドバイスをもらえず残念がるルークに、カイルが微笑ましげな視線を向けている。きっとカイルにも経験したことなのかもしれない。

「魔剣。これって魔剣なんだ」

 初めて見る魔剣をルークは椅子の横に立て掛けて、ニコニコと微笑ましげにルークを見つめるシェリーに視線を合わせた。

「姉さん。神様が管理するダンジョンって何処にあるの?」

 先程、炎王が言っていたダンジョンの話だ。そのルークの質問にシェリーはニコニコとした笑顔のまま答える。

「ルーちゃん、それはナディア様のダンジョンよ」

 そう、幾度と無く女神ナディアから来るように言われているドルロール遺跡のダンジョンだ。

「でも」

 そこで、シェリーの否定の『でも』という言葉が出てきた。その言葉にルークはまた否定の言葉が出てくるのかとシェリーを睨みつける。

「そのダンジョンは魔眼を使えることが最低条件のダンジョンなの。使えないのであれば、最低レベルは100は必要」

「レベル100」

 ルークはシェリーの言葉を繰り返す。そう、ロビンという人物から言われた最低ラインのレベルが100だったのだ。

「そこはね、歴代のラースの大公になる者たちの最終試験場なの。魔眼をラース全土まで影響を及ぼすほどの能力を開眼させるための訓練場で、大公になる者の最終試験場。ルーちゃんがラースの大公になるというのなら、お姉ちゃんは止めないけれど、ルーちゃんは大公になりたいの?」

 その昔、シェリーとルークは大公になるための継承の権利を放棄をしたが、実はミゲルロディアの元で止められており、シェリーもルークも女神ナディアからディアの名を与えられているため、大公になれる立場にあるのだ。

 シェリーはルークにその意志があるのであれば、シェリーは止める立場にはない。なぜなら、恐らく女神ナディアは残り一人の魔眼持ちにもディアの名を与えるつもりはないと見受けられる。ならば、ミゲルロディアがその座を退いたとき、次の大公として名が上がるのはシェリーかルークしかいないのが、今の現状だ。

 ただ、聞かれたルークは戸惑っていた。神が管理しているダンジョンのことを聞いただけなのに、それが大公に成るか否かの選択肢に繋がったのだ。突然そのようなことを問われてもルークの中には大公という言葉なんてありはしないので、首を横に振る。

「そうね。ルーちゃんがダンジョンに行きたいというなら、王都の南にある『愚者の常闇』がいいと思うの」

 シェリーから出てきたおすすめのダンジョンとは陽子のダンジョンの名前だった。

「ルーちゃんは頭がいいから、攻略方法が指示されて、それを解きながら進むダンジョンが合っていると思う。それにそのダンジョンは魔物を倒して経験値を得るんじゃなくて、指示通りに攻略することで経験値を得ることができるの。それに、スキルも与えてくれることがあるからお勧めよ」

 ルークはそのようなダンジョンであれば、攻略できそうだとシェリーの話に耳を傾ける。

「それから、その魔剣は名工が作った一品物だから大切にね。そのような物を人に気軽に与えるのはエンさんだからできることなのよ」

 シェリーの言葉に目を見開いて椅子に立て掛けていた一振りの剣を見るルーク。普通であれば、手にれることができない剣神と火の神から加護を得ているファブロの剣だ。何も対価を求めずに人に渡すなど、炎王だからできるのだ。

「わかった。この魔剣が使えるように頑張る」

 ルークは嬉しそうに剣を持って、ダイニングから出ていった。その姿を微笑ましげに見つめるシェリー。

「でも、あの魔剣は叩き起こさないと使えないね」

 同じく出ていくルークの背中を見ていたカイルが一言こぼす。そう、カイルは言っていた魔剣はそんなに簡単には扱えないと。叩き起こさければいけないとはどういうことだろうか。

「いいのではないのですか?炎王は敢えて使えない魔剣をルーちゃんに渡したのでしょうから」

 これは不良品を炎王はルークに渡したということか。

「魔剣に主と認めさすにはルーちゃんは何もかも足りませんから、足りない物を補ったときには魔剣を解放する力も得ているでしょう」

 いや、炎王はルークに一つの目標として魔剣を与えたのだろう。力を得たいのであれば、神という不確定要素を頼るのではなく、この魔剣が火を吹くぐらいの実力をつけろという炎王の言葉では伝わらない優しさだったのだ。

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