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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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 シェリーは軍本部の会議室で、イーリスクロムを目の前にして席に付いていた。
 あの後、ニールに追い出され、今日中に報告しろと言われ、広報のサリーに取り次いでもらって、1刻2時間の待ちぼうけをして、今現在は窓から西日が入り込んでいた。
 そう、かなり待たされていたのだ。

「帰っていいですか?」

 イーリスクロムが向かい側に席についた早々にシェリーは帰りたいと口にした。

「え?呼び出された僕は何なのかな?」

 イーリスクロムの疑問も最もだ。王となればそれなりに仕事……はあるはずだ。それを終わらせて予定のないシェリーの訪問に対応している分、良心的だと言ってもいい。

1刻2時間も待っているのですが?」

「まだ、8刻16時だから早い方だよ」

 呆れたように言うイーリスクロムの背後には近衛騎士団長のレイモンドが控えている。突然訪ねてレイモンドがイーリスクロムについているということは、今日はイーリスクロムはウロウロしていたわけではなく、真面目に仕事をしていたようだ。

「それに君が色々言ってくるから、こちらは大忙しなんだよ。帝国の者たちの排除を進めているけど、帝国の者たちも何かを感じたのか、王都から去って行った者たちがいるのが現状だ」

 イーリスクロムは先日シェリーが言っていた帝国の人族の排除の進行状況を口にした。あの第5師団長のお陰か、かなり順調に事が運んでいるようだ。

「それで、今日はどんな無理難題を言いに来たわけ?」

 これはシェリーが毎回無理を言っているように聞こえるが、否定もできないので、シェリーはその言葉をスルーして用件を話し出す。

「実はニールさんから特殊緊急依頼が出されました」

 特殊緊急依頼と言う言葉にピリッとした空気が流れる。冒険者ギルドの職員だが、元々は騎士団に属していたニールだ。そのニールの人物像を知っているイーリスクロムとレイモンドはニールが特殊緊急依頼を言い出すとはよっぽどの事だと判断したのだ。

「以前『狂いし陽の森』の件を第9師団経由で報告を受けましたか?」

 シェリーは前提条件として第9師団に尋問されたダンジョンの大量の魔物の死骸の件だ。証拠とは言えないが、浄化された石の様なかけらを渡したので、それがあれば話がしやすいと判断したのだった。

 だが、シェリーの言葉にイーリスクロムは首を傾げ、レイモンドの方に振り向き、何か聞いているかと聞いている。

「モルテ国に訪問するときに起きたことです」
「大量殺害現場があったというものか?」

 シェリーはそれでは無いと首を横に振る。これは国王に報告することではないと、判断されたのだとシェリーは思い大きく溜息を出す。

「その時に冒険者ギルドからスタンピード疑いのため調査依頼をされたのです。そして、今回、王都の西のダンジョンでも同じ依頼をされました」

 シェリーの言葉にイーリスクロムはスタンピードの依頼であれば、軍は関係ないと判断したが、シェリーの言葉に段々と青ざめていく。

 そう、シェリーはスタンピード様の状態を引き起こす原因が黒い球状の物体だといい。その中からはアーク族と思える者が完全体の悪魔と混じった状態で出てきたと。

「ごめん。これ僕に言ってどうしろと?」

 あまりにも現実離れした話にイーリスクロムの脳が理解するのを拒否し始めたのだ。

「アーク族って、空島にいるという種族だろ?この王都に元々住んでいた白い翼の種族」

 流石にイーリスクロムは知っていたようだ。アーク族の存在を。そして、元々はこの王都に住んでいたと。
 そう、この王都の中心部の小高い山は空島だったのだ。大魔女エリザベートが叩き落した空島の成れの果てがこの王都メイルーンだ。

「それが完全体の悪魔だって?確かに魔人と同等だと言われてみれば納得できるが、では、次元の悪魔とはなんだ?」

「知りませんよそんなこと」

 シェリーは今回わかった完全体の悪魔の正体を報告しに来ただけで、空間を割って現れる存在の話をしに来たわけではない。

「ということで、ニールさんから残り4つの場所の駆除を国からして欲しいと言われました」

 その言葉にイーリスクロムはお手上げだと言わんばかりに天井を仰ぎ見る。
 以前もイーリスクロムが言っていたが、軍に口出すことは国王として一線を引いていた。いや、報告を受け、それに対して意見を言うことはあるが、最終決定権は統括師団長にあるのだ。

「これを機会に命令系統の一本化を図るべきではないのですか?そして、現地に統括師団長閣下を投入してください。それともトーセイのギルドマスターを……」

 そこまで言ってシェリーは気がついて、ニールから渡された紙に書かれている。地名を指した。国境のトーセイからほど近い地名だ。

「これ、トーセイのギルドマスターにまかせていいのでは?」

「フラゴルかー」

 イーリスクロムは遠い目をしてその名を口にしたのだった。

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